ある日、突然完成間近のダムが決壊したらどうなるでしょうか?ダムに貯められた水は一気に放流され、下流の町・村は水没し、甚大な被害が出ます。それが、2018年7月23日にラオスで起こりました。
これは、自然災害(事故)ではなく、韓国の企業の手抜き工事に原因があると言われています。
ラオスのダム決壊事故の概要や経緯、被害状況、原因が韓国にあるとされる理由、日本のせいという噂、海外の反応や現在を説明していきます。
この記事の目次
ラオスのダム決壊事故とは
出典:asahi.com
ラオスのダム決壊事故は、2018年7月23日にラオス南部のチャムパサック県パクソン郡のホアイマクチャン川、セーピアン川、セーナムノイ川に建設中だったダムが決壊し、アッタプー県サナームサイ郡が水没して、甚大な被害を出した事故です。
決壊したダムの正式名称は「セーピアン・セーナムノイダム」と言います。このダムは、韓国企業、タイ企業、ラオス国営企業の共同出資で建設が進められてきました。
このダムはラオスの豊富な水源を利用して水力発電を行い、ラオスの経済成長のために作られるはずだったもので、このダムで発電した発電量の9割をタイに輸出する計画でした。
ラオス・タイ・韓国企業の合弁企業が建設し、完成後は32年間、その企業が操業し、その後はラオス政府に移管される予定でした。
しかし、工事の進捗度が92.5%となり、完成間近となった2018年7月23日にダムの亀裂が入り決壊して、50億立方メートルの水が放出されることになりました。
50億立方メートルとはどのくらい?
ラオスのダム決壊事故で放出された水は50億立方メートルで下。50億立方メートルと言われても、正直どのくらいの水の量なのかはわかりませんよね。
50億立方メートルとは、どのくらいでしょうか?
・東京ドーム=124万立方メートル
・黒部ダム=2億立方メートル
これを考えると、50億立方メートルは・・・
・東京ドームの4032倍分
・黒部ダムの25倍分
ラオスのダム決壊事故は、これだけの水が一気に放出されたということになります。
ラオスのダム決壊事故の経緯
ラオスのダム決壊事故の経緯を7月20日~7月24日まで時系列で見ていきましょう。
7月20日
出典:twitter.com
台風9号(熱帯台風)のせいで、ラオス南部は豪雨が降っていました。セーピアン・セーナムノイダムの補助ダムのうち、1ヶ所で11センチ沈下しているのが発見されます。
7月22日
大雨は降り続き、7月22日の午後9時ごろに副ダムの1つで上部が押し流されているのが発見されます。復旧を試みるものの、大雨の影響でうまくいきませんでした。
このダムを建設していたSK建設は、この事実を当局に報告します。
7月23日
7月23日の午前3時ごろ、上部が押し流されている副ダムの水位を下げるために、ダムから放流を開始します。
その後、住民に正式な避難命令が出ます。午後11時には1mの沈下が認められ、同日18時頃にダムの亀裂が大きくなり、20時にダムが決壊しました。
7月24日
出典:cnn.co.jp
ダムの決壊から5時間半後の午前1時30分に決壊したダムの周辺の村は冠水します。さらに午前9時30分までにアッタプー県サナームサイ郡の7つの村が冠水しました。
ラオスのダム決壊事故の被害状況
ダムが決壊し、50億立方メートルの水が放流されたことで、ラオス南部は甚大な被害が出ています。具体的な被害状況を見ていきましょう。
71人が死亡・行方不明
出典:readyfor.jp
ラオスのダム決壊事故で、避難が進まなかったために、71人が死亡または行方不明となっています。この「71人」というう数字はラオス政府が発表しているものですし、現地調査を行った特定非営利活動法人 メコン・ウォッチも、死亡・行方不明者は71人で確認が取れているとしています。
しかし、海外メディアでは死亡・行方不明者はさらに多いことと報道しています。BBCは7月27日の報道では、地元住民によると、死者は300人に上る可能性があると伝えています。また、7月29日のアルジャジーラの報道では行方不明者は1100人以上であるとしています。
また、村が冠水したことで14000名で家や農地の被害を受けたと言われています。
甚大な農地被害
出典:zapzapjp.com
多くの死亡者・行方不明者を出し、さらに家を失った人も多いラオスのダム決壊事故ですが、農地への被害も甚大でした。
被害を受けたラオス南部の地域は、米作が盛んに行われていました。そして、その農地がこのダム決壊事故によって、冠水してしまったんです。冠水した面積は、合計で62560ヘクタールとなります。
被害の大きかったカムムアン県では3万5000ヘクタール以上の水田に被害がおよび、サワンナケート県では2万7560ヘクタール以上の農地が水没したという。3万5000ヘクタールといえば、東京ドーム約7485個分にあたる。
引用:ラオス国民が韓国企業に怒り“暴発”寸前 ダム決壊の死者34人に 「人災」の見方強まる (1/2ページ) – zakzak
3万5000ヘクタールで東京ドーム7485個分ですから、6万2560ヘクタールは東京ドーム13379個分となります。滋賀県の琵琶湖は東京ドーム14330個分ですから、ほぼ琵琶湖と同じ大きさの水田が水没してしまったということになります。
しかも、ほとんどの水田で田植えが終わっていたということですから、とんでもなく大きな被害となったことがわかります。
カンボジアにも被害が
出典:youtube.com
ラオス南部で起こったダム決壊事故は、ラオスに大きな被害をもたらしましたが、隣国のカンボジアにも被害が起こっています。このダム決壊事故でカンボジアは17つの村で洪水被害が起こり、5600人が避難することになりました。
隣国のカンボジアにまで洪水が起こることを考えると、いかにこのラオスの決壊事故が大事故だったのかがわかりますよね。
ラオスのダム決壊事故の原因は韓国にある?
