1982年、間違って毒物のフッ化水素酸を塗布された3歳の女児が死亡する事故が起きました。
今回は八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故の概要、被害者の苦痛を記したなんJのコピペ、歯科医師のその後と現在をまとめました。
この記事の目次
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故の概要
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故とは、東京都八王子市の歯科クリニックで、1982年4月20日に起こった医療事故です。
虫歯予防のために、歯科医がフッ化ナトリウムのつもりで塗布した薬剤が実は毒物のフッ化水素酸(フッ酸)であり、誤った施術をされた3歳の女の子は耐え難い苦しみの末に死亡しました。
医療事故を起こした歯科医師は、業務上過失致死罪で起訴され、有罪判決を受けています。
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故の詳細
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布誤塗布事故の概要を見ていきましょう。
3歳女児が虫歯予防で歯科を訪れる
1982年4月20日午後3時50分頃、3歳の女の子が母親に連れられて、虫歯治療のために東京都八王子市にある歯科クリニックに訪れました。この女の子の通院は4回目でした。
この日は虫歯治療と共に、虫歯予防のためにフッ化ナトリウムを塗布する予定でした。
フッ素を塗った途端に苦しみだす
歯科医師がフッ化ナトリウム(と思い込んでいた)を脱脂綿にしみこませて、女の子の歯に塗布しました。
実は、この歯科医師がフッ化ナトリウムだと思っていた薬品は、フッ化ナトリウムではなく、歯科技工に使うフッ化水素酸だったのです。フッ化水素酸は強力な毒物です。
女の子は口から白煙を出し、さらにえんじ色の唾液を出して、さらに「からい!!」と訴えてのけぞりました。
歯科医師は、助手である自分の妻と女児の母親に押さえつけるよう指示して、薬剤を女の子の歯に再び塗りました。
そうしたら、女の子は悲鳴を上げて診察台の上で暴れ出し、大人2人が押さえつけているにも関わらず、診察台から転げ落ちた挙句、腹痛を訴えて苦痛のあまり床を転げ回ったのです。
救急搬送されるも死亡
苦しみ、床を転げ回っていた女の子を母親が抱き上げると、女の子の口の周りが赤くただれていました。
この時点で、歯科医師は「女の子は初めてのことに過剰に反応する特殊体質だ」と判断し、強心剤を投与してから救急要請しました。
女の子は近所の病院に搬送されましたが、症状があまりにも重篤だったため、東京医科大学八王子医療センターに搬送され、治療が行われました。
しかし、誤塗布されてから約2時間後の午後6時、死亡が確認されました。
妻が証拠隠滅を図る
歯科医師が女の子の救急搬送に付き添って不在の間、助手をしていた妻は何が原因でこのようなことが起こったのかは把握していませんでした。
しかし、妻は女の子の歯に塗った薬物(フッ化ナトリウムと思い込んでいたフッ化水素酸)を自分の歯に塗ってみたところ、強い刺激を感じ、何かまずいことが起きたと感じ取ります。
そして、自分1人の判断で自宅の焼却炉でその薬品(フッ素ナトリウムと思い込んでいたフッ化水素酸)の容器を焼いてしまいました。
業務上過失致死罪で有罪
八王子市警察署は女の子が死亡したその日のうちに、歯科クリニックに家宅捜索に入り、焼却された灰なども押収しました。
そして、事故から3日後の4月23日には警視庁科学捜査研究所の分析により、治療時に使った容器からフッ化水素酸が検出されました。
約半年後の9月28日には歯科医師が業務上過失致死罪で起訴されます。
翌年の1983年2月に歯科医師が全面的にミスを認め、遺族に3850万円の慰謝料を支払うことで示談が成立し、禁固1年6ヶ月・執行猶予4年の有罪判決を受けています。
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故が起こった要因
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故はなぜ起こったのでしょうか?
