食品偽装事件を起こした高級料亭「船場吉兆」ですが、謝罪会見での「ささやき女将」もかなり話題になりました。
今回は船場吉兆の食品偽装事件と会見の詳細、本店などその後、湯木佐知子や旦那・長男・次男の現在をまとめました。
この記事の目次
船場吉兆は食品偽装事件と「ささやき女将」の会見で話題に
2007年10月末、日本を代表する高級料亭の「船場吉兆」で、複数の食品偽装が日常的に行われていたことが明らかになりました。
2017年12月10日には、女将の湯木佐知子や取締役が謝罪会見を開きました。
この会見では、マスコミとの質疑応答で長男の湯木喜久郎が答えに窮している時、女将の湯木佐知子が隣で答えをささやき、指示している様子が全部マイクに拾われていました。
この会見はコントのようだと話題になり、湯木佐知子は「ささやき女将」と呼ばれるようになります。
この会見の後、船場吉兆は廃業に追い込まれています。
船場吉兆とは
船場吉兆とは、吉兆グループの高級料亭です。
吉兆の創業者である湯木貞一が1991年にのれん分けをすることになり、以下のようになりました。
・東京吉兆:長女
・京都吉兆:次女
・船場吉兆:三女(湯木佐知子)
・神戸吉兆:四女
船場吉兆は、三女の湯木佐知子と旦那で婿養子の湯木正徳が引き継いで開業しています。
そして湯木佐知子と湯木正徳、さらに長男・次男を経営陣として、大阪中央区の船場本店以外にも、博多店や心斎橋店、天神店をオープンさせます。
さらに、阪急百貨店や博多大丸と提携して、吉兆ブランドの商品を売り出すなど、事業を拡大させていきました。
船場吉兆の食品偽装事件の詳細
2007年10月27日:消費期限・賞味期限偽装
出典:tabelog.com
高級料亭の船場吉兆の食品偽装は、2007年10月から一気に明らかになっていきました。
一番最初に明るみに出た食品偽装は、総菜や菓子類の消費期限・賞味期限の偽装です。
10月27日、福岡のデパ地下で販売されていた船場吉兆の以下のお菓子のラベルを毎日張り替えて、消費期限・賞味期限を偽装していたことが発覚しました。
・桜ゼリー
・抹茶ゼリー
・タルト
・ほうじ茶ケーキ
さらに、デパ地下で賞味期限切れとなった「栗のふくませ煮」などの総菜類を、そのデパートのレストラン街にあった船場吉兆天神店に流していたことが11月1日に発覚しました。
これらの消費期限・賞味期限偽装は、9月に匿名の通報があったことで調査されていました。
2007年11月9日:鶏肉・牛肉の産地偽装
出典:news88.net
船場吉兆の食品偽装事件は続きました。次に発覚したのは、鶏肉と牛肉の産地偽装です。
賞味期限・消費期限偽装が発覚した約2週間後の11月9日、船場吉兆は佐賀県産の和牛を但馬牛として、ただのブロイラーを地鶏として提供していたことが発覚しました。
偽装発覚後、船場吉兆側はブロイラーは納入業者、和牛は仕入れ担当者の独断によるもので、自分たちは関与していないというスタンスを取っていました。
しかし、業者や店員からは船場吉兆の経営陣も承知していたことだと証言され、双方の意見は真っ向から対立することになりました。
2007年11月16日:味噌漬けの産地偽装
船場吉兆の食品偽装はまだまだ続きます。
産地偽装が発覚した1週間後の11月16日、不正競争防止法違反(品質虚偽表示)の疑いがあるとして、船場吉兆本店や社長宅や事務所などに大阪府警の家宅捜索が入りました。
経営陣幹部も任意の事情聴取を受けています。
この食品偽装は、牛肉の味噌漬けセットで使った鹿児島県産や佐賀県産の牛肉を但馬牛・三田牛と偽っていた容疑です。
この時も、船場吉兆は組織ぐるみの不正ではない、幹部は知らなかったと食品偽装への関与を否定しています。
船場吉兆は会見で食品偽装への関与を認めた
パートに全責任を押し付けようとしていた
船場吉兆は、表示偽装・産地偽装が発覚後、会社ぐるみではなく、経営陣はこの実態を知らなかった、表示偽装はパート女性たちの独断によるものという姿勢を貫き通しました。
