滋賀県大津市の中学校で起きた、いじめによる自殺事件「大津いじめ自殺事件」は、「いじめ防止対策推進法」成立のきっかけとなった事件です。
そんな「大津いじめ自殺事件」の被害者生徒が受けていた陰湿ないじめの内容をはじめ、加害者となった3名の男子生徒のその後や現在、そして気になる裁判結果についてまとめました。
この記事の目次
「大津いじめ自殺事件」とは
出典:https://blogs.yahoo.co.jp/
“大津市中2いじめ自殺事件”とも呼ばれる「大津いじめ自殺事件」は、2011年10月11日、滋賀県大津市内にある市立皇子山中学校に通う、当時中学2年生の男子生徒がいじめを苦に、自宅のマンションから飛び降りて自殺するに至った事件です。
特に、事件後の学校と大津市教育委員会の隠蔽体質が問題視され、当時大きく報道されました。また、この事件はその翌年国会で可決された「いじめ防止対策推進法」が成立するきっかけとなった事件としても、大きな意味があったと言えます。
「大津いじめ自殺事件」で被害者が受けたいじめの内容
極秘校内アンケートから陰湿ないじめの実態が明らかに・・・
出典:http://vip-deep.com/
市立皇子山中学校の校長や大津市教育委員会は事件が発生した当初は、「いじめと自殺の因果関係は無かった」との主張を繰り返し、あくまで“生徒同士の喧嘩”で片付けようとしました。
ところが、極秘で行われていた校内アンケートでは、明らかに被害男子生徒が以前より陰湿ないじめを受けていた事実が、多数回答されていたことが発覚したのです。
自殺後のアンケートはは320人の生徒が回答し、そのうちの15人がいじめがあった事実を告白しました。まずは、被害男子生徒が受けていたという、その具体的ないじめの内容を挙げておきましょう。
「蜂の死骸を食べさせられかけてて」
「男子生徒3、4人に囲まれて、トイレの隅っこで殴られたり蹴られたり、悪口を言われていた」
「死んだスズメを口の中に入れろと言われていた」
「整髪料のスプレーをかけられる」
「トイレで暴行を加えたり、殴ったり、転がしたり、家の中をバーンって潰したり」
「昼休みに毎日自殺の練習をさせられていた」
「(いじめた生徒が)自殺のやり方を練習しておくように言っていた」
「先生に相談したけど何もしてくれなかった」
「(亡くなった生徒は)ガンになった友達に自分の命をあげると言っていたらしい」
「ヘッドロックをかけられていた」
「毎日の様にズボンをずらされていた」
「服を脱がされて写真を撮られた」
「顔を殴られたり飛び蹴りをされたりしていた」
「運動着に小便をかけられ臭いと馬鹿にされていた」
「銀行口座の暗証番号を無理やり言わされお金を使われた」
「コンビニでの万引きを強要されて警察に言うと脅された」
「担任はいじめを目撃していたが、軽い注意をするに留めていた」
「先生は見てみぬふり」
「先生は(いじめを)笑ってみていた」
「成績カードを破られた」
「刺激物(辛子)を陰茎に塗りたくり痛がる様子を笑う」
「今日のヘアカットと呼び出し陰毛をライターであぶる」
「死体の画像写真を見せおまえはどうなりたい?と聞く」
「全裸にされ射精を強要される」
「高所やロープで自殺の練習をさせられる」
「体育大会で集団リンチに遭っていた」
「給食の配膳の際、中に痰・唾・ゴミをこっそりいれる」
「口に粘着テープを張られて羽交い締めにされて殴られる」
「椅子に縛りつけて複数人で殴る蹴る」
「紙を食わせる」
「葬式ごっこ」
「”蜂を食べさせられていた”とアンケートにあったそうですが、実際にはカエルまで食べさせられていたみたいです。あるとき、親戚の家に遊びに行ったとき、もうすごい下痢をしたみたいで…。きっと変なものを食べさせられたから、お腹を壊したんでしょうね…」
「メガネのフレームが壊れていたときがあったそうです。”メガネ、どうしたん?”って聞いても、”ちょっとコケただけや”って答えるだけだったらしくて…。周りに心配かけまいとしたんでしょうね。本当に優しい子でした」
引用:滋賀県大津市皇子山中2いじめ自殺事件 まとめ 月刊精神分析 2012年09月号 http://agency-inc.com/
もちろん、加害者少年もこのアンケートに回答しており、その内容は・・・
「死んだって聞いて笑った」
「死んでくれて嬉しい」
などと、反省するどころか、人ひとりを自殺に追い込んだという自覚は全くない様子だったそうです。
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「大津いじめ自殺事件」に対する“大人たち”の対応
また、この事件が単なるいじめによる自殺事件としてだけでなく、世間にインパクトを与え、大きな注目を浴びるに至った理由は、地位や権力を持った大人達が、隠蔽や口封じなどの保身に走ったことが、次々に明らかになったからでもあります。
