あなたは働き過ぎていませんか?あなたの家族や大切な人は、働き過ぎていないでしょうか?働き過ぎると、それが原因で死に至ることがあるんです。
「過労死なんて他人事」、「過労死なんて、なかなか起こらないでしょ」と思っているあなたは、過労死への一歩を踏み出している可能性すらあるんです。
過労死の前兆や症状、過労死と認定される残業時間と症状のライン、過労死認定された事例と対策をまとめました。
「最近、働き過ぎかも」と思っている人は、ぜひ読んでみてください。
この記事の目次
過労死とは
過労死とは働き過ぎが原因で死亡することです。
人間は働くことも大切ですが、同時に休息も必要ですよね。十分な休息がないままに働き続けると、人間は身体的にも精神的にも問題が起こって、体調を崩し、死に至ることがあるのです。
平成26年に「過労死等防止対策推進法」が制定されていますが、この法律の中で過労死は次のように定義づけられています。
「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害」
この過労死等防止対策推進法の定義から考えると、過労死は、
ということになりますね。
こちらの厚生労働省による過労死関連の資料によると、平成28年度に過労死で死亡したのは、
・精神疾患での過労自殺=84名(未遂を含む)
・合計=191名
ということになります。1年で200名近い労働者が、働き過ぎで死んでいるということになります。これはあくまで過労死(労災)と認定された件数です。
実際は過労死だったにも関わらず、過労死とは認定されなかったもの、有耶無耶にされてしまったものなどを含めると、過労死の件数はもっと多いと推測できます。
過労死の前兆や症状
過労死の前兆や症状を知っておきましょう。これを知っておくことで、「あれ?私、ヤバくない?」と過労死する前に気づくことができるんです。
過労死と認定されるのは、働き過ぎという前提がある状態で次の3つの疾患で死亡した時でしたよね。
・心疾患
・精神疾患
この3つの前兆や症状を知っておくだけで、過労死を回避することもできるんです。
脳疾患の前兆・症状
脳疾患とは、脳卒中(脳梗塞や脳疾患)やくも膜下出血などがあります。
・言葉が出てこない
・手足がしびれる
・体の片側に力が入らない
・物を持てなくなる
・めまいがする
・物が二重に見える
・視界がぼやける
・頭が痛い
・会話の内容が理解できない
このような症状が出ている場合、すでに脳卒中やくも膜下出血が起こっているか、起こる直前のことがありますので、非常に危険な状態です。
心疾患の前兆・症状
過労死の原因となる心疾患には、急性心不全や致死性不整脈、虚血性心疾患(心筋梗塞)などがあります。
・胸が圧迫されたように感じる
・左腕がだるい
・胃の辺りに違和感がある
・奥歯がうずく
・胸が痛い
・顎から喉にかけて痛い
・痛みと同時に冷や汗が出る
このような症状が出ている場合、死に直結する心疾患の前兆の症状の可能性が高いです。心疾患の前段階である狭心症の可能性もあります。
だから、このような症状が出たら、なんとしてでも働かずに休むこと。そしてすぐに病院に行くことが大切です。
精神疾患の前兆・症状
働き過ぎると、うつ病などの精神疾患を発症します。働き過ぎて、心が疲れてしまうんですね。うつ病は自殺するリスクがある病気ですので、「働き過ぎ→うつ病→自殺」という過労死が起こる可能性が高いんです。
精神疾患の前兆の症状はこちらです。
・眠りが浅くなる
・なかなか寝付けない
・何をやっても楽しくない
・感情の起伏がなくなる
・だるい
・やる気が起こらない
・自分が悪いと自分を責めるようになる
このような症状が出ていると、うつ病の前兆だったり、すでにうつ病になっている可能性が高いですので、非常に危険な状態と言えるでしょう。
過労死が起こる職場の前兆
過労死に至るには、「働き過ぎ」という大前提があります。日本では労働基準法で「使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない」と定められています。
この法律があるにも関わらず、この法律で定められた法定労働時間を大きく超えて働かせるのは、明らかにブラックな職場です。
過労死が起こるような職場の前兆を見ておきましょう。
・パワハラやモラハラが当たり前
・サービス残業の毎日
・厳しいノルマがある
・休憩時間が取れない
・会社としての残業時間を増やさないために、持ち帰り残業を強いられる
こういう職場は過労死が起こる前兆がすでにあると思っておいた方が良いです。
過労死の原因とみなされる残業時間のライン
過労死の原因は働き過ぎです。では、では、「働き過ぎ」とはどのような状態なのでしょうか?