これを受けて、売り場責任者だったパート女性たちは11月14日に記者会見を開きます。そして、賞味期限・消費期限の偽装は店長の指示によるものだったと証言します。
さらに、全責任はパート女性にあるという「事故報告書」に署名・押印を迫られたことも証言しました。
この証言から、一連の食品偽装に船場吉兆の幹部が関わっていたことと共に、船場吉兆が嘘の証言をしていることが明らかになったのです。
しかし、パート女性の証言があっても、船場吉兆の経営陣はまだ自分たちは関わっていないという姿勢を崩しませんでした。
会見を開いて関与を認める
出典:asahi.com
しかし、警察の捜査だけではなく、農林水産省の調査が入り、調査結果と船場吉兆の経営陣の言い分に矛盾が生じていることが明らかになり、経営陣は言い逃れができない状態になりました。
そこで2007年12月10日に記者会見を開いて、食品偽装に関して船場吉兆の経営陣の関与を認めて、謝罪しました。
記者会見に参加したのは、船場吉兆の社長である湯木佐知子と長男で取締役の湯木喜久郎です。
前社長である湯木正徳と次男の湯木尚二は、謝罪会見には出席しませんでした。
船場吉兆の会見でささやき女将・湯木佐知子が話題に
長男は質疑応答で頭が真っ白に
この船場吉兆の謝罪会見で、社長・女将である湯木佐知子が「ささやき女将」として話題になりました。
会見ではまず湯木佐知子が謝罪し、その後はマスコミによる質疑応答が行われました。マスコミからの質問に回答したのは、長男の湯木喜久郎です。
湯木喜久郎は会見前に弁護士から想定質問と回答をレクチャーされていましたが、極度の緊張で何も答えられない状態になってしまいました。
弟の湯木尚二によると、長男の湯木喜久郎は普段から口数が多いタイプではなかったそうです。
兄は職人気質で、あまり多くを語らない人です。あれだけの報道陣が集まる中、さらに緊張してしまい、言葉が出てこなかった。
引用:『船場吉兆』息子が初告白!「ささやき女将事件」の舞台裏と家族再生の物語() | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
マスコミからの質問に対して、湯木喜久郎はうつむいて固まってしまいました。
そこで助け舟を出したのが、社長の湯木佐知子です。湯木佐知子は長男の湯木喜久郎の隣に座っていて、湯木喜久郎が黙り込んでしまった時に、そっと模範解答をささやいたのです。
そのささやき声は、通常ならマスコミには聞こえないくらいの大きさでした。
しかし、場所は記者会見。目の前に何本ものマイクがありました。そのため、湯木佐知子のささやきをマイクは見事に拾ってしまったんです。
出典:twitter.com
その結果が「ささやき女将」の誕生です。湯木佐知子がまるで長男を操っているかのように見えましたし、長男の湯木喜久郎は湯木佐知子の腹話術の人形のようにも見えました。
ささやき女将のセリフはこちらです。
・「大きい声で、目を見て」
・「しっかり言わんかい」
・「頭が真っ白で、頭が真っ白で…。」
・「責任逃れの発言をしてしまいました…」
自分への質問は聞こえない
出典:twitter.com
湯木佐知子は長男の湯木喜久郎への質問には、隣で回答をささやいていたのに、自分への質問は「聞こえない」と答えることもありました。
記者から「佐知子さんは取締役を辞めないんですか」と聞かれると、「ちょっと私耳が遠いんで聞こえないんですけれども」と回答。
長男の湯木喜久郎への質問はしっかり聞こえていて、回答をささやいていたのに、自分への都合の悪い質問は耳が遠いふりをする…。
このささやき女将のしたたかさは、長男を操る黒幕・女帝のように見えたんです。食品偽装事件よりも、このささやき女将の謝罪会見の方が記憶に残っている人も多いと思います。
コントのようだとネタにされる
出典:youtube.com
このささやき女将の会見は、世間を大爆笑の渦に巻き込みました。もちろん、食品偽装事件は笑い事では済ますことができない重大な事件です。
でも、ささやき女将の会見はインパクトがあって、みんなの記憶に残るものだったんです。
