硫酸は強い腐食性があり、皮膚につくと化学熱傷を起こす危険な物質であることはよく知られています。突然、硫酸をかけられたら?考えただけで恐ろしいですよね。
硫酸を突然かけられるアシッドアタックの意味やアシッドアタックをする動機や心理、刑罰と日本と海外での事例をまとめました。
この記事の目次
アシッドアタック(硫酸攻撃)の意味
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アシッドアタックの意味は、硫酸攻撃(酸攻撃)です。
アシッド(acid)が「酸」の意味で、アタック(attack)が攻撃ですね。強酸性の物質を相手の顔や体にかけて、化学熱傷を負わせることがアシッドアタックになります。
アシッドアタックでは硫酸や塩酸、硝酸などが用いられますが、最もよく用いられるものが硫酸です。そのため、「アシッドアタック=硫酸をかけて相手を攻撃すること」という意味でつかわれることが多いです。
アシッドアタックは被害者に半永久的に残る重度の後遺症を残しますし、突然硫酸をかけられると、防ぎようがないので、ほかの犯罪に比べても非常に悪質な攻撃と言えるでしょう。
アシッドアタック(硫酸攻撃)が多い地域
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アシッドアタックは男尊女卑の文化が残る地域に多いとされています。具体的には、インドやバングラデシュ、パキスタンなどの南アジアや中東などです。
そのほか、カンボジアやコロンビア、アフリカ(ナイジェリアやウガンダ、南アフリカ)などでもアシッドアタックは多いです。
アシッドアタックは主に男性から女性への攻撃として用いられています。アシッドアタックの被害者の80%は女性という統計もあります。
アシッドアタックは主に発展途上国で行われる犯罪ですが、ロンドンでもアシッドアタックは増加していて、2011年~2016年の6年間でロンドンでは1,464件ものアシッドアタックが報告されています。
アシッドアタック(硫酸攻撃)は大きな被害を生む
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アシッドアタックはただ単に熱傷を負わせるだけでなく、硫酸などの酸をかけられた部位はひどく損傷します。ケロイド状になって皮膚が引きつった状態になるだけでなく、目を失ったり、鼻が溶けてしまったりすることもあります。酸が骨まで侵食すると、骨にもダメージを与えてしまいます。
そして、そうなると何度も修復手術をしても、状態が回復することはあっても、完全に元通りになることはありません。
アシッドアタックを顔に受けた人は、外見的に大きく損傷を受けるため、仕事を失う人も少なくありません。社会的な地位を失ったり、外出できなくなってしまったりします。社会的・経済的・心理的問題を抱え、アシッドアタックによる損傷で、自殺してしまうケースもあるのです。
アシッドアタック(硫酸攻撃)の動機
アシッドアタックをする人は次のような心理・動機があります。
・性的関係の拒否への逆恨み
・結婚拒否への恨み
・マイノリティ差別
・持参金要求への復讐
・社会的・政治的・宗教的な動機
・ギャング抗争
・不動産や家畜をめぐる争い
- 南アジアなどでは結婚を拒否したり、性的関係になることを拒否したことで、男性が一方的に恨みを抱いてアシッドアタックをすることがあります。
- また、男子を優遇する国では生まれてきた子供が女の子だったからという理由で、自分の子供に父親がアシッドアタックをすることもアシッドアタックをすることもあるのです。
そのほか、マイノリティ・人種差別の手段としてアシッドアタックをすることもありますし、マフィア抗争でも用いられるなど、アシッドアタックをする心理・動機は非常に幅広いと言えます。
アシッドアタック(硫酸攻撃)をする心理
心理①:深い恨みと気の弱さ
