大阪市西成区の准看護師だった岡田里香さん殺害事件は、不法滞在中だった日系ブラジル人の犯人・オーイシ・ケティ・ユリ(大石ゆり)が、岡田里香さんになりすまして違法にパスポートを取得するという身勝手な理由で引き起こされました。
今回はこの岡田里香さん殺害事件の詳細や現在についてまとめました。
この記事の目次
西成の准看護師の岡田里香が殺害・死体遺棄された事件の概要
まず最初に、准看護師の岡田里香さんが大阪西成で殺害の上死体遺棄された事件について見ていきます。
殺害された岡田里香さんは事件発生当時29歳で、大阪市西成区南津守の市営住宅で一人暮らしをし、准看護師として大阪市内の老人介護施設に勤務していました。
2014年3月21日、勤務先の介護施設を退勤したのを最後に行方不明となり、約2ヶ月後の5月23日、東京都八王子市のトランクルームから遺体となって発見されます。
遺体が発見されたトランクルームは、同年4月の下旬から岡田里香さんの名義で契約されており、契約金は岡田里香さん名義のクレジットカードで支払われていた事なども判明します。
さらにその後、遺体発見前の4月下旬頃に岡田里香さん名義のクレジットカードが合計6枚も新規発行され、東京や中国の上海などで複数枚が使用され総額で100万円以上使われていた事なども判明しています。
こうした経緯から大阪府警は、岡田里香さんが何者かに殺害されてトランクルームに遺棄されたと見て捜査を開始し、遺体の梱包物から検出された指紋などから、岡田里香さんの元小中学校の同級生で日系ブラジル人のオーイシ・ケティ・ユリ(当時29歳)が事件に関与していると断定。
しかし、オーイシ・ケティ・ユリは岡田里香さんに成り済ましてパスポートを取得して同年5月3日に既に日本から出国し中国・上海へと渡航していました。
5月27日、上海で岡田里香さんの遺体が発見された事がニュースで流れると、オーイシ・ケティ・ユリが在上海日本総領事館へと出頭し「岡田さんの同意を得てパスポートを取得した」「事件とは無関係だと説明したい」などと釈明した事で、中国公安当局によって不法入国者として身柄を拘束されます。
オーイシ・ケティ・ユリは、それから約2年8ヶ月に渡って中国で身柄を拘束されていましたが、中国当局が大阪府警からの身柄引き渡し要求に応じた事で、2017年1月25日にようやく日本へと身柄を引き渡されています。
身柄引き渡しと同時に、大阪府警は、岡田里香さんのクレジットカードを不正利用した詐欺容疑でオーイシ・ケティ・ユリを逮捕して取り調べを開始しますが、当初、オーイシは「何も話すことはない」と犯行を否認し続けたため取り調べは難航。
しかし、2017年3月3日に強盗殺人容疑で再逮捕されるに至って、ようやく岡田里香さん殺害の経緯を供述し、事件の詳細が明るみに出たのでした。
西成の准看護師・岡田里香殺害事件の真相① 犯人・オーイシ・ケティ・ユリ(大石ゆり)の不法滞在が関係
オーイシ・ケティ・ユリは日系ブラジル人3世としてブラジルで誕生し、小学校に入学する前に両親と弟と共に来日して小中学校を日本の学校で過ごし、その後、大阪市内の公立高校へと入学しますが、その途中でブラジルへと帰国しています。
ブラジルの高校を卒業後、20歳の時に再び日本へと戻り、東京八王子市でアルバイトなどをしながら生活していました。オーイシ・ケティ・ユリは日本に戻ってしばらく後、アルバイト先で知り合ったという、大学院に通う中国籍女性とルームシェアを始めています。
ルームシェアをした八王子のマンションの契約や家賃などはこの中国籍女性が面倒を見ていたという事から、この頃のオーイシ・ケティ・ユリは経済面でこの中国籍女性に依存した状態だったと見られています。
しかし、この中国籍女性が2013年秋に大学院を修了し、2014年4月からは中国・上海の日系企業で働く事が決まり、このルームシェア生活を終えざるを得なくなります。
オーイシ・ケティ・ユリはこの中国籍女性について中国・上海へと渡りたいと考えるようになりますが、オーイシは在留資格の更新を怠った事で2007年頃から不法滞在の状態になっており、上海へと渡航する事は困難でした。
西成の准看護師・岡田里香殺害事件の真相② パスポート偽造を企みFacebookで友人を検索
ルームシェア相手の中国籍女性が中国・上海の日系企業に勤める事になり、これについて中国に行きたいと考えたオーイシ・ケティ・ユリでしたが、不法滞在の状態だったため、正規の方法で出国する事は不可能でした。
そこで、オーイシ・ケティ・ユリは、他人になりすましてパスポートを偽造すれば良いと考えFacebookなどのSNSを利用し、ターゲットとすべくかつての友人の情報を収集。
