真面目な公務員が自分の家族6人を殺傷した「中津川一家6人殺傷事件」ですが、犯人の動機や判決が話題です。
今回は中津川一家6人殺傷事件の概要と発生から逮捕までの詳細や事件の場所、犯人の動機と判決、現在をまとめました。
この記事の目次
中津川一家6人殺傷事件とは
出典:ameblo.jp
中津川一家6人殺傷事件
発生日時:2005年2月27日
発生場所:岐阜県中津川市坂下町
被害者:5人殺害、1人ケガ
犯人:原 平
判決:無期懲役
中津川一家6人殺傷事件とは、2005年2月27日に岐阜県中津川市坂下町で発生した大量殺人事件です。
この事件の犯人は原 平(当時57歳)で、中津川市の職員(地方公務員)として老人保健施設の事務長をしていました。
そして、被害者は犯人の家族でした。被害者はこちらの6人です。
・死亡:原正さん(当時33歳):犯人の長男
・死亡:藤井こずえさん(当時30歳):犯人の長女
・死亡:藤井孝平ちゃん(当時2歳):犯人の孫
・死亡:藤井彩菜ちゃん(当時生後3週間):犯人の孫
・ケガ:藤井孝之さん(当時44歳):犯人の娘婿
犯人は自分の家族5人を殺害し、娘婿も殺害しようとして失敗します。そして、自殺を試みますが失敗して逮捕されました。
中津川一家6人殺傷事件の詳細
中津川一家6人殺傷事件を詳しく見ていきましょう。
妻が旅行に出かける
犯人の原平の妻は、2005年2月27日に友人たちと愛知県に日帰り旅行に行く予定が入っていました。この日帰り旅行は、1月下旬に計画されていたそうです。
そのため、妻が不在となるこの2月27日に犯行計画を実行することを決めていました。
そして、2月27日の朝に妻を最寄り駅の坂下駅に送ってから、犯人は犯行を開始するのです。
長男と母を殺害
午前7時半ごろに妻を駅に送った犯人は、自宅に戻ります。
そして、自宅の2階にいた長男の正さん(当時33歳)をネクタイで絞殺しました。次に、母親のチヨコさん(当時85歳)を絞殺しています。
この2人には抵抗した形跡がほとんどなかったことから、2人とも就寝していて、その隙に殺害したと見られています。
その後、犯人の原平は休日であるにも関わらず、職場の老人保健施設に午前9時ごろに顔を出しています。そして、30分ほど職場にいて、その後帰宅しています。
ただし、職場訪問と長男・母殺害は前後している可能性もあります。
愛犬を殺害
犯人は次に、愛犬2匹を殺したと見られています。
犯人は県警嘱託警察犬の指導員を委託されていたため、警察犬の飼育・訓練をしていて、シェパード2匹を庭の檻で飼い、週末には職場近くの坂下の椛の湖畔で訓練していました。
しかし、事件の1ヶ月ほど前から「仕事が忙しい」という理由で、2匹はほかの指導員に預けられていました。
ただ、事件前日の26日に犯人は犬を引き取って、自宅に連れて帰っています。
そして2月27日、職場の老人保健施設に立ち寄った後に、この犬2匹を坂下の椛の湖畔に連れて行き、杉の木につないでから刃物で首を刺して殺しています。
犬の死骸は、猟友会員が事件当日の午前11時半ごろに発見しています。この時点では、中津川一家6人殺傷事件はまだ発覚していませんでした。
娘と孫を殺害
愛犬2匹を殺害した犯人は、午前11時ごろ、犯人の自宅から2キロ離れた場所に住んでいる娘のこずえさんの自宅に行きます。
そして「おばあちゃんが孫を見たがっている」と嘘をつき、娘のこずえさん(当時30歳)と孫の孝平ちゃん(当時2歳)、彩菜ちゃん(当時生後3週間)を車で自宅に連れてきます。
この時、こずえさんの夫は風邪を引いていてパジャマ姿だったため、誘いを断っています。
