2014年に起きた御嶽山噴火は多くの犠牲者を出した戦後最悪の火山災害で、生存者の記録動画が話題です。
今回は御嶽山噴火の動画、死者や行方不明者など被害、犠牲者の死因や生存者の証言、御嶽山噴火のその後と現在を紹介します。
この記事の目次
「御嶽山噴火」の瞬間と登山者の行動まとめ
ヤバい!
そんな緊迫した叫び声から始まった動画は、次の瞬間、信じられない光景を写し出していました。
出典:https://gigazine.net/
そんな目を疑うような光景に、思わず近くにいた別の人はこう呟きます。
何これ?噴火?
出典:https://gigazine.net/
みるみる迫り来る噴煙に、我に返った一行は…
避難小屋ってどこにあった?
あそこだ!あそこ行く?
行こう!
目に入った避難小屋目指して、急いで下山を始めたものの、誰かが「間に合わん!」と発した次の瞬間にパラパラと火山灰が降り注ぐ音とともに、一行は噴煙に飲み込まれてしまうことに…。
出典:https://gigazine.net/
ついさっきまで広がっていた美しい青空が嘘のように、あたりは急激に薄暗くなっていき、やがて視界が遮られるほどに…もうそうなると口と鼻を押さえてうずくまることしかできません。
しかし、間もなく風向きが変わったのか、奇跡的に噴煙が晴れていき、一行は避難小屋への避難を再開しました。
その後、無事に避難小屋に逃げ込むことができた一行は、2回目、3回目の水蒸気爆発とその噴煙や噴石に耐え、命からがら下山することができたそうです。
避難開始しました pic.twitter.com/VQsGRXuTCe
— MM (@mori____mori) 2014年9月27日
その後YouTubeにアップされたこの動画は、戦後最悪の火山災害となった「御嶽山噴火」の緊迫した瞬間を最も克明に捉えた動画として、現在も惨劇を語り継ぐ貴重な資料となっています。
「御嶽山噴火」を捉えた貴重な動画まとめ
動画が見られない人のために、まずは文章で説明してみましたが、もちろんこの動画は現在も見ることができるので、紹介しておきましょう。
この記事の冒頭で描写した動画のオリジナル版です。
恐らくスマホで撮影された映像だったことから、この動画を「左回転」に編集し直して見やすくした動画もあったので、そちらも併せて貼り付けておきます。
次の動画は、複数の噴火口からすさまじい勢いで立ちのぼる噴煙や、火山灰に埋まった山小屋や御嶽神社頂上奥社の社殿などを上空ヘリから撮影した映像です。
後日、テレビ朝日に寄せられたという、山頂近くの山小屋「二ノ池本館」の脇から噴火直後の様子を撮影した動画を紹介しましょう。
この動画の撮影者はこの後、山小屋に避難するのですが、30分ほど経ってから下山するために小屋を出ると辺りの景色は一変していたと言います。
「御嶽山」とは?初心者でも登りやすい“日本百名山”の1つ
古くから信仰の対象とされてきた御嶽山は、長野県と岐阜県の境にある標高 3,067メートルの活火山で、“日本百名山”の1つに数えられています。
出典:https://www.nhk.or.jp/
独立峰のため、山頂からは四方のアルプスが一望の下に見渡せる上、3,000メートル級とは言え、7合目付近まで車やロープウェーで登ることができるます。
そのため、日帰り登山も可能で、登山初心者でも比較的登りやすく人気の山でした。
出典:https://www.nhk.or.jp/
「御嶽山噴火」の犠牲者や行方不明者など被害まとめ
御嶽山噴火の詳細データと犠牲者や行方不明者の数
・噴火時刻: 2014年9月27日11時52分
・噴火様式: 水蒸気爆発(水蒸気噴火)
・噴煙高度:火口から最大7,000メートルと推定
・推定噴出量: 27日は50万トン程度
・死亡者数: 58名
・行方不明者数:5名
2014年9月27日11時52分、長野県と岐阜県の県境に位置する、標高3,067メートルの御嶽山が噴火しました。
当時は、絶好の晴天に恵まれた休日で、しかもちょうど正午前という時間帯ということもあり、多くの登山客が山頂付近で、お弁当を広げたり、記念撮影したりして過ごしていたと言います。
そんな中、突如として起こった噴火だったことから、最終的に58名が死亡し、現在も依然として5名が行方不明のままです。
1991年6月3日に起こった雲仙・普賢岳の火砕流による犠牲者43名を超え、日本における戦後最悪の火山災害となりました。
出典:https://www.jiji.com/
この御嶽山噴火でこれだけの犠牲者が出た最大の要因は、噴火当時の噴火警戒レベルが1だったことに起因しています。
御嶽山噴火の兆候は特に見られなかった?
