宇宙開発での過去最大の悲劇とも言えるスペースシャトル「チャレンジャー号」爆発事故ですが、原因や乗務員の死因も話題です。
今回はチャレンジャー号爆発事故の経緯や原因、乗組員の死因や日本人の有無、会話が残ったボイスレコーダーの噂を紹介します。
この記事の目次
チャレンジャー号爆発事故とは
チャレンジャー号爆発事故は、1986年1月28日午前11時39分、アメリカのスペースシャトル・チャレンジャー号が打ち上げからたった73秒後に空中分解、乗組員7人が死亡した事故です。
スペースシャトル・チャレンジャー号は、過去9回のミッションをこなしていました。
しかし、1986年1月28日に10回目の打ち上げの時には、打ち上げられてから73秒後に爆発を起こして空中分解します。
乗員室はその爆発・空中分解に耐えて無傷の状態でしたが、遠心力によって上空に投げ出されてしまいます。そしてそのまま落下し、大西洋に叩きつけられてそのまま沈んでいきました。
このチャレンジャー号の打ち上げは、全世界に生中継されていました。そして爆発する瞬間の様子がビデオカメラに収められていたのです。
特に、このチャレンジャー号には教師であるクリスタ・マコーリフが搭乗していて、注目を集めていました。
打ち上げ時間がアメリカ時間のお昼前という時間帯だったことから、この打ち上げと爆発事故の生中継を学校で見ていた子供たちは多かったと言われています。
チャレンジャー号爆発事故の原因① メカニック系の問題
チャレンジャー号爆発事故の原因は、直接的なメカニック系の原因と指揮系統による原因の2つに分かることができます。
まずは、メカニック的な部分での原因について見ていきましょう。
Oリングが破損していた
出典:nikkei.com
チャレンジャー号爆発事故を見ると、まるでスペースシャトル自体が爆発したように見えますが、実はスペースシャトルは空中分解しただけで、機体そのものは爆発していないんです。
チャレンジャー号爆発事故は、打ち上げ直後にOリングが破損したことで起こりました。
Oリングは個体ロケットブースターの燃料の密閉に使われており、そのOリングが破損したことで密閉効果がなくなり、高温のガスが固体ロケットブースターから噴出することになりました。
そのため、その熱によって外部の燃料タンクが破損してしまったのです。
そして燃料タンクから、中の液体水素と液体酸素の推進剤がすべて漏れて出てしまい、これらが混ざって発火し、爆発を起こしました。
さらに高温になったことで接合部が焼き切れ、外部の燃料タンクが切断されてしまい、その後、個体ロケットブースターが燃料タンクに衝突し、固体ロケットブースターとタンクを失います。
その状態になっても、スペースシャトル・チャレンジャー号は高速で上昇を続けますが、過大な空力負荷に耐えられず、空中分解してしまうのです。
出典:time.com
つまり、Oリングが破損したことで、高圧のガスが漏れ出し、そのことで、周辺の燃料タンクやロケットブースターに問題が起こり、空力不可に耐えられず空中分解したというわけですね。
チャレンジャー号爆発事故の原因② 天候の問題
ウインドシア(乱気流)で燃料ガスが噴き出した
出典:gizmodo.jp
このチャレンジャー号の爆発事故に関わる要因がもう1つあります。それは天候です。
スペースシャトル・チャレンジャー号の打ち上げ時、上空の気流は非常に不安定で、乱気流があったと言われています。
事故が起こった1月28日には、シャトル計画中に記録された最大級のウインドシア(乱気流)が観測されていました。
そして、打ち上げ37秒後から27秒間でチャレンジャー号はこの乱気流を数回受けています。この乱気流が、チャレンジャー号にとどめを刺しました。
出典:nbcnews.com
前述のように、Oリングは打ち上げ発射直後にはすでに破損しています。発射から0.678秒後には、すでに右のロケットブースターからは黒煙が吹き上げていました。
しかし、その後は爆発までの約1分間は持ちこたえているんです。爆発まで持ちこたえられた理由は、酸化アルミニウムです。
ロケット打ち上げのための燃料が燃焼した結果、燃焼残留物である酸化アルミニウムが産生されました。
そして、その酸化アルミニウムがOリングが破損したことで密閉できなくなった穴をふさいだことで、約1分間は持ちこたえることができました。
しかし、無情にも乱気流を受けて、スペースシャトルとロケットブースターは振動し、その酸化アルミニウムも揺れたことで、ちょうどふさいでいた穴から外れてしまいます。
そのため、再び高温ガスが漏れてしまったことで、その後の周辺の燃料タンクやロケットブースターへの問題につながっていくのです。
もし、当日乱気流がなかったら、チャレンジャー号は酸化アルミニウムの蓋のおかげで無事に宇宙の軌道に乗れたかもしれません。