教育委員会や学校は“いじめと自殺の因果関係”を認めず
前述した極秘の校内アンケートの結果、これだけのいじめを示唆する証言がありながら、事実関係は認められないとしてアンケートの公開を控え、学校側の会見では、「いじめと自殺の因果関係は認められなかった」と回答するばかりでした。
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また、大津市教育委員会も、当初はいじめと自殺の因果関係を不明としていたものの、校内アンケートでいじめをうかがわせる回答が多数あったことから、いじめがあったことは認めながらも、そのいじめと自殺との因果関係は不明であると結論づけたのです。
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さらに、この校内アンケートの内容は被害者生徒の遺族にも伝えられました。しかし、マスコミに漏れるのを恐れたのでしょう、あろうことか“部外秘”の誓約書にサインをさせるなど、遺族の心情を逆なでするような、常識では考えられない対応をとっていたことが後に明らかになっています。
そして、アンケートを受け取った遺族は、さらに詳しい事実が知りたいと学校側に要求したため、2回目の校内アンケートが実施されました。
その結果、「自殺の練習をさせられていた」など新たないじめを決定づける証言が得られたのですが、学校側はあくまで「新しい事実は確認されなかった」と報告するばかりでした・・・
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また、学校側や大津市教育委員会が、「いじめた側にも人権がある」という謎の理由により、加害者生徒に聞き取りすら実施しなかったことが後に判明したことで、非難や苦情が全国から殺到することに・・・
学校側や大津市教育委員会は、早々に幕引きをしようと図ったつもりが、逆に国民感情を逆なでしてしまった形ですね。やがて、この「大津いじめ自殺事件」は、数あるいじめによる自殺事件の中でも、最も問題のある事件として扱われるようになりました。
いじめから目をそむけた担任教師は保護者説明会すら欠席
実は、被害者生徒は自殺する6日前に、担任教師に電話で泣きながらいじめられていることを訴えていたことが後に明らかになっています。担任教師もそれを認めたのですが、この教師は「生徒同士の喧嘩」と結論づけて対応をすることなく放置したと言います。
それどころか「いじめられた原因は家庭環境にあった」と遺族側に責任転嫁するような発言をして、当時相当なバッシングを浴びていました。
また、被害者生徒の双子の姉がこの担任教師に、「弟がいじめられている」と相談した他、他の生徒も「いじめをやめさせて欲しい」と訴えるも、何も動かなかったそうです。
さらに、加害生徒が被害者生徒を殴るなどのいじめ行為を目撃もしており、その際には「やりすぎんなよ~」などと笑って見過ごしていたとの証言も・・・こ
そして、被害者生徒が自殺に至った2011年10月11日の直後、この担任教師は2013年3月までの長期休暇を申し出て、保護者説明会にすら出席しなかったと言います。
その後の大津市教育委員会や第三者委員会の聞き取り調査にも満足に応じなかっただけでなく、なんと被害者遺族への謝罪や追悼の言葉すらなかったそうです。
結果的に、この無責任教師に下された処分は、「減給10分の1を一ヶ月間」という、信じられないほど軽微なものでした。ちなみに、2013年3月より職場復帰も果たされているようです・・・
2013年5月17日、教育委員会は担任だった男性教諭に対して「教員としての職務上の義務を怠り、教育公務員としての信用を著しく失墜させた」として減給1/10 1カ月間の処分とした。第三者調査委員会は、担任が意図的にいじめの認知を回避しようとしていた感があるとして、報告書で担任の対応のまずさを指摘した。
これに対しては遺族側の家族が「学校、教育現場に、よりよい教育現場を作ろうとする意欲が感じられないことを改めて思い知らされ、がくぜんとする思いだ」と県の教育委員会を批判した。
教諭は2013年3月より職場復帰しているが、事件から1年半経過した時点でも、遺族には説明や謝罪を行っておらず、遺族は「男性教諭からまだ謝罪を受けていない。本人の口から、この問題をどう思っているか聞きたい」と述べた。
引用:大津市中2いじめ自殺事件 – Wikipedia https://ja.wikipedia.org/
滋賀県警は3度に渡って遺族から出された被害届を受理せず
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事件後、遺族は3度に渡って暴行事件として滋賀県警に被害届を提出しましたが、当初、県警は「被害者が自殺しているため受理できない」と、遺族の訴えをまともに取り合いませんでした。
