神世界という宗教団体をご存じですか?神世界は霊感商法で事件を起こし、社会問題となりました。
神世界事件の詳細や霊感商法の手口、教祖の斎藤亨について、教祖の裁判や判決と現在をまとめました。
この記事の目次
神世界は霊感商法の宗教団体
神世界は霊感商法で教祖や幹部が逮捕された宗教団体です。
神世界は2000年に設立された有限会社です。もともとは千手観音教会という宗教組織の事業部が独立して、神世界を作りました。
山梨県甲斐市に本部を置いていて、登記簿には次のように記されていました。
代表取締役:日原 易子
取締役:斉藤 亨
取締役:斉藤 葉子
取締役:飯窪 参希江
また、神世界の傘下として、次のような有限会社を作っています。
・えんとらんすわーるどヒルズ
・えんとらんすアカサカ
・スリートゥー1
・みろく
・びびっどとうきょう
神世界にこれらの傘下企業を加えて、「神世界グループ」と称し、全国に130ヶ所以上にヒーリングサロンを所有していました。
このヒーリングサロンで体調不良や悩みを取り除く霊的治療と称して、相談料や礼金、高額な商品を売りつけるなどの霊感商法を行い、神世界は被害者数千人・被害総額100億円という大規模な詐欺事件を起こして、教祖や幹部たちが逮捕されました。
神世界事件の詳細
霊感商法詐欺の発覚
神世界は宗教団体の「千手観音教会」を母体として、2000年に誕生した有限会社です。翌年にはえんとらんすやびびっどとうきょうなどの傘下企業も誕生しています。その後、全国にヒーリングサロンを立ち上げて、「ココロ&カラダをデトックスでスッキリ」などと銘打って、参加者を集めていきました。
この神世界のヒーリングサロンは、最初は「体験ヒーリング1000円」と入りやすい値段設定にしていましたが、参加回数を重ねていくうちに、宗教行事への参加を促されたり、宗教関係の高額商品を買わされたりして、いつの間にか数百万円のお金を神世界に貢ぐことになっていました。
この神世界による霊感商法が初めて報じられたのは2003年です。2003年に「女性セブン」が三田佳子の旧宅(息子の高橋祐也が薬物パーティーを開いた家)を神世界が購入して、そこでヒーリングサロンを行っていると報じられました。
その後、2005年ごろから2ちゃんねるなどのインターネット掲示板で神世界が霊感商法を行っていることなどの告発が相次ぐようになりました。また、この頃には神世界の霊感商法の手口をまとめたサイトもできています。
しかし、その後も神世界や傘下企業によるヒーリングサロンでの霊感商法は行われていましたが、2009年5月になって、ようやく被害者らが神世界に対して損害賠償請求の裁判を起こします。この時の弁護団の代表弁護士はオウム真理教や統一教会など問題でも活躍した紀藤正樹弁護士でした。
それでも、警察はなかなか神世界の中枢にはなかなか踏み込むことができず、2011年になってようやく霊感商法による詐欺罪で神世界の教祖や幹部に逮捕状が出ました。
教祖や幹部の逃亡と逮捕
まず、逮捕されたのはえんとらんすの幹部でした。そして、神奈川県警は2011年8月17日に神世界の教祖の斉藤亨と幹部3名(斉藤葉子、日原易子、宮入参希江)に対して、逮捕状を取りました。
しかし、逮捕の動きを察知した4人はそれぞれがバラバラに逃亡します。そのような中で最初に逮捕されたのは、教祖の妻であり神世界の取締役だった斉藤葉子でした。斉藤葉子は12日間逃亡していましたが、所持金がなくなったのか8月29日に出頭しています。
その後に宮入参希江が9月1日に出頭しています。残るは、教祖の斉藤亨と母親の日原易子です。9月11日の夜に「神世界関係者が大阪のウィークリーマンションを9月12日から借りる契約をしている」という情報が入りました。
警察関係者がそのウィークリーマンションを張り込んでいると、夜になって教祖の斉藤亨が現れて、逮捕となりました。逮捕時に教祖の斉藤亨はスポーツバッグを持っていましたが、スポーツバッグの中には札束がぎっしり詰まっていて、その金額は1200万円も会ったとのことです。
