太客がストーカー化した末の「新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)」ですが、被害者と犯人の歪んだ関係が話題です。
今回は事件の経緯、かわいいと評判だった耳かき店員・江尻美保さん、犯人の林貢二のストーカー化と動機、林貢二の現在をまとめます。
この記事の目次
新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)とは
新橋ストーカー殺人事件とは、2009年8月3日の午前8時52分ごろ、東京都港区西新橋の民家に男が侵入し、耳かき店員の江尻美保さんと祖母が襲われた事件です。
・犯人:林貢二(41歳)
被害者の2人は刃物で顔や首を切りつけられ、祖母はその場で死亡、江尻美保さんは1ヶ月後の9月7日に死亡しました。
犯人の林貢二は現場で逮捕されています。
玄関から侵入
犯人の林貢二はペティナイフと果物ナイフ、ハンマーをショルダーバッグに入れて、江尻美保さん宅に電車で向かいました。
そして、到着後に玄関付近の様子をうかがい、玄関に鍵がかかっていないことを確認します。
そして、午前8時52分ごろにバッグのチャックを開けて、いつでも凶器を取り出せるように準備してから、江尻美保さんの自宅に侵入しました。
祖母を殺害
玄関から侵入した林貢二を祖母の鈴木芳江さんが発見し、声をあげました。林貢二は騒がれると江尻美保さんを殺せなくなると思い、鈴木芳江さんの殺害を決意します。
林貢二は祖母に馬乗りになって押さえつけた上で、ハンマーで5回殴りつけ、ナイフで16ヶ所以上めった刺しにして殺害しました。
江尻美保さんを殺害
祖母を殺害した後、2階に上がった林貢二は、江尻美保さんの部屋を探し当てます。この時、江尻美保さんはベッドで寝ていました。
江尻さんは異変に気付いて抵抗しますが、江尻さんに馬乗りになった林貢二は江尻さんの首を狙ってペティナイフを振り下ろします。
林貢二は顔面3回、頭部1回、頸部に12回以上も刺し、江尻さんは気管断裂などの深刻な重傷を負います。頸部の一番深い傷は縦6cm、横3cm、深さ7cmにもなっていたとのことです。
最後の力を振り絞って、江尻さんは廊下に這って出ますが、そこで力尽きます。
気管断裂による呼吸困難や出血性ショックなどで心肺停止を起こし、病院に搬送されて救命処置を受けたものの、1ヶ月後に死亡しています。
駆け付けた警察官が逮捕
犯人の林貢二が江尻美保さんを襲っていた時、家にいた母親と兄が異変に気付いて廊下に出てきました。
母親と兄が外に助けを求めている間、林貢二は逃げるために、返り血がついた手を洗い、服を脱ぎ捨てていました。
しかし逃げ出す前に、通報を受けて駆け付けた警察官に犯行現場で逮捕されています。
新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)の被害者・江尻美保とは
出典:twitter.com
新橋ストーカー殺人事件の被害者は、耳かき店員の江尻美保さんです。祖母の鈴木芳江さんは、江尻美保さんの巻き添えになって殺害されました。
江尻美保さんのプロフィールを見ていきましょう。
・血液型:B型
・学歴:高卒
・身長:154.8cm
・家族構成:父・母・兄・祖母
・自宅:東京都港区西新橋1丁目
江尻美保さんは高校卒業後、浅草の和菓子屋さんで働きますが、腰を痛めたため退職しました。
その後、2008年1月に秋葉原にある耳かき店でバイトとして働きだします。
そして2009年8月3日、耳かき店の客だった林貢二に殺害されてしまいました。
江尻美保が勤めていた耳かき店とは?
