未解決のまま時効を迎えた「名古屋妊婦切り裂き殺人事件」ですが、Netflixドラマの元ネタになり再び注目を集めています。
今回は名古屋妊婦切り裂き殺人事件の詳細、犯人の動機や真相、被害者の夫や子供の現在をまとめました。
この記事の目次
名古屋妊婦切り裂き殺人事件とは
名古屋妊婦切り裂き殺人事件とは、1988年3月18日に愛知県名古屋市で起こった猟奇的殺人事件です。
臨月の妊婦のお腹を切り裂き、赤ちゃんを取り出したというあまりにも残忍な事件は、日本中に衝撃を与えました。
愛知県警は4万人以上の捜査員を投入して必死に犯人を捜したものの、犯人逮捕には至らず、未解決のまま時効を迎えました。
被害者は電話に出なかった…
名古屋妊婦切り裂き殺人事件は、1999年3月18日に愛知県名古屋市中川区富田町のアパートの一室で起こりました。
このアパートに住んでいたのは、臨月を迎えた妊婦の27歳の被害者と31歳の夫です。若い夫婦がもうすぐ生まれてくる赤ちゃんを心待ちにして過ごしていたところに、悲劇が起こります。
被害者は事件5日前の3月13日に出産予定でしたが、予定日を過ぎても陣痛が来ず、夫は妻の体調を気遣い、仕事中も自宅にたびたび電話をして、体調に変わりはないかを確認していました。
そして事件当日の3月18日12時ごろ、夫が電話をした時には何も異変はありませんでした。
しかし、夫は退社直前の18時50分ごろにもう一度電話をかけましたが、この時は被害者は電話に出ませんでした。
不審に思ったものの、「自分が帰る頃には、妻も帰宅しているだろう」と軽く考えて帰宅します。
夫が第一発見者
そして、被害者の夫が帰宅したのは19時40分ごろのこと。普段は自宅玄関には鍵がかかっているのに、この時は鍵がかかってませんでした。また、部屋に電気はついていませんでした。
不審に思ったものの、とりあえず被害者の夫はスーツから部屋着に着替えます。その時、部屋の奥から赤ちゃんのか細い泣き声が聞こえてきました。
この時、「あぁ、生まれたのか…」と思い、明かりをつけて、泣き声が聞こえる方を見ると、妻である被害者の無残な姿を発見するのです。
被害者は次のような状態で遺体となっていました。
・後ろ手に縛られて仰向けに倒れていた
・腹部はみぞおちから下へ刃物で縦一文字に約38cmも切られていた
・胎児は子宮から取り出されていた
・被害者の腹部には電話の受話器とミッキーマウスのキーホルダーが詰め込まれていた
首を絞められ殺害された後、お腹を縦一文字に切り裂かれ、子供を取り出された被害者は、子供の代わりに電話の受話器とミッキーマウスのキーホルダーがお腹に詰め込まれていたのです。
被害者の子宮から取り出されていた赤ちゃんは、遺体となった被害者の隣で、血の海の中で泣いていました。
夫は1階の住人に電話を借りて通報
この悲惨な状況を目にした被害者の夫は119番通報をしようと電話を探しますが、普段ならダイニングキッチンにあるはずの電話が見つりませんでした。
電話線は引きちぎられ、受話器は被害者のお腹に入れられていたのですから、見つかるはずもありません。
電話が見つからなかった夫は、通報するために1階の住人宅を訪ねます。
1階の住人によると、この時の夫は血相を変えながら、「電話が引きちぎられて赤ん坊が出ているから電話を貸してほしい」と頼み込んできたとのこと。
救急隊が到着し、被害者と子供は名古屋市内の名古屋掖済会病院に搬送されますが、被害者は間もなく死亡が確認されました。
未解決事件として時効を迎えた
この事件が発覚した後、愛知県警は中川署に特別捜査本部を設置し、4万人もの捜査員を投入して、必死に犯人を捜しました。名古屋市民からも多くの情報提供が行われました。
しかし犯人を特定することはできず、捜査は完全に行き詰ってしまいます。
そして、2003年3月18日午前0時で公訴時効を迎え、名古屋妊婦切り裂き殺人事件は未解決事件となりました。