現役警察官や准教授の関与
この神世界事件が大きく報じられた理由の1つに、現役の警察官・現役の国立大学の准教授が神世界事件にかかわっていたことがあります。
2007年12月に神奈川県警の警備課長をしていた吉田澄雄警視が、勤務中に神世界関係の副業をしていて、しかも部下を勧誘して約400万円の報酬を得ていました。このことで複数の地方公務員法違反があったとして、2008年に懲戒免職になっています。
この元警視は、教祖の斉藤亨に逮捕状が出て逃亡している時に、逃亡の手助けをしていました。教祖が逮捕されたウィークリーマンションの近くで、この元警視が捜査員に目撃されています。このことで、元警視は犯人隠避容疑で逮捕されています。
また、2008年に北海道大学の准教授が神世界の運営にかかわっていたことが発覚しています。北海道大学の竹市幸子准教授は、自宅マンションを神世界に提供してヒーリングサロンとして使わせていました。
北海道大学はこの准教授に対して、諭旨解雇処分としています。
現職の警察官(しかも幹部階級の警視)と旧帝大の国立大学である北海道大学の准教授が神世界にかかわっていて、同僚・部下を勧誘していたということに、世間は大きな衝撃を受けました。
神世界の霊感商法の手口
神世界の霊感商法は、「宗教団体」ということを隠して行われました。1990年代は統一教会による霊感商法やオウム真理教による地下鉄サリン事件などのカルト宗教の問題が大きく報じられました。
また、ほかのカルト宗教による統一教会のやり方を真似た霊感商法がたくさん出現していましたので、みんなカルト宗教・霊感商法には危機感を持っていました。
そのため、神世界は宗教であることをできるだけ隠して、霊感商法を行っていました。神世界の霊感商法の手口は次のようなものです。
・ターゲットを女性に絞る
・高級住宅街や高級マンションなどでヒーリングサロンを開く」
・手作りのチラシや素人っぽさを残したホームページで宣伝する
・「占い」、「癒し」、「セラピー」、「リラクゼーション」など若い女性が好きそうなものを前面に押し出す
・初回の体験ヒーリングは1,000円と安くする
神世界は女性にターゲットを絞っています。これは、女性のほうが占いやセラピー、ヒーリングなどが好きで、洗脳しやすいと考えていたのかもしれません。
また、神世界は「高級だけど身近な感じ」を大切にしていました。神世界は高級住宅街や高級マンションにサロンを開きましたが、「高級なセレブ感」を出し過ぎるのではなく、チラシやホームページでは素人っぽさを出死すことで、「高級だけど身近な感じ」を出して、さらに最初は料金を安くすることで、初回のハードルを下げて地域の主婦が来やすいようにしていました。
さらに「ヒーリングを受けている間は子供を預かります」とチラシ等で宣伝して、主婦層を取り込んでいきました。
また、神世界の霊感商法がうまかったのは、信者に勧誘させるのではなく、地域の口コミを効果的に利用したことです。信者に勧誘させると敬遠されがちですが、口コミを利用することで、「それなら行ってみようかな?」と思わせて、お客さんを引き込んでいったのです。
一度、ヒーリングサロンに来店させたら、あとはコールド・リーディング(スタッフが客を観察したり、雑談する中から情報を聞き出す)やホット・リーディング(事前に客のことを内緒で調査して情報を得ておく)を使って、ズバッとその人の悩みや家庭環境等を言い当てて、客の心をつかみ、マインドコントロールをしていきました。
そして、マインドコントロールができたタイミングで、宗教儀式に使うものやライセンス(お守り)などの各種グッズを売りつけたり、祈願を実施して法外な祈願料を実施するなどして、どんどんお金を引き出すという手口を使っています。
