不敬罪で逮捕や死刑とは?日本での事例7つや意味・現在は廃止の理由を解説

不敬罪という罪名を聞いたことはありますか?不敬罪を知っておかないと、自分が意識していないうちに、不敬罪の罪を犯しているかもしれません。そして、逮捕されるかもしれないんです。

 

不敬罪の意味や不敬罪がある国、日本で不敬罪が廃止されている理由、以前の日本では逮捕されたら死刑なのかどうか、不敬罪の事例などをまとめました。

不敬罪の意味

 

不敬罪とは、国王や皇帝、王族・皇族、宗教・聖地などに対して、失礼なことや敬意を払わないこと、尊厳を害することを行ったことに対する罪です。

 

不敬罪の正しい意味を辞書から引用してみましょう。

 

天皇や皇族もしくは神宮・皇陵に対する不敬行為によって成立する罪。1947年(昭和22)刑法改正により廃止。

 

引用:不敬罪(ふけいざい)とはー不敬罪の読み方Weblio辞書

 

日本の場合は、天皇や皇族、神宮・皇陵が対象になりますが、国によって対象は違います。国王がいる国では、不敬罪の対象は国王や王族になります。

 

どんな行為が不敬なのかはその国の解釈によって違いますが、天皇や国王を馬鹿にしたり、皮肉めいた風刺をしたり、肖像画をぞんざいに扱うなどををすると、不敬罪になることがあります。

 

 

不敬罪がある国

 

不敬罪はすべての国にあるわけではありません。不敬罪がある国は限られています。不敬罪がある国の一例をご紹介します。

 

・タイ
・カンボジア
・サウジアラビア
・パキスタン
・デンマーク
・オランダ
・スペイン

 

王族や皇族がいる国でないと、不敬罪はありません。ただ、イギリスは国王・王族はいますが、不敬罪はありません。

 

また、イスラム諸国では王族がいる国がありますし、イスラム教に対しても不敬罪が適用されることがあります。

 

 

日本の不敬罪は現在は廃止されている理由

 

先ほど、不敬罪がある国をご紹介しました。その中に日本が入っていないことに疑問を持った人もいると思います。

 

日本には天皇・皇族がいますが、現在の日本では不敬罪は廃止されています。戦前は不敬罪はありましたが、1947年に廃止されています。

 

日本国憲法が1946年に制定された時には、不敬罪は恩赦の対象とされていましたが、1947年には不敬罪の条項は削除されているんです。

 

そもそも、日本では明治~戦前までは天皇主権でした。天皇が主権を持った国だったために、主権を持つ天皇と皇族に対して不敬罪がありました。

 

でも、戦後になり日本国憲法が施行されてからは、国民主権になっています。天皇は「国民統合の象徴」です。国民主権を宣言している以上、現在の日本では不敬罪は成立しないのです。

 

だから、現在の日本では不敬罪が廃止されているのです。

 

 

日本の不敬罪で逮捕されたら死刑?

 

現在の日本では不敬罪は廃止されています。しかし、戦前の日本では不敬罪はありました。そして、不敬罪で逮捕されたら死刑になる可能性もあったんです。

 

明治40年に施行された刑法には、次のように定められています。

 

第1章 皇室ニ對スル罪第73条 

天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ對シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ處ス

第74条 
天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ對シ不敬ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同シ

第75条 
皇族ニ對シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ處シ危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ處ス

第76条 
皇族ニ對シ不敬ノ行為アリタル者ハ二月以上四年以下ノ懲役ニ處ス

引用:不敬罪 – Wikipedia

 

天皇のほかに皇后・皇太子など天皇に準ずる皇族に危害を加えたり、加えようとした不敬罪で逮捕されたら、死刑になります。これは大逆罪と呼ばれることもありますが、不敬罪の中に含まれることも多いです。

 

そのほかの皇族に対して危害を加えて逮捕された場合も、死刑です。危害を加えようとしただけの不敬罪で逮捕されたら無期懲役です。

 

そして、天皇と天皇に準ずる皇族に不敬な行為(敬意を欠くような行為)をしたら3ヶ月以上5年以下の懲役です。そのほかの皇族に対しての不敬罪は2ヶ月以上4年以下の懲役となります。

 

天皇や皇后・皇太子などに危害を加えようとした(未遂)だけで死刑になるというのは、戦前はいかに天皇が神格化されていたのかがわかりますね。

 

 

日本の不敬罪の7つの事例

現在の日本では不敬罪は廃止されていますが、戦前の日本では不敬罪がありました。そして、逮捕される事例もありました。ここでは、日本の不敬罪の代表的な事例をご紹介していきます。

 

 

不敬罪の事例①:島津ハル事件

 

昭和11年に島津男爵夫人の島津治子は、「明治神宮ミソギ会」で交霊をしていた時に「近い将来に天皇が崩御することを予言し、後継には継宮や秩父宮ではなく高松宮をたてるべき」などと主張したとして、不敬罪で逮捕されました。

 

ただ、起訴前の精神鑑定で「感応性精神病」と診断され、不起訴になっています。

 

 

 

不敬罪の事例②:天皇機関説事件

 

不敬罪の事例、次は天皇機関説事件です。1935年に東京帝国大学名誉教授であり貴族院議員の美濃部達吉が天皇機関説を唱えて、不敬罪で逮捕されました。

 

天皇機関説とは「統治権は法人である国家に属し、国の最高機関である天皇が国務大臣の輔弼を受けて行使する」というものです。天皇が神格化されていた時代に、天皇を「国の最高機関」と位置付けたために、不敬罪が適用されたのです。

 