名古屋妊婦切り裂き殺人事件で被害者の子供は助かっていた
名古屋妊婦切り裂き殺人事件では、臨月の妊婦のお腹が縦一本に引き裂かれ、胎児は被害者の子宮から取り出されて、血の海の中で泣いているところを発見されました。
この子供は救急隊到着後、母体(被害者)と一緒に名古屋掖済会病院へ搬送されています。
子供は発見時、膝と臀部を刺され、さらに下腹部を切りつけられていました。これは、被害者の子宮を犯人が刃物で切り裂いた時にできた傷と思われます。
さらに、取り出された後は何の保温もなく、血の海に投げ出されていたことから、体温は約30度まで低下し、さらに外傷による極度の貧血状態になっていて、命の危機に瀕していました。
しかし、被害者の夫の父(祖父)からの輸血や病院での懸命な手術のおかげで一命をとりとめ、事件翌日にはミルクを飲み始め、事件(出生)から約2週間後の4月2日には退院しています。
名古屋妊婦切り裂き殺人事件の謎
この名古屋妊婦切り裂き殺人事件にはいろいろ謎が残されています。
・子供は子宮から取り出された後、危害を加えられていなかった
・被害者のお腹の中には電話の受話器とミッキーマウスのキーホルダーが詰め込まれた
・警察の現場検証の際は受話器は取りだされていた
妊婦を殺害したら、そのまま胎児も殺害しそうなものです。泣いていたら、「うるさい」と思うでしょうから。
でも、この犯人は胎児を取り出す時に傷は負わせたものの、手早く子宮から取り出し、それ以上の危害は加えていません。
また、なぜお腹の中に電話の受話器とミッキーマウスのキーホルダーが詰め込まれていたのか?これが名古屋妊婦切り裂き殺人事件の最大の謎ですね。
電話は普段はダイニングキッチンに置かれていましたが、コードは鋭利な刃物で切られ、受話器は被害者のお腹の中に入れられたんです。
そしてミッキーマウスのキーホルダーは、被害者の夫の自家用車のキーがついていたキーホルダーでした。事件当日、夫は車を使っておらず、車のキーは自宅にあったのです。
しかし、警察の現場検証の時は、お腹の中に入れられていたはずの受話器は血まみれでキッチンの床に転がっていたそう。誰かが被害者のお腹から受話器を取り出したということになります。
救急隊員が搬送の時に慌てていて取り出したということのようですが、腹部に入っていた受話器を救急隊員が取り出すのか?という疑問は残りますよね。
受話器がお腹に入っているの見えていても、素人ならともかく、救急隊員はそのままにして病院へ搬送すると思うのですが。
名古屋妊婦切り裂き殺人事件の犯人とは?
未解決事件になっている名古屋妊婦切り裂き殺人事件の犯人は、一体どんな人物なのでしょうか?
被害者の夫が容疑者に…
名古屋妊婦切り裂き殺人事件で、最初に犯人だと疑われたのは被害者の夫でした。なぜ、被害者の夫であり、第一発見者である夫が犯人だと疑われたのでしょうか?
・性的暴行の痕はなかった
・抵抗した形跡はなかった
・報道陣を前にあまりにも落ち着き払った態度を見せた
妻を殺害された上に犯人だと疑われるなんて、被害者の夫の心中は察するにあまりありますね。
被害者がアムウェイ関係のトラブルを起こした?
犯人はアムウェイ関係ではないかと噂されたこともあります。
というのも、被害者はアムウェイをやっていて、事件当日の犯行時刻の直前まで、アムウェイの家庭用品を購入してくれた友人と会っていたからです。
アムウェイは、ネズミ講のような側面を持つサービスで、トラブルが起こりやすいとされています。
犯行時刻は15時~16時。そして、その友人は15時ごろまで被害者の自宅に滞在していたことがわかっています。
この友人は犯人ではありませんが、アムウェイ関係のトラブルと思われても仕方がありません。
ただ、警察の捜査の結果、アムウェイ関係は犯人ではなく、事件にも関係ないことが明らかになっています。
医学的な知識があった人物?
