パリとニューヨークを3時間半で結んだ超音速旅客機「コンコルド」ですが、墜落事故後に退役しています。
今回はコンコルド墜落事故の経緯、事故現場や原因、墜落機の映像、乗客など犠牲者数、ボイスレコーダーの記録をまとめました。
この記事の目次
コンコルド墜落事故とは
コンコルドは超音速旅客機で、パリ~ニューヨーク間なら通常の飛行機で8時間以上かかるところを3時間半で結ぶという夢の旅客機です。
そのとがった鼻先と三角形の広い「デルタ翼」という独特の外観から、「美しい貴婦人」や「怪鳥」というニックネームを持っていました。
しかし、コンコルドは2000年7月25日に墜落事故を起こしました。
フランスのパリ・シャルル・ドゴール空港をニューヨークのニューアーク空港に向けて離陸したエールフランス4590便は、離陸直後にパリ郊外のホテルの敷地内に墜落しました。
この墜落事故によって、コンコルドの安全性が疑問視され、一時運行停止となりました。
2001年11月には運行再開許可が下りたものの、直前にアメリカで9.11同時多発テロ事件が起こったことで、航空業界全体が不況になります。
燃費が悪く、航空運賃が高い(ロンドン~ニューヨーク往復150万円以上)こともあり、コンコルドの収益は上がらなくなり、2003年には退役となりました。
コンコルド墜落事故の経緯 【離陸から墜落までに何が起きたのか】
2000年7月25日に起きたコンコルド墜落事故について、離陸から墜落までの流れを見ていきましょう。
離陸準備
パリ発ニューヨーク行きのエールフランス4590便は、出発前の点検で第2エンジンの逆噴射装置に問題が発見。
部品を交換する整備を行ったことで、出発が1時間程度遅れることになりました。
そして16時35分に離陸準備が完了し、管制塔から離陸許可が下りました。
離陸から問題発生まで
管制塔から離陸許可が下りたエールフランス4590便は、16時42分に離陸を開始します。
滑走路を走りだし、時速323kmを超えたところで、コンコルドの後ろから黒煙が上がっているのが目撃されました。
しかし、すでにコンコルドは既に滑走路の半分以上を走り終わっていて、その時点から離陸を中止することはできませんでした。
そして、16時43分15秒にコンコルドは黒煙を吐きながら、パリのシャルル・ドゴール空港を離陸しました。
コンコルドから黒煙が上がっていることは操縦席からは確認できませんでしたが、管制塔からパイロットへ黒煙が上がっていること、さらに深刻な状況であることが伝えられていました。
深刻な状況に陥ったままで、コンコルドは離陸したのです。
墜落まで
黒煙を出しながら離陸したコンコルド(エールフランス4590便)は、離陸してからわずか15秒で、既に飛行に問題が生じていました。そして、黒煙だけではなく、大きな炎を吹き出します。
そのため、機長は離陸したシャルル・ドゴール空港から5km先にあるル・ブルジェ空港に着陸しようと試みます。
しかし、エレボン(飛行機の動翼)がコントロールできず、エンジンの推力低下でどんなに高度を上げようとしても高度60mよりも上に上がることはありませんでした。
そして左にそれながら飛行し、シャルル・ドゴール空港から南西に9500m離れた地点で、機首を上にした状態で失速し、後部から墜落しました。
この墜落の衝撃により、キノコ雲が観測されています。
コンコルド墜落事故の現場とは
コンコルド墜落事故の現場は、パリのシャルル・ドゴール空港から南西に約9500m離れたヴァル=ドワーズ県ゴネスのホテルの敷地内です。
「オテルイッシモ」というホテルの別館のレストランの敷地に墜落しました。
この時の衝撃でキノコ雲が生じ、機体は大炎上しました。また、この墜落によってホテルの別館は燃え上がり、火事が鎮火するまで3時間を要しています。
さらに、コンコルドは機首を上にした状態で後部から墜落したために、前部の一部を除いてほぼ消失することになりました。
コンコルド墜落事故の映像が衝撃的だと話題に
コンコルド墜落事故では、機体は離陸前から黒煙を吐き出し、さらに炎を吹き出しながら離陸していきました。その時の衝撃映像が残っています。
コンコルドの左側のエンジンから大きな炎を吹き出しているのがわかります。
こんな状態で離陸するしかなかったなんて、それを知っていた機長や副操縦士は絶望するしかなかったでしょう。
そして、離陸時は黒煙が上がっていることを知らなかった乗客も、離陸後すぐに異変が起こっていることを知ったはずです。
離陸を開始したのは16時42分。そして、離陸したのは16時43分。墜落したのは16時45分。この黒煙と炎を見ていると、2分間でも飛ぶことができたのが奇跡のように思えてきます。
そのくらい、この墜落映像は衝撃的ですよね。
コンコルド墜落事故では乗客全員が死亡している…
コンコルド墜落事故による死者は113人に上りました。
・乗員:9名(機長・副操縦士・航空機関士各1名、CA6名)
・墜落付近にいた人:宿泊客1名、ホテル従業員3名
コンコルドは乗客の定員が100名ですので、このエールフランス4590便は乗客は満席だったということになります。そして、乗員・乗客全員が死亡しました。
乗員・乗客の遺体は激しく損傷していて、法医学の見地からでないと、1人1人の判別ができない状態でした。
しかし、全員がシートに座っていてシートベルトを着けていました。このことも、離陸からすぐに墜落し、機内がパニックになる暇もなかったことがわかります。
ホテルの別館の敷地内に墜落したために、墜落現場付近にいた人も犠牲になりましたが、巻き込まれたのが4人だけだったというのは、不幸中の幸いだったと言えるかもしれません。
ただし、負傷者は10名以上に上っています。
コンコルド墜落事故の原因とは
コンコルド墜落事故の原因は何だったのでしょうか?