アシッドアタックをする深層心理には、深い恨みと気弱さがあるとされています。
なぜなら、アシッドアタックは硫酸などの酸を用意しなければいけないので、「カッとなったから」という犯行ではなく、事前に計画し用意する必要があるからです。その恨みが正当なものかどうかは関係なく、執拗に深い恨みを持つ粘着質なタイプの人がアシッドアタックをする傾向にあります。
また、気の弱さが深層心理にあるタイプも、アシッドアタックを選択することが多いです。アシッドアタックは「殴る」、「刺す」のように相手に直接物理的な攻撃をして、自分にその感触が残る犯罪ではありません。
硫酸をかけたら、すぐに逃げることができ、「自分は直接攻撃を加えたわけではなく、ただ液体をかけただけ」と自分に言い訳することができます。そのため、執拗に恨み(逆恨み)をするけれども、直接は自分では手を下すのは怖いというタイプが、アシッドアタックをするのです。
心理②:女性を見下している
また、女性をものとして見ていて、深層心理で女性を見下している人も、女性に対してアシッドアタックをすることが多いです。
インド圏やパキスタンのような国では、若くて美しい女性がアシッド・アタックの被害者になるケースが多い。それは女性に振られた男が異常なまでの怒りを持ち、「俺を振るなら破壊してやる」という身勝手な感情にとらわれるからだ。
死ぬまで被害者を苦しめる。そこにアシッド・アタックという犯罪の狂気がある。
「女のくせに俺を振るなら、死ぬまで苦しめ!お前なんて二度と男に見向きもされないようにしてやる」というような見下し&逆恨みから、アシッドアタックをします。これは、南アジアに多い心理と言えるでしょう。
アシッドアタック(硫酸攻撃)の刑罰は傷害
アシッドアタックは被害者を一生苦しめ続ける犯罪です。失明することも多く、さらに外見を大きく変えてしまいます。肉体的な損傷だけでなく、社会的・経済的・心理的な被害も非常に大きいことが特徴です。
しかし、アシッドアタックの刑罰は傷害罪です。傷害罪は日本では「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。アシッドアタックに殺意があったことが認定されたら、殺人未遂の罪(死刑または無期懲役、もしくは懲役5年以上)になることもあります。
アシッドアタックをして、被害者の一生を台無しにするどころか、一生苦しむほどの被害を与えているのに、傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)にしかならないのは、被害者としてはやりきれないものがあるでしょう。
アシッドアタック(硫酸攻撃)の日本の事件・事例:1~5事例
日本でのアシッドアタックの事件・事例を見ていきましょう。
1.白金高輪駅の硫酸事件
2021年8月24日に、港区の白金高輪駅でアシッドアタックがありました。都内在住の会社員の男性がエスカレーターの左側に乗っていたところ、後ろからエスカレーター右側を歩いて上がってきた男性に硫酸をかけられた事件です。
被害者の男性は硫酸を主に顔にかけられたようで、全治6か月の重傷を負っています。また、現場では「目が痛い」と言っていたため、失明のリスクも高いと見られています。
被害者の男性の後ろに立っていた女性も硫酸を踏んで転倒し、その時に硫酸が脚について火傷を負っています。
この犯人の男性は赤坂見附駅から白金高輪駅まで被害者の男性をつけていたことがわかっていて、右手だけに手袋をして硫酸が入った小瓶を所持していました。
犯人は現場から逃走しましたが、防犯カメラの映像から静岡県に自宅がある男であることがわかり、手袋の指紋と自宅の指紋が一致したことで指名手配され、沖縄県の友人宅に潜伏していたところを逮捕されています。
この犯人と被害者は同じ大学のサークルの先輩・後輩の関係性でした。犯人の男性は「今は話したくない」と黙秘しているようですが、被害者の男性は動機について、次のように話していると報道されています。