その後、被害者遺族は、暴行、恐喝、強要、窃盗、脅迫、器物破損の6つの容疑で「告訴状」を提出し、ようやく受理されたそうです。
『殴ったり蹴ったりすれば「暴行罪」、金銭を脅し取れば「恐喝罪」、万引きをさせれば「強要罪」、物を隠したりすれば「窃盗罪」、周囲に仲間外れを強要したり死ねと脅せば「脅迫罪」、物に落書きすれば「器物損壊罪」、父親の告訴内容にはないが、けがをさせれば「傷害罪」が該当する。』
そう、実は「いじめ」は犯罪なのだ。
引用:DIAMOND ONLINE – 「大津いじめ自殺」が世に問うた、隠蔽する大人たちの「振る舞い」 https://diamond.jp/
当時は、いかに“学校でのいじめ”という犯罪行為が、事件としては軽視されていたかを示す滋賀県警の対応ですね。
出典:https://mainichi.jp/
しかし、今回の「大津いじめ自殺事件」により、いじめ問題を軽視する学校や教育委員会、警察への世間の批判が高まったことが、やがては国を動かし、事件の翌年に国会で可決された「いじめ防止対策推進法」が成立するきっかけになりました。
ちなみに、前述した校内アンケートには、いじめ内容の証言以外にも、生徒達から次のような回答が寄せられていたと言います。
「絶対先生とかも気づいていたと思う」
「いじめはなかったと会見開く前に真実を知るべき、知らせるべき」
「大人のエゴのせいでみんな傷ついた」
「いい加減隠さず話してほしい」
今回の「大津いじめ自殺事件」は、いじめの陰湿さや再発防止策の必要性だけではなく、あるべき大人の振る舞いをあらためて正したという意味でも、大きな意議があったと言えそうですね。
「大津いじめ自殺事件」の加害者のその後と現在【山田晃也・木村束麿呂・小網健智】
「大津いじめ自殺事件」の加害者としては、次の3人の生徒の名前が挙げられています。事件後は名前を変えて生活をしているようですが、あえて事件当時の名前でご紹介しましょう。
主犯格の加害者① 山田 晃也(やまだ こうや)
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この山田晃也が、いじめ加害者グループのリーダー格だったとされています。事件後は、京都府宇治市の中学校に転校したと言われています。事件後、山田晃也自身がSNSに投稿したとされるキャプチャー画像がこちら。
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人ひとりを自殺に追いやったという認識は全くないようです。この投稿からも、転校先での素行の悪さがうかがわれますが、2012年5月下旬には、女性教師への暴力事件を起こし、同年6月には同級生に対して暴力を振るったり所持品を燃やすなどの行為を行い、傷害容疑で書類送検されているとの情報があります。
加害者② 木村 束麿呂(きむら つかまろ)
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「大津いじめ自殺事件」の加害者グループのうち、特に名前が特徴的な木村束麿呂は、多くの顔写真とともに身元や家族が特定されており、事件後は改名した上で京都にある宇治市立広野中学校に転校したと言われていましたが、現在は国外にいるとも伝えられています。
なお、木村束麿呂はその特徴的な名前から、「大津いじめ自殺事件」の一時はリーダー格と勘違いされていたようですが、実際のリーダー格は山田晃也で間違いありません。
また、この木村束麿呂の父親はPTA会長をつとめていた他、母親の異常なモンスターペアレントぶりも、当時相当な話題になりました。
加害者③ 小網 健智(こあみ たけさと)
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「大津いじめ自殺事件」が発覚後、山田晃也と木村束麿呂の二人は京都の中学校に転校したのに対し、小網健智だけは転校しなかったようです。
しかし、その後、ネット上で住所などが特定されたことから、結果として転校を余儀なくされています。転校先は京都ではなく、北九州予備校山口校のようです。
この小網健智の父親は、京都大学医学部を卒業し、大学と予備校の講師を務め、母親は、日本バプテスト看護専門学校教諭をされていました。
小網家は大変なお金持ちで、なんと大津市教育委員会公募委員の竹中雅子氏と同じ敷地内にある家に住んでいたいこと。さらに母親は、事件発生当時の滋賀県知事だった嘉田由紀子氏と同じ町内で、大の仲良しだったことが分かっています。
ちなみに、「大津いじめ自殺事件」の裁判の結果、この小網健智にだけは賠償命令が下りませんでした・・・
加害者生徒の親の言動にも非難が殺到
出典:https://twitter.com/
「大津いじめ自殺事件」では、加害者生徒の親の言動にも非難が殺到しています。特に、加害者生徒である木村束麿呂の両親のモンスターペアレントっぷりが、当時大変な話題になりました。
加害者生徒の親がしたとされる発言は次の通り。
「あんたの子供は死んだけど、自分の子供は生きていかなくちゃいけない。ほんとどうしてくれるんや!」
「冗談真に受けてホントに自殺するなんて、こっちが被害者やわ」
「いじめたと公にされると、うちの息子が彼(被害者の少年)を殺したのと一緒という感じがする」
「周りからのいじめていたという目は、学校や社会からのパワハラみたいなもの」
「うちの息子が自殺したらどうするんですか?これ(いじめと認める行為)はいじめではないのか」
「アンケートは無関係の人間が憶測で書いただけ。いじめはなかった」
引用:大津いじめ事件とは (オオツイジメジケンとは) [単語記事] – ニコニコ大百科 https://dic.nicovideo.jp/
また、そんな加害者生徒の親らによって「ウチの子供は被害者です」という、信じられないような内容のビラが校門前で配られていたことも明らかになっています。
その加害者生徒の親がばらまいていたというチラシが、“ウェブ魚拓”として保存されているようなのでご紹介しておきましょう。
出典:http://megalodon.jp/
「大津いじめ自殺事件」の裁判の結果
いじめが自殺の原因と認め、ほぼ満額の賠償命令が下される
出典:https://www.kyoto-np.co.jp/
公判当初から、加害者少年らは、あくまでいじめと自殺との間に因果関係を認めず、否認を続けていましたが、それが逆に仇となり完全敗訴に繋がったと言われています。
いくら加害者生徒らがいじめの事実を認めなかったとしても、被害者生徒の遺族が集めた校内アンケートによる目撃情報など、実に500点以上の証拠には太刀打ちできなかったようですね。
最終的に、いじめ訴訟としては異例の判決が下ることになります。
「大津いじめ自殺事件」損害賠償訴訟の争点は?
いじめ訴訟において重要となるのは、いじめ被害者が自殺する可能性を、加害者側が予見していたかどうかを立証することだと言われています。
今回の「大津いじめ自殺事件」においては、検察は「多くの状況証拠から自殺は容易に予見できた」とし、「自殺は特殊な事情によるものではなく、加害者らが自殺を予見していたかの有無に関わらず賠償責任がある」と主張しました。
出典:https://mainichi.jp/
「大津いじめ自殺事件」損害賠償訴訟の判決
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裁判では、検察側の主張の正当性や、加害者少年らがいじめと自殺の因果関係を否定し続けたことから、反省の色が見られないと判断され、情状酌量の余地がないと断罪。
大津地検は、遺族側の賠償請求額3,850万円に対して、ほぼ満額となる3,750万円の賠償を加害者少年2名(山田晃也と木村束麿呂)に言い渡しました。
なお、残る1名(小網健智)に関しては、関与の度合いが低いとして、賠償責任を問いませんでした。
被害者生徒の父親は、判決言い渡し後の記者会見の中で、「主張をほぼ認めてもらえた」などと延べ、涙を浮かべたと言います。
出典:https://www.sankei.com/
判決が事実認定した要点について
「大津いじめ自殺事件」損害賠償訴訟において、判決が認定した事実はおおむね次の通りです。
男子生徒は2011年春、中学2年で元同級生2人と同じクラスになり、昼食を一緒に食べたり花火大会に出掛けたりするなど交友を深めた。しかし、2学期には首を絞めたり弁当を隠したりするなどの「いじる」「いじられる」の関係に変わった。
さらに「遊び」の名の下で顔に落書きしたり、殴ったり蹴ったりするなどの暴行が始まり友人関係は崩壊。男子生徒は祖母に自殺したいと吐露することもあった。9月の体育祭では2人は男子生徒にハチの死骸を食べさせようとした。
10月には男子生徒が別の同級生と昼食をとるなど離脱を試みたが、元同級生らはいきなり男子生徒宅を訪れて財布を隠したり時計を盗んだりした。
そして男子生徒は10月11日、自宅マンションから飛び降りて死亡した。
引用:「大津いじめ自殺」が世に問うた、隠蔽する大人たちの「振る舞い」 | ニュース3面鏡 | ダイヤモンド・オンライン https://diamond.jp/
まとめ
いかがでしたでしょうか。
滋賀県大津市の中学校で起きた、いじめによる自殺事件「大津いじめ自殺事件」について、被害者が受けていた陰湿ないじめの内容をはじめ、加害者のその後や現在、そして気になる裁判結果について総まとめしてみました。
実は、いじめが自殺の原因となったことを認めた裁判は、この「大津いじめ自殺事件」が初めてでした。今後のいじめ訴訟にとてつもなく大きな影響を与える裁判として注目されています。