ラオスのダム決壊事故の原因はどこにあるのでしょうか?ダム建設を主導していた韓国のSK建設の主張と事故原因究明のための独立専門委員会の主張が食い違っているのです。
ラオスのダム決壊事故は韓国側は大雨が原因と主張
韓国のSK建設が主張するラオスのダム決壊事故の原因は、大雨です。2018年7月23日当時、熱帯台風の影響で、ラオスでは大雨が降っていました。
予想以上の大雨が降っていたため、ダムの貯水量を越えてしまい、そのためにダムは決壊したと主張しているんです。
独立専門委員会は原因は「不可抗力とはみなせない」と結論
このラオスのダム決壊事故の原因を解明するために、国際大ダム会議(ICOLD)の代表者らで構成された独立専門員会が設置され、独立した立場からダムの決壊事故の原因が追究されました。
2019年5月にこの独立専門委員会は「不可抗力と見なすことはできない」と結論付けました。つまり、大雨が降り続いたことでダムが決壊したのではなく、ダムの建設工程の中に原因がある、人為的な原因があると結論を出したというわけです。
専門家委は「決壊前の数日の雨量がかなり多かったとしても貯水量は上限を下回っていた」と報告した。根本的な原因は水漏れによる基礎の浸食と軟化だとして、不可抗力とは見なせないとした。
ダムから亀裂が入って水漏れができた。そして、そこからダムの基礎部分が侵食して軟化したため決壊したようです。
それにしても、貯水量は設計上の上限を下回っていて、それでも決壊したのに、「大雨が降り続いたから」と主張するというのは、自分たちのミスを認めているようなものだと思うのですが、SK建設はどう考えて、「大雨が降り続いたから」と主張しているのでしょうか。
ラオスのダム決壊事故の原因
ラオスのダム決壊事故は、独立専門委員会は「不可抗力と見なすことはできない」と結論付けています。では、なぜ水漏れして基礎の浸食と軟化が起こったのでしょうか?そこの具体的な部分を見ていきましょう。
決壊したのは利益重視の設計変更?
出典:jiji.com
韓国メディアが報じたところによると、このラオスのダム建設は途中で設計が変更されたとしています。この設計が変更された予算を削るためです。
SK建設がダム建設のための予算をカットし、その分の浮いたお金を自分たちの懐に入れようとしていた。そして、設計変更を通じて過度の利益を得ようとしたようです。
つまり、自分たちの利益を少しでも大きくするために、ラオスのダム建設は手抜き工事になったというわけですね。SK建設が担当した補助ダムの高さは、最初の設計図よりも平均6.5mも低くなっていたそうです。
また、海外メディアは、原因について次のように報じています。
欧米メディアは「欠陥・手抜き工事」の可能性を報じ、工法自体への疑問も浮上している。このダムはアースダム方式と呼ばれ、ダムの形式として最も古い土でできたダムで、「地震で壊れてしまう可能性がある」「洪水時の異常出水で越水して決壊してしまう可能性がある」のは業界の常識とも言われる。
独立専門家委員会の見解を見ても、韓国のSK建設の手抜き工事が直接的な原因だったというのは、信憑性が高いと思います。
避難指示が遅れたことが原因で被害が増大
出典:jp.yna.co.kr
このラオスのダム決壊事故は甚大な被害をもたらしました。これだけ大きな被害になったのは、避難指示が遅れたことにあるとされています。
田植えの時期であり、田んぼ近くの仮住居のような場所にいた人も多く、なかなか避難指示が行き届かなかったというのもあると思います。それを差し引いても、あまりにも避難指示が遅かったと言わざるを得ません。
なぜなら、韓国人職員53人は全員早い段階で避難していたようだからです。7月20日の時点で11センチの沈下が認められ、ダム決壊の兆候は出ていました。
しかし、その段階ではラオス側に決壊のリスクは伝えられていなかったようなんです。Wkipediaによると、7月22日の時点でSK建設がラオス当局に決壊のリスクを伝え、地域住民の避難が開始されたとしています。
でも、ダムから数キロ離れた住民が避難指示を聞いたのは、24日の昼頃です。
ダムから数キロ離れた村に住んでいたイーさんは24日昼ごろ、近くの村の人から「下流の村が水で埋まった。すぐ逃げろ」との知らせを受けた。
情報を持っていた韓国人は早い段階で避難できたけれど、ラオス住民には避難指示がなかなか出なかったことが、被害が大きくなった原因であることは間違いないでしょう。
ラオスのダム決壊事故は日本のせい!?ラオスのせい!?
韓国のSK企業の手抜き工事がラオスのダム決壊事故の原因と言われていますが、韓国側は「ダム決壊は日本のせい!」、「ラオスのせい!」と言い出しているようなんです。
韓国は日本のせいと言い始める
出典:sankei.com
この決壊したラオスのダム建設には、日本も日本の企業も関わっていません。でも、一部の韓国メディアでは、「今回のダム決壊事故は日本のせいだ!」と報じています。
「突然、韓国のネット上で『工事で使った設計図は日本のものだ』『決壊した部分は日本の業者が工事した』という情報が流され、『すべて日本が悪い』という世論操作が始まっている」
引用:【スクープ最前線】手抜き、逃げ出し…ラオス・ダム決壊は韓国経済“破綻の引き金” 海外受注は激減濃厚 「日本より安く、短期で」と強引に… (2/2ページ) – zakzak
これは、今回のラオスのダム建設は韓国のSK建設だけでなく、韓国政府機関も出資していて、その責任が韓国政府にもあるとなると、政権を存続できなくなるため、世論捜査をして、責任を日本に向けようとしているというわけです。
このように日本に責任を擦り付けようとするのは、ラオスのダム決壊事故だけでなく、セウォル号沈没事故でも行われたことです。
ラオスのせいと責任を押し付ける
出典:kjclub.com
韓国は日本のせいにするだけでなく、ラオスのせいにもしています。韓国のSK建設は、事故の原因は次のように指摘しているんです。
工事を請け負っていた韓国SK建設が調査報告で「ラオス側の対応が被害拡大の原因」との見解を示したことを報じた。(中略)「当局や現地住民の事故抑止意識の低さが大きな被害につながった」
要するに、「僕たちは悪くない。ラオスの人たちが早く逃げないから、これだけ大きな被害になったんだ。ちなみに、ダムが決壊したのは大雨が降ったから」と主張しているというわけですね。
ラオスのダム決壊事故の海外の反応
ラオスのダム決壊事故の海外の反応を見ていきましょう。この事故は、世界的にも大きな事故として報じられました。
支援状況
出典:facebook.com
ラオスのダム決壊事故では甚大な被害が出たため、世界各国がラオスと被災者に支援の手を差し伸べました。
海外の主な支援状況を紹介します。
・韓国:緊急救護隊や支援物資
・中国:医療隊を派遣
・シンガポール:民間防衛隊と10万ドル
・タイ:募金6289万バーツを寄付
・ロシア:支援物資
・アメリカ:シェルターキット250世帯分を寄付
・オーストラリア:300万ドルを支援
このほか日本の日清食品などがカップヌードルを1万食寄付するなど、民間でもラオスへの支援を行っています。
日本への海外の反応
ダムの決壊事故が起こった2日後に支援を発表した日本に対して、Facecbookから海外の反応を翻訳してご紹介します。
・韓国政府は静かなままで支援してくれない
・ラオスを助けてくれてありがとう!
・日本に感謝します
・迅速な支援に感謝します!ありがとう!
・日本も自然災害が多くて大変なのに支援してくれてありがとう!
諸外国の中でもいち早く支援を表明した日本に対して、感謝の述べる海外の反応が多かったです。
韓国への反応
出典:zakzak.co.jp
次に、韓国への反応も見ていきましょう。ダムの決壊原因を大雨のせいにして、さらには日本やラオスへ責任を擦り付けようとした韓国への反応をYoutubeのコメント欄から拾って翻訳しました。
・韓国にダム建設を任せたのが間違いだった
・韓国はダム建設の建設がなかった
・韓国が作ったパラオの橋もすぐに崩れた
・韓国のSK建設は工期を短縮するとボーナスを貰えるらしい
ラオスのダム決壊事故の現在
出典:ameblo.jp
ラオスのダム決壊事故は人為的な手抜き工事が原因とほぼ結論づけられています。そして、韓国の報道によると、2019年3月からSK建設による工事が再開されています。
基本的にダムの建設は全部やり直しとのことです。2019年2月に報道された時点では、3月から工事再開予定で、2019年末には工事が終わり、発電が始まるとのことですが、現時点でどうなっているかは不明なままです。
ただ、ダム自体は完成したとしても、水害の被害を受けた村ではまだ復旧が進まず、農業を始めることができないし、農薬被害の懸念もあるとのことです。
また、事故から1年経ってからでも、まだ仮設住宅やプレハブで暮らす人が4500人以上いますので、まだまだ復興には時間がかかるでしょう。
ラオスのダム決壊事故のまとめ
ラオスのダム決壊事故の概要や経緯、原因や韓国の主張、日本のせいなのかどうか、海外の反応や現在をまとめましたが、いかがでしたか?
・14000人以上が被災した
・原因は韓国企業の手抜き工事
・韓国は日本のせい・ラオスのせいと言っている
もう2度とこのような悲劇が起こらないように、企業にはしっかりとした工事をしてもらいたいですね。