アニメ「ポケットモンスター」での激しい点滅表現が原因で痙攣発作や意識障害が起こり約700名が病院に運ばれた「ポケモンショック」が話題です。
この記事では「ポケモンショック」の症状や、原因となったとされるピカチュウの映像、黒歴史にされたポリゴン、後遺症や死者などについてまとめました。
この記事の目次
ポケモンショックとは
「ポケモンショック」とは、1997年12月16日にテレビ東京系列で放送されたテレビアニメ「ポケットモンスター」の第38話「でんのうせんしポリゴン」(現在は封印作品となっている)を観た視聴者が「光過敏性発作」という症状を起こして病院に運ばれるなどした放送事故・事件です。
子供を中心に多数の被害者を出した事で社会現象になりました。
なお、「ポケモンショック」というのはあくまで俗称であり、他にも「ポケモンパニック」や「ポケモンフラッシュ」、この話数でメインキャラとして登場したポケモンが「ポリゴン」だった事から、「ポリゴンショック」、「ポリゴン事件」、「ポリゴン騒動」、「ポリゴンフラッシュ」など、様々な名称で呼ばれています。
ポケモンショックでなんらかの被害を受けたのは1万人以上と見られている
自治省(現在の総務省)消防庁の当初の集計発表によると、このポケモンショックにより、全国30都道府県の651人(うち9割以上が小・中学生児童)が病院に運ばれ(685人というデータも存在)、そのうちの130人以上が入院(208人が入院との報道も)し、その中の何人かは重症だと発表されています。
翌日のNHK夜7時のニュースでは、729人が病院で手当てを受けたと報道。さらに消防庁の集計によると、17日午後5時までの段階で、30都道府県で計685人が病院に運ばれ、意識不明などの重症者3人を含む計208人が入院したという。18日の読売新聞朝刊では「各地の教育委員会の調査では、小学生を中心に病院には行かないまでも、1万人以上が吐き気などの症状を訴えていたことが分かった」と報道されている。
ある特定のテレビ番組が原因で約700人もの視聴者がなんらかの症状で病院に運ばれたのは、世界でも史上初の出来事だと言われています。
「ポケモンショック」は大きな騒動となり、テレビニュースや新聞などでも連日この事件に関するニュースが報じられました。
後日、ある新聞社は、教育委員会のデータなどを元に集計したところ「ポケモンショック」の影響でなんらかの症状が出た人の総数は病院に搬送されなかった人を含めると、1万3000人にのぼると推定されるとする記事を掲載しています。
ポケモンショックの社会的影響
この「ポケモンショック」の影響を受けて、アニメ「ポケットモンスター」は、約4ヶ月間放送を休止(1998年4月16日に放送再開)し、同局の子供向けバラエティ「おはスタ」でも、原因などが究明されるまで、「ポケモン」に関連する情報を一切取り扱わない事などが発表されました。
これを受けて、1998年4月8日に、NHKと日本民間放送連盟(民放連)が共同で作成した、「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」が発表され、「1秒に5回を超える点滅表現は禁止」、「点滅時間は連続して2秒以内」などの放送基準が設けられました。
また、現在子供向けのアニメ開始時にほぼ必ず画面に表示される「テレビを見るときは部屋を明るくしてテレビから離れて見てください」、「部屋を明るくして離れてみてね」といったテロップは、この「ポケモンショック」の影響で表示されるようになったものです。
ポケモンショックの原因は激しい光の点滅などによる「光過敏性発作」
「ポケモンショック」が引き起こされた原因は、この放送で、背景色や画面全体を短時間の間に激しく点滅させる「パカパカ」、「ストロボ」、「フラッシング」などと呼ばれる映像手法が多用された事だとされています。
この放送でのエピソードは、「ポリゴン」というデジタルな属性を持つポケモンに乗って主人公達が電脳世界に入るというエピソードで、その電脳世界での戦闘をアニメーションで表現するために、こうした激しい点滅表現が多用されました。
この放送では、赤色と青色の光が短い時間に交互に連続して映し出される表現など、激しい光の点滅表現が全編通じて合計で25箇所ほどあり、しかも1秒以上の長さで点滅が繰り返されるシーンも多数含まれていました。
その連続した激しい背景色の点滅によるショックによって「光過敏性発作」という症状が引き起こされたのが「ポケモンショック」の原因だと考えられています。
「光過敏性発作」は、視覚から入ってきた光の刺激が原因で、脳が興奮状態になるために引き起こされるとされる発作の症状で、光刺激に対する耐性が低い人に起こるとされています。
ただ、これは激しい光の点滅だけが原因ではなく、他にも様々な要因が複合的に合わさって起こると考えられています。
この「ポケモンショック」の場合、問題のエピソードに主人公達が特殊な電脳空間内を「ポリゴン」というポケモンに乗って移動するシーンや、特殊な空間でのエピソードゆえに背景が不自然な動き方をするシーンが多く、これが、視聴者に通常では行われない眼球運動を誘発し、こうした症状を引き起こす原因のひとつとなったとの見解が一部の医師などから示されています。
ポケモンショックの症状は?