このささやき女将は、東京スポーツ主催の「第8回ビートたけしのエンターテインメント賞」において特別賞を受賞しました。(本人は受賞を辞退)
ビートたけしからは「アレ(ささやき)はコントだよなぁ。あれホントにやられたら絶対かなわないもの」と評価されています。
2008年には「ささやき女将」は流行語にノミネートされています。
ほかにも、爆笑問題の太田光さんはささやき女将のネタが大好きですね。
また、サンドウィッチマンもささやき女将をモチーフにしたコントを行っています。
このように、バラエティ番組でも良く取り上げられるネタになっています。ささやき女将がいかに面白かったかがわかります。
船場吉兆のその後① 会見後も次々に不正が発覚
2007年12月25日:梅酒の無許可製造が発覚
出典:ameblo.jp
船場吉兆は、上記3つの食品偽装が発覚した時点で謝罪会見を開きました。しかし、事件はこれだけでは終わりませんでした。
謝罪会見の後の12月25日、梅酒を無許可で製造・販売していたことが発覚します。
船場吉兆は酒の製造免許を持っていないにもかかわらず、自家製の梅酒を食前酒として提供・販売していました。
民事再生法の手続きに入る
出典:ameblo.jp
船場吉兆は記者会見を開いて謝罪したものの、お客さんが離れてしまったために、2008年1月16日には大阪地方裁判所に民事再生法適用を申請しています。
民事再生法とは、現在の経営者のもとで企業の再建を図る法律ですね。そして、2008年1月22日から本店の営業を再開することを発表しました。
2008年5月2日:食べ残しの使いまわしが発覚
出典:news88.net
会見から約5ヶ月経った2008年5月2日、今度は船場吉兆で客が食べ残したものをほかの客に出していたことが発覚しました。
・稚鮎の素揚げ
・ゴボウをウナギで巻いた「八幡巻き」
・エビと魚のすり身を蒸した「えびきす」
・サーモンの焼き物
・刺身
・刺身の添え物
これらの物を盛り直したり、揚げ直し・焼き直したりして、違う客に提供していたんです。
発覚する6~7年前から、湯木正徳社長直々に「もったいないから明らかに使えそうなのは使え」と指示したのが始まりで、店員のほとんどがこの使いまわしの実態を知っていました。
従業員によると、これらの使いまわしの料理は上座の客ではなく、下座の客に出されていたとのことです。
謝罪会見をして、「さぁ、これから頑張って再建していこう!」というムードの中で、この食べ残しの使いまわしが発覚したことで、船場吉兆にとどめを刺したと言えるかもしれません。
船場吉兆のその後② 廃業して船場吉兆は消滅
出典:jiji.com
船場吉兆は2008年1月16日に民事再生法の申請を行い、翌週には営業を再開して再出発を図りましたが、5月2日に食べ残しの使いまわしが発覚しました。
この食べ残しの使いまわし事件は船場吉兆に最後のとどめを刺し、2008年5月28日に大阪市保健所に飲食店の廃業届を提出しています。
食品偽装問題で客足が鈍っていた中、さらにほかの客の食べ残しを使いまわしていたというのは、飲食店としては致命的ですね。
「ささやき女将」の会見後は食べ残しの使いまわしは一切していなかったとのことですが、さすがに食べ残しを使いまわすのはアウトです。
特に、船場吉兆のような高級料亭で日常的に行われていたとなると相当悪質です。
船場吉兆はこの問題が発覚してキャンセルが相次ぎ、破産直前には発覚前の3分の1ほどの客しか来ていなかったとのことです。
吉兆グループでは食のコンプライアンス委員会が発足
1991年に吉兆からのれん分けをして船場吉兆が生まれ、そのほかにも本吉兆、東京吉兆、京都吉兆、神戸吉兆がありました。
吉兆グループとして会合を開くことはありましたが、資本関係は一切ありませんでした。
ただ、船場吉兆の食品偽装事件を受けて、「吉兆 食のコンプライアンス委員会」を設立し、第三者の専門家を招聘して、共同で監査を行うようになりました。
