芸能人・伊藤英明さんが摂取し錯乱事件を起こした事で知られる「マジックマッシュルーム」は幻覚作用を持つキノコの俗称です。2000年代の初頭までマジックマッシュルームは合法幻覚剤として若者を中心に広く使用されていました。
今回はマジックマッシュルームの効果や種類、それが元で発生した事件などについてまとめました。
この記事の目次
マジックマッシュルームとは~日本では違法の幻覚剤
出典:http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp
女優の沢尻エリカさんが「MDMA」所持で逮捕なれるなど、違法薬物の氾濫が社会問題化しています。今回紹介する「マジックマッシュルーム」も、かつては合法だった事もあり若者を中心に広く使用され、社会問題にまで発展した幻覚剤です。
マジックマッシュルームは幻覚作用を持つ有機化合物「シロシン(サイロシン)」や「シンシロビン(サイロシビン)」を含むキノコの俗称で、「幻覚キノコ」「MM」などとも呼ばれます。
マジックマッシュルームの歴史
その歴史は古く、古代メキシコのマヤ・アステカ文明ではシャーマンがこれらの幻覚キノコを摂取して神との交信を行う儀式を行っていたと言われています。また、日本でも平安時代に成立したとされる「今昔物語」に、マジックマッシュルームの一種「ワライタケ」と見られるキノコ(舞茸と書かれている)を食べた尼僧が笑いながら踊り狂ったという逸話が収録されています。
マジックマッシュルームは栽培が非常に容易で、1960年から1980年代にかけてアメリカを中心として世界各国で乱用されるようになり、1990年代に入ると日本国内でも若者を中心に爆発的に普及、「観賞用」などとして販売され、マジックマッシュルームを食べてトランス状態に陥る若者が続出、社会問題化します。
マジックマッシュルームは日本では違法
マジックマッシュルームは、摂取すると強烈な幻覚症状を起こすため、「シロシン(サイロシン)」や「シンシロビン(サイロシビン)」を含むキノコは、日本では2002年から麻薬原料植物に指定され厳しく規制されています。マジックマッシュルームを使用する事はもちろん、輸出入や栽培、所持、譲渡や譲受、広告行為なども行うと、懲役や罰金刑に処される可能性があります。
マジックマッシュルームの効果とは
マジックマッシュルームは、摂取する事で中枢神経に作用し、強烈な幻覚効果や麻痺や興奮の効果を引き起こします。症状としては「幻覚症状」「発熱」「狂乱」「酩酊」などで、摂取から15分から60分ほどで症状が現れ、その後5時間から6時間ほど持続します。
マジックマッシュルームで起る幻覚は人によって異なり、人や物が本来の大きさとは明らかに異なって見える、天井に異様な模様が浮かび上がってうごめいて見える、普段見ている景色がキラキラと輝いて見えるなど、様々な幻覚効果が報告されています。
また、聴覚と視覚が連動する幻覚などもあり、音楽を聴くと音に色がついて見える、音楽の波が見えるといった場合もあるようです。また、脳内で音楽を自由にコントロールできるような感覚になり、自由自在にエフェクトをかけて遊ぶといったような事も可能になる場合があるようです。
また、マジックマッシュルームを摂取すると、多くの場合多幸感が溢れ、笑いが止まらなくなるなどのハッピーな気分になれますが、いわゆる「バッド・トリップ」に入ると、一転してあらゆる幻覚が恐ろしくてたまらなくなり、ネガティブな感情が増幅して発狂する事があり、最悪の場合、自殺願望が強烈に想起されそのまま自死に至る事すらもあります。
フラッシュバックや精神依存も
マジックマッシュルームを摂取し、数時間後にその症状が治まったとしても、約2週間から4ヶ月後までの間に、睡眠不足やストレス、飲酒などをきっかけにして再び幻覚症状が起る「フラッシュバック症状」が起る場合があります。
