YOU THE ROCKのプロフィール

1990年代後半の日本におけるヒップホップの黎明期を支えたYOU THE ROCKさんは、音楽関係者からは、親しみと尊敬の念を込めて「YTR兄貴」という名前で呼ばれています。

そんなYOU THE ROCKさんは、長野県に生まれ、両親が教育熱心であったことから、信州大学付属の長野小学校、長野中学校とエスカレーター式に進むことを期待されて育ちました。

YOU THE ROCKさんが語るには、私立大学付属の学校でもかなり校則が自由で、テストも成績表も制服も無いという一風変わった学校だったんだとか。

ヒップホップとの出会いは、小学生の頃だったそうです。

YOU THE ROCKの若い頃①　ヒップホップとの出会い～上京

比較的自由な校則の学校で育ったYOU THE ROCKさんは、未知のジャンルのヒップホップと出会うと、瞬く間に夢中になりました。

しかし、貪るように音楽の情報を知りたいと思っても当時は、インターネットが無かったことで圧倒的に情報収集という面では不利な世の中でした。

それでも諦めることなく情熱を傾け続けた若い頃の、YOU THE ROCKさんが上京に至った軌跡を見てみましょう。

衝撃を受けた10歳の出会い

人生で初めてラップを聞いたのは、小学校5年生の頃でした。

当時流行っていたラジオ番組「とんねるずのオールナイトニッポン」を聴こうと波長のチューニングをしていたところ、他局に切り替わり、偶然流れていたラップが聞こえて来たのです。

その楽曲は「Holiday Rap」というタイトルだったそうで、真っ先に「なんだこれは!?」と衝撃を受けて、それ以降ヒップホップに夢中になったそうです。

当時の日本においては、このジャンルの音楽が浸透しておらず、唯一ヒップホップを聴けるのは「ナウ・ゲリラ」という名前のラジオ番組でした。

しかし、YOU THE ROCKさんの自宅から受信できず、あちこちを歩き回って山の上であれば視聴可能であると発見してからは、ラジオが始まる時間になると山に登る日々を送り始めました。

14歳で上京を決意

YOU THE ROCKさんが中学生になると、徐々に東京ではラップが浸透し始めて、藤原ひろしさんや近田春男さんなど、第1人者と呼ばれる人たちが、その世界で頭角を現し始めました。

ラッパーになりたいと周囲に語っても、誰1人理解してくれる人がいなかった上、父親から特に反対されたことで、14歳にして中学卒業後は自立して上京すると決意を固め、実行しました。

しかし、15歳で上京したものの、憧れていたクラブには年齢制限に引っ掛かり入ることも叶わなかったそう。扉に耳を付けて、音楽を少しでも取り入れたいと必死になっていたそうです。

YOU THE ROCKの若い頃②　挫折だらけ

親の反対を押し切り、中学卒業後に上京したYOU THE ROCKさん。

そこに待っていたのは、思い描いた成功とは程遠く、様々な苦労が待ち受けていたのです。

ここでは、上京後のYOU THE ROCKさんを見ていきます。

アルバイトをしながら猛特訓

DJバーで働けることになったYOU THE ROCKさんですが、生活費を賄える程稼げる状態ではありませんでした。

アルバイトを掛け持ちしながらも、ラップの練習を「喉から出血するほどやってコンテストに応募を続けてきた」と、ラップと真剣に向き合ってきたようです。

生活が苦しく、お風呂のある部屋を借りることが出来なかったので、もっぱらアルバイト先のDJバーの台所で体を洗っていたんだとか。

日中はレコード屋の店員、夜はDJバーで働き、朝になるとファミリーレストランで働くという寝食を削る暮らしでした。

デビューするも鳴かず飛ばず

数々のオーディションを受ける中で、徐々に実力を認められていったYOU THE ROCKさんは、外国人アーティストが行うイベントの前座のパフォーマンスを任されるようになりました。

しかし、当時は日本語のラップを受け入れてもらうことが難しく、観客から物を投げつけられるなど、パフォーマンスを披露するには、過酷な状況でした。

1993年、YOU THE ROCKさんはコロンビアレコードからメジャーデビューを果たしています。

しかし、当時の日本は、まだヒップホップ自体が全く受けず、デビュー後も不遇の時代を送っています。

同様に、ラップ仲間達も不遇な状況であったことからYOU THE ROCKさんは、「このままでは良くない」と対策を練りました。

イベントの企画が打開策の始まり

アルバイト先のクラブで、1番客が少ない月曜日に、店にヒップホップ仲間を集めて「ブラックマンデー」というイベントを企画し、毎週開催を続けてきました。

始めたばかりの頃は、仲間の彼女が客として数人入るくらいで、閑散としていました。

そんな不遇街道を進んでいると、世の中で突如ラップが流行り始めたことで、テレビ東京の音楽番組「ASAYAN」から取材が入るようになり、ラップ大会番組へ出演オファーが入ったのです。