実は、御嶽山噴火が発生した約2週間前である9月10日と11日に、噴火の兆候と言われている火山性地震が、それぞれ52回と85回観測されていました。
9月10日と11日の2日間に、それぞれ52回と85回の火山性地震が突発的に観測されるも、御嶽山噴火が発生した27日まで沈静化していたことが分かります。
しかし、その後は1日あたり20回以下と小康状態が続いていたとことから、気象庁は警戒は呼びかけていたものの、噴火警戒レベルは1のままにしていたと言います。
御嶽山の2014年9月の噴火の約半月前には地震回数が多くなる前兆現象が認められましたが、2日ほどで回数が元に戻ったことと、前回の噴火の前に見られた山体が膨らむ現象が観測できなかったためにレベルを上げませんでした。
引用:現代ビジネス-御嶽山はなぜ噴火警戒レベル1だったのに噴火したか https://gendai.ismedia.jp/
しかし、御嶽山に顕著な噴火の兆候が現れ始めたのは、噴火が発生する約11分前のこと。
東北に11km離れた観測所で火山性微動が観測された他、7分前には山体が盛り上がる変化も観測されていたそうです。
また、御嶽山に詳しい登山ガイドや山小屋従業員らから、「硫化水素が普段より強かった」「噴気の勢いが強かった」などの証言もあったようです。
御嶽山噴火は水蒸気爆発だった
噴火後の調査の結果、降り注いだ火山灰を構成する粒子に、マグマ由来の成分が検出されなかったことから、今回の噴火は水蒸気爆発であると分析されています。
出典:https://www.asahi.com/
山頂の南西にある地獄谷付近の地下にたまった熱水が、何らかの原因で急激に過熱(又は、減圧)されたことにより、急膨張したことで水蒸気爆発を起こしたと言われています。
山頂付近で噴火に遭遇し、命からがら生還した登山客の多くは、次のように証言しています。
「最初の噴出は岩がぶつかるような音で始まり、爆発音はなかった」
引用:2014年の御嶽山噴火 – Wikipedia https://ja.wikipedia.org/
実際、最初は噴火ではなく、落石が起こったと感じた人が多かったようです。
地下からマグマがせり上がるマグマ噴火とは異なり、今回の御嶽山噴火のような水蒸気爆発は、前兆現象の現れ方がその時々で異なることから、予知することは非常に難しいとされています。
出典:https://mondaymorning.blue/
「御嶽山噴火」の生存者が語った噴火前後の時系列まとめ
冒頭で紹介した動画もそうですが、御嶽山噴火発生直後、登山客らは必死に逃げながらも、その場にいた人にしか撮影できない異様な光景を、スマートフォンやデジカメで撮影していました。
ここでは、御嶽山噴火の生存者から寄せられた多くの画像のうち、特に印象的なものをピックアップして、できる限り時系列に沿ってまとめてみました。
噴火前に音は全くしなかったと多くの登山客は証言しています。
8合目付近から噴火の様子を撮影した写真です。
出典:https://twitter.com/
出典:https://www.sankei.com/
噴火の瞬間には、場所によっては「ドン」という大きな音を聞いた登山客も多かったようです。
しかし、噴火前同様に音は全く聞こえなかった人も少なくなく、そのような人は大きな雨雲が湧き出してきたと思った…などと証言しています。
また、噴火だと気付き危機感を抱きながらも、青空に映える噴煙を見上げて「綺麗だな」なんて思った登山客も少なくなかったようで、次のような異様な写真も撮影されています。
出典:https://mainichi.jp/
出典:https://gendai.ismedia.jp/
出典:https://www2.ctv.co.jp/
