現職の警察官による家族殺し事件として注目されている「福岡母子殺害事件」の犯人とされる中田充被告に死刑判決が下されました。
今回は中田充被告の起こした事件の概要や動機、その生い立ちなどについて現在までに判明している内容についてまとめました。
この記事の目次
中田充が家族3人を殺害したとして起訴された福岡母子殺害事件とは
現職の警察官だった中田充被告(犯行当時38歳)が、自分の妻の中田由紀子さん(当時38歳)と当時9歳の長男と当時6歳の長女の首を絞めて殺害したとして逮捕、起訴されました。今回は現職の警察官による家族3人殺しという衝撃的な事件を引き起こしたとされる中田充被告に焦点を当ててまとめます。
まず最初に、今回紹介する中田充被告が犯人だとして起訴されている「福岡母子殺害事件(小郡母子3人殺害事件)」について見ていきます。
福岡母子殺害事件の概要
出典:https://www.news-postseven.com
2017年6月6日の朝、福岡県警の警察官だった中田充被告の妻・中田由紀子さん(当時38歳)、小学校4年生の長男・涼介君(当時9歳)、小学校1年生の長女・実優ちゃん(当時6歳)の3人が福岡県小郡市小板井の自宅で死亡しているのが発見されました。
警察は当初、妻・中田由紀子さんによる無理心中の可能性があるとして捜査を開始しますが、その2日後の6月8日に「3人とも何者かに殺害されたと断定した」として、状況証拠から、現職の警察官だった夫の中田充被告を妻を殺害した容疑で逮捕します。
しかし、中田充被告が妻や子供らを殺害した事を示す直接証拠は見つかっておらず、状況証拠だけの逮捕だった事から、多くの謎や疑惑を呼んでいます。
事件発覚から中田充逮捕までの経緯
その日の朝8時半頃、既に出勤していた中田充被告の元に、子供2人が通う小学校から2人がまだ登校していないという連絡が入ります。中田充被告は近所に住む妻の姉に様子を見に行って欲しいと連絡、指示通りに様子を見に行った妻の姉によって3人の遺体が発見されます。
この間、中田充被告は妻の携帯電話に4度電話を入れ、4度目の電話に出た妻の姉から「(3人が)死んでいるようだ」と連絡を受けています。
中田充被告は110番通報を取り扱う「通信指令課」に勤務していた事を利用し、妻の姉からの連絡を「姉から妻が自殺していると110番通報を受けた」と虚偽の報告をしています。
福岡県警は当初、中田充被告の報告のまま「姉から妹が自殺しているとの110番通報」と発表し、無理心中の可能性が高いと見て捜査を開始します。
司法解剖の結果、3人とも殺害されたと断定
警察が当初、妻・中田由紀子さんによる無理心中の可能性があると発表した理由としては「妻が育児の事で悩んでいる様子だった」という証言を妻の姉や夫の中田充被告から得た事や、中田由紀子さんの遺体は髪の毛が半分燃えた状態で、すぐそばに火のついた練炭が置かれ、家中に煙が充満している状態だった事などが挙げられています。
しかし、その後の司法解剖の結果「3人とも何者かに殺害された」と断定され、6月7日の未明、福岡県警は急遽殺人事件に切り替えて捜査本部を設置しています。
中田充が殺人容疑で逮捕される
そして、3人の死亡推定時刻に中田充被告が自宅にいた可能性が高い事や、事情聴取での供述に矛盾点が多い事、外部から侵入された形跡が無い事などから、捜査本部は、犯行が可能だったのは夫の中田充被告しかあり得ないと結論し、6月8日、妻・中田由紀子さん殺害の容疑で逮捕に踏み切っています。
中田充が犯人だと示す状況証拠は多数見つかる
その他にも中田充被告が犯人だと示すような状況証拠が数々見つかっています。
中田充被告の両腕に引っ掻かれたような傷跡があり、妻・中田由紀子さんの遺体の爪の間にみつかった組織からは、中田充被告のDNAが検出された事。
また、遺体の周りに巻かれた油の上に残された足跡が、中田充被告が当日履いていた靴の足跡と一致しており、その撒かれた油(ライターオイル)と同じオイル缶が中田充被告の職場のロッカーから見つかった事。
DNA鑑定の結果、由紀子さんの遺体の爪に残された皮膚片が中田容疑者のものと一致。それを裏付けるかのように、中田容疑者の腕には引っかき傷も見つかっている。
「さらに由紀子さんの遺体の周囲に撒かれた油の上には複数の足跡が残されており、これが中田容疑者の当日履いていた靴底と一致しているという。
さらに、妻・中田由紀子さん殺害後に、中田充被告が中田有紀子さんのスマートフォンを操作していた形跡が見られる事など、様々な状況証拠が中田充被告が犯人である事を疑わせています。