また、神奈川県警の警視や北海道大学の准教授など社会的な信用がある人達の存在を利用して、「この人もやっているから、信用できる」と思わせていました。
神世界の教祖は斉藤享
神世界の教祖は斉藤亨です。斉藤亨はもともとは、岡田茂吉が始めた世界救世教の信者でした。
両親が千手観音教会を立ち上げた
教祖の斉藤亨は、1957年10月28日に生まれます。東京都内の大学に進学しますが、中退して、山梨県にある知人が経営する食品会社に勤務していました。
斉藤亨と父親と母親は、もともとは世界救世教の信者でした。しかし、世界救世教は分裂騒動があり、その中で1987年に斉藤亨の父親が世界救世教から独立して、千手観音教会を作り、斉藤亨は千手観音教会の信者となります。
斉藤亨の父親は山梨県警の警察官をしていた人物で、警察を退官した後に千手観音教会を立ち上げています。
そして、2000年に斉藤亨は千手観音教会から独立する形で、神世界を立ち上げました。神世界の教祖となった斉藤亨は「動物性たんぱく質は毒素」と言っていたようですが、実際は高級すし店に行っていたという証言もあります。
神世界のトップ
神世界の教祖は斉藤亨です。登記簿では、代表取締役は日原易子となっていて、斉藤亨は取締役ですので、トップには見えません。
取締役:斉藤 亨
取締役:斉藤 葉子
取締役:飯窪 参希江
しかし、代表取締役の日原易子は斉藤亨の妻(斉藤葉子)の母親であり、実権は斉藤亨が握っていました。
彼女は式典などに出席して神事めいたことなども行っているがどちらかというと象徴的存在でしかなく、神世界の実権は教主斉藤亨が握っている。
引用:神世界組織の実態
斉藤亨は神世界の中では「教主」という地位についていました。
パクリ疑惑がある
教祖の斉藤亨は、もともとは世界救世教の信者でしたが、世界救世教を始めた岡田茂吉のパクリをしていたという噂があります。
岡田茂吉が描いた「聖観音像」と神世界の教祖である斉藤亨が描いた中級ライセンスの観音像がそっくりなんです。もちろん、描いたのは岡田茂吉のほうが数十年も前のこと。斉藤亨はパクったと考えるのが自然です。
それ以外にも斉藤亨は岡田茂吉の絵をパクっています。パクったものを法外な値段で信者に売りつけるなんて、あくどい商売です。
神世界は宗教団体だが・・・
神世界は宗教団体です。でも、都合に合わせて宗教団体であることを隠したり、宗教団体であることを前面に押し出したりしていました。
宗教法人ではない
神世界は「有限会社」です。つまり、登記簿上は「宗教法人」ではなく、ただの一般企業としていたんです。また、神世界の傘下である「えんとらんすわーるどヒルズ」、「えんとらんすアカサカ」、「スリートゥー1」、「みろく」、「びびっどとうきょう」も有限会社です。
有限会社にした理由は、宗教色を消して、霊感商法をやりやすくするためと思われます。「宗教法人」とすると、一般人には警戒されますが、有限会社ならばただの企業だと思って、警戒が薄まります。
また、宗教法人にするよりも有限会社にして、さらに傘下企業を作って組織を複雑化することで、組織をわかりにくくして実態をつかませないようにし、もし警察の手が伸びても、トカゲのシッポ切りができるようにしていたと思われます。
宗教団体と企業をうまく使い分け
神世界は宗教団体と企業をうまく使い分けていました。ヒーリングサロンで霊感商法をする時には、有限会社を隠れ蓑にして宗教団体であることをうまく隠していました。
霊感商法で告発された時には、神世界は「あくまで会社組織であり宗教団体ではない」と主張していました。しかし、教祖の斉藤亨や幹部が逮捕された時には、宗教団体であることを認めて、一連の活動は霊感商法ではなく、「宗教活動として同意の上での契約」と主張しました。
自分たちにとって都合に合わせて、「会社です」と言ったり、「宗教団体です」と言ったり、都合よく使い分けていたんですね。
神世界と教祖は昼ドラ系宗教?