過労死と認定されるかどうかは、残業時間(時間外・休日の労働時間)が1つの基準とされます。残業時間が長いと健康被害のリスクが高くなるとわかっているからです。
脳疾患や心疾患の場合
脳疾患や心疾患は、次の残業時間が認められると、脳疾患や心疾患との関係性が高く、過労死の可能性があると判断されます。
・発症2~6ヶ月間に平均して80時間の残業
これだけの残業をしていると、働き過ぎで脳疾患や心疾患を発症したとみなされることが多いんです。
ただ、残業時間だけでなく、不規則な勤務なども加味されることもありますので、不規則な勤務の場合、この残業時間よりも少なくても、過労死と認定されることがあります。
精神疾患の場合
うつ病などの精神疾患の場合、過労死と認定されるために必要な残業時間はさらに多くなります。
・発症3週間前に120時間の残業
ただ、精神疾患の場合、残業時間だけでなくパワハラや希望しない異動、2週間以上の連続勤務などがある場合は、上記よりも残業時間が少なくても、労災と認められることがあります。
過労死と認定された18の事例:1-5
過労死と認定された事例をご紹介していきます。
1.スーパーいなげやでの過労死
スーパー「いなげや」で働いていた42歳の男性は、2014年5月25日に仕事中にろれつが回らなくなり、救急搬送されます。それから約1週間後の6月2日に仕事復帰しますが、6月5日に職場の駐車場で倒れていたところを発見されました。そして、その約2週間後に脳血栓症で死亡しています。
この男性は、発症までの4カ月間で月平均約76時間の残業をしていたことがわかっています。基準となる月80時間を下回っていますが、不規則な勤務であり、さらに「ほかにも特定できない労働時間がある」として、2016年6月に過労死と認定されています。
2.電通の新入社員の過労自殺
2015年12月25日に広告代理店の電通の女性新入社員が飛び降り自殺をしました。
この女性新入社員は、インターネット広告を担当していましたが、月の残業が130時間にも達していました。しかも、残業時間を過少報告するように上司から指示されていました。
さらに、その女性社員のTwitterによると、パワハラやセクハラに悩んでいたらしいことも分かっています。
電通はこの女性新入社員の飛び降り自殺の原因を恋愛によるもので片付けようとしていて、社会問題になりました。
2016年には、この事例は過労死と認定されています。
3.国立循環器病センターの看護師
2001年に国立循環器病センターの25歳の看護師が、くも膜下出血で亡くなりました。この看護師の勤怠記録を見ると、残業は月15~25時間と記録されていましたが、友人にあてたメールなどから、実際は膨大なサービス残業をしていたことがわかっています。
さらに、勤務を終えて次の勤務が始まるまでの間隔が5時間程度しかない日が月平均5回もあったことなどから、過労死と認定されています。
4.和歌山県警警部補の過労自殺
2016年8月に和歌山県警の警部補が自殺しています。残業が非常に多く、深夜の2~3時ごろまで及ぶことがあり、自殺前の2ヶ月間は残業時間が月200時間を超えていることがわかり、公務災害(過労死)と認定されました。
5.福島第一原子力発電所の作業員の過労死
2011年5月13日に福島第一原子力発電所事故の収束作業に当たっていた建設会社の臨時雇いの男性社員が、作業中に心筋梗塞で倒れて死亡しました。
この男性の労働時間は2日間で計4時間弱の作業だったのですが、防護服・防護マスクを装備した労働が過重な身体的・精神的負荷となったと判断され、過労死と認定されました。
過労死と認定された18の事例:6-11
6.新潟市民病院の研修医の過労死
2016年1月に新潟市民病院に勤務していた37歳の女性研修医が自殺しました。2015年の秋ごろから「病院に行きたくない」と話していたそうです。
遺族が自殺した女性の勤務時間を調べてみると、4カ月連続で200時間を超えていることがわかり、2017年に過労死認定されました。
7.NHKの首都圏放送センターの女性記者の過労死
NHK首都圏放送センターで勤務する31歳の女性記者が、2013年にうっ血性心不全で死亡しました。この女性記者は残業が159時間にも及び、過労死認定されました。