チャレンジャー号爆発事故の原因③ NASAの打ち上げ強行
チャレンジャー号爆発事故の原因は、NASAにあるとも言われています。
チャレンジャー号が打ち上げられた1月28日には、「打ち上げは中止すべき」という声が上がっていたことが分かっています。
Oリングが寒さに弱いことは事前に分かっていた
出典:wbur.org
チャレンジャー号爆発事故の直接的な原因であるOリングは、寒さに弱いことは以前から指摘されていました。
Oリングの制作会社の技術者は、リングの温度が12度以下になった場合、気密性を正常に保てるかどうか十分なデータがない、と主張しています。
事故当日の1月28日の朝は、異常な冷え込みを記録していました。
発射台の整備塔にはたくさんの氷が貼りつき、50cmを超える氷柱が観測され、赤外線カメラではOリング付近の温度は-13度と、Oリングが正常に働く下限温度を大きく下回っていました。
出典:karapaia.com
スペースシャトルの主契約企業の技術者たちは、当日のチャレンジャー号の打ち上げに懸念を表明しますが、NASAはその意見を却下し、氷を必死に除去して打ち上げの強行を決定しました。
結局、異常な寒さの中打ち上げられた結果、Oリングは低温で弾力性を失い、密閉性がなくなって、爆発事故を起こすことになります。
延期に次ぐ延期だった
出典:twitter.com
実はこのチャレンジャー号は1月28日に打ち上げられるまでに、何度も打ち上げが延期されていました。
本来なら、1月22日にチャレンジャー号は打ち上げられる予定でした。しかし、どんどん延期されて行きます。
・さらに悪天候で延期
・船外活動用ハッチに不具合が生じたことで延期
このようにチャレンジャー号の打ち上げは、延期に延期を重ねていました。
そのため、早く打ち上げたいという気持ちがあり、打ち上げを強行してしまったという事情があったのかもしれません。
実際、事故後の調査では、NASA幹部は打ち上げスケジュールを維持するために安全規定を無視していたことが分かっています。
予算の関係でOリングの不具合を無視
出典:flickr.com
NASAはこのチャレンジャー号の爆発事故が起こる前から、Oリングの脆弱性を把握していたと言われています。
チャレンジャー号では打ち上げ直後に右のロケットブースターから黒煙が確認されていますが、この現象は以前にも確認されていました。
しかし、以前は黒煙が出ていても無事にミッションを終えて、地球に帰還できていました。
そして、NASAは次年度の予算を獲得するために、技術上の問題はある程度無視していたという情報もあります。
チャレンジャー号爆発事故での乗組員① 死因は?
チャレンジャー号爆発事故では、乗組員7人全員が死亡しました。
・ディック・スコビー
・ロナルド・マクネイア
・エリソン・オニヅカ
・クリスタ・マコーリフ
・グレゴリー・ジャービス
・ュディス・レズニック
この7名の死因について説明していきます。
爆発が死因ではない
チャレンジャー号の爆発事故では、7人全員が死亡しています。また、画像・動画を見て分かるように、かなりの規模の爆発が起こっています。
しかし、乗組員7人の死因は、爆発によるものではなかったんです。
チャレンジャー号が爆発して空中分解した時、乗組員が乗っていた乗員室は強化アルミニウムで作られていて損傷は受けていませんでした。
この爆発と空中分解の衝撃では、乗組員は死亡していなかった可能性が高いと結論付けられています。
海に叩きつけられたことによる衝撃が死因
高度14.6kmで空中分解が起こった後もチャレンジャー号の乗員室は上昇を続け、機体分解から25秒後に最高高度19.8kmに達しています。
しかし、動力を失っていますので、その後は自然落下していきます。そして、大西洋に落下しました。
爆発・空中分解から、少なくとも数秒間は乗組員は意識があって生きていたとされています。
・電力系統のスイッチのうちのいくつが動かされていた
減圧で意識を失っていた可能性も
出典:lcomi.com
チャレンジャー号の爆発事故が起こってから乗員室が大西洋に落下するまで、約2分45秒かかっています。
死因が海面に叩きつけられた衝撃だったとしても、この2分45秒の間はずっと意識が保たれていたとは限りません。
爆発事故が起こってから、数秒の間に乗員室の減圧が起こり、乗組員は意識を失っていたのではないかと考えられています。
ただ、一部の専門家は海面に激突するまでほとんどの乗組員が意識を保っていたとも考えています。
もし、この説が本当だったとしたら、2分45秒もの間、乗組員たちは絶望とどのようにして向き合っていたのでしょうか。
チャレンジャー号爆発事故での乗組員① 日本人もいた?