本委員会は、吉兆グループ各社が食の安全性を確保し、お客様に安心してご利用いただける企業であり続けるため、法令、条例、その他諸規則を遵守した企業活動を行うとともに、その取組み内容や取組み状況を、自主管理するための組織として組成いたしました。
船場吉兆本店だった場所の現在
船場吉兆本店の場所は、大阪の堺筋本町駅から徒歩3分という好立地にありました。
2008年5月に船場吉兆が廃業になった後は、本店だった場所は「NLC船場ビル」というビルに整備され、その後はテナントビルに整備されています。
ただ、取引が繰り返されているようで、ビルの名前は頻繁に代わっています。現在は各フロアにいろいろな会社のオフィスが入っています。
外から見ると、かつて高級料亭の船場吉兆があったとは誰もわからないと思います。
船場吉兆の経営陣の現在 【湯木佐知子・旦那・長男・次男の今】
湯木佐知子の現在
船場吉兆のささやき女将は、廃業後に自己破産をしていて、現在はマンションで年金暮らしをしているとのことです。
ただ、少なくとも2014年までは株式会社吉兆(吉兆グループの持ち株会社)の役員をしていました。さすが創業者一族ですね。
2015年時点で次男が言うには、完全に飲食業から離れていて、時々次男の店に来て食事をしたり、アドバイスをすることはあるようです。
また、「あの人は今」的な番組に出演することがあります。近年だと、2016年に「爆報!フライデー」や2018年に「バイキング!」、2020年にはNHKの「逆転人生」などに出演しました。
湯木佐知子の旦那の現在
出典:ameblo.jp
湯木佐知子の旦那である湯木正徳は、経営再開前に社長を退任しています。その後はスッパリと飲食業から離れ、湯木佐知子と一緒にマンションで年金暮らしをしています。
湯木正徳の指示で、食べ残りの使いまわしが行われてましたが、創業者一族ではなく、婿養子だったために、立場は弱かったものと思われます。
長男の現在
出典:bokete.jp
湯木佐知子の長男である湯木喜久郎は、現在は飲食業を離れ、全く違う業界で仕事をしているとのことです。
あの謝罪射会見で最も矢面に立たされたのは女将の湯木佐知子でもなく、社長の湯木正徳でもなく、長男の湯木喜久郎でした。
そのストレスを考えると、飲食業とは全く違う業界で働きたいと思うのは当然かもしれません。
次男の現在
湯木佐知子の次男は湯木尚二です。
湯木尚二は当時の経営陣であり、消費期限・賞味期限の偽装をしていた店の店長でしたが、記者会見に出てくることなく、批判の矢面には立ちませんでした。
そのため、長男の湯木喜久郎に比べると、船場吉兆の食品偽装事件ではダメージがかなり少なかったはずです。
次男の湯木尚二は船場吉兆が廃業した後は、外食チェーンで働き、その後は外食のコンサル業をしていたそうです。
そして2010年には、大阪の北新地に「日本料理 湯木」を出店し、現在は4店舗まで事業を拡大しています。北新地にお店を開く際には、船場吉兆の元従業員に声をかけたとのこと。
店を開くために尚二は、船場吉兆の頃の従業員に声をかけた。全員が承諾した。尚二は北新地に店を開いた。
船場吉兆の従業員だった人に声をかけて、全員が承諾したことから、湯木尚二は人望が厚く、腕は確かだったんですね。
そうでないと、食品偽装事件を起こした船場吉兆の経営者一族に「また一緒にやらないか?」と誘われてOKする人はいないでしょうから。
2020年にNHKの「逆転人生」にも出演していました。
船場吉兆の食品偽装事件とささやき女将の会見のまとめ
船場吉兆の食品偽装事件、ささやき女将が一躍有名になった会見、船場吉兆本店の場所の現在や湯木佐知子・旦那・長男・次男の現在をまとめました。
船場吉兆の会見は、食品偽装事件がかすんでしまうくらい、衝撃的でお笑いという面から見れば面白く、日本国民の記憶に残るものでした。
実は、船場吉兆の食品偽装事件が起こった2007年はミートホープや白い恋人、赤福などの偽装も発覚した年です。
船場吉兆をはじめとする食品偽装事件で、日本は食品の安全に対する意識がさらに高まったように思います。