また、マジックマッシュルームはたった一度だけ摂取した場合であっても、再び強くマジックマッシュルームの摂取を欲求する、「精神依存症」に陥る場合があります。一度だけなら大丈夫という事はないので安易に摂取してはいけません。
マジックマッシュルームの摂取方法(食べ方)
マジックマッシュルームは吸引したり注射したりして摂取するのではなく、主に、食材として味噌汁やスープなどに入れて調理(加熱しても効果が薄れない)しそれをそのまま食べる方法で摂取されます。
また、海外ではオムレツに入れて食べる方法や、紅茶に入れて飲む方法などが好まれています。マジックマッシュルームは匂いの強いものや美味しくないものが多いので、強めの味付けで無理やり食べる場合が多いようです。
マジックマッシュルームの種類
「マジックマッシュルーム」に当てはまるキノコは実に200種類以上存在します。ここではマジックマッシュルームの種類の中でも代表的なものを画像と共にいくつか紹介したいと思います。
ワライタケ
ワライタケは北海道から沖縄まで、日本全国に広く分布するマジックマッシュルームです。毒成分は少ないものの、食すると強烈な幻覚症状を引き起こします。当然ながら採取や所持は違法です。
センボンサイギョウガサ
センボンサイギョウガサは、ワライタケよりも幻覚成分の多いマジックマッシュルームです。世界中に広く分布し、日本では北海道、宮城県、茨城県、滋賀県、沖縄県などで見られます。
アイゾメヒカゲダケ
アイゾメヒカゲダケは熱帯また新熱帯地域に自生するマジックマッシュルームです。日本では石川県、沖縄県、小笠原諸島などで発見されています。
ミドリスギタケ
ミドリスギダケはマツやヒノキなどの針葉樹の切り株や倒木などに発生するマジックマッシュルームで、世界各地で見られます。日本では北海道や石川県のほか、東京都でも中央区や葛飾区で確認されています。
ヒガシビレタケ
出典:http://toolate.s7.coreserver.jp
ヒガシビレタケは、日本各地に公園や道端など、身近に発生するキノコですが「シロシン(サイロシン)」と「シンシロビン(サイロシビン)」の含有率が高いマジックマッシュルームです。
ちなみにこのヒガシシビレタケは、2005年に当時の総理大臣だった小泉純一郎氏の総理官邸の敷地内で自生しているのが発見されて話題になったマジックマッシュルームです。
マジックマッシュルームを摂取していた芸能人① 伊藤英明
マジックマッシュルームは2002年6月6日に政令により「麻薬原料植物」に指定され規制が強化されましたが、そのきっかけとなったのが2001年4月10日に、人気俳優の伊藤英明さんが起こした、マジックマッシュルーム錯乱事件です。
その日の深夜2時20分頃、伊藤英明さんは自宅近くのコンビニに駆け込み、「苦しいので助けてほしい」と訴えます。店員の通報によって伊藤英明さんは病院に搬送され緊急入院となりますが、その後の警察に調べに対して伊藤英明さんは「マジックマッシュルームを食べた」と話し、マジックマッシュルームの過剰摂取によって強い幻覚に襲われ錯乱状態になった事が原因とされました。
伊藤英明さんの所属事務所は「友人に勧められてどんなキノコか知らずに食べてしまった」と説明しますが、本人の口から警察に「マジックマッシュルームを食べた」と説明しているのだとすれば、「どんなキノコか知らずに」という部分には少し無理があるように感じます。
そのため、伊藤英明さんは常習的にマジックマッシュルームを摂取していたのではないか?という疑惑が浮上する事になりました。この伊藤英明さんの事件をきっかけにしてマジックマッシュルームの危険性が問題視されるようになり、2002年の法規制につながったとも言われています。
もっとも、2001年当時はマジックマッシュルームの摂取は規制されておらず違法ではなかったため、伊藤英明さんのこのスキャンダルはさしたる問題に発展しませんでした。ただ、この事件によって伊藤英明さんにはブラックなイメージがついてしまい、プライベートでの女遊びの激しさや素行の悪さなどが盛んに週刊誌のネタにされるようになります。
