2008年の「リーマンブラザーズ」破綻をきっかけに発生した「リーマンショック」が注目されています。
この記事ではリーマンショックについてわかりやすく解説し、いつ何年に起こったのかや原因、日本や世界の影響や当時の日経平均株価のチャート、これをテーマにした映画などについてまとめました。
この記事の目次
リーマンショックをわかりやすく解説
「リーマンショック」は、2008年9月の「リーマンブラザーズ」破綻を直接の原因として発生した世界規模の大規模金融危機を指す言葉です。
アメリカを代表する巨大投資銀行だったリーマンブラザーズが破綻した事により、連鎖的に世界的な株価の下落とそれに伴う金融危機が発生し、そのあおりを受けて日本を含む世界中で膨大な数の企業が倒産に追い込まれました。
今回の記事では、この近代を代表する金融危機となったリーマンショックについて出来る限りわかりやすくまとめていきます。
リーマンショックはいつ何年に発生?
「リーマンショック」が発生したのは、直接の原因となった「リーマンブラザーズ」の経営破綻が起きた2008年9月だといえます。
ただし、リーマンショックは、この破綻をきっかけに連鎖的に発生した世界的な金融危機全体を指す言葉として使われているため、ピンポイントにいつ何年に起こったとはいえず、特に日本国内においては、2008年から2009年にかけて発生していたという方がより正確です。
また、リーマンブラザーズ破綻の原因となった「サブプライムローン問題」が顕在化したのが2007年頃だったため、アメリカではこの一連の金融危機を「the financial crisis of 2007–2008(2007年から2008年の金融恐慌)」などと表現しています。この事から、世界規模の金融危機という意味合いにおいては、リーマンショックは2007年から2009年頃にかけて発生していたというのが正確です。
リーマンショックの原因は「サブプライムローン危機」によるリーマンブラザーズの破綻
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リーマンショックの原因はアメリカの大手投資銀行だった「リーマンブラザーズ」が経営破綻した事でしたが、そのリーマンブラザーズ破綻の原因となったのが「サブプライムローン危機」でした。
「サブプライムローン」とは、主にアメリカで普及していた低所得者向けの住宅ローンで、通常よりも金利を高く設定し、購入する住宅を抵当に入れて担保にする事によって信用度の低い低所得者でもローンを組めるようにするという仕組みでした。
リーマンブラザーズなどの金融機関はこのサブプライムローンの債権を元に、金融工学を駆使して証券化した商品を金融機関や投資家向けに販売していました。
2001年から2006年にかけてはアメリカの住宅価格は上昇していたため、もし借金を返済できなくなった場合も購入した住宅を売って決済してしまえば良いという事なので、このサブプライムローンの仕組みはうまく回っていたのですが、2004年に米国政府は金利引き上げを実施して住宅ローン金利も上昇、さらに2007年夏頃に住宅価格が下落に転じた事から、サブプライムローン利用者からの返済が滞って担保の住宅を返済に充てても債務額を回収できない状態になり、サブプライムローンの多くが不良債権化します。
これに伴ってサブプライムローンの証券化商品の価値も暴落。こうした証券化商品を保有していた金融機関、投資ファンド、政府系企業などは膨大な額の含み損を抱える事になり、世界的な信用収縮へと発展してしまいました。
そして、このサブプライムローン危機によって膨大な損失を抱えたリーマンブラザーズは、2008年9月15日に、倒産処理手続き(連邦倒産法第11章の適用)を連邦裁判所に申請するに至りました。最終的なリーマンブラザーズの負債総額は約6000億ドル(当時のレートで約64兆円)という膨大な額でした。
この破綻の前日まで、リーマンブラザーズは複数の金融機関と自社売却の交渉を行っていましたが、あまりにも損失額が巨額かつ不透明で、さらにアメリカ政府が公的資金の注入を拒否したため買収に応じる企業は出ませんでした。また、当時は他の金融機関も同様に多額の損失を抱えている状況であり、買収可能な余力を持つ金融機関は米国に存在していませんでした。