男性は「数人でいた時に花森容疑者にタメ口を使ったら『自分が年上なのに、タメ口はおかしい』と怒られた」と説明している。
タメ口で話しただけで、こんなに数年間にも渡り恨みを持つものでしょうか?アシッドアタックを実行するほどの恨みは相当なものと考えられます。犯人からの自供が待たれています。
2.美空ひばり塩酸事件
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昭和のレジェンド歌手であり、日本の歌姫だった美空ひばりさんもアシッドアタックを受けたことがある1人です。
美空ひばりさんは19歳のころ、1957年1月13日に浅草国際劇場でショーを行っていました。その舞台にファンの女の子が駆け上がり、美空ひばりさんの顔に塩酸の入った瓶を投げつけました。
美空ひばりさんは顔に塩酸がかかり、すぐに浅草寺病院に緊急搬送されました。幸いにも全治3週間の軽傷で、顔にやけどの跡は残りませんでした。アシッドアタックをした女の子は美空ひばりさんと同じ年齢の熱烈なファンでした。
この犯人はアシッドアタックの動機を「美しい顔が醜くなるのを見たかった」と供述していたそうです。熱烈ファンが美空ひばりさんへの愛をこじらせてしまった結果でしょうか。
3.高崎市連続硫酸事件
2015年4月に群馬県高崎市で、女性の足に硫酸をかけるアシッドアタックの事件が5件も相次いで起こりました。JR高崎駅ビルやショッピングセンターなどで女性に硫酸をかけ、衣服を溶かして、足にやけどを負わせています。
この事件では、北村宣晃(当時30歳)が犯人として逮捕されています。犯人は「女性が驚こうと思った」と動機を説明していますが、被害者の女性は5人中4人が黒いストッキングにスカートだったため、何らかのフェチ・コンプレックスがあったのかもしれません。
このアシッドアタックの犯人は、懲役2年6ヶ月の判決を言い渡されています。また、2014年に、自分の尿や体液を入れた空き缶を女性のカバンに入れた罪で執行猶予中でした。そのため、執行猶予(懲役1年6ヶ月)は取り消され、それも併せて服役することになっています。
自分の尿や体液を女性のカバンに入れる。その後、アシッドアタックをするなんて、かなりこじらせていることは間違いないですね。
4.紅雲町の三角関係殺人事件
1967年12月30日に愛知県名古屋市紅雲町で、アシッドアタックを伴う殺人事件が発生しました。
同棲していたホステスの女性が、ほかの男性と肉体関係を持っていることが判明したために、犯人の男性は激高し、浮気相手の男性宅に押し入って、ホステスの女性を牛刀で刺し殺し、浮気相手の男性の顔に硫酸をかけました。
犯人の男性はこの浮気相手の男性のアパート前で、ほかの男性も殺害して逃亡していましたが、その後すぐに出頭して逮捕されています。
5.横浜市晴れ着硫酸連続事件
1965年1月1日から5日にかけて、横浜市内で晴れ着を着た女性に硫酸をかけるアシッドアタックが連続して行われました。わかっているだけでも60人もの被害者が出ましたが、犯人は捕まることなく、事件は迷宮入りしています。
アシッドアタック(硫酸攻撃)の日本の事件・事例:6~9事例
6.奈良硫酸事件
1954年に奈良県で女性が男性の局部に硫酸をかけるアシッドアタックの事件が起こりました。
犯人の女性は中学校の教員で、被差別部落の出身でした。恋人である同僚の男性にそのことを打ち明けましたが、恋人の男性は「被差別部落出身かどうかなんて気にしない」と言い、2人は結婚の約束をします。
そして、肉体関係を持つ中で、女性は妊娠しますが、この時は経済的なことを理由に女性は中絶させられます。
その後も交際を続けていましたが、男性は被差別部落の女性と交際していることを父親に知られ、ほかの女性と結婚することになりました。
しかし、男性は結婚後も恋人だった部落出身の女性に「結婚した」と告げずに肉体関係を持ち続けていたのです。そして、女性は妊娠しました。そこで初めて、女性は恋人の男性は既に結婚していたことを知ることになります。
