大動脈解離とは

大動脈解離とは、心臓近くの太い動脈である大動脈が裂けてしまう病気です。

大動脈は内膜・中膜・外膜の3層構造になっています。一番内側（血液に触れている部分）の内膜が何らかの拍子に裂け目ができてしまうと、そこから血液が内膜と中膜の間に流れ込ます。

そうすると、最初は小さな裂け目だったところが縦に大きく裂けてしまうのです。

大動脈解離を起こすと、心筋梗塞を起こしたり、心タンポナーデを起こすリスクがあるので、とても怖い病気です。

急性大動脈解離を発症すると、61％が病院に到着する前に死亡するというデータがありますので、一分一秒を争う恐ろしい疾患なのです。

大動脈解離の芸能人・有名人12名

大動脈解離を発症した芸能人・有名人をご紹介していきます。

1．笑福亭笑瓶さん

タレントで落語家の笑福亭笑瓶さんは、2015年12月にゴルフ中に大動脈解離を発症し、ドクターヘリで救急搬送されています。発症時は相当な激痛だったそうで、一緒にゴルフをしていた神無月さんに最後の言葉を託そうとしましたが、「嫌です！死なないですから！」と拒否されたそうです。

ドクターヘリで搬送され、早期に治療を開始できたためか、発症から約2週間で退院し、退院から約1週間後には仕事復帰されています。

2．加藤茶さん

ザ・ドリフターズのメンバーである加藤茶さんは、63歳の時に大動脈解離を発症し、10時間にも及ぶ大手術を受けています。4ヶ月後には仕事復帰されています。この時は離婚していた前の奥様が看病していたとのことです。

3．鶴ひろみさん

ドラゴンボールのブルマやアンパンマンのドキンちゃん役の声優の鶴ひろみさんは、2017年11月16日に急性大動脈解離で急死しています。

首都高速の環状線でハザードランプをつけて停車している車の中で意識不明の状態で座っている鶴ひろみさんが発見されました。車を運転している時に、大動脈解離を発症したと推測されています。

4．石原裕次郎さん

俳優で歌手の石原裕次郎さんは、1981年に大動脈解離を発症し手術を受けています。この時の手術は生還率3％と言われるほど難しい手術でしたが、無事に成功して退院しています。

その後は肝臓がんを患い、1987年に亡くなっています。

5．大木凡人さん

タレントの大木凡人さんは、2015年に大動脈解離と診断されています。突然胸の痛みを感じ、自分で救急車を呼んで受診したところ、大動脈解離のほかに心房細動と診断され、手術を受けた結果、23日後には退院しています。

6．武川雅寛さん

ムーンライダーズのヴァイオリンとトランペットを担当している武川雅寛さんは、2015年に急性大動脈解離を発症し、手術を受けています。手術は成功し、現在も音楽活動を続けています。

7．渡辺英樹さん

C-C-Bのリーダーだった渡辺英樹さんは、2015年に自宅で体調不良を訴え救急搬送され、大動脈解離と診断されました。緊急手術を受けて入院したため、C-C-Bのライブツアーは中止となっています。

ただ、治療の甲斐なく、発症してから約1ヶ月後に亡くなっています。

8．中嶋しゅうさん

俳優の中嶋しゅうさんは、2017年に舞台の『アザー・デザート・シティーズ』に出演中に突然舞台から転落し、救急搬送されています。不注意で舞台から転落したと思われていましたが、舞台上で大動脈解離を発症し、意識を失って舞台から転落してしまったとのことです。

救急搬送先の病院で、死亡が確認されています。

9．三波伸介さん

コメディアンの三波伸介さんは、てんぷくトリオや笑点の3代目司会者として知られていますが、1982年に自宅で倒れているところを発見され、救急搬送されましたが、死亡が確認されています。大動脈解離が死因だったそうです。

10．塩屋俊さん

俳優の塩屋俊さんは、2013年に急性大動脈解離のために亡くなっています。公演先の宮城県仙台市の楽屋で倒れて、そのまま死亡が確認されています。

11．青木淳也さん

お笑いコンビのブルーリバーの青木淳也さんは、2016年に胸の痛みを感じて病院を受診したところ、急性大動脈解離と診断され、そのまま18時間にも及ぶ大手術を受けています。