フッ化ナトリウムとフッ化水素酸を取り間違えるなんて、通常ではありえないことです。
この八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故は、複数の勘違い・複数の思い込みが数珠つなぎのように重なり合ってしまったことで起こりました。
これをスイスチーズモデルと言います。
出典:ameblo.jp
どのような勘違い・思い込みが重なったのか?八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故の要因を見てみましょう。
妻が曖昧な発注
まず1982年3月19日、歯科医師が助手をしている妻に、虫歯予防薬(フッ化ナトリウム)を注文するように依頼しました。
妻は注文書にフッ化ナトリウムのつもりで「フッ素」とだけ書いて、歯科材料会社に注文したんです。
この時、妻がきちんと「フッ化ナトリウム」と注文書に書いておけば、この八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故は起こりませんでした。
業者が勘違いして納入
「フッ素」と書かれた注文書を受け取った業者は、歯科技工に使う「フッ化水素酸」の注文だと思い込んでしまいます。
ここで、「フッ素」とだけ書かれた注文書を業者が疑問に思い、「フッ化ナトリウムですか?フッ化水素酸ですか?」と確認すれば、事故は起こらなかったはずです。
妻が気づかず受け取り
そして、業者はその日のうちに歯科クリニックにフッ化水素酸を納品します。
フッ化水素酸は毒物ですので、受取書に押印が必要になります。フッ化ナトリウムの時にはこの押印は必要ありません。
受け取り時にいつもと違う手続きを踏んだのに、妻は気づかずに押印して受け取り、それをそのまま、診察室のフッ化ナトリウムの棚に収納しました。
この時も、「いつもは押印なんていらないのになんで今日は必要なの?」と疑問に思えば、事故を防ぐことはできたんです。
歯科医師も勘違い
フッ化ナトリウムとフッ化水素酸は名前は似ているものの、実際の容器の大きさやラベルが違います。
事故当日、容器やラベルがいつもと違うことに歯科医師自身は気づいていました。
しかし、「最近、納入業者を変えたから容器の大きさやラベルが違うのだろう」と思い、きちんと容器のラベルを確認せず、フッ化ナトリウムだと思い込んでいたのです。
「いつもと違う」と認識した時点で、歯科医師がきちんとラベルと中身を確認しておけば、事故を防ぐことはできたのです。
女の子の訴えを無視した
そして最後のミスは、フッ化水素酸を女の子の歯に塗り込んだ時です。
歯科治療に使うフッ化ナトリウムは無味無臭の薬品です。でも、女の子は歯科医師に薬品を塗られた瞬間に「からい!!」と訴えました。
この時点で、歯科医師は「無味無臭なのに『からい』なんておかしい」と思わなくてはいけませんでした。
それなのに、母親と助手の妻に女の子を押さえさせ、さらにフッ化水素酸を塗りこんだのです。
1回目の塗布で異常に気づき、すぐに救急搬送していれば、女の子は助かった可能性もゼロではありません。
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故の被害者の苦痛がやばい
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故では、被害者の女の子はこの世に存在する痛みの中でも最も痛いと言われる痛みを味わって死亡しました。
歯にフッ化水素酸を塗った痛みは、「人間が経験し得る痛みランキング」の1位になったこともあるほどの痛みなんです。
フッ化水素酸は皮膚につくと、瞬時に骨まで浸透し、痛覚神経を最大限に刺激するようになります。あまりの痛みのために、拷問にも使われる薬品と言われています。
歯科医師も、自分のミスに気付いた後、「考えうる限り最悪の苦痛を与えてしまった」と謝罪しています。
そのような「人間が経験し得る最大限の痛み」を被害者の3歳の女の子は与えらえ、苦しんだ後に死亡しました。
最初に歯科医師がフッ化水素酸を被害者の女の子の歯に塗った時、「口から白い煙とえんじ色の唾液が出てきた」という状況だけでも、やばいことが十分わかりますよね。
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故のなんJコピペがむごいと話題に
この八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故で、被害者の女の子が味わった苦痛を表現した文章がコピペされ、5ちゃんねるの「なんJ」に残っています。