犯人は自宅に着くと、3人を絞殺します。
こずえさんと幼い子供2人は、犯人の母親が亡くなっているすぐ隣の畳の上で、亡くなっているのが発見されました。
こずえさんは両手で子供2人を抱きかかえるようにして、3人が川の字になって倒れていたそうです。
娘婿を襲う
この時点で5人を殺害した犯人は、最後に娘婿を狙います。
娘婿は先ほど自宅に誘った時には、「風邪を引いている」という理由で同行を断っていました。
しかし、こずえさんと孫2人を殺害した後、犯人は再びこずえさん宅(娘婿の自宅)を訪れ、「うちに来てくれ!」と懇願し、娘婿を自宅に連れ出しました。
そして、自宅の勝手口から家に入ったとたん、犯人は「死んでくれ!」と言って、刃物で娘婿の腹部を刺します。
娘婿は必死に逃げようとしますが、犯人はしがみついてきて離そうとせず、激しくもみ合いました。そして、娘婿は何とか犯人をねじ伏せ逃げ出します。
数百メートル走って逃げて、警察に通報しました。娘婿は全治2週間程度のケガを負っています。
家の中で逮捕
娘婿が逃げ出した後、犯人は追いかけようとはしませんでした。
犯人は現場にあった包丁で自分の喉をついて自殺を図ります。しかし、頸動脈は外れていました。
喉を刃物でついた後、犯人は自宅の風呂場に隠れます。隠れて時間を稼げば、そのまま失血死すると考えたようです。
しかし、大量出血でショック状態になったものの、娘婿の通報によって駆け付けた警察官に発見され、一命をとりとめています。
すぐに身柄を確保され、病院に救急搬送されると、事件から約1週間後には意識が回復。少しずつ言葉を発するようになり、体調の回復を待って3月12日に逮捕されました。
中津川一家6人殺傷事件が起きた場所
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中津川一家6人殺害事件が起こった場所は、岐阜県中津川市坂下にある犯人の原平の自宅です。
東にはすぐに木曽川があり、2005年2月12日までは岐阜県恵那郡坂下町でしたが、事件の約2週間前である2月13日に中津川市と合併しました。
犯人の原平の自宅は、長男の正さん(当時33歳)が整体の店舗としても使っていました。
正さんは職を転々としていましたが、2004年5月に整体師の資格を取った後に自宅で開業し、自宅前に小さな看板を作ったり、チラシ配りをしていて、繁盛していたようです。
また、娘一家が住んでいたのは、犯人の自宅から約2キロ離れている団地です。
中津川一家6人殺傷事件の犯人の動機
中津川一家6人殺傷事件の動機は、「母親への恨み・憎しみ」です。
事件の犯人である原平と母親のチヨコさんは、あまり仲が良くありませんでした。
犯人は子供の頃から厳格な母親が苦手だったようで、小学生の頃には母親に嫌悪感を持つようになり、中学生になると口をきかなくなっていました。
しかし事件の数年前から、長野県に住んでいた高齢の母親を引き取って同居しています。ただ、同居後には、また犯人と母親の関係性は悪化していたようです。
・母名義の郵便貯金の預け替えの時に郵便局長を母親がなじった
・母親が自分が風呂に入った後に浴槽に排泄物を入れて犯人の妻に嫌がらせをした
もともと折り合いが悪く、同居してからは上記のようなトラブル・犯人の妻への嫌がらせがあったことで、母親を殺して自分も自殺しようと考えたようです。
さらに自分が殺人犯となり、長男や長女家族は「殺人犯の家族」と白い目で見られることをかわいそうだと思い、道連れにして殺害しようと思い立ち、一家6人を殺傷することになりました。
なぜ、犯人の妻だけは殺害しようとしなかったのでしょうか?