テレビに出演にあたり、仲間と即興で作ったヒップホップユニット「雷」は、圧倒的な実力の差で高いパフォーマンスを見せつけ、優勝を勝ち取りました。

YOU THE ROCKの若い頃③　スターへの道

YOU THE ROCKさんが参加した大会で優勝した後から、少しずつ変化が起こり始めています。

スターへの軌跡を追っていくことにしましょう。

人気の渦を作りだしたのはYOU THE ROCKだった

ブラックマンデーのイベントの来客数が多くなり、YOU THE ROCKさんが働いていたクラブで収容しきれなくなるほどに。

そして、別の広い会場で開催するようになり、口コミでさらに客が増えるという良い流れができていきました。

ブラックマンデーという自嘲的な名前から始まったこのイベントは、その後「熱帯雨林」と改名し、関係者が増えていきましたが、その中心メンバーだったのがYOU THE ROCKさんでした。

さらに、現在は亡き漫画家の中尊寺ゆっこさんが「雷」のイベントを見に来た際、パフォーマンスを気に入ったようで、「力になりたい」という申し出があったそうです。

YOU THE ROCKさんは、「FMでヒップホップ専門の番組が作りたい」との願いが叶い、1995年から深夜番組ながら番組を持つ事に成功しました。

日比谷野外音楽堂で伝説のイベント

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1996年には、日比谷野外音楽堂において、日本語ラップ最大規模のイベント「さんピンCAMP」にこぎ着けますが、始まる前は人が集まるのか、疑問をぬぐい切れなかったそうです。

そんな心配をよそに、会場に次々に人が集まり、3200人を超える観客とラッパーとの一体感が後に「伝説」と言われる程、熱気のあるイベントになりました。

突然の変化に気持ちが追い付かない日々

伝説のイベント「さんピンCAMP」を境にして突然、売れっ子になったYOU THE ROCKさんは、大いに困惑したそうです。

街を歩けばファンから握手を求められ、「YOU THE ROCKみたいになりたい」と熱烈な歓迎を受けるようになりました。

自宅に帰れば、留守番電話には毎日40件以上の仕事のオファーに関する電話連絡が入っていました。

嬉しいと言うよりも、日々の仕事をこなすだけで精一杯で、人気者という感覚がまだ無かったようです。

後年、YOU THE ROCKさんは当時を振り返り、「名前だけが1人歩きをしていた状態だった」と、ブレイクに対して冷静に語っています。

その後、レコード会社と契約を結び、マネジメント業務を任せて一定金額の収入を得る見込みが立って初めて、スターになったことを実感するようになったそうです。

テレビ出演でお茶の間の顔に

一気にブレイクしたYOU THE ROCKさんは、2000年頃からテレビに出演するようになりました。

元からトーク力もあったことから、バラエティ番組で司会を行ったり、ユニクロなどの大手企業のCMに出演しています。

CMそのものではありませんが、CM等のナレーションに声の担当として数々の作品に登場しているのです。

また、フジテレビの長寿番組「笑っていいとも」のテレホンショッキングのコーナーにも登場しています。

MCのタモリさんからは、「相当ウルサイのが来るよ」と前置きされた上で登場したYOU THE ROCKさんは、次々に面白いエピソードを披露して観客を惹きつけていました。

さらに、テレビドラマに端役ではありますが、TBSの連続ドラマ『タイガー&ドラゴン』や、NHKの月曜ドラマシリーズ『結婚泥棒』に俳優として出演しています。

当然、ラッパーとして音楽番組「DTV-Neo」「U-CDTV」に出演も果たし、多才ぶりを発揮しました。

若い頃のYOU THE ROCKは最前線思考？

雑誌のインタビューでYOU THE ROCKさんは、将来について「ジジイになっても内田裕也さんのように最前線で頑張りたい」「40歳でも現役ラッパーであり続けたい」と答えています。

息の長いラッパーを目指していたことがうかがえますね。

YOU THE ROCKの嫁・緑川のりことは？

YOU THE ROCKさんは、既婚者です。嫁は元グラビアアイドルで緑川のりこさんといいます。

2人の間には、どのような経緯で結婚したのでしょうか。

嫁は緑川のりこ

緑川のりこさんは、セクシー系のグラビアアイドルとして活動していました。現在でもDVDや写真集を購入することが可能です。

学生の頃は、水泳部で体を鍛えていたようです。体が柔らかかったのか「股間の緑川」と呼ばれる程に開脚ポーズを取るシーンが多かったようです。

YOU THE ROCKさんとの結婚に至る馴れ初めや出会い、結婚した時期については不明ですが、結婚と同時に芸能界を引退しており、現在も復帰していません。

YOU THE ROCKと嫁・緑川のりことの子供とは？

YOU THE ROCKさんと嫁の緑川のりこさんとの間に、子供が生まれているという情報は見つかりませんでした。

数々のインタビューを受けてきたYOU THE ROCKさんですが、プライベートに関して話す機会が無く、意図して現在の生活にを晒さないように気を付けているのかもしれません。

YOU THE ROCKの逮捕歴とは？

YOU THE ROCKさんには、逮捕歴が2回あります。人気ラッパーの逮捕は、センセーショナルな事件として世間を騒がせました。

逮捕の経緯や、その後の裁判について調査しました。

大麻所持で2度に渡る逮捕

YOU THE ROCKさんは、2005年に大麻法取締法違反の容疑で逮捕されています。

この時には、執行猶予3年が付きました。

さらに2010年に再度、大麻取締法違反で神奈川県警に現行犯逮捕されており、ニュースに大きく取り上げられました。

情報提供者がいたことで、自宅に家宅捜査が入りました。プラスチックの入れ物などに入った大麻と吸引器が押収されています。

取り調べにおいて、YOU THE ROCKさんは容疑を認めました。

満たされない想いがあった？

YOU THE ROCKさんは、逮捕の数年前から、収入も仕事の件数も減って行くことに不安を抱いていたようです。

具体的には、過去に最も稼げていた時には月収4000万円という莫大な収入に恵まれていたそうですが、仕事の激減に伴い収入は、月1万程に落ち込みました。

将来に対する不安から、どうしても前向きになることが出来ずに大麻に手を出してしまったと供述しています。

実は、売れるようになった後もヒットソングに恵まれることがありませんでした。

名前だけが独り歩きをしていくことに焦りを感じたのか、「もう正直に言うと、ヒップホップを全然やれない、大嫌いなので」と、後ろ向きな発言が目立つようになっていきました。

反省の色が無かった

YOU THE ROCKさんの裁判には、嫁の緑川のりこさんが証人として呼ばれ、私生活について陳述しています。

収入が減ってからは、貯金を崩したり緑川のりこさんがファミリーレストランにアルバイトに行くことで生活費を賄いました。

YOU THE ROCKさんは引きこもりがちで、外出してもパチンコに行っていたと生活を暴かれています。

全く反省の色が見られないYOU THE ROCKさんの供述や再犯という事実は、裁判官の心象を悪くし、懲役8カ月の実刑判決が下りました。

そんなYOU THE ROCKさんの逮捕劇は、周囲に大きな影響を及ぼしています。

2010年の段階で、日本において初となるラップの学校「NIPPON RAP ACADEMY」が開校予定でした。

YOU THE ROCKさんは、校長のポジションを約束されていましたが、2回目の逮捕によって開校自体が白紙になっています。

YOU THE ROCKの現在

2回目の逮捕後、引退宣言をしていたYOU THE ROCKさんですが、懲役が明けた2011年5月、ラッパーとして渋谷のクラブにて復帰しています。

復帰はニュースでも取り上げられ、後日ラジオ番組の仕事をSHIBUYA-FMで請け負い、復活を宣言しました。

ファッション業界にも名乗りを上げる

芸能界に復帰したYOU THE ROCKさんは、これまでのブランクを物ともせず、新曲の発売や音楽フェスの司会業などでその名を轟かせています。

2014年からは、原宿のセレクトショップと協業して新しいブランドを立ち上げるなど、ファッション業界においても、センスの良さを存分に活かして活躍中です。

まとめ

YOU THE ROCKさんは、現在の日本においてヒップホップ業界を牽引するレジェンドと称えられる人物です。

小学生の頃に偶然ラジオ番組で流れたヒップホップに衝撃を受けてからは、毎日夢中でした。

中学校を卒業すると、高校へは進学せずに上京して、DJバーを始めとしたアルバイト掛け持ち生活を送りながら練習を積み重ね、いつしかイベントの企画も担当する器用さを見せました。

ラップ大会の優勝後から、あれよあれよと有名人への道を歩き始めましたが、数年後に仕事が少なくなっていきます。そして、将来に不安を覚えて麻薬に手を出し、2度逮捕されています。

1度は引退を宣言するも、2011年に復帰したYOU THE ROCKさんは、再びレジェンドとしての活躍が続くのか動向が注目されています。