女性は硫酸を用意して男性と話し合いの場を持ちますが、男性は否定的な態度を取り続けたため、女性は男性の局部周辺に硫酸をぶちまけたのです。
女性は逮捕されますが、部落解放団体の抗議などで不起訴処分となり、教員にも復職しています。
この事件はアシッドアタックもヤバいですが、被害者の男性の不誠実さもヤバいです。さらに、アシッドアタックをした女性を不起訴処分に持っていく部落解放団体の力もヤバいですし、アシッドアタックをした犯人が教員に戻るのもヤバイですよね。いろいろとヤバイ事件であることは間違いないでしょう。
7.四日市事件
1951年1月23日、在日本朝鮮人連盟四日市支部を接収しようとしたところ、在日朝鮮人がアシッドアタックをしたり、ガラスの破片を投げつけるなどの妨害を行いました。
このアシッドアタックなどで執行係員7名が全治2~3週間の重軽傷を負っています。
8.野田醤油労働争議事件
千葉県にある野田醤油株式会社(現在のキッコーマン)で、1922年から1923年にかけて、激しい労働争議が行われました。全行員1,400名がストライキする事態に発展し、会社側と争議団で激しく争い、暴行・傷害・脅迫事件が300件以上が記録されています。
1923年に争議団副団長による天皇直訴が行われたことで、一気に収束しましたが、それまでに争議団側は会社の人事係に対して、たびたびアシッドアタックを行っていました。
9.埼玉硫酸事件
1891年に上野発王子行きの記者の中で、埼玉県の自由党員が改進党の県議会議員に対して、アシッドアタックをした事件が起こりました。
これは、秩父~熊谷間の新道建設の利権で対立していたこと、自由党と改進党の対立があったこと、贈収賄疑惑があったことなどが事件の背景にあるようです。
アシッドアタック(硫酸攻撃)の海外での事件・事例:1~5事例
次は、海外でのアシッドアタックの事件・事例を見ていきます。
1.コロナ禍パリ邦人へのアシッドアタック
2021年2月にパリ17区で日本人がフードをかぶっていた3人組に強酸の液体を顔にかけられる事件が起こりました。
被害者はとっさに顔を手で覆ったので、手のやけどのみで失明などの被害は出なかったようですう。
先週、パリ17区で日本人の方々が塩酸をかけられる事件がありました。この背景にある全世界的なアジア系に向けられた嫌悪暴力に特に在外邦人の皆さんは警戒する必要があります。
— 辻仁成 (@TsujiHitonari) February 15, 2021
欧州最新情報です。https://t.co/pNAnqylFl3
在フランス日本大使館からも注意喚起のメールが在フランス邦人に発出され、外務省のホームページにも注意喚起が掲載されました。
1 在留邦人から当館に報告された被害のうち、パリ市内において、以下のような強酸性の液体を利用した傷害事件が発生したため、被害者のご了承を得てお知らせします。
(1)2月10日(水)夕刻、パリ17区の公共空間において、邦人被害者が友人と3人でいたところ、フードをかぶり下を向いて歩いてきた3人組(男女の別不明)からいきなり顔に向けて液体をかけられた。
そのメールによると、2019年にもパリのメトロの中で硫酸を使ったアシッドアタックがあったようですが、事件当時のフランスではアジア人狩りのようなことが行われていたため、新型コロナウイルス関連によるアジア人差別ではないかとも言われています。
2.ケイティ・パイパーへのアシッドアタック
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現在はTVプレゼンターや活動家として活躍しているイギリス人のケイティ・パイパーさんは、2008年にレイプされ、その2日後にアシッドアタックを受けました。
