尾崎清光は政治家も屈服させたフィクサー

尾崎清光のプロフィール

尾崎清光は昭和のフィクサーの1人で、若い頃は暴力団に所属し、堅気に戻った後でエセ同和行為の黒幕となり、土地の違法な転売などで暗躍した人物です。

1982年には、日本の黒幕として『週刊大衆』といったゴシップ誌で3回の取材を受けました。

尾崎清光は政財界にもコネが深く、元総理の田中角栄ですら力添えを頼む権力者ぶりを発揮。

その影響力がわかるエピソードとして、尾崎清光がホテルオークラで自身の誕生祝賀会を開催した際に、自民党の議員をはじめとした政財界人が1000人以上訪れたと言われています。

なお、財界人1000人のうち150人が中央官庁の事務次官、長官といった局長クラスの上級官僚だったのだとか。

なお、同日ヒルトンホテルで開催された田中角栄主宰パーティの参加者は役人8人のみだったという情報もあります。

生前は違法な土地売買、恐喝、傷害、婦女暴行未遂、業務妨害など、あらゆる罪で17回逮捕されました。

1984年1月に暗殺により死去。没年48歳でした。尾崎清光の詳細な経歴や、死因については後の章で詳しく紹介します。

尾崎清光の生い立ちや家族

尾崎清光はあらゆる犯罪に手を染め、17回も逮捕されてきましたが、こういった人生を歩んだのは自身の生い立ちや家族にも一部要因があるとされています。

壮絶な幼少期や家族、少年院に入った経緯までを見ていきましょう。

部落出身で幼い頃に父を失う

尾崎清光が生まれたのは、高知県岡郡佐川町永野という場所で被差別部落の出身となります。

家族構成は判明しているのが父親と母親、そして尾崎清光の3人で、兄弟の存在は不明です。父親は日雇いで生活を送っていたのですが、酒癖が悪く博打にのめり込んでいました。

記憶に残っている父親は、酔っては母親に暴力を振るう日々。しかし、尾崎清光が幼い頃に川に転落して死去しています。

その後の尾崎清光は中学生になると非行に走り、地元の商業高校に在学中に、詐欺で少年院に送られました。

尾崎清光の経歴①　暴力団組員だった頃

尾崎清光は、1953年4月から自宅を出て、大阪府の釜ヶ崎にあるドヤ街で住み込みで皿洗いをしていたのですが、やがて暴力団の手配師として頭角を現わし、東組の組員となりました。

少年時代から傷害や恐喝、銃刀法違反といった罪を重ね続け、15回服役したという噂がありますが、一方で実刑を逃れ執行猶予で済んでいたという説もあります。

その後、1965年頃に暴力団から離脱し堅気になっていますが、落とし前として左手の小指を切断しました。

しかし、表立って暴力団に所属はしていなくても、その後も裏で繋がりを持っていたことが判明しています。

尾崎清光の経歴②　えせ同和行為黒幕

尾崎清光は、始終様々な犯罪に関与しましたが、その中でも「えせ同和行為」による脅迫や、詐欺行為における黒幕として暗躍していたことが記録として残されています。

そもそも、えせ同和行為とはどういった犯罪なのか、その手口についても紹介します。

えせ同和行為とは？

えせ同和行為とは、同和問題に取り組む会社や個人または官公署などに、賛助金や献金を不当に要求したり、高額な書籍を押し売りしたりする行為です。

また、同和利権に絡み、公共事業等への不正な参画を促す行為もえせ同和行為に定義されます。

一方で、真剣に人権問題の一環として差別を解決するために私財を投じる人も存在しており、こういった人々の気持ちに付け込んだ悪質な犯罪です。

また、えせ同和行為の背後には暴力団が控えているケースが多いそうです。こういった団体の資金源に繋がることも問題視されています。

2008年に法務省が調査した「えせ同和行為実態調査」によると、同和を名乗る人物や団体から違法な要求を受けた」と答えたのが15.1%。うち要求に応じたのが12.3%だったことが判明。

なお、1件あたりの被害額は1万円～10万円未満が大半を占めていますが、中には100万円以上の支払いに応じたケースも報告されています。

えせ同和行為の手口

えせ同和行為の手口はいくつかパターンがあります。

「同和問題に対する取り組みが足りない」と難癖をつけて、書籍や機関誌の購入、機関誌への広告の出稿、同和に関する勉強会の会費を徴収するというものが代表的。

その他には、「差別を受けた」などの何らかの言いがかりをつけたうえで「誠意を見せて欲しい」と示談金を要求するというケースも。

その他には、公共工事などの受注に際し、あたかも同和関係の団体であることを仄めかして「〇〇社にこの工事に参加させろ」といった利益供与を迫るというケースも報告されました。