このリーマンブラザーズの破綻をきっかけにして、アメリカ経済に対する不安が急速に広がり、世界的な信用収縮が起こり、世界中の株価やあらゆる証券化商品の価値が暴落する事態を引き起こしました。
以上のように、「サブプライムローン危機」が原因となって巨額の損失を抱えた「リーマンブラザーズ」が破綻し、それをきっかけに世界的な信用収縮が起こって「リーマンショック」が引き起こされたという流れになります。
リーマンショックの影響① 日本では日経平均株価が暴落し破綻企業が続出
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「リーマンショック」の影響によって、日本でも株価の大暴落が起こりました。日経平均株価で見ると、1万2000円台をつけていたものが、リーマンブラザーズ破綻からわずか1ヶ月半後の2008年10月28日にはザラ場ベースの最安値で一時6994円をつけています。
企業単位では、リーマンブラザーズ破綻から4日後の2008年9月19日、JASDAQ上場の不動産デベロッパー「Human21」が464億円374万円の負債を抱えて民事再生法を申請。
その5日後の24日には、東証マザーズ上場の不動産賃貸契約の債務保証会社「株式会社リプラス」が325億7000万円の負債を抱えて民事再生法申請。
その翌日の25日には、東証2部上場の半導体関連企業「ジェネシステクノロジー」、ジャスダック上場の電子部品機械メーカー「プロデュース」、翌26日には、東証2部上場の不動産関連「シーズクリエイト」が民事再生法を申請など、次々と新興市場銘柄が破綻しました。
さらに週末を経て、9月29日には、東証2部上場の不動産関連「ランドコム」、10月2日にはジャスダック上場の不動産関連「エルクリエイト」が破綻。さらに10月8日には東証1部上場の建設会社「新井組」が民事再生法を申請しています。
そして10月9日、であるニューシティ・レジデンス投資法人が1123億円の負債額で民事再生法を申請します。リスクが小さいとみなされていたREITが破綻した衝撃は大きく、その翌日の日経平均株価はマイナス9.62パーセント下落して8276円をつけます。これはリーマンショック後の最大の下げ幅でした。
また、リーマンショックは実体経済にも大きな影響を及ぼし、実質GDP成長率は2008年がマイナス1パーセント、翌2009年はマイナス5.5パーセントと2年連続でのマイナス成長を記録しています。完全失業率は、2009年7月で5.5パーセントにまで急上昇しました。
この深刻な経済の悪化を受けて、当時の政府は総事業規模は56.8兆円の「経済危機対策」を発表。国民1人あたり1万2千円の定額給付金なども支給されています。
リーマンショックの影響② 日本以外での影響
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リーマンショックの影響により日本以外でも世界中の株価が暴落しました。
リーマンショックの震源地であるアメリカでも株価の大暴落が起こり、NYダウ平均株価も10月だけで見ても10847ドルから最安値7882ドル(ザラ場ベース)までの大暴落を起こしています。2009年のアメリカの実質GDP成長率はマイナス2.5パーセントにまで低下しています。
アメリカ経済は政府の経済対策によって2009年6月を底にして緩やかな景気回復が起こりますが、同時に格差のさらなる拡大が起こり、失業率は10パーセントを超え、現在もその影響が根強く残っています。
ヨーロッパのユーロ圏では、リーマンショック後の銀行の資本増強が進まず、EU27か国のGDPの2009年の実質成長率はマイナス4.2パーセントとの見通しが発表されました。当時のイギリス政府はリーマンショックの影響について「第二次世界大戦以来の最悪の危機」との見解を示してイギリスポンドは暴落。ヨーロッパ圏で最も強いドイツ経済も、2009年の実質GDP成長率はマイナス6パーセントを超えるマイナス成長と深刻な影響を受けました。
こうした深刻な経済危機は2009年のギリシャの粉飾決算発覚に端を発する国債の暴落、2010年の欧州ソブリン危機へとつながりました。
リーマンショック発生時の日経平均株価のチャート
リーマンショック発生時の市場のパニック度合いをわかりやすく伝えるため、当時の日経平均株価のチャートを紹介します。
リーマンショック時の日経平均株価のチャート
上のチャートは、2006年1月から2009年6月までの日経平均の週足チャートです。2008年9月のリーマンブラザーズ破綻からバブル後最安値の6994円までの急落の様子がよくわかります。
上のチャート画像は2008年6月から同年12月の日経平均の日足チャートになります。リーマンブラザーズ破綻以降、ほとんど反発せずに下げ続けているのがわかります。
リーマンショック発生時の為替(ドル円)チャート
続いて、リーマンショック発生時の為替チャート(ドル円)も見ていきます。
チャートを見るとわかりますが、リーマンショック後の為替相場は、急激な円高ドル安の動きになりました。リーマンブラザーズ破綻前は米ドル円は100円以上で推移していましたが、リーマンショックの混乱の中で90円を割り込み、その後も円高の動きが続いて2011年にかけて80円割れ、最大で1米ドル75円の円高まで行きました。
リーマンショック後になぜ為替が円高ドル安の動きをしたのかというと、アメリカ政府が行った大規模な金融緩和政策が原因だったと見られています。アメリカ政府がドルを大量に市場に流通させたため、ドル余状態になって大量のドル売りが発生し、急激な円高ドル安の動きになったのです。
リーマンショック後、ダウ平均株価が比較的早く回復傾向を見せたのに対して、日経平均株価が長期にわたって低迷したのは、この為替の円高ドル安状態が長く続いた事も影響しました。
リーマンショックを描いた映画も話題
「リーマンショック」を描いた映画もドキュメンタリーやフィクション含め多数制作され話題になっています。中でも話題の映画作品をいくつか紹介しておきます。
キャピタリズム〜マネーは踊る〜(2009年公開)
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社会派ドキュメンタリーの巨匠、マイケル・ムーア監督の作品です。リーマンショックの裏側を痛烈な皮肉とともに描き出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=aguUZ7PGd2A
インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実(2010年公開)
出典:https://www.coindeskjapan.com/
第83回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した作品です。インサイダー取引など金融界の汚れた裏側に肉薄した作品で、リーマンショックの裏側にも鋭く切り込んでいます。
マージン・コール(2011年公開)
出典:https://www.coindeskjapan.com/
リーマンブラザーズをモデルにしたアメリカの大手投資銀行を舞台に描かれるフィクション映画です。この投資銀行で非公式の大量解雇が実施され、解雇されたリスク管理部門の責任者が部下に「Be careful.(用心しろ)」と言い残してUSBメモリを手渡します。
このUSBメモリには、会社の総資産を超える損失を出す可能性のある証券(サブプライムローンの証券化商品)を会社が大量に保有していることを示唆するデータが記録されていたのでした。
https://www.youtube.com/watch?v=tzBNL_clgEs
マネー・ショート 華麗なる大逆転(2015年公開)
出典:https://www.coindeskjapan.com/
リーマンショックの原因となったサブプライムローン住宅危機問題に焦点を当てた実話を元にしたフィクションで、住宅バブル崩壊の兆候を鋭く読んだアウトロー投資家達が、ウォール街の大物投資家達を出し抜いて空売りで巨額の利益を上げる様子が描かれます。
まとめ
今回は、2018年のリーマンブラザーズ破綻によって起こったリーマンショックについてまとめてみました。
リーマンショックは、アメリカの大手投資銀行のリーマンブラザーズが莫大な負債を抱えて倒産したのをきっかけに起こりました。それを原因に世界中に金融危機が広がりました。
日本にも深刻な影響が及び、日経平均株価の暴落や為替が円高に触れた事によって長年にわたって不景気が継続する事になったのでした。