24歳のころ、とても美しかったケイティ・パイパーさんはFacebookで知り合った男性と直接会うことになりました。そして、その時にその男性にレイプされています。さらに、その2日後にレイプした男性の仲間に硫酸をかけられて、彼女の美しい顔は溶けてしまったのです。
すぐに救急搬送されましたが、顔全体が焼けただれ、片目は失明していましました。
しかし、ケイティ・パイパーさんは、事件の翌年に「ケイティ・パイパー財団」を立ち上げ、火傷や事故による傷跡の治療を提供する活動を始めています。また、自身も300回を超える顔の再建手術を受け、以前のような美しさを取り戻しています。
そのうち、私がこうして生かされていることには、何か意味があるのだと信じるようになったのです
引用:「私には、生かされた意味がある」──レイプとアシッド・アタックの被害から立ち上がった活動家、ケイティ・パイパー。【社会変化を率いるセレブたち】 | Vogue Japan
現在は結婚して二児の母となり、アシッドアタックの被害者の救済活動を行うなど活動家として活動するほか、モデル業などにも挑戦しています。
3.ナイトクラブでのアシッドアタック
イギリスのモデルやテレビパーソナリティーとして活躍していた女性のファーン・マッキャンと交際していたアーサー・コリンズは、2017年4月にロンドンのイーストエンドにあるクラブでアシッドアタックをしました。
クラブ内には600人の客がいましたが、その中に強酸が入った瓶を投げ込んで、22人が負傷し、アーサー・コリンズは禁固20年の実刑判決を受けています。
この事件の時、ファーン・マッキャンは彼の子供を妊娠していたようで、シングルマザーとして子供を出産することを宣言し、2017年11月に出産しています。
4.ボリショイ硫酸事件
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2011年にロシアのボリショイ・バレエ団の芸術監督に就任したセルゲイ・フィーリンは、2013年1月にモスクワ市内で何者かに襲撃を受け、顔に硫酸をかけられました。硫酸が目に入り、一時は失明の危機に瀕しましたが、22回にも及ぶ眼科手術の末、失明には至らずに済んでいます。
これはボリショイ・サーカス内で、バレリーナのアンジェリーナ・ヴォロンツォワがフィーリン氏に冷遇されたために、恋人のドミトリチェンコがフィーリン氏の襲撃を計画したものとみられています。
5.ジャーナリスト硫酸事件
1956年4月5日に、マフィア問題を追及していたジャーナリストでコラムニストのビクター・リーゼルが、マフィアの幹部であるジョン・ディオガルディから指示を受けた実行犯にアシッドアタックを受けました。
このアシッドアタックで、被害者のビクター・リーゼルは両目を失明しています。しかし、被害者はこの事件の後も、犯罪撲滅のための活動をつづけました。
ちなみに、実行犯は報酬を上乗せするように迫ったため、事件の4か月後に射殺体となって発見されています。
アシッドアタック(硫酸攻撃)の海外での事件・事例:6~10事例
6.カテリーナ・ハンジューク死亡事件
2018年7月31日に、ウクライナの反汚職活動家であり、ヘルソン市長顧問をしていたカテリーナ・ハンジュークさんは見知らぬ男に1リットルもの硫酸をかけられるアシッドアタックを受けました。
アシッドアタックによって、彼女は上半身や腕、顔などに大きなやけどを負い、重体に陥ります。10回以上の手術を受けていましたが、同年11月に入院先の病院で死亡しました。
7.ソナリ・ムカジー硫酸事件
インド人女性のソナリ・ムカジーさんは、18歳のころ、自宅の屋上で寝ていた時に3人組の男に襲われ、抵抗したら顔に強酸性の液体をかけられるというアシッドアタックを受けました。
ソナリ・ムカジーさんは失明し、聴力も不自由になり、まぶたや耳、鼻は溶けてしまいました。犯人の3人組の男性は逮捕されたものの、数日で釈放されたということです。
彼女の顔の再建手術のために、家族は家や財産を売り払い医療費を捻出しましたが、お金は底をつき、インドの人気番組「クイズ・ミリオネア」に出演することを決意します。