裁判では中田充被告本人も、「こうした証拠が自分を犯人だと認める方向に出ているのは理解している。」といった内容を陳述していますが、「それでも自分はやっておらず、何者かによる犯行である」として、一貫して冤罪を主張しています。
中田充の生い立ち
中田充被告の生い立ちについて、これまでに判明している内容を見ていきましょう。
これまでの報道から、中田充被告は高校は福岡県内の進学校に通い、水泳部に所属していた事やその後は私立・福岡大学へと進んだ事などが明らかになっています。
それ以前の子供時代や幼少期の情報などは明らかになっていませんが、高校時代や大学時代の関係者の話では概ね「大人しく真面目」「誰とでも仲良くできる」といった評価で、性格面の問題を指摘する証言などは全くありません。
ただし、中田充被告が福岡県警に臨時採用されたのは2002年の24歳の時で、それ以前の2年間は無職だった事が明らかになっています。
ここまででも触れた妻のLINEの情報などから、中田充被告は大学をパチスロにハマりすぎて中退しているとの情報もあるため、大学を中退後に無職の期間を経て、その後警察官に臨時採用された可能性が浮上します。
中田充が犯人だと示す直接証拠は見つかっていない
出典:https://www.dailyshincho.jp
中田充被告は裁判で一貫して犯行を認めておらず、自分以外の何者かによる犯行であると主張し、無罪を主張しています。
福岡県小郡市の自宅で妻子3人を殺害したとして、殺人罪に問われた元福岡県警巡査部長、中田充(みつる)被告(41)=懲戒免職=は5日、福岡地裁(柴田寿宏=としひろ=裁判長)であった裁判員裁判の初公判で「一切身に覚えがなく、事実無根。間違いなく冤罪(えんざい)です」と無罪を主張した。
確かに、中田充被告が直接、妻や子供2人を手にかけたという証拠(直接証拠)はありませんが、あまりにも中田充被告の犯行である事を疑わせる状況証拠が多すぎ、10人が見れば10人ともが中田充被告が犯人であろうと判断する状況だと言えます。
それでは、中田充被告が犯人だとすれば、妻を殺害し自身の子供までもを手にかけたその動機とは一体なんなのでしょうか?次からはこれまでに明らかになっている中田充の動機について紹介します。
中田充が犯人とする動機① 転勤癖やパチスロ狂いで妻に厳しく叱責されていた
被害者である妻・中田由紀子さんの姉の証言によれば、中田充被告と中田由紀子さんの夫婦仲は、ここ最近かなり不仲だったと言います。
というのも、中田充被告には人間関係に行き詰まるとすぐに願い出て転勤する癖があって家族が振り回されており、学生時代からハマっていたというパチスロの趣味が子供が出来てからも収まらず、非番の日は家にも帰らず1日中パチスロをしているなどしたため、妻が中田充被告を厳しく叱責する事が多かったそうです。
中田充の転勤癖について
中田充被告は、2002年に福岡県警に採用されてから何度も転勤を繰り返していた事が明らかになっています。関係者の話によれば、約10年ほどの間に5回も転勤願いを出して転勤しており「転勤願い魔」などと揶揄されていたと言います。
中田充被告は、事件の前年2016年の8月にも転勤願いを出して異動しています。これは福岡県警本部への異動で、通常であれば出世といっても良い配属だそうです。
しかし、関係者の話によれば、中田充被告がこれまでに異動する度に、職場の人間関係でいざこざを起こし、その度に転勤願いを出して転勤するという事を繰り返していたため、県警本部に配属して監視するという意味合いが強かったと言います。
こうした中田充被告の転勤癖に、妻の中田由紀子さんは辟易していたのではないかと見られています。夫妻の子供2人は小学校に通っており、夫の転勤の度に学校を転校する事は好ましくないでしょう。妻がすぐに転勤願いを出してしまう夫にウンザリしていた事は十分に考えられます。
そして、中田充被告と中田由紀子さんの夫妻は、事件の2年前に住宅ローンを組み、事件現場となった住宅を2100万円で購入しています。
関係者によれば、この住宅購入は妻の中田由紀子さんの主導で行われたと言われており、ローンを組んで住宅を購入する事で、中田充さんの腰を落ち着かせようと考えての行動だった可能性もあります。
これによって、中田充被告は転勤したくても転勤できない状況に追い込まれてしまい、結果的にストレスを溜め込み妻や子供らの殺害を思い立ったのではないか?との推測が出ています。
中田充はパチスロ狂いだった