ちょっと長いですが、なんJのコピペを引用します。
HF(フッ化水素酸)を間違えて塗布し、診察台から2mもハネ飛んで幼児急死(4.20)
これ、塗布された瞬間に女児が大騒ぎして暴れだしたので治療していた歯科医が付き添いでそばにいた母親と助士に女児を押さえている様に言って、母親が押さえつけているところに更に塗布して筋肉の痙攣で大の大人二人を跳ね除けた上で2メートル吹っ飛んだと言う。。。
歯の神経の痛感ってのは、人体が感じる様々な痛み、つまり痛覚としては、2番目に強力なものなんだよ。
まあ、麻酔がなかったら普通は耐えられない。だから拷問なんかにも使う。
歯にフッ酸塗るとどういう痛みを感じるかっつーと、塗られた歯が全部、末期の虫歯の痛みを同時に引き起こし、さらにフッ酸が浸透を続けると顎や頭蓋骨の中を通ってる痛感神経も、最大強度の痛感を発信するようになる。
まあ、ここまで強力な痛覚になると、もう脳というか神経系全体が耐えられんわな。
そんで自律系の神経が機能不全を起こし、その端末である各種臓器も不全、いわゆるショック死へ、という流れ。
やっちまった医師が、通夜の席で土下座して詫びて、そのまま脳溢血起こすのも、まあ無理はない。
仮にも医者なら、想像しただけでも気絶したくなるほどむごい状況を、年端もいかない女児を押さえつけて引き起こしたって事が、まるわかりだからな。自分にゃ嘘はつけないし誤魔化しもきかんよ
フッ化水素酸の恐怖は異常
なんJのコピペなので、どこまで本当かは不明です。
ただ、大人2人が押さえつけていたのに、あまりの痛みに診察台から転がり落ちたという女児。
一説には2メートル近くも吹き飛んだというのですから、どれだけ痛みが強かったのか、想像を絶します。
幼い3歳の女の子の筋力で大人2人をはねのけ、2メートル吹き飛ぶなんて、どれだけ激しく筋肉が痙攣したのでしょう。
そして激しい痛みに神経系全体が耐えられず、多臓器不全を起こして、痛みのためにショック死する…そんな痛みを3歳の女の子が感じて死亡したなんて、考えただけで胸が痛くなります。
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故を起こした医師のその後
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故は、事故当日に女の子の死亡が確認されました。そして、翌日にはお通夜が行われています。
歯科医師はこの通夜に訪れて、遺族に謝罪をしました。もちろん、遺族は怒りが収まりませんので、歯科医師に詰め寄ります。
歯科医師は土下座をして遺族にお詫びしましたが、謝罪の途中に血圧が上がり、脳卒中を発症して倒れ、救急搬送されることになりました。
誤ってフッ化水素酸を塗ってしまったこと、さらにそのことで被害者の女の子にとんでもない苦痛を与えてしまったことに気づき、自分の罪の重さに苛まれていたのでしょう。
そして、そのストレスで血圧が上がり、脳卒中になってしまったのだと思われます。
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故の現在
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故が起こってから、フッ化ナトリウムとフッ化水素酸の取り違いのリスクが大きいことが取り上げられるようになりました。
現在でも歯科ではフッ化ナトリウムが虫歯予防として使われますが、このような誤塗布事故を防ぐために、薬品によって色が変わる脱脂綿などが用いられるようになっています。
ちなみに、この八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故の後の現在でも、フッ化水素酸関係の事故・事件は起こっています。
2020年:東京都千代田区の路上にフッ化水素酸250mlがこぼれ、周囲100mを通行止めにし、ガスマスクをした化学機動中隊員が2時間以上かけて処理した。
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故のまとめ
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故の概要や詳細、事故が起こった要因、被害者の苦痛やなんJのコピペ、医師のその後や現在をまとめました。
八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故は、本当に痛ましい事故です。もう二度とこのような事故は起こらないよう、薬剤を扱う方には十分注意してほしいですね。