これまでに数多くのえせ同和行為を行う団体が摘発されてきましたが、摘発に至らないケースもあり、日本全国に640以上の団体があると、部落解放・人権研究所が公表しました。

なお尾崎清光は、悪質な団体の中でも代表的な人物として捉えられていて、Wikipediaには「えせ同和の帝王」と記載されています。

実際、尾崎清光は1978年頃から全日本同和会に所属し、最高顧問の地位にあった時期もあり、政治家や暴力団幹部などの繋がりを強化し、有利に恫喝を行っていた記録が残っています。

尾崎清光の経歴③　西郷吉之助の私設秘書

尾崎清光は、暴力団から足抜けをした後、自身で会社を立ち上げたのですが、あることをきっかけに法務大臣の西郷吉之助の私設秘書に転身しました。

しかし、議員秘書になってから悪事に加担して逮捕されています。一体どのような経緯があったのでしょうか。

西郷吉之助のプロフィール

西郷吉之助は西郷隆盛の孫にあたる人物で、1947年に鹿児島県選挙区で出馬し、参議院議員を４期務めました。

西郷吉之助の所属政党は自由民主党で、第2次佐藤内閣では法務大臣を務めました。ある時期から尾崎清光と繋がりを持つことに。

この頃から西郷吉之助は私生活で借金を抱えるようになり、尾崎清光に手形を乱発するように指示し実行させていたようです。

しかし西郷吉之助の借金は4億円に膨らんでしまい、議員会館には日夜債権者が返済を求めて押し掛けてきました。

そこで、尾崎清光と共に暴力団や在日朝鮮人を使って債権者に暴力を振るい、借金取り立てから逃れようとしていたのです。

やがて、尾崎清光との黒い繋がりが世間に露呈してしまい、国会で野党から追及を受けて西郷吉之助は、自民党を離党。

西郷吉之助は1971年と1974年に選挙に出馬するも、ダークなイメージを払拭できず、どちらも落選し、失意のうちに政治家を引退しました。

一般人になった後も、西郷吉之助の元秘書が「西郷吉之助は、法務大臣時代に暴力団員の刑の停止に力を貸していた」と証言し、物議を醸しました。

どうやって秘書になったのか？

ここで気になるのは、尾崎清光が大臣になった人物とどのような方法で繋がりを持つことができたのかという点ですよね。

尾崎清光は、1969年に自身の会社「尾崎興産」を設立し、金融や手形不動産を扱う会社を経営していました。

1970年頃には、西郷吉之助の秘書グループに取り入って、私設秘書として採用してもらえるようにと繋いでもらったそうです。

西郷吉之助は、尾崎清光を秘書として雇いましたが、一般的な秘書業務を行ってもらうわけではなく、乱発手形の回収など犯罪がらみのダークな部分を処理することを期待していました。

その期待に応えた尾崎清光は1971年に、脅迫罪で兵庫県警に逮捕されています。

それでも政治家とのコネクションを持つことの大切さを実感し、高級官僚や政治家に取り入って権力を持つというスタイルの原点となったようです。

尾崎清光の経歴④　土地転がしで土佐の黒幕と呼ばれる

尾崎清光は、西郷吉之助の私設秘書を辞めると、地元の高知県に戻って建設会社を新たに設立しています。

行政や政財界に食い込み、合法ではない方法で土地を転売したり、建築関連の利権を貪るようになっていきました。

国有地払い下げに暗躍

尾崎清光は1972年1月に、故郷の高知県に戻り建設会社を設立しました。

建設関係は昔から談合などの汚職や、利権の問題が度々ニュースとなってきましたが、尾崎清光もそれは同じで、県内の財政界や行政に取り入って、農地の転用許可や国有地払下げに暗躍。

その他にも、通常であれば、市街化調整区域の開発地として許可が下りない土地を強引に市街区域へと変更し、デベロッパーに売却する行為で億単位の暴利を貪りました。

では、尾崎清光は一体どのようにして市街化調整区域の区分を変更させていたのかが気になりますよね。

まず、市街化調整区域を見つけ、その内一部だけ自分名義の土地として購入します。

次に役所に乗り込み、「ここにセミナーハウスを作る。だからここに家を建てられるようにしろ。建てられないなんて差別だ」と恐喝して、区分を変えさせてから売却するという手法です。

さらに、自身が経営する会社で建築、土木、砂利採取など公共工事に関わる事業を展開し、いつしか「土佐の黒幕」と呼ばれ恐れられる存在になっていったのです。

尾崎清光の経歴⑤　高知県時代だけで12件起訴されるも執行猶予つき

高知県に移住してからも様々な犯罪と関わり、1972年から1977年までの期間に12回も起訴されています。

簡単に事例を挙げると、1972年6月は高知県の保育所の工事契約に際し、施工業者を保証人の問題で脅迫し、業務妨害で起訴。

1973年6月には、交通事故の示談金が50万円では足りないと相手を脅して500万円を恐喝、同年8月には用地売買の書類ミスを発見し、司法書士を脅し100万円を恐喝。

1975年8月には、高知県発注の土木工事の談合工作を建設業者の内紛の調停役に持ち込んで、250万円を恐喝。

1977年1月には、土佐銀行を脅して3億円の不正融資をするようにと強要しています。

基本的に尾崎清光は、相手のミスや弱みを見つけて脅して金銭を要求してきたそうです。

また、相手から確実に金銭を引き出すために、大蔵省（現在の財務省）や建設省の高級官僚の名前を使って威勢を示すことが多かったという証言があります。

これら一連の犯罪は、1982年3月に高知地裁で懲役3年、執行猶予5年の有罪判決が下されました。

検察側は懲役5年の刑を求めていたものの、執行猶予が付いたことに驚きを隠せなかったという証言が残されています。

高知県警の尾崎清光に対する見立て

尾崎清光に関する、高知県警の捜査資料が一部公開されていて、「厚顔にして強引、猿知恵が回り、粗暴で偽善的な行動を取る反面、単純なところもある」と性格について記述されています。

そして、手口についても言及されていて、「常に六法全書や国会便覧を片手に、録音機を使い会話を録音する」と書かれています。

尾崎清光の成金エピソード①　ファッションも名刺もド派手

尾崎清光は生前「歩く3億円」という異名で呼ばれていました。それだけ羽振りが良かったということですが、その評判は芳しくありません。

一体どのような金の使い方をしていたのでしょうか。

尾崎清光の成金ぶりが明確にわかるのが、ファッションやアクセサリーでした。両腕に付けていた腕時計は、わかっている限りで1億2千万円のダイヤモンド入りだったそう。

しかし、尾崎清光が実際に時間を確認する際は懐中時計を使っていたとのことで、完全に腕時計は人に見せるために使っていたことになります。

また、最高級の白いスーツと高級革靴で身を包み、アクセサリーは1つ8千万円のブレスレット。これだけでも充分に目立つこと間違いありません。

しかし、銀座のクラブの経営者は尾崎清光の恰好について「アフリカの部族が精一杯気張っておしゃれしたみたい」と冷淡なコメントを寄せています。

さらにビジネス相手に渡す名刺は、通常の3倍のサイズ。

さすがに持ち歩きしづらいのか、2つ折りの状態で渡されるそうで、中を開くと尾崎清光の顔写真がデカデカとプリントされている強烈なものだったそうです。

尾崎清光の成金エピソード②　車もド派手だった

尾崎清光は、1台3千万円のリムジンを2台乗り回していました。

うち1台の白いリムジンには、自動車用の電話が4台設置されていて、次々かかって来る電話に対応していたんだとか。

1台目の電話で「局長さん、お世話になってます、尾崎です」、もう1台の電話では「おんどりゃあ！いてまうぞ」と怒鳴るなど、一方で腰を低くしつつ同時に圧をかけるなど器用に対応。

また、リムジンの床には毛皮、インテリアにはシャンデリアやテレビ、ビデオ、冷蔵庫と生活ができるようになっていたとのこと。

そして車体には菊花の紋章が入った小旗をなびかせ、車を運転するのはボディーガード兼秘書で、まるで政治家のような振る舞いだったそうです。

尾崎清光の成金エピソード③　18歳～19歳の娘を代わる代わる…

銀座の高級クラブで散財することがルーティンになっていた尾崎清光について、夜の街の関係者は皆「これぞ銀座のワーストワン」と太鼓判を押していました。

何しろ、尾崎清光は18歳～19歳の若い娘が好きで、ホテルオークラの1泊35万円のスイートルームに常時宿泊し、気に入った娘を代わる連れ込んでいたんだとか。

さらに、銀座にあるクラブでの狼藉について関係者が週刊誌にリークし、『週刊新潮』が記事にしたところ、新潮社は以下のような嫌がらせを受けたそうです。

「五人のホステスを六本木に誘って、5万円のチップをバラまいたのだけど、お目当ての女の子が口説けなかったら、翌日、みんなからチップを回収した」などと書かれ、同誌の記者を自分の事務所に呼びつけたこともある。

このとき週刊新潮は謝罪を拒んだため、尾崎の子分が10人以上で新潮社に乗り込み、大声を上げた。

 