神世界と傘下の企業は、一族経営の企業でした。
逮捕時、教祖の斉藤亨と斉藤葉子は夫婦関係でしたが、2人が結婚したのは神世界が設立されてからの事になります。
もともとは斉藤葉子と傘下企業(えんとらんすワールド)の取締役である佐野孝が夫婦でした。しかし、2003年ごろに、斉藤葉子と佐野孝は離婚します。そして、その11日後に佐野孝は佐野りらと再婚します。ちなみに、佐野りらは結婚当時19歳で佐野孝の14歳年下でした。
もうこの時点で結構ヤバいのですが、離婚した斉藤葉子は、佐野孝との間にできた子供3人を連れて、教祖の斉藤亨と6ヶ月後に再婚します(女性は離婚から6ヶ月経たないと再婚できない)。
そして、斉藤亨と斎藤葉子の間には子供が2人できますが、最初の子供が生まれた時期から換算すると、斉藤亨と斉藤葉子は、葉子の離婚前から関係を持っていたと思われます。
この教祖とその妻周辺の恋愛・結婚関係は、まるで昼ドラのようにドロドロしているんです。
神世界事件の裁判の判決
神世界事件では、教祖の斉藤亨らは2011年に逮捕されています。そして、2011年5月に横浜地裁で斉藤亨に懲役5年の実刑判決を言い渡しています。
その後、教祖の斉藤亨はすぐに控訴していますが、高裁では4年6ヶ月の実刑判決となり、2013年6月には上告棄却で、「懲役4年6ヶ月」の実刑判決が確定しました。
この神世界事件で実刑判決を受けたのは、教祖の斉藤亨だけです。
・杉本明枝(サロン経営):懲役3年執行猶予5年
・佐野孝(えんとらんすワールド取締役):懲役3年執行猶予5年
・淺原史利(えんとらんすアカサカ代表取締役):懲役2年6ヶ月(執行猶予4年)
・淺原嘉子(えんとらんすアカサカ取締役):懲役2年6ヶ月(執行猶予4年)
神世界事件で実刑判決を受けた教祖の斉藤亨は泣きべそをかいていたそうです。
閉廷後、傍聴人が立ち去ってから着席を許された斉藤被告は、被告人席でさらに涙を流し、声も出さずに泣きべそをかいていました。悔しさや反省の表情というより、先生に怒られた小学生が泣きじゃくっているかのような、泣きべそとしか言いようのない表情でした。
霊感商法で100億円もだまし取っておきながら、泣きべそをかくなんて、被害者の方たちはやり切れないものを感じていたはずです。
神世界の現在
神世界は現在、解散しているので消滅しています。教祖の斉藤亨らは、2012年3月22日に「神世界解散宣言」を出しました。
その後、教祖は4年半は刑務所の中にいましたが、現在はすでに出所しているはずです。神世界事件が発覚したころは、残党たちがまた活動するのでは?斉藤亨が出所したらまた神世界は復活するのでは?と言われていました。
教祖が出所してからすでに5年以上が経過していますが、まだ神世界復活の情報はありませんので、今後も復活しない可能性が高いと思われます。
しかし、懸念点は斉藤亨は2022年時点でまだ64歳ということです。64歳であれば、ここからもう一花咲かせようとするかもしれません・・・。
神世界のまとめ
神世界事件の詳細と霊感商法の手口や宗教と企業の使い分け、教祖の斉藤亨の裁判の判決と現在をまとめました。
いつどこに霊感商法やカルト宗教が潜んでいるかはわかりません。私たちは冷静に判断して、だまされないようにしたいですね。