犯人は妻について、「長年連れ添っていたし、自分のやったことを見届けてもらおう」と思っており、最初から妻を殺すつもりはなかったようです。
介護疲れもあった?
母親との折り合いが悪く、母親への憎しみが爆発したことが犯行の動機とされていますが、介護疲れもあった可能性があります。
母親は85歳と高齢で、認知症の症状が出ていたようです。
市職員の知人によると、原事務長は昨年、「母親が認知症(痴呆症)になった。出かけると1人で帰れないことがある」などと話していた。原事務長の妻も看護師の資格を持っており、この知人は「自宅での介護の道を選んだようだ」と話していた。
そして、犯人と妻は自宅で介護していたようです。「排泄物を浴槽に入れた」という行為も、認知症によるものであったのなら納得がいきます。
認知症の介護は並大抵の苦労ではありません。ただの憎しみではなく、介護疲れも動機にあった可能性は十分にあるでしょう。
家族へも嫌気がさしていた?
犯人の原平は、息子と娘に対しても悩み、モヤモヤしていたものを抱えていました。
・長女:同居を持ちかけられていた
整体師として開業していた長男でしたが、近所の同業者とトラブルになり、クレームをつけられることもあって、犯人の原平は悩んでいたという情報があります。
また、事件前に娘一家から「今の借家(団地)を出なければいけない」と打ち明けられ、犯人は娘一家から同居を持ちかけられたことを悩んでいたとの情報もありました。
動機について「長女らから嫌われていると思い、何もかも嫌になり逃げたくなった。自分も死ぬつもりだった」と供述。事件当日の数日前に殺害を計画したという。
「何もかも嫌になり逃げたくなった」というのは、家族全員に対して嫌気がさしたと感じていたのかもしれません。
しかし、家族の中で妻だけは別だったようです。
一緒に母親の介護をしてくれて、母親の嫌がらせにも耐えてきた妻を殺すには忍びなかったのか、犯人は妻以外の家族全員を殺害しようとしたのかもしれません。
中津川一家6人殺傷事件の判決
中津川一家6人殺傷事件は、5人を殺害(1人はケガ)した事件です。
最高裁の判例である永山基準では「一般的には被害者数が1人なら無期懲役以下、3人なら死刑。2人がボーダーライン」とされています。
この永山基準に則れば、5人を殺害した中津川一家6人殺傷事件の犯人は死刑ということになります。当然、検察は死刑を求刑しました。
しかし、第一審では無期懲役の判決となりました。
「犯行は私利私欲目的でなく、ことさら残忍な殺害方法を用いていない。長年に渡る母からの嫌がらせで精神的に追い詰められていた。また被害者も極刑を望んでいない。再犯の可能性もない」
この判決に対し、検察・弁護側共に控訴します。
第二審では、娘婿は「事件後も謝罪の手紙もなく、申し訳ないという気持ちが伝わってこない」と証言して死刑を求めますが、名古屋高裁は控訴を棄却、無期懲役の判決を支持しています。
最高裁では上告を棄却し、2012年12月3日に無期懲役が確定しました。
中津川一家6人殺傷事件の現在
中津川一家6人殺傷事件の犯人は、現在も服役中です。
無期懲役の場合、最低でも30年は服役しないと仮釈放されないのが一般的です。
逮捕されたのは57歳の時ですので、87歳にならないと仮出所はないということになります。
中津川一家6人殺傷事件のまとめ
中津川一家6人殺傷事件の概要と詳細、犯行場所や犯人の動機、事件の判決と現在をまとめました。
妻以外の家族について、モヤッとしたもの・嫌悪感を抱いていた犯人。
いくら加害者家族として白い目で見られるのがかわいそうだとしても、なぜ幼い孫まで殺したのか?そして、なぜ犬も殺したのか?動機については、不可思議な部分もあります。
ただ、もう二度とこのような事件が起こらないことを祈るのみです。