自分の写真を作って新たにパスポートを作る必要があるため、既にパスポートを所持している海外渡航経験のある友人や、襲う事が難しいという理由で家族と同居している友人は除外、こうした条件に適合するターゲットとして選ばれたのが、被害にあった准看護師・岡田里香さんでした。
西成の准看護師・岡田里香殺害事件の真相③ 同窓会で接触し殺害に至る
オーイシ・ケティ・ユリはFacebookなどのSNSを利用してターゲットと定めた岡田里香さんに接触し、2014年2月1日に、小学校の同級生4人での「プチ同窓会」をセッティング、交流を再開させます。
同窓会の日の夜、オーイシ・ケティ・ユリは、岡田里香さんの自宅の大阪西成区の市営住宅で一泊していますが、この時についてオーイシは「漠然と岡田さんを殺そうと考えていた」としつつも「どうやって殺害するか思いついていなかった」と供述しており、殺害しようと思って宿泊したものの犯行には至らなかったようです。
それから約1ヶ月半後の3月21日の夜、オーイシ・ケティ・ユリは、ホームセンターでナイフを購入し、強い殺意を胸に秘めて再び岡田里香さんの自宅へと押しかけます。約束もなく突然押しかけてきたオーイシ・ケティ・ユリを岡田里香さんは仕方なく家へと入れ、宿泊させたようです。
ここで、オーイシ・ケティ・ユリは、岡田里香さんに対して、パスポートを作るために身分を貸して欲しいと持ちかけたようです。当然ながら岡田里香さんはこれを断り、身勝手な要求に激怒したようです。
岡田里香さんはオーイシ・ケティ・ユリを追い返そうとしたようですが、朝になっても一向に帰ろうとしないオーイシに対して次第に苛立ちを募らせたようです。「ええ加減にしてよ、早く帰って」と岡田里香さんが立ち上がった時、反射的にオーイシはカバンからナイフを取り出し、体ごとぶつかるようにして岡田里香さんの腹のあたりを突き刺しました。
オーイシ・ケティ・ユリは裁判でこの時の事を「よく覚えていないが何回も何回も刺した」と供述しています。
西成の准看護師・岡田里香殺害事件の真相④ 遺体を宅配便で「人形」として発送
オーイシ・ケティ・ユリは、殺害した岡田里香さんの遺体をホームセンターで購入してきた緩衝材やダンボールで梱包した上で、宅配業者に「粘土のフィギュアを送りたい」と電話で依頼し、梱包遺体を「人形」だと偽り、東京・八王子市の自宅マンションへと発送しています。
その後、オーイシ・ケティ・ユリは、岡田里香さんの遺体を自宅マンションに置き、岡田里香さんの健康保険証などを利用してクレジットカードを合計6枚作成、そのクレジットカードを利用して、八王子市下柚木2丁目10にあるトランクルームを契約し、そこに岡田里香さんの遺体を隠しました。
こうして、岡田里香さんになりすましたオーイシ・ケティ・ユリは岡田里香さん名義のパスポートを取得し、それを使って中国へと違法入国したのでした。
この時、オーイシ・ケティ・ユリが不正に発行したクレジットカードは、東京や中国・上海などでホテル宿泊費用や衣服購入代などで総額で100万円以上も使用されています。
西成の准看護師・岡田里香殺害事件の現在について
オーイシ・ケティ・ユリの裁判は、2019年12月12日に第二審で「無期懲役」の判決が下されています。
オーイシ・ケティ・ユリの弁護士側は、被告は犯行時、「解離性同一性障害(多重人格)」で責任能力は限定的であると主張し、第一審判決での「無期懲役」判決を不服として控訴していましたが、大阪高裁は計画的な犯行内容からも「善悪を判断した上で行動したことは明らか」と刑事責任能力を認め、被告側の控訴を棄却する結果となりました。
同年12月25日、オーイシ・ケティ・ユリの弁護士側はこの判決も不服として最高裁へと上告しています。今後、この裁判は最高裁判所で争われる事になります。
まとめ
大阪市西成区の准看護師・岡田里香さんが殺害され、遺体で発見された事件についてまとめてみました。
岡田里香さん殺害事件の真相は、不法滞在の日系ブラジル人・オーイシ・ケティ・ユリが、岡田里香さんになりすましてパスポートを違法に取得する目的だった事などが判明しています。
あまりにも身勝手で凶悪な犯行ですが、オーイシ・ケティ・ユリは裁判で犯行時は「解離性同一性障害(多重人格)」で心神耗弱状態だったと訴え、減刑を求めています。
2019年12月には「無期懲役」の判決が下されていますが、オーイシ・ケティ・ユリはこれを不服として上告しています。あまりにも理不尽な理由で殺害された被害者のためにも、最高裁では、法の手によって正当な判決が下される事を期待したいと思います。