犯人は被害者のお腹を縦に刃物で切って、子供を取り出しています。子供は少し傷を負ったものの、犯人によって被害者の子宮から生存した状態で取り出されました。
このことから、犯人には医学的な知識があったのではないか?と推測されました。
普通に考えて、何の知識もない一般人がメスや医療器具もない場所で帝王切開をして、子供を無事に取り出すなんて非常に困難ですから。
ただ、これは複数の医師と司法解剖の結果によって否定されました。被害者は縦38センチにわたって縦に一直線にお腹を切られています。
しかし、普通の帝王切開はお腹を横に切ります。緊急性が高い時などは縦にお腹を切ることもありますが、その場合も、38センチも一気に切ることはありません。
また、普通は上から下に向かってメスを入れますが、犯人は被害者のお腹を下から上に向かって切っていました。
これらのことから、医学的知識があったとは考えにくく、犯人は医師や医学生という推測は否定されています。
近所では怪しげな男が目撃されていた
名古屋妊婦切り裂き事件が起こった3月18日以前と事件当日には、怪しげな人物が目撃されていました。
・事件当日、被害者宅の下の階の住人宅(通報の電話を夫が借りた部屋)に不審な30歳代前後の丸顔の男が訪ね、「ナカムラさんのところを知りませんか?」と聞いていた
・事件当日の14時30分ごろ、被害者宅のアパート駐車場にアイドリングした車が停まっていた
・事件当日16時半ごろ、被害者宅のアパート周辺を不審な男がうろついていた(37~38歳男性、身長175cm)
名古屋妊婦切り裂き殺人事件の犯人の動機とは
名古屋妊婦切り裂き殺人事件の犯人の動機は何でしょうか?
犯人は妊婦に興味がある変質者?
名古屋妊婦切り裂き殺人事件では、最初は怨恨が動機と思われていましたが、指紋がキレイに拭き取られ、遺留物が全くなかったことから、プロの変質者の犯行と見られています。
犯人は妊婦に興味があった。もっと言えば、妊婦の胎内・子宮内に興味があり、実際に見てみたかったのではないか?と専門家は推測しているんです。
だから、迷いなく妊婦のお腹を切りさき、子供を無事に取り上げた犯人は、「妊婦の体内を見る」という目的を果たした後、子供は殺害せずにそのまま横に放置していたということです。
犯人は冷静だった可能性が高い
この名古屋妊婦切り裂き殺人事件の犯人が怨恨ではなく、プロの変質者であり、しかも冷静な変質者だったという証拠はもっとあります。
先ほど説明したように、指紋が拭き取られ、犯人につながる遺留物はなかったことも、冷静なプロの変質者である裏付けになります。
そしてもう1つの裏付けは、電話とミッキーマウスのキーホルダーをお腹の中に入れたことです。
石井利文・東京医科歯科大学難治疾患研究所員によると、「受話器=胎盤」「電話機のコード=臍帯」「ミッキーマウスのキーホルダー=胎児」と見立てていたからという理由だそうです。
しかし、単純に電話と車のキーのキーホルダーお腹の中に隠すことで、犯人は追跡される時間稼ぎをしたかった、とも考えられます。
受話器を隠すことで電話ができなくなる、車のキーを隠すことで車を使えなくするためです。
「そうすれば、万が一、被害者が生きていて、動ける状態だったとしても、自分を追ってくることはできない」と犯人は冷静に考えたのかもしれません。
この説が真実なら、犯人は冷静であると同時に、犯行がバレることに恐怖を抱いていたということになります。
名古屋妊婦切り裂き殺人事件の真相
名古屋妊婦切り裂き殺人事件は、警察の必死の捜査にも関わらず、2003年に時効を迎え、未解決事件となっています。そのため、真相は闇の中です。
しかし、「こいつが犯人ではないか?」という事件の真相に迫る情報があるんです。
名古屋妊婦切り裂き殺人事件の真相は、後藤明弘が犯人というものです。
後藤明弘は、2000年以降に4つの事件を起こしています。