当初は、離陸前に第2エンジンの逆噴射装置に問題が見つかって部品を交換したことから、それが関係するトラブルではないかと思われていました。
しかし、原因を究明していったところ、衝撃の事実が明らかになったのです。
実は、墜落したコンコルド側の問題はありませんでした。
事故の原因は、墜落したコンコルド(エールフランス4590便)の数分前に離陸したコンチネンタル航空55便(DC-10)から落下した金属片をコンコルドのタイヤが踏んだことでした。
コンコルドが滑走路で金属片を踏んだことで、コンコルドのタイヤが破裂、時速323kmというスピードで走行していたために、破裂したタイヤ片は吹き飛びました。
吹き飛んだタイヤ片の中で、重量4.5kgにもなる大きなものが5番燃料タンク外壁に衝突。
その衝撃で燃料タンクは貫通こそしなかったものの、その衝撃の圧力で主翼内部の燃料タンクが破損し、そこから燃料が流出し、それが発火して、黒煙と炎を吹き出すことになったのです。
燃料の流出は毎秒75リットルという量であり、そのためあれだけの大きな炎になったということですね。
コンチネンタル航空に整備不良があった
コンコルド墜落事故の原因は、コンチネンタル航空55便(DC-10)から落下した金属片でした。
コンコルドの5分前に離陸したコンチネンタル航空55便は、第2エンジンの該当部品の欠損が判明しており、金属片がコンチネンタル航空55便の落下物であることは明らかでした。
この落下した金属片は正規品ではなく、約30年前に部品メーカーが作ったものであり、事故の16日前に取り付けたものであることがわかっています。
事故の16日前に取り付けたにもかかわらず落下し、しかも当該機は機体メーカーが定める耐性基準を満たしていなかったこともわかり、コンチネンタル航空の整備不良が問題視されました。
2010年には、フランスの裁判でコンチネンタル航空の責任を認める判決が下されました。
これにより、コンチネンタル航空に罰金20万ユーロ(約2200万円)と整備担当者に禁固15ヶ月執行猶予付きが言い渡されています。
しかし、コンチネンタル航空は控訴し、2012年には逆転無罪を勝ち取っています。
コンチネンタル航空は、法律上は無罪かもしれませんが、金属片を落としたことで、コンコルドは墜落事故を起こし、尊い113名もの命が犠牲になってしまいました。
よほど大きな落下物が発見されたのならともかく、現状では、5分間隔の離陸では滑走路の整備はできません。
コンチネンタル航空に原因がないとすれば、このコンコルド墜落事故は防ぐことができない事故だった、ということになるのかもしれません。
コンコルド墜落事故ではボイスレコーダーの記録が残っている…
コンコルド墜落事故では、墜落から数時間後に現場からブラックボックス(ボイスレコーダー)が回収されています。
このボイスレコーダーから、次のようなことがわかっています。
・機内で爆発音はなかったので、乗客によるテロなどの可能性は低い
・墜落11秒前に機長は「もうだめだ、時間がない」と言っている
離陸許可が下りて1分以内(滑走路を走っている時)に、機体の出火を知らされた機長・副操縦士・航空機関士の絶望を考えると、胸が痛いですよね。
その時点で滑走路の半分以上を走っていて、離陸する以外の選択肢がないにもかかわらず、炎が激しく噴き出している機体…。
この3分間のボイスレコーダーは、事故解明のために非常に重要な資料になりました。
まとめ
コンコルド墜落事故の概要や墜落までの流れ、墜落現場や映像、乗客について、原因やボイスレコーダーの記録をまとめました。
・乗員乗客、さらに墜落事故現場付近の人、合計113人が犠牲になった
・コンコルド墜落事故とその後の9.11同時多発テロでコンコルドは退役に
・墜落事故の原因は直前に離陸したコンチネンタル航空便から落下した金属片だった
コンコルド墜落事故は、他社の航空機が原因という珍しいタイプの飛行機事故でした。そして、間接的とは言え、この事故がコンコルドの退役を早めたと言っても良いでしょう。
コンコルドは超音速で飛ぶことができましたが、かなり燃費が悪く、さらに航空運賃が高かったので、遅かれ早かれ退役になっていたかもしれません。
コンコルドに代わる新しいタイプの飛行機が今後出てくるかもしれませんが、いずれにしても安全第一に努めてもらいたいですね。