被害者の江尻美保さんが働いていた耳かき店は、和室で浴衣を着た若い女性が、個室で膝枕をして耳かきをしてくれるというシステムでした。
「耳かき店」というと、耳かきをしてくれるだけの健全なイメージがあるかもしれませんが、微妙にキャバクラや風俗っぽい形態のお店です。
江尻美保さんが働いていた耳かき店は、次のようなシステム・料金でした。
・1時間:4,800円
・延長30分ごとに2,700円(1時間なら4,800円)
・指名料:1,000円(1時間ごとに加算される)
江尻美保さんを指名するなら、1時間で5,800円を支払う必要があったようです。これだけ見ると、確かにキャバクラとか風俗に似た料金システムですね。
ただ、あくまでも耳かき店ですので、耳かき店員へのボディタッチは禁止ですし、性的サービスは一切ありません。
新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)の被害者・江尻美保はかわいいと評判の耳かき店員だった
被害者の江尻美保さんは、「まりな」という源氏名で耳かき店で働いていました。源氏名をつけるあたりも、風俗店っぽさがあります。
江尻美保さんは耳かき店員としてNo.1の人気で、しかもかわいいと評判だったんです。
2009年1月に「ありえへん高額バイト」という特集で、江尻美保さんはテレビに出演していますが、その時に公開した月収は68万円でした。
江尻美保さんは「誰もが認める超美人」というわけではありませんが、耳かき店員としての人気は高かったんです。
いわゆる「ギャル」ではなく、薄化粧で癒し系のかわいいタイプであり、耳かき店に来る男性は癒しを求めて来店してくる人が多かったのも人気になった理由でしょう。
また、江尻美保さんの接客を受けたことがある2ちゃんねらー情報によると、江尻美保さんは一度来た客の顔を絶対に忘れなかったそうです。
そのため、客から人気があり、指名がたくさん入っていたのでしょう。
新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)の犯人は林貢二
新橋ストーカー殺人事件の犯人は林貢二です。1968年生まれで、事件当時は41歳でした。
千葉県千葉市出身で、専門学校卒業後は配電設備会社に就職しています。お酒は飲まず、勤務態度はまじめだったそうです。
結婚歴はなく、26歳で全身性エリテマトーデスを発症してからは、結婚しないことを決めていたそうです。
事件当時は千葉市で一人暮らしをしており、週末はいつも千葉市から秋葉原まで耳かき店員の江尻美保さんに会いに出かけていました。
耳かき店では本名を名乗ることはなく、「よしかわ」という偽名を名乗っていました。
新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)の犯人・林貢二が江尻美保のストーカーになった経緯
新橋ストーカー殺人事件の犯人の林貢二は、耳かき店員の江尻美保さんのストーカーでした。
どのようにストーカー化していったのかを見ていきましょう。
熱心に江尻美保を指名していた
犯人の林貢二が耳かき店員の江尻美保さんと初めて会ったのは、2008年2月のことです。
秋葉原の耳行き店に行った林貢二は、前月から働いていた江尻美保さんと出会い、そこから耳かき店に通い詰めるようになり、毎回江尻美保さんを指名していました。
さらに5月ごろからは1時間だけでなく、2~3時間延長するようになり、8月からは金曜・土曜・日曜の週3日間通いつめ、日曜日は1日8時間も入り浸るようになりました。
1日8時間、江尻美保さんを指名したとすると、8時間×5,800円=44,800円になります。
江尻美保さんは秋葉原店で働いていましたが、2008年11月からは系列の新宿店と掛け持ちで働くようになりました。林貢二は新宿店にも通い、江尻美保さんを指名しています。
犯人の林貢二は2008年3月からの1ヶ月で、耳かき店員の江尻美保さんの元へ154回通い、合計で200万円以上使っています。
1年間で154回、200万円ということは、週3回ペースで通い、1回1万円以上使っていた計算になります。
江尻美保に強い執着を持つ
出典:ameblo.jp
耳かき店員の江尻美保さんに入れ込んでいた林貢二は、徐々にストーカー化していきます。
林貢二は、江尻さんに「僕の事を、かっこ良くない、普通、かっこ良いの3段階で分けるとどのへん?」と質問したことがありました。
江尻さんは客である林貢二に気を遣って「普通よりちょっと上」と答えると、「そんなに低いのか」と不機嫌になったそう。
また、江尻さんの同僚によると、林貢二は「突然泣き出す困った人」という評価で、江尻美保さんへの執着心がかなり強かったことがうかがえます。
次第に林貢二は、江尻美保さんとお店の外で会うことを要求するようになりました。
秋葉原の店から新宿の店に移動する時も、林貢二は「一緒に行きたい」と主張しましたが、江尻さんは「お店のルールだから」とやんわりと断りました。
そうしたら、林貢二は大声で江尻美保さんや店長に文句を言い始めたそうです。
2009年に入ると、林貢二は江尻美保さんを食事に誘うようになりました。
江尻美保さんは「店外では会えない」と断り続けましたが、しつこく誘われたためか、2009年4月5日にお店が終わったら、林貢二とレストランで食事をする約束をしてしまいます。
ただ、約束当日に江尻美保さんは、耳かき店に来た林貢二に「体調が悪いから」と食事に行けないことを告げました。
耳かき店を出禁になり、パニックに
林貢二は江尻美保さんと食事の約束を取り付けたにも関わらず、体調が悪いからとドタキャンされました。
そして、その直後から林貢二は店を出禁にされています。あまりにもしつこく店外で会うことを要求したことでの店側の措置と思われます。
しかし、この出禁に林貢二は納得がいかず、軽いパニックになったようです。
週3回通っていた耳かき店に行くことができない、耳かき店員の江尻美保さんに会えない、それどころか拒絶されてしまった…この展開にパニックになるのは分からなくもありません。
諦められなかった林貢二は、関係修復を求めるメールを送りますが、江尻さんには「もう無理です」とはっきり断られています。
5月上旬、江尻美保さんの自宅近くで待ち伏せをしますが、江尻さんは「無理です!」と走って逃げました。
7月19日、2回目の待ち伏せをした林貢二は「眠れないほど悩んでいる。また店に行きたい」と訴えました。江尻美保さんはコンビニに逃げ込み、「客の男に付きまとわれている」と通報。
通報を受けた警察は、周囲を探しますが、不審者はいませんでした。江尻さんは「男がしつこく言い寄り、断ったら付きまとわれた」と警察に説明するものの、被害届は出していません。
そのため、警察もこれ以上はストーカーへの警戒・捜査はしなかったようです。
そして、事件が起こる2日前の8月1日。林貢二は、自宅近くで3回目の待ち伏せをしますが、この時は江尻さんに会うことができませんでした。
しかし、江尻美保さんの母親が林貢二が待ち伏せしていることに気づき、店に連絡をしています。
「会いたいのに会えない」という恋愛感情をこじらせ、江尻さんへの愛情を憎悪に変えてしまった林貢二は、8月3日に凶行に及ぶのです。
事件後の裁判で、江尻美保さんへの恋愛感情を否定しましたが、「もう店に行けないという絶望感等から怒りが頂点に達した」と語り、複雑な恋愛感情を持っていたのは間違いないでしょう。
新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)の犯人・林貢二の動機とは 【被害者・江尻美保のやりすぎが原因?】
新橋ストーカー殺人事件の動機は、林貢二の歪んだ愛情です。また、林貢二と江尻美保との関係もかなり歪んでいたことが一因になったと言えるかもしれません。
インターネット上では江尻美保さんの自業自得という声もありますが、そんなわけはないんです。
江尻美保さんには一切非はありません。いくら太客への営業を頑張ったからって、殺される理由にはなりません。
江尻美保さんは林貢二はあくまでも太客
江尻美保さんは耳かき店員です。当たり前のことですが、耳かき店員にとって林貢二はあくまで客であり、自分にお金を運んできてくれる存在でしかありません。
21歳のかわいい女性が、耳かき店に週3日以上で通ってくる41歳の男性に本気で恋愛感情を持つ可能性なんてほぼゼロです。
自分の稼ぎのために、客に対して思わせぶりな態度をとることは、そんなに悪いことではありません。キャバ嬢も風俗嬢も普通にやることです。
一般女性だって、プレゼントをもらったり、高い食事を奢ってもらうために、好きでもない男性に思わせぶりな態度を取ることはありますから。
ただ、江尻美保さんはやりすぎてしまったのかもしれません。
■誕生日事件
2008年7月15日は江尻さんの20歳の誕生日でした。林貢二に誕生日当日店に来てほしいと頼んだ江尻さん。
当日、秋葉原駅のホームで偶然会い、江尻さんの方から林貢二に「早いですね」と話しかけたようです。
しかし、店に入った江尻さんは「待ち伏せされた」と訴え、林貢二はストーカー扱いされたため、店に入れずに林貢二は帰ることになりました。
■ピヨ吉事件
誕生日事件の5日後、江尻美保さんはブログに「元気かなあ、ピヨ吉」と書きこんでいます。
この「ピヨ吉」は江尻さんと林貢二だけが知る言葉で、ブログは江尻さんから林貢二に向けられたメッセージでした。
このブログの後、林貢二はまた耳かき店に通い出しています。
■耳かきは一切しない
1年間で150回以上も店に通い、1回10,000円以上を使っていたにもかかわらず、耳かきをしたのは最初の1回だけで、2回目以降は耳かきもしないし、膝枕もしなかったようです。
DVDを見たり、ゲームをしたり、お菓子を食べたりするだけだったんだとか。
■月収をしつこく聞く
江尻美保さんは、林貢二に月収をしつこく聞いていたそうです。
■怒った後に予約を聞く
林貢二は江尻さんに買い物を頼まれることもあったようです。
頼まれたものとは違うものを買ってしまったところ、江尻さんは厳しく文句を言い、口げんかになることもありました。
次の予約を入れずに林貢二が帰ると、「さっきはごめん、次の予約は?」とメールをして、予約を入れさせていたそうです。
■食事のドタキャン事件
2009年4月5日、体調が悪いと食事に約束をキャンセルした江尻さん。
しかし耳かき店を早退しなかったばかりか、林貢二と耳かき店で7時間過ごし、林貢二は約45,000円を支払っています。
しかも、体調不良を理由に江尻美保さんは7時間の間ほとんど無言だったと言います。
■17時以降は林貢二の専属
2009年3月(出禁1ヶ月前)は、江尻美保さんは出勤時間を11時~17時としていました。
しかし、17時以降も店にいたんです。17時以降は林貢二が全部予約を入れていて、「林貢二専属」状態になっていたということですね。
これらを見ると、江尻美保さんはかなりのやり手であり、人気No.1の耳かき店員に上り詰めるのも納得できる手腕ですよね。太客への営業としては普通でしょう。
ただ、林貢二は執着心が異常に強いタイプでした。
この林貢二の執着心・異常性を見誤ってしまい、耳かき店員としての「営業」をやりすぎてしまい、ストーカー化させてしまったとも言えるかもしれません。
林貢二は江尻美保さんに見返りを求めた
大人の男性なら、「20歳の店員が、41歳の自分を相手にするはずがない。あくまでも営業で、期待してはいけない」と線引きをして、耳かき店員との関係を楽しむことができます。
そもそも、基本的に水商売・風俗嬢に貢いだ場合、見返りは求めてはいけませんよね。
でも、林貢二は見返りを求めてしまったのでしょう。
・週3回以上も通っている
・多い時で1回40,000円以上を使っている
・自分には耳かきをしないから特別な存在だ
・ピヨ吉という2人だけの秘密を使ってメッセージを送ってくれた
自分だけは特別な存在だと勘違いし、見返りを求めたからこそ、拒否された時の反動からストーカー化して、新橋ストーカー殺人事件の動機となっていったのでしょう。
江尻美保さんは林貢二を切り捨てた
林貢二は耳かき店員の江尻美保さんに入れ込んで、太客になりました。
江尻美保さんは最初は「いい太客じゃん!」くらいにしか思わなかったものの、林貢二の言動に徐々に怖くなったのかもしれません。
しつこく外での食事に誘ってくるなど、身の危険を感じることもあったのでしょう。食事をドタキャンして、お店を出禁にしたのも恐怖心からだと思われます。
ただ、いきなりストーカー化した林貢二を切り捨てたのは失敗でした。
林貢二のようなタイプの場合、いきなり切り捨てるのではなく、少しずつ予約回数を減らしていき、距離を置いて行った方が安全に逃げられたはずです。
また、7月19日に待ち伏せされて110番した時に、被害届を出していれば、また違った結果になったかもしれません。
新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)の犯人・林貢二の現在
新橋ストーカー殺人事件の犯人・林貢二には死刑が求刑されましたが、2010年11月に第一審で無期懲役の判決が言い渡されました。
被告側・検察側共に控訴しなかったため、2010年11月15日に無期懲役が確定しています。
無期懲役は基本的に懲役30年以上経たないと、どんな模範囚でも仮釈放はありませんので、林貢二は現在でも刑務所に収監されていることは間違いありません。
裁判では「すべてが身勝手だった」と泣いて謝罪していました。今後もずっと贖罪の気持ちを持ち続け、罪を償ってほしいですね。
新橋ストーカー殺人事件(耳かき店員殺害事件)のまとめ
新橋ストーカー殺人事件の詳細、被害者で耳かき店員の江尻美保さんの情報、犯人の林貢二のストーカー化と動機、林貢二の現在をまとめました。
水商売や風俗、またはそれに似た職種は、客との線引きがとても難しいことを改めて感じます。
しかし、この事件が起こる前から、林貢二が江尻美保さんに付きまとってストーカー化していることは、店も家族も認識していました。
江尻美保さんと祖母が殺害される前に、なんとか対処できたのではないかと思ってしまいます。