2012年に「クイズ・ミリオネア」に出演したソナリ・ムカジーさんは250万ルピー(390万円)を獲得しますが、元通りになるにはまだお金は足りないとのことです。
8.ラクシュミーへのアシッドアタック事件
インド人女性のラクシュミー・アガラワルさんは、15歳の時に兄の同級生だった32歳の男性からの求婚を断ったことを逆恨みされ、アシッドアタックを受けました。
治療が終わった後もしばらく引きこもっていましたが、徐々に同じようにアシッドアタックを受けた女性たちと会うようになり、活動の幅を広げ、アシッドアタック撲滅・被害者救済のための活動を始めるようになります。
その活動を認められ、様々な賞を受賞していて、さらに2020年には彼女をモデルにした「
Chhapaak」という映画も作られています。
活動家のアロク・ディキシット氏とパートナー関係にありましたが、現在は破局しているようです。
9.ナタリア・ポンセ・デ・レオンへのアシッドアタック
コロンビアのナタリア・ポンセ・デ・レオンさんは、2014年に隣人の男性からの求愛を断ったら、その腹いせに1リットルの硫酸をかけられ、全身の24%を火傷し、33回の再建手術を受けています。
彼女はアシッドアタックの加害者への厳罰を与える法整備に寄与し、2016年にはBBCの100人の女性に選ばれています。
10.ケイティ・ジー硫酸事件
ロンドン出身のケイティ・ジーさんは、18歳のころにタンザニア沖にある島に英語や算数を教えに行きました。
宿に帰る途中、スクーターに乗った2人組の男から、突然顔に硫酸をかけられるというアシッドアタックを受け、60回以上の手術を受けることになりました。
イギリスのマスコミがケイティ・ジーさんの姿を「醜い姿」と報じたことから、彼女は立ち上がり、インスタグラムで「#settingthestandard」というハッシュタグを作って、外見で人を判断するのはやめるように呼び掛けています。
アシッドアタック(硫酸攻撃)の海外での事件・事例:11~13事例
11.タット・マリナへのアシッドアタック
1999年にカンボジアで16歳のカラオケ女優だったタット・マリナさんは、アシッドアタックを受けました。
政府高官のスヴァイ・シータはアメリカ人ビジネスマンに成りすまして、タット・マリナさんを脅して愛人にしました。タット・マリナさんは貧しい家族を支えるために、愛人になるしかなかったようです。
しかし、スヴァイ・シータの妻は自分の夫に愛人(タット・マリナ)がいることを知り、実行犯を雇って、タット・マリナを襲い、殴った後に顔に硫酸をかけたのです。
現場には犯人の遺留物もあり、誰の犯行か明確だったにも関わらず、犯人は逮捕されず、タット・マリナさんは医療費の補償などを受けることができませんでした。
12.ナエーマ・アザールへのアシッドアタック
パキスタン人のナエーマ・アザールさんは、夫から経済的DVを受けていて、家庭に全くお金を入れてくれなかったので、離婚しようとしていました。そんな時、夫からアシッドアタックを受けて、失明してしまったのです。
しかし、夫は逮捕されることはなかったそうです。
13.ホーレス・ウェルズ硫酸事件
笑気麻酔の実験で知られる歯科医のホーレス・ウェルズは、麻酔で1人の患者を死亡させた後、歯科医を辞め、違う仕事をするようになります。
しかし、そのころから奇妙な行動をするようになり、1848年に売春婦に硫酸を投げつけるアシッドアタックを行い逮捕されました。そして、その後に自殺しています。
アシッドアタック(硫酸攻撃)のまとめ
アシッドアタックの意味や動機や心理、刑罰、日本と海外での事件・事例をまとめました。アシッドアタックは非常に卑劣な犯罪行為です。被害者には肉体的な苦しみだけでなく、心理的・経済的・社会的な苦しみを一生背負わせることになります。
日本でももっと厳罰化されることを願わずにはいられません。