しかし、伊藤英明さんはその後、こうしたイメージダウンをはね除け、「海猿」シリーズをはじめ数々の作品で主演を飾るなど大ブレイクを果たしています。
マジックマッシュルームを摂取していた芸能人② 中島らも
伊藤英明さんのマジックマッシュルーム事件以前も、芸能人によるマジックマッシュルームの使用は少なくなかったようです。
2004年に亡くなった人気作家の中島らもさんは、2003年2月4日に「麻薬及び向精神薬取締法」および「大麻取締法違反」で逮捕されています。この時の家宅捜索では、中島らもさん自宅の冷蔵庫の中から大麻などとともに干からびた状態のマジックマッシュルーム約3gが発見されています。
中島らもさんといえば「大麻解放論者」だった事が知られていますが、やはりマジックマッシュルームも愛用されていたようです。
マジックマッシュルームを摂取していた芸能人③ ハリー・スタイルズ
イギリス・アイルランドの男性ボーカルグループ「ワン・ダイレクション」の人気メンバー・ハリー・スタイルズは、2019年12月19日リリースの新作アルバム「ファイン・ライン」の制作中にマジックマッシュルームを摂取していた事を公言しています。
ハリー・スタイルズはカリフォルニアのマリブで同作の制作中にマジック・マッシュルームを使ったことについて弁明し、マジック・マッシュルームを使ったことで「楽しい気分やクリエイティヴ」になることができたとして、プレッシャーも和らげることができたと語っている。
ハリー・スタイルズは、新作の制作にあたってのインスピレーションを得るためや、プレッシャーからくるストレスを和らげるためにマジックマッシュルームを使用したようです。
このように、世界中のミュージシャンには大麻やMDMAなどの合成麻薬やLSDなどの幻覚剤を使用して音楽制作の助けにしようとする人が多いことはよく知られていますが、若者への影響力などを考えれば、あまり堂々と公言して欲しくはないですね。
マジックマッシュルームの危険性を示す事件 関大生飛び降り死亡事件
2006年7月10日、大阪吹田市・関西大学2回生の男子学生が、友人宅のワンルームマンションの4階の共用廊下から突然飛び降り死亡する事件がありました。
その後の警察に調べで、この男子学生は飛び降りる数時間前、所属していたサークルの部室で、友人の1人が大阪市内で購入した乾燥マジックマッシュルームを、一袋数千円で譲り受けてその場で食べ、幻覚症状引き起こして錯乱状態になっていた事が明らかになります。
友人らは、錯乱状態になった男子学生を友人の1人の自宅マンションへ連れ帰って介抱しようとしますが、友人らがふと目を離したすきに4階共用廊下から飛び降り、死亡してしまったという事でした。
このように、マジックマッシュルームを摂取すると強い幻覚症状に襲われ、最悪の場合バッドトリップを起こして自殺しなければならないと思い込んだり、ハイになった場合でも自分は空を飛べるなどと思い込んだりして、高所から飛び降りて死亡に至る場合などもあるため、安易に摂取してはいけません。
まとめ
俳優・伊藤英明さんも摂取した事でもしられる幻覚キノコ「マジックマッシュルーム」についてまとめてみました。
マジックマッシュルームは強い幻覚作用を持ち、摂取すると多くの場合は強烈な多幸感を感じてハイな気分になれます。しかし、バッドトリップしてしまった場合、幻覚の全てが恐ろしくて仕方がなくなってネガテイブ感情が増幅、最悪の場合は自殺に至る場合もある危険なキノコです。
2002年まではマジックマッシュルームは法規制されていなかったため、若者を中心に広く使用されていました。しかし、2002年6月に麻薬原料植物に指定されて厳しく規制されており、所持や使用はもちろん、栽培、譲渡や譲受、販売目的での広告などを行っただけで、懲役や罰金刑を受ける可能性があります。
実際にマジックマッシュルームを使用して死亡した事例もあるため、使用することは絶対にやめましょう。