美濃部達吉は最終的には起訴猶予処分となっていますが、貴族院議員は辞職し、その翌年には右翼から銃撃されて重傷を負っています。

 

 

不敬罪の事件③:牧口常三郎不敬罪事件

 

不敬罪の事例、次は牧口常三郎不敬罪事件です。牧口常三郎は創価学会の創始者です。創価学会はご存知の通り、神社神道を受け入れず批判的な考えを持っている宗教団体です。

 

1943年に牧口常三郎は、日蓮正宗総本山大石寺から「創価学会も神礼を受け取ったらどうか?」と打診されたのに、伊勢神宮で神礼を祭ることを拒否したために、不敬罪と治安維持法で逮捕されました。そのまま獄中死しています。

 

伊勢神宮は皇室の氏神である天照坐皇大御神を祭っている神社ですので、その神社に対しての不敬罪が適用されたというわけです。

 

この不敬罪での逮捕・獄中死によって、牧口常三郎は創価学会で殉教者として祀り上げられています。

 

 

不敬罪の事例④:プラカード事件

 

不敬罪の事例の4つ目は、プラカード事件です。プラカード事件とは1946年5月19日の食糧メーデーで、日本共産党員の松島松太郎が不敬罪で起訴された事件です。

 

松島松太郎は食糧メーデーの集会で、次のように書かれたプラカードを掲げました。

 

「ヒロヒト 詔書 曰ク 國体はゴジされたぞ 朕はタラフク食ってるぞ ナンジ人民 飢えて死ね ギョメイギョジ」

 

引用:プラカード事件 – Wikipedia

 

簡単に言うと、「天皇は『国は保った(守られた)。私はお腹いっぱい食べている。人民は上て死んでしまえ』と言っている」という意味ですね。

 

このプラカードを掲げたため、天皇に対する不敬罪で逮捕されて起訴されました。ただ、ここからがこの事件はややこしいんです。

 

1946年はポツダム宣言受諾後ですが、まだ不敬罪は残っているという微妙な時期。そのため、いったん不敬罪で起訴されたものの、GHQの「天皇といえども特別の保護を受けるべきではない」という意向で、不敬罪ではなく天皇個人に対する名誉棄損罪が認められることになりました。

 

ただ、松島松太郎は「ポツダム宣言受諾後は、不敬罪は消滅した」として無罪を主張します。控訴審では大赦を理由に免訴(裁判の打ち切り)となり、最高裁は上告を退けたので、最終的には無罪ではなく「免訴」となっています。

 

 

不敬罪の事例⑤:長崎県小学校御真影焼却事件

 

日本での不敬罪の事例、5つ目は長崎県の小学校での御真影焼却事件です。大正12年に長崎県の長崎市朝日尋常小学校で小使として働いていた男性が高齢を理由に校長に解雇されたことがありました。

 

解雇されたことを逆恨みした男性は、内縁の妻と一緒に学校にあって天皇の御真影(写真)を盗み出して焼却してしまったということがありました。これは自分を解雇した校長が「御真影の管理ミス」で辞任することを狙った行動でしたが、実際は男性と内縁の妻が不敬罪で逮捕されたんです。

 

この不敬罪での逮捕で男性と内縁の妻はそれぞれ懲役1年の実刑判決となっています。

 

 

不敬罪の事例⑥:大津事件

 

不敬罪の事例6つ目は大津事件です。これはちょっと特殊な事件になります。1891年にロシアの皇太子(のちのニコライ2世)が来日し、滋賀の大津を訪問していた時、警備に当たっていた警察官に突然切り付けられたという事件です。

 

この事件では法律上の不敬罪は日本の皇族を対象にしたものであり、外国の王族に対しては適用されるものではありませんでした。

 

しかし、事件当時、日本はまだロシアに対抗できるだけの国力を持っておらず、ロシアとの関係悪化を避けたかったため、裁判所に不敬罪を適用して死刑にするように働きかけます。ロシア側も暗にそれを望んでいました。

 

しかし、三権分立を確立した法治国家として裁判所は「法は順守されなければいけない」として、一般人に対する謀殺未遂罪を適用し、無期懲役の判決を下しています。

 

 

不敬罪の事例⑦:尾崎不敬罪事件

 

不敬罪の7つ目の事例は、尾崎不敬罪事件です。太平洋戦争中の1942年の第21回衆議院選挙は東条内閣が議会を完全に操縦するために翼賛選挙を推進していました。

 

それを尾崎行雄が「立憲政治が始まってから孫の代(三代目)になっても、まだ翼賛選挙を推進しているのおかしい」という意味・社会風刺として、「売家と唐様で書く三代目」という川柳を引用しながら選挙活動を行っていました。

 

この川柳の「三代目」は昭和天皇を指していて、尾崎行雄は不敬罪に当たるとして、投票日の1週間前に逮捕され拘留されることがありました。

 

1審では懲役8ヶ月執行猶予2年の判決でしたが、2審では無罪となっています。これは尾崎行雄の存在を疎ましく思った政府が尾崎を選挙から排除するために、無理やり不敬罪を適用させたのではないかと言われています。

 

 

まとめ

不敬罪の意味や適用されている国、現在の日本では廃止されている理由、逮捕されると死刑になるのか、また不敬罪で逮捕された事例などをまとめました。

 

不敬罪は現在の日本では廃止されています。世界的にも不敬罪が適用される国は少ないですが、タイではまだまだ不敬罪で逮捕されることが多いようですね。

 

日本でも一部の人が不敬罪の復活を叫んでいますが、国民主権が憲法で定められている以上、憲法が大幅に変わらない限り、不敬罪の復活はないでしょう。

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