中田充被告は、同僚や近所の住人の証言では「真面目でおとなしいタイプ」という声がほとんどですが、その後の捜査や裁判によって、実はかなりのパチスロ狂いだった事が明らかになっています。
それによれば、中田充被告は、2015年1月1日〜11月17日の間に合計で75回もパチスロに行っており、開店すぐの10時から18時頃までパチスロに興じていたようです。非番の日はほとんど、パチスロで遊んでおり、勤務終了後に家に帰らず、そのままネットカフェやビジネスホテルに宿泊し、朝一でパチスロ店に行っていた事なども判明しています。
この事は、妻の中田由紀子さんから度々厳しく叱責されており、離婚話が持ち上がった事もあったそうです。
また、裁判で証拠として示された中田由紀子さんが知人に送ったLINEの文面によれば、中田充被告がパチスロにハマりすぎて大学を中退している事や、警察官の昇任試験の1ヶ月前にも度々パチスロに行っていた事などが明らかになっています。
さらに、中田由紀子さんが中田充被告に直接送ったLINEには「(パチスロを)やっていないって、あなたは嘘つきですね。ドロボーさん恨みます。」というかなりキツめの皮肉が書かれており、夫婦仲が中田充被告のパチスロ狂いによって破綻していた可能性は高いようです。
これを見ると、そもそも中田充被告には結婚生活にも子育てにも責任を持とうという意識が無く、家族そのものが煩わしくなって殺害に及んだのではないか?という疑いが生じてきます。
中田充が犯人とする動機② 犯行前日に昇任試験に不合格していた
もう一つ、中田充被告の妻や子供殺害の動機になったのでは?と疑われているのが、犯行の前日に中田充被告が警察官の昇任試験に不合格している事です。
事件直後に、メディアの取材に応じた被害者・中田由紀子さんの伯父が以下の証言をしています。
伯父が証言する。
「謝罪に来た県警が話すには、犯行前日に昇任試験の合格発表があり、不合格だったことを知ったらしい。犯行に関係があるのではないかと話していた」
実は、中田充被告はこれまでにも何度も警部補への昇任試験に不合格になっていたそうで、その度に妻の中田由紀子さんから叱責されていたのではないか?という情報が出ています。
巡査部長だった中田容疑者も、これまで何度も昇進試験を受けていたが不合格だった。子供の将来を心配する由紀子さんは早く昇進して欲しかったようで、不合格になるたびに中田容疑者に詰め寄り、それがまたケンカの原因になっていたようです。
また、中田充被告は以前に交通機動隊に勤務していましたが、その時の動機は既に全員が警部補になっていたそうで、その事に中田充被告はプレッシャーを感じ、精神的に追い詰められていたのでは?とも言われています。
中田充の現在~裁判員裁判での判決は死刑・控訴するも棄却される
出典:https://www.nishinippon.co.jp
直接証拠がないまま、起訴され裁判を受けた中田充被告でしたが、2019年12月13日に、福岡地方裁判所で開廷された裁判員裁判により、死刑判決が言い渡されています。
裁判長は中田充被告による犯行であると認定し求刑通りの死刑判決を下しました。
「現職警察官が妻子3人を殺害した衝撃的な事件で、結果は誠に重大。死刑を選択することはやむを得ない」として求刑通り死刑を言い渡し、被告の無罪主張を退けた。
中田充被告の弁護側は、死刑判決を不服として即日控訴しています。今回の事件に関心を持つ人々の多くは、死刑ではなく「無期懲役」では?との見立てが多かったため、この判決に衝撃を受けた人も多いようです。
その後、2021年9月15日、中田充被告の控訴は棄却され、二審でも死刑判決が下されました。
福岡県小郡市で、元警察官が妻子3人を殺害した罪に問われている事件の裁判で、福岡高裁は、判決で一審の死刑を支持し被告側の控訴を棄却しました。
2021年9月15日の控訴審判決で、福岡高裁の辻川靖夫裁判長は「3人を殺害したという重大性を考慮した」として一審の死刑判決を支持し控訴を棄却しました。
まとめ
現職の警察官により、妻と幼い子供2人が殺害されるという衝撃事件「福岡母子殺害事件(小郡母子3人殺害事件)」の犯人とされ、第一審で死刑判決を受けている中田充被告についてまとめてみました。
中田充被告は、一貫して犯行を否認していますが、状況証拠の数々は中田充被告が犯人である事を物語っており、福岡地裁での裁判員裁判でも、無罪の主張を退けて求刑通りの死刑判決が下されました。
中田充被告は死刑判決を不服として即日控訴していますが、控訴が棄却され、二審でも死刑判決となっています。