・2006年7月:ベトナム国籍のレ・ティ・リーさん(24歳)を殺害
・2006年11月:窃盗
・2011年:長瀬まゆみさんを暴行死させた
2件の窃盗は名古屋市内で、レ・ティ・リーさん殺害は愛知県豊川市、長瀬まゆみさんは岐阜県高山市で起こっています。いずれも、名古屋周辺での事件です。
これらのことから、名古屋妊婦切り裂き殺人事件の真相は、前科のある後藤明弘による犯行という説があるんです。
この後藤明弘は2013年に殺人については無期懲役、傷害致死は懲役20年の判決を言い渡されています。つまり、無期懲役で今も収監中ではあります。
あくまで、後藤明弘が名古屋妊婦切り裂き殺人事件の犯人という真相は推測です。後藤明弘が名古屋妊婦切り裂き殺人事件を自供しているわけではありません。
ただ、これらの情報を総合すると、「名古屋妊婦切り裂き殺人事件の真相は犯人=後藤明弘」というのは信ぴょう性が高いように思えます。
ちなみに、事件当日に被害者宅の1階に来た不審な人物は30歳前後の丸顔の男性だったという証言があります。
事件当時、後藤明弘は24歳で、「30歳前後」は許容範囲ではありますね。また、5ちゃんねるによると、後藤明弘は丸顔だそうです。
今後藤明弘って検索してみたけど後藤丸顔で草w
名古屋妊婦切り裂き殺人事件の現在 【被害者の子供や夫の今】
名古屋妊婦切り裂き殺人事件は未解決事件になってしまいましたが、被害者家族は現在、どうなっているのかを見ていましょう。
名古屋妊婦切り裂き事件は未解決のまま時効に
名古屋妊婦切り裂き殺人事件は未解決事件になりました。
つまり、時効であり、いまさら犯人がわかっても、犯人が長く海外に滞在していたなどの理由がない限り、逮捕できないし、罪に問うことはできないということです。
あれだけの猟奇的な事件の犯人がいまだに捕まっておらず、この社会のどこかでのうのうと暮らしている可能性があると考えると、とても恐ろしいですね。
被害者の実父は、公訴時効を前にした取材に次のように答えています。
たとえ逮捕されなくてもこのまま苦しみながら生きていくならそれでいいが、「犯人が時効後に平然と社会で生活する姿」を想像すると娘が不憫だし、公訴時効制度が憎い
自分の娘が無残に殺害されたのに、時効が来たことで犯人が罪の意識もなく普通に生活していたとしたら、遺族の苦しみが倍増することは間違いないでしょう。
被害者の子供や夫はハワイに移住した
被害者の子供と夫は、ハワイに移住しています。
事件後、夫は子供を自分の実家に預け、自分は事件があったアパートで一人暮らしをしていましたが、その後、東京に転勤しています。
そして、子供が小学校に上がるのを機に、夫は子供と自分の母親と3人で暮らし始め、子供が6年生になるのをきっかけに3人でハワイに移住しました。
おそらく、日本にいるとどこに行っても「名古屋妊婦切り裂き殺人事件の被害者の夫と生き残った子供」になるため、子供の健やかな成長のためにハワイへの移住を選んだのだと思われます。
『呪怨:呪いの家』の元ネタに
出典:https://filmarks.com/dramas/
この名古屋妊婦切り裂き殺人事件が再度注目されるようになったのは、Netflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』の元ネタになったことが理由です。
名古屋妊婦切り裂き殺人事件が『呪怨:呪いの家』のストーリーの主軸ではないものの、「呪いの家」に住む灰田家に起きた悲劇は、名古屋妊婦切り裂き殺人事件がモチーフになっています。
名古屋妊婦切り裂き殺人事件のまとめ
名古屋妊婦切り裂き殺人事件の概要と詳細、犯人の動機や事件の真相、被害者の夫や子供の現在などをまとめました。
このような恐ろしい事件が日本で起こったこと。そして、事件は未解決のままで、犯人は逮捕されていないこと。これらを考えるととても怖いですよね。
最後に、被害者のご冥福を心よりお祈り申し上げます。