しかし、マスコミであるNHKの記者が過労死したにも関わらず、この件についてはすぐには公表されず、ようやく公表されたのは過労死から4年経った2017年のことでした。
8.ファミリーマート従業員の過労死
ファミリーマートのフランチャイズ店舗で勤務していた62歳の男性が2011年12月に、勤務中に意識を失い脚立から落ちて死亡しました。
この男性は2011年4月から店主から別の店舗でも勤務するように命じられ、2店舗を掛け持ちしなければならない状況になり、残業時間は月218~254時間にも及んでいたため、過労死として認定されています。
9.国立競技場地盤改良工事の新人男性過労自殺
新国立競技場の地盤改良工事で施工管理をしていた三信建設工業の男性新人社員が、2017年3月に自殺しました。
男性写真が自殺する前の1ヶ月の残業時間は190時間にも及んでいて、会社はそれを把握していなかったとのことです。この男性の自殺は過労死認定されています。
10.富山県内の公立中学校教諭の過労死
2016年に富山県内の公立中学校の40代の教師がくも膜下出血で亡くなりました。この教師は発症前の2ヶ月間は、時間外勤務が月120時間にも及んでいて、そのうちの7割が部活での指導に費やされていたとのことです。この件は、もちろん過労死認定されています。
11.富士通の海外マーケティング部の課長の過労死
2011年4月に富士通の海外マーケティング部の42歳の課長が急性心不全で亡くなりました。
これは、3月11日の東日本大震災の後に、通常業務に加えて、社員の安否確認や節電対策など震災への対応に追われ、さらに震災後に外国人の上司2人が出国したため、負担が重なったようです。
発症するまでの直近2ヶ月の平均残業時間は月82時間で、さらに自宅に持ち帰った仕事もあるため、月の業務時間は合計300時間を超えることがわかり、過労死認定されました。
過労死と認定された18の事例:12-18
12.日本海庄やの新入社員の過労死
2007年8月に日本海庄やで働く新入社員の24歳の男性が心不全で亡くなりました。入社してからの4ヶ月間の平均残業時間は112時間にも及んでいます。
しかも、初任給に80時間分のみなし残業代(固定残業代)が含まれていて、初任給はなんと19万円。時給に換算するとたった713円にしかなりませんでした。
過労死認定され、遺族は会社に損害賠償請求をし裁判を起こしました、1審での判決を不服とした会社側が最高裁まで争う姿勢を見せましたが、上告は棄却され、遺族に対し7860万円の支払いがめいじられています。
13.ヤマダ電機の新入社員の過労自殺
2007年9月に2日後にオープンを控えた「テックランド柏崎店」の新任フロア長の23歳の男性が社宅で自殺をしました。
オープンを控えて忙しく、週の残業時間は47時間にも上ったそうです。この新入社員の男性は、契約社員から正社員に登用されたばかりで、初めての正社員ですぐに始めて管理職になり、初めての新店舗開店の対応をしていたので、心労が重なったものと思われます。
この事例は、2011年に労災認定されています。
14.アニメ制作会社「A-1 Pictures」の元社員の過労自殺
アニメの制作会社である「A-1 Pictures」で2006~2009年12月まで働いていた男性が、2010年10月に自殺しました。
退職後10ヶ月程度は経っていたものの、男性が通院していた医療施設のカルテには「月600時間労働」と書かれていて、さらに残業時間は月134時間から、多い時で344時間に上ったことから、過労からうつ病を発症し自殺に至ったとして、労災認定されています。
15.アミティーの女性講師の過労自殺
2011年6月、英会話教室のアミティーに就職した英会話教師の22歳の女性が自宅マンションの7階から飛び降りて自殺しました。
本来なら休暇のはずのゴールデンウィークの大半を教材づくりに費やし、さらに毎日3時間睡眠で働き続けた結果、「学校に行くのが怖い」などと実家に泣きながら電話を掛けたり、「火曜日に自殺願望のピークを迎えました」とメールをしたりするようになります。
そして、自殺に至りました。持ち帰りの仕事が多かったため、残業時間の認定は難しかったですが、自宅での仕事を再現したところ、月の残業時間は111時間に達していたため、過労死と認定されています。
16.栄光ゼミナールの教室長の過労死