「ポケモンショック」によって引き起こされた症状としては、全身痙攣発作、意識障害、視覚系症状、不定愁訴(頭が重い、イライラする、疲労感などで原因となる病気が見つからない場合を指す臨床用語)、不快な気分、卒倒、頭痛や吐き気などが報告されています。
ポケモンショックの症状が出たのはピカチュウが10まんボルトを放つシーン
「ポケモンショック」の症状が出て病院に搬送された人の大部分が、症状が出たタイミングとして報告しているのが、この放送の終盤(放送当日の18時51分頃)に流れた、ピカチュウが「10まんボルト」をワクチンミサイルに放ち爆発が起こるシーンです。
このシーンは、ピカチュウの技がミサイルに命中して爆発を起こした直後のシーンで、約4秒間にわたって赤と青の激しい点滅が1秒あたりに約20回から30回ほど繰り返されています。
ほとんどの被害者がこのシーンを見ているタイミングで症状が出たと報告している事から、「ポケモンショック」の原因はこのピカチュウが「10まんボルト」を放つシーンである可能性が高いと見られています。
ポケモンショックの原因となった映像は現在もネットで視聴可能
「ポケモンショック」を引き起こしたとされる「ポケットモンスター」第38話「でんのうせんしポリゴン」の問題のシーンの映像は現在もネット上の動画などで視聴する事ができます。
上の映像の最後に一瞬流れるのが、ピカチュウが「10まんボルト」という電撃技をワクチンミサイルに放つシーンで、この時の激しい光の点滅の瞬間に「ポケモンショック」の症状が出たという報告が全体のうちの大部分を占めています。
上の映像では問題のシーンが映し出された瞬間にすぐ映像が切られているので「ポケモンショック」の症状が出る可能性は低いと思われますが、視聴の際には十分に注意してください。
ポケモンショック以降「ポリゴン」は1度もアニメに登場していない
「ポケモンショック」を引き起こした「ポケットモンスター」の第38話は「でんのうせんしポリゴン」というタイトルで、バーチャルポケモンの「ポリゴン」がメインに取り上げられたエピソードでした。
「ポリゴン」はゲーム「ポケットモンスター」の第1作目から登場するシリーズでは定番のポケモンのひとつですが、この「ポケモンショック」の影響でから「ポリゴン」はアニメ版ではタブーのような存在にされており、この事件以降は1度もアニメ本編に登場していません。
また、この「ポリゴン」の進化系である「ポリゴン2」や「ポリゴンZ」も1度もアニメ本編では登場していません。(劇場版では何度か登場している)
ポリゴンがかわいそうという声も
「ポケモンショック」以来、「ポリゴン」が1度もアニメ本編に登場していない事については、ポケモンファンの間で「悪いのはアニメの製作陣でポリゴンじゃないのにかわいそう」、「ポケモンショック が起きたのはピカチュウの10まんボルトのシーンなのに、なぜポリゴンが悪者のようにされているの?」といった声が多く上がっているようです。
視聴者を病院送りにしたのは関係ないシーンなのに、不運にも自分がメインの回だったため「ポリゴンショック」と名付けられ、アニメに出演できなくなったポリゴンとかいう可哀想なキャラ。 pic.twitter.com/GuPlpfWLMi
— ウミコロ (@Namek_db56) June 19, 2020
#ポケモン #ポリゴン #Porygon
— レミニス (@REMINISGENE) February 7, 2017
あの極僅かだが子供が発作を起こしたポケモンショック。
その責任としてポリゴンとその進化形のポリゴン2とポリゴンZがアニメに登場しなくなった。
しかし、大半が解ってると思うけど発作の原因の光を放ったのはピカチュウであってポリゴンではない。 pic.twitter.com/TANq8I0YTN
ポケモンショックの後遺症は?
ネット上には、「ポケモンショック」によって「てんかん」などの神経疾患を発症し、後遺症に悩まされていると訴える人が複数見つかります。「ポケモンショック」はてんかんなどの素因を元々持っていた人に症状が出る可能性が高いとの見解が示されているので、ポケモンショックをきっかけにして「てんかん」を発症してしまったとも考えられそうです。
他にも、このポケモンショック以降、「テレビやパソコンの画面を普通に見れなくなった」といった精神的な後遺症を訴える方や、事件の記憶がフラッシュバックするといったPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの後遺症を訴えている方も見られます。
また、上記以外にもポケモンショックの後遺症で失明したという噂がインターネット上にありますが、これについては信頼性のある情報源は見当たらず、真偽の確認は取れませんでした。
ポケモンショックの死者は?
「ポケモンショック」が原因となった死者が出たという情報はありません。
しかし、当時、大阪府大阪市の5歳の女児がポケモンショックが原因で一時意識不明の重体になったとの報道や、吐血をした児童もいるといった報道が出ており、一歩間違えれば死者が出ていた可能性も指摘されています。
まとめ
今回は、1997年に発生し社会問題となった「ポケモンショック」についてまとめてみました。
「ポケモンショック」は、当時、全国の子供達からの人気を集めていたアニメ「ポケットモンスター」の放送で激しい光の点滅が繰り返された事などが原因で視聴者に、全身痙攣発作や意識障害、目眩などの視覚障害の症状が出て、約700名が病院に搬送され、130人以上が入院した事件です。
この事件の結果、アニメの放送前にはほぼ必ず「テレビを見るときは部屋を明るくしてテレビから離れて見てください」といった注意のテロップが表示されるようになりました。
「ポケモンショック」によって「てんかん」の発症やPTSDなどの後遺症を訴える人も多く、現在もアニメ史に残る放送事故として多くの人に記憶されています。
この事件は「ポケットモンスター」シリーズそのものがバッシングされる事態にまで発展し、ポケモンシリーズの人気が一時低迷した一因になったとも言われていますが、現在はポケモンシリーズは再び人気を上昇させ、アニメシリーズも含めて国民的な人気を取り戻しています。
ただ、ポケモン「ポリゴン」については、いまだにアニメではタブー視されており、事件以降アニメ本編には1度も登場していません。ファンの間では「ポリゴンをそろそろ許してやってほしい」という声も多く上がっています。