入院から退院までおよそ3ヶ月かかっていますので、かなりの大手術で、リハビリにも時間がかかったのだと思います。

12．鹿沼絵里さん

古尾谷雅人さんと結婚した鹿沼絵里さんは、2017年に大動脈解離を発症しています。身体障害者手帳1級を持っているそうで、安静が必要な状態のようです。

大動脈解離の症状

大動脈解離は、胸の太い血管である大動脈が裂けてしまう病気です。この大動脈解離を発症すると、どんな症状があるのでしょうか？

発症した時の症状

大動脈解離を発症すると、胸の強い痛みを生じます。これは大動脈解離を発症した96％の人が経験する症状です。胸に杭を打ち込まれたような痛みと表現する人もいます。

笑福亭笑瓶さんは、発症時の痛みを次のように表現しています。

パリパリッという違和感がからだの中を駆け抜けた後、背中にそれまで経験したことのないような激痛が走り、その場に倒れ込みました。

 

引用：大動脈解離発症した笑福亭笑瓶さん　背中のけ反り「痛い！痛い！痛い！」 (1/3) 〈週刊朝日〉｜AERA dot. (アエラドット)

全身が硬直して、背中が痛いからのけ反った状態で「痛い！痛い！」とずっと叫んでいたと思います。

 

引用：大動脈解離発症した笑福亭笑瓶さん　背中のけ反り「痛い！痛い！痛い！」 (1/3) 〈週刊朝日〉｜AERA dot. (アエラドット)

また、大動脈解離はどこまで血管が裂けているか（解離しているか）によって、痛みの箇所が変わります。腹部の方まで血管が裂けてしまうと、徐々に痛みの部分が胸から腹部、さらに脚へと移動していくことが特徴なんです。

大動脈解離はどのあたりが痛いのかによって、解離した部位を推定することができます。

発症と同時に吐き気・嘔吐の症状が出る人もいます。

怖い合併症を引き起こすことも

出典：jsvs.org

大動脈解離はただ単に血管が裂けて激しい痛みが生じるというだけではありません。そこから付随する合併症が起こるのが怖いのです。

心臓に向かって血管が裂けると、次のような合併症を起こして、死亡するリスクが上がります。

では、大動脈に裂け目ができるのはなぜでしょうか？大動脈解離の一番の原因は、動脈硬化とされています。本来なら弾力性に富んでいる丈夫な大動脈の内膜が、動脈硬化を起こすことで、硬くもろい状態になります。

そこに高血圧などで少しずつ負荷がかかると、ピキッと血管が裂けてしまうのです。

急性大動脈解離を起こした人の70～90％の人には、高血圧の持病があったというデータもあります。

つまり、大動脈解離は生活習慣病から起こる病気の1つと言えるんですね。ストレスや喫煙も、大動脈解離のリスクを上げる要因とされています。

ただ、大動脈解離の原因はこれだけではなく、先天的に血管壁が弱かったり、交通外傷などで胸を強く打った場合などでも起こることがあります。

大動脈解離の前兆

大動脈解離には、特にこれといった前兆はありません。突然発症して激しい痛みを生じることがほとんどです。

ただ、必ずしも激しい痛みがあるわけではないので注意が必要です。胸が痛いけれど、すぐに病院を受診するほどではない。でも、翌日になっても治まらないから病院を受診したら、大動脈解離を発症していたということはあります。

このような胸の痛みは「前兆」というよりも、すでに発症している状態です。大きく大動脈が裂けている（解離している）のではなく、ちょっとだけ裂けている状態なので、痛みが強くはないだけです。

だから、普段とは違う胸の痛みを感じたら、躊躇せずに病院を受診して検査をすることが大切です。

まとめ

大動脈解離の基礎知識と大動脈解離を発症した芸能人・有名人、大動脈解離の症状や原因、前兆などをまとめました。

大動脈解離は発症してすぐ、病院に到着する前に亡くなることも多い怖い病気です。動脈硬化が主な原因になりますので、大動脈解離を予防するには、生活習慣を見直して、動脈硬化を防ぐ必要があるんです。