学習塾の栄光ゼミナールの教室長の49歳男性が、2017年11月に勤務中に大動脈瘤破裂で倒れてそのまま死亡しました。
死亡月の残業時間113時間、発症前2〜6カ月の時間外労働は80〜130時間だったため、過労死と認定されています。
17.テレビ朝日プロデューサーの過労死
ドラマを担当していたテレビ朝日プロデューサーが、2013年に出張先のホテルで心疾患で倒れ、その後療養を続けていましたが、2015年に心不全で亡くなっています。
2013年に心疾患で倒れる前の直近3ヶ月の残業時間は70~130時間にも及び、2014年に労災認定されています。その後、2015年に亡くなったことから、過労死と認定されました。
18.東京都済生会中央病院の看護師の過労死
2007年5月に東京都済生会中央病院の手術室で勤務する看護師が、宿直勤務中の午前7時半ごろに手術室の中でストレッチャーに突っ伏しているのを発見され、死亡しました。致死性不整脈が死亡原因です。
この看護師は10日間に25時間拘束の宿直勤務を3回もこなしていました。
過労死ラインの月80時間残業よりも少なかったものの、労基署は「残業時間は基準より少ないが、不規則勤務や緊急手術などの過重性を総合的に判断し、認定した」として過労死認定されています。
過労死を防ぐための対策~国の対策~
過労死を防ぐために、国は次のような対策を提唱しています。
・睡眠時間の確保や健康づくりの推進
・勤務間インターバル制度の導入
・ワークライフバランスの取れる職場環境づくり
・メンタルヘルス対策の積極的な推進
・職場のハラスメントの予防・解決
これらの対策の多くは、事業主(企業)に求められているものです。ただ、実際問題として、思うように対策が進んでおらず、過労死の認定件数は減っていない、それどころか精神障害による労災や自殺は増加傾向にあるのです。
過労死を防ぐための対策~個人でできる対策~
過労死を防ぐためには、個人でも対策を進めていかなくてはいけません。過労死を防ぐための対策を3つご紹介します。
1.働き方について相談する
「過労死するかも」、「働き過ぎかも」、「休みたいのに休めない」という状況に陥っていたら、まずは第三者に相談することが大切です。働き過ぎて過労死の危険がある状態では、心身共に疲弊していますので、正しい判断ができないことがあります。だから、1人で抱え込まずに、誰かに相談することが必要なんです。
・産業保健総合支援センター
・全国過労死を考える家族の会
・過労死防止対策推進全国センター
・過労死110番全国ネットワーク
・こころの耳
・労働条件相談ほっとライン
・日本司法支援センター法テラス
これらの相談窓口なら、過労死・働き過ぎについて相談することができます。もし、「私、このままでは過労死するかも」と思ったら、迷わずに相談しましょう。
2.休む勇気・逃げる勇気を持つ
過労死の前兆が出ていても、心身共に疲れ切っている人は正常な判断ができず、「休まずに働かなくてはいけない。休んではいけない」という洗脳状態に陥っていることがあります。休むことが怖いんです。
でも、過労死を防ぐためには、休む勇気を持たなくてはいけません。休んで良いですし、逃げても良いです。
だから、このままでは過労死するかもと少しでも思ったら、休む勇気や逃げる勇気を持つようにしましょう。
3.退職する
過労死するかもしれないと思ったら、迷わずに退職しましょう。仕事よりも命が大切ですよね。過労死レベルの残業をしているという証明(タイムカード・勤怠記録)があれば、自己都合退職でも、すぐに失業保険を支給してもらうことができます。
失業保険を貰いながら、ホワイトで過労死の心配がない企業への転職活動をすれば、あなたは過労死せずに済みます。
今の職場は必死に就職活動をして内定をもらった企業だったり、一般的に有名な一流企業かもしれませんが、命よりも大切なものはありません。
だから、過労死するようなブラックな企業はさっさと逃げ出してしまいましょう。
まとめ
過労死の定義や前兆となる症状、職場の前兆、過労死が原因となる残業時間のライン、事例、対策をまとめましたが、いかがでしたか?
働き過ぎの人はたくさんいます。過労死の目安は残業時間が1ヶ月80時間以上です。もしあなたが80時間以上の残業を強いられているなら、過労死のリスクがありますので、早急な対策が必要です。転職を考慮した方が良いですよ。