出典:sankei.com
チャレンジャー号には乗組員として日本人がいたと言われています。これは、正確に言うと誤りです。
チャレンジャー号には日系人のエリソン・オニヅカさんが搭乗していました。
エリソン・オニヅカさんは「鬼塚承次」という日本名を持っていますが、国籍はアメリカです。
ハワイ島出身の日系3世で、祖父母が日本人でした。
出典:nasa.gov
アメリカの空軍大佐であり、宇宙飛行士として、チャレンジャー号の前にはスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗したことがありました。
そして、2回目の宇宙飛行でチャレンジャー号に搭乗して事故に遭い、39歳で殉職しました。
エリソン・オニヅカ氏はハワイでは英雄として扱われており、ハワイ島の空港は「エリソン・オニヅカ・コナ国際空港」と彼の名前が入っています。
また、ロサンゼルスの日本人街には「オニヅカ・ストリート」がありますし、小惑星・オニヅカと月のクレーター・オニヅカという名前が入ったものもあります。
チャレンジャー号爆発事故での乗組員③ ボイスレコーダーに会話が残っている?
チャレンジャー号の乗組員は爆発事故が起こってから、海面に激突するまでの約2分45秒の間、意識があったという説があります。
そして、その2分45秒の間の乗組員同士の会話を録音しているボイスレコーダーが発見されたという都市伝説があるんです。
そのボイスレコーダーの動画がYoutubeにアップされたこともあるようですが、現在は削除されています。
出典:twitter.com
こちらは、その音声動画の文字起こしをした動画です。削除されてしまった動画は、NASAから公式発表された録音テープという情報もあります。
しかし、どうやらこれはアメリカ発のデマであり、単なる都市伝説だったという見方が有力になっています。
ただ、爆発事故から海面への激突まで乗組員の意識が残っていた可能性はあります。また、このような会話を本当にしていた可能性は否定できません。
それでも、実際にはこのような会話が録音されたボイスレコーダーは見つかっていません。
実際に分かっているチャレンジャー号の最後の会話は、打ち上げから約73秒後(爆発・空中分解の直前)に宇宙飛行士のマイケル・J・スミスが「おや?(Uh, oh.)」と言っています。
この約0.1秒後には空中分解が始まりましたので、この時点で何らかの異常に気付いたことになります。
逆に言うと、空中分解が始まる直前までは乗員室では何の異変も感じていなかったということになります。
何か異変を感じ、緊急事態だと気づいていたら、「おや?」とは言わないはずですよね。
チャレンジャー号爆発事故のその後
チャレンジャー号爆発事故は、アメリカ全体に大きな衝撃を与えました。そして、アメリカのシャトル計画に大きな影響を与えました。
シャトル計画は32ヶ月間も停止したのです。そして、失われたチャレンジャー号の代わりにエンデバー号を新設し、1988年9月にようやくディスカバリー号が打ち上げられました。
さらに、シャトルのブースター自体の設計をすべて変更し、より安全性を追求するようになっています。
まとめ
チャレンジャー号爆発事故の概要や原因、死因、日本人の乗組員、ボイスレコーダーの会話などをまとめましたが、いかがでしたか?
・1986年1月28日に事故が起こり、7人全員が死亡した
・Oリングの破損が事故の直接的な原因
・NASAの打ち上げ強行も事故の原因の1つである
・乗組員は爆発直後は生きていた
・海面に激突するまで意識があった可能性もある
・日系人のエリソン・オニヅカさんが搭乗していた
・最後の会話が残ったボイスレコーダーは都市伝説の可能性が高い
チャレンジャー号の爆発事故は、宇宙開発においての大きな悲劇です。
宇宙開発に携わる方たちはもちろん、私たちもこの事故の教訓を忘れずに今後に生かしていく必要があるでしょう。