「噴火直後、緊張感はありませんでした。煙だけだったらきれいで、実際にはまだ現実感がない状態でしたが、その後突然、無数の噴石が降りかかってきました。1m先も見えないくらい真っ暗になりました。」
噴火直後に剣ヶ峰近くの二ノ池本館の外で撮影された写真です。突然、音もなく噴煙が上がると、あっという間に黒い噴煙が押し寄せてきたそうです。
山頂から200mほど南の火口付近で撮影された写真です。
爆発するようなババーンという音がいろんなところから聞こえ、そのたびに稲妻のような「閃光」が走りました。大きな岩がガランガランと落ちる音も聞こえ、いずれは死ぬだろうと思いました。この世の状況と思えませんでした。
出典:https://www.nhk.or.jp/
御嶽が噴火した
— MM (@mori____mori) 2014年9月27日
やばい、遭難した pic.twitter.com/mobJ2mqhNh
噴火前は特に変わったことはありませんでした。噴火は後ろを振り返ると噴煙が上がっているのを見て初めて気が付きました。辺りが暗くなり石や灰が降ってきて、山頂近くの山荘に逃げ込みましたが、屋根を貫いて建物内にも岩が降ってきたので、ヘルメットをかぶってじっとしていました。
山小屋の屋根に空いた穴と近くにいる人間の大きさを比べると、戦慄を覚える写真ですね。
山頂で写真を撮っていたら噴火に気づきました。すぐに真っ暗になり雨のように噴石が飛んできて、避難した御嶽頂上山荘は窓が割れ、壁も噴石で穴が開きました。けがで血を流す人がいて、「医者か看護師はいませんか」と近くの人が叫び、元看護婦が止血しました。
出典:https://www.nhk.or.jp/
黒い雲と同時にバラバラと細かい砂が降ってきて、小屋に逃げ込む手前で一瞬真っ暗な状態になり、前が全く見えなくなりました。小屋の中ですら粉じんが舞っていて息がしづらい状態で、皆パニック状態でした。噴火の際は火口から500mにいましたが、すぐ近くの小屋に逃げ込んで助かりました。しかし外には多くの人が残されていました。
出典:https://www.nhk.or.jp/
避難小屋はぎゅうぎゅう詰めで、3回目の爆発のとき、真っ暗になりました。中はサウナにいるような状態で、呼吸もだんだん苦しくなりました。3回目の爆発のあと、とどまるのは危険と判断し、8合目の避難小屋に向かって下山しました。あと30分行動が遅かったらと考えると紙一重でした。
避難小屋に逃げ込めなかった人は、さらに悲惨な状況だったようです…。
神社横にある社務所に逃げ込もうとしましたがカギがかかり入れなかったので、ひさしの下で壁に張り付くようにしていました。噴石から逃れようと同じ軒下に大勢が二重三重に身を寄せましたが、ひさしがないところにいた人には次々に石が当たりました。ザックを頭に乗せ目をつぶって噴火がおさまるのを待ちました。中にあった食器が私の命を守ってくれたのだと思います。何もなかったら、一撃で絶命していたでしょう。
出典:https://www.nhk.or.jp/
石室山荘側から頂上方向を見上げるようにして撮影された写真です。あたり一面が火山灰に覆われ、噴火前とはガラリとその様相が変わっています。
出典:https://twitter.com/
御嶽山の山頂にある御嶽神社付近で、捜索活動を行う自衛隊と消防の捜索隊の様子です。
出典:https://www.sankeibiz.jp/
御嶽山噴火を偶然、上空の旅客機の窓から確認した人も…。
出典:https://twitter.com/
出典:https://twitter.com/
その瞬間の異様な光景を画像で振り返るだけでも圧倒的な迫力がありますが、その場で被災した人々が感じた恐怖は計り知れないものがありますね。
最後に、御嶽山噴火のその瞬間、火口の近くにいたにもかかわらず、奇跡的に生還した人達の貴重な証言動画があったので、紹介しておきましょう。
「御嶽山噴火」の犠牲者の死因とは?
多数の犠牲者を出した今回の御嶽山噴火ですが、犠牲者の多くの死因は「損傷死」と報道されています。
御嶽山の噴火では、死亡確認された47人のうち46人が、噴石が頭や体にぶつかったことによる損傷死だったことが、長野県警の検視で分かりました。
また、残る1人は熱傷死と発表されています。47人のうち身元不明だった5人は兵庫県加古川市の会社員男性(40)と小学4年男児(10)の親子らと分かり、全員の身元が判明しました。
損傷死とは
身体に受けた損傷を直接的・間接的な原因として死亡すること。脳・心臓・肺など主要な臓器の著しい障害、損傷に続発する心タンポナーデ・脳ヘルニアなどの二次性機能障害、失血・出血性ショック・外傷性ショックによる死亡などがある。
引用:損傷死(そんしょうし)
県警はこれまで県内で発生した災害の犠牲者について、「災害死」としか発表してきておらず、死因の発表は異例とされています。
出典:http://banbei77.cocolog-nifty.com/
また、負傷者の応急処置に当たった医療関係者の証言もいくつか得られており、中でも、多くの負傷者が運ばれた長野県立木曽病院の関係者は次のように語っています。
29日までに計61人のけが人が運ばれた長野県立木曽病院によると、このうち9割が噴石が直撃したことによる骨折・打撲や、熱風を吸い込んだことによる気道熱傷だったという。
井上敦院長(60)は搬送された患者について「重傷者の大半が噴石や熱風によるもの。中には落下物が頭や胸に当たり、脳出血や肺損傷の疑いのある患者もいた。落下物の当たり方や打ち所が生死を分けたのではないか」と話した。
引用:「落下物の当たり方が生死を分けた」と医師 噴石直撃の被害多数 https://www.sankei.com/
犠牲者の多くの死因は噴石が直撃したことによるものであったようですね。
「御嶽山噴火」のその後と現在
2015年9月27日「御嶽山噴火災害犠牲者追悼式」が行われる
死者58人と、今なお遺体が発見されていない5人の行方不明者を出した、御嶽山噴火から1年が経過した2015年9月27日、犠牲者の追悼式が御嶽山のふもとの長野県王滝村で営まれました。
追悼式には、146人の遺族を含む、約440人が参列しました。
噴火時刻の午前11時52分に、参列者全員で黙祷し、戦後最悪の噴火災害で命を奪われた犠牲者を悼みました。
2019年7月1日、規制されていた御嶽山山頂登山が解禁される
2018年秋に試験的に2週間ほど規制が解除された期間があったものの、御嶽山噴火以降は、御嶽山の山頂への登山はずっと規制されていました。
そして、御嶽山噴火から約5年が経過した2019年7月1日、御嶽山の山頂登山が解禁されました。
全国的な山開きの7月1日に御嶽山の山頂登山規制が解除されたのは、御嶽山噴火以降初めてのことでした。
気象庁は火山の観測態勢を強化
2014年9月27日の御嶽山噴火の教訓から、気象庁は噴火を事前に察知して登山者へ迅速に避難勧告を出せるべく、全国にある火山の観測体制を強化しました。
また、万が一の際に登山者が避難するためのシェルターの増設も行われています。
ただ、このシェルターについては次のような意見もあります。
「灰色の石が噴石で火口から700mぐらいの所まで飛んできます。シェルターがあるのは非常に安心ですけれど安全ではない、噴火してもここに入る行動ができなければシェルターがないのと一緒です。」
引用:おはよう日本-御嶽山噴火5年 生還した女性 なぜ再び山へ https://www.nhk.or.jp/
こう語るのは、御嶽山の山岳ガイドをされている小川さゆりさんで、彼女は御嶽山噴火では、火口から500メートルほど離れた場所で被災し、命からがら生還した生存者の1人です。
噴石が横に飛んでくる感じがしたと語る小川さゆりさん。何とか岩場の影に隠れてやり過ごすことができた彼女ですが、一時は死を覚悟したそうです。
幸い、小川さゆりさんは奇跡的に噴石から逃れることができたようです。
そんな小川さゆりさんは、たとえシェルターを増設しても、避難者がそこまで辿り着けなければ意味はなく、シェルターまでの避難経路を明示することの重要性を主張されているようです。
現在の御嶽山は火山活動が沈静化?以前と変わらない美しい姿に…
現在の御嶽山は火山活動が沈静化し、すっかり噴火前の美しい姿を見せてくれていますが、それでも一部の火口からは現在も噴気が立ち上っているそうです。
出典:http://hanahana-2525.cocolog-nifty.com/
御嶽山が火山である以上、いつまたあのような厄災が起こるとも限りません。100%噴火が起こらないとは誰にも言えないのです。
たとえ噴火警戒レベル「1」であったとしても決して侮ることなく、噴火の可能性のある山に登山する際は、ヘルメットを携行するなど、まさかの時に備えておく必要があると言えますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
2014年9月27日午前11時52分に発生した、58名の犠牲者と5名の行方不明者を出した戦後最悪の火山災害である「御嶽山噴火」。
今回、そんな「御嶽山噴火」を克明に捉えた動画、犠牲者の死因や生存者による数々の貴重な証言、被害の詳細、御嶽山噴火のその後と現在についてまとめてみました。
最後になりましたが、この御嶽山噴火により犠牲となった63名のご冥福を、心よりお祈りいたします。