引用：尾崎清光 – ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/

なお、尾崎清光は下戸だったので高級クラブでも、トマトジュースばかり飲んでいたんだとか。

それでも一晩で250万円を使っていたという証言があるので、部下や若い娘を連れて銀座の高級クラブで豪遊をしていたと考えられます。

尾崎清光の成金エピソード④　電話1本で飛行機を遅らせる

出典：https://pixabay.com/

尾崎清光の影響力は、航空会社にも及んでいます。何しろ電話1本で飛行機の出発を遅らせたというエピソードも残っています。

ある時、羽田空港に向かう高速道路が渋滞し、平和島近辺で、フライトに間に合わないことが確定。

尾崎清光は車内から搭乗する航空会社に電話をかけ、「尾崎、平和島」と一言発し、電話を切りました。その後、該当の飛行機は尾崎清光の車が到着するのを待っていたそうです。

また別の日には、尾崎清光はとりまきの女性達を連れて四国に遊びに行き、帰りの飛行機で離陸待ちという時、女性の1人が空港のお土産屋に忘れ物をしたことに気が付きました。

すると尾崎清光は、CAを呼び留め、飛行機の出発を遅らせろと命令して、女性に忘れ物を取りに行かせたんだとか。

尾崎清光と桜田淳子の関係

尾崎清光についてネットで調べると、検索ワードの候補に「尾崎清光　桜田淳子」と表示されています。

どのような関係なのか調査したのですが、明確な関係性がわかるような情報ソースは見つかっていません。

しかし、尾崎清光と芸能界との繋がりについてはいくつかの情報が存在しています。

生前の尾崎清光は、芸能プロダクションを設立し会長を務めていましたし、複数の有名女優を愛人としていたそうです。

また、芸能事務所の運営とは別に、歌手の北島三郎さんのスポンサーになっていたこともわかっています。

これだけ大物歌手とのコネクションを持っていたのであれば、桜田淳子さんとの何らかの繋がりが出てきてもおかしくはありませんが、今のところ真偽の程は不明です。

尾崎清光の結婚や嫁と子供の情報

尾崎清光の嫁について調査したのですが、そもそも結婚しているのかどうかも情報が出てきませんでした。

結婚していた可能性は大いにありますが、芸能人ではありませんし、大々的に宣伝するメリットはなく、嫁本人がカミングアウトしない限り、わからないのではないでしょうか。

このため、子供についても情報がありません。

ただ、尾崎清光は何度も繰り返し逮捕されてきたので、嫁や子供がいても名乗りにくいという背景はありそうです。

尾崎清光の最期は暗殺・死因は失血死

尾崎清光は1984年1月30日に48歳で死去しました。

ニュースで報じられた尾崎清光の最期の様子や死因について紹介します。

死因は失血死

尾崎清光は糖尿病を患って、1984年1月12日から東京女子医科大学付属病院に入院していました。病室は5階の特別室として使われていた501号室です。

ベッドで、500万円分の札束を数えていた21時50分頃、見舞客を装った犯人3人組が侵入。短銃で至近距離から顔と背中を撃たれました。

さらに、犯人グループは尾崎清光の背中からナイフで心臓を一突きしてトドメを刺します。

発見後、治療を受けたものの、22時50分に出血多量で死亡が確認されました。

なお、病室には数人の側近が部屋に詰めていましたが、全員暗殺されています。

尾崎清光を暗殺した犯人は誰？

尾崎清光の暗殺事件は、すぐに警察の捜査が始まり、犯人には何人か目星がつけられました。

1つ目の犯人説は、生前の尾崎清光の後ろ盾として住友連合会の幹部・浜本政吉がついていたのですが、同じ会派の対立グループから恨みを買って葬られたというものです。

2つの犯人説では、若い頃から尾崎清光の兄弟分と言われていた早坂太吉が黒幕になり、殺し屋を雇ったという説。

3つ目の犯人説は、総理府や建設省などの一部官庁から恨みを買っていたため、公権力を背後に持つ特殊部隊の犯行ではないかという小説のような推察をする声も。

現場となった病室には血まみれの1万円札が散らばっていて、犯人グループは現金に一切目もくれず、わずか20秒ほどで暗殺を終えたのではないかと言われています。

そのため、警察は犯行について、プロの仕事であると判断したようです。

その後、公安や暴力団を担当する警視庁四課まで動員して容疑者の特定を続けてきましたが、1991年に事件は時効を迎えて迷宮入り。つまり、今でも犯人は不明のままです。

まとめ

尾崎清光の生い立ちや家族、結婚した嫁や子供の有無、若い娘好きエピソード、桜田淳子さんとの関係、暗殺による最期や死因についてまとめました。

政治家や暴力団との癒着で政財界を支配し、違法な土地売買や恐喝によって多大な額を稼いでいた尾崎清光。

そして尾崎清光は、銃による暗殺という形で人生を終えました。事件捜査を進めるも、手掛かりに欠け迷宮入りに。

生前どんな悪行をしていたとしても、暗殺を目論み、実行した犯人達は決して許されるものではありませんが、その死に胸をなでおろした人も多かったかもしれません。