難病のもやもや病とは？

もやもや病とは内頸動脈が細くなったり、詰まったりすることで、その代わりに細くてもろい血管が発達した病気です。

内頸動脈の代わりに発達した細い血管は、脳血管造影の画像で見ると、煙のようにもやもやッとして見えるので、「もやもや病」という名前になりました。

出典：saiseikai.or.jp

内頸動脈は脳に血液を運ぶ、つまり酸素や栄養素を運ぶための重要な血管です。その内頸動脈が詰まると、脳に酸素が行き届かなくなるため、脳細胞が死んでしまいます。つまり、命をつなぐためのとても重要な血管なんです。

その血管が詰まる命を落としかねないので、閉塞するとその代わりとなる異常血管が発達します。

普通に考えれば、代わりになる血管ができるなら良いのでは？と思うのですが、代わりの血管は細くてもろいんです。つまり、あまりにも細くてきちんと血液が流れないこともあります。また、すぐに破れて脳内で出血を起こすリスクも高いんです。

このもやもや病は2002年までは「ウィリス動脈輪閉塞症」と呼ばれていましたが、現在ではもやもや病と呼ばれるようになっています。また、海外でも「Moyamoya-disease」と呼ばれています。

このもやもや病は厚生労働省から難病に指定されていて、現在の日本には1万6086人の患者さんがいるというデータがあります。世界的に見ても、日本を中心としたアジアに多い病気で、この病気の研究は日本が世界をリードしています。

もやもや病の芸能人・有名人5名

もやもや病の芸能人・有名人をご紹介していきます。もやもや病の患者さんは10万人に6～10人とされていますので、比較的珍しい病気です。また、実際はもやもや病になっていても、「もやもや病である」と診断されていない人も、まだたくさんいると考えられています。

そのため、もやもや病であることを公表している芸能人・有名人はほかの難病と比べても非常に少ないんです。

1．徳永英明さん

シンガーソングライターの徳永英明さんは、2001年5月にもやもや病と診断され、テレビのレギュラー番組を降板し、治療に専念していますが、2002年には活動を再開しています。

発症当時は「悪い見本」のような生活習慣を送っていて、倦怠感や頭痛、さらに脳の虚血による手足の脱力などの症状が出ていましたが、誤魔化しながら音楽活動を続けていました。しかし、新潟でのコンサート中に歌詞が出てこなくなり、一時的にコンサートを中断したことをきっかけに精密検査を受け、もやもや病であることがわかりました。

2016年にはもやもや病が原因の脳梗塞を予防するために、血管バイパス手術を受けましたが、2018年には軽度の脳梗塞を発症しています。

もやもや病とうまく付き合いながら、音楽活動を続けています。もやもや病と診断されてからは、きっぱり禁煙し、できるだけ副流煙も吸わないようにしているとのことです。

2．松原愛さん

歌手として活動している松原愛さんは、大林宣彦監督とタッグを組んで、『HOUSE ハウス』で主演を務めます。初期の大林宣彦監督の作品の常連でした。また、三船敏郎さんと共演したり、黒澤明監督の作品にも出演しています。

2003年にもやもや病による脳梗塞を発症して、開頭手術を受けています。その後、2005年には新曲を発表するなど、また芸能活動を再開しています。ここ数年は、俳優で映画監督のアイヤーダイさんのプロジェクトに参加し、精力的に活動を行っています。

3．黒木弥生さん

元女子プロ野球選手として活躍していた黒木弥生さんは、2009年にドラフトで女子プロ野球の京都アストドリームスに入団し、2012年には大阪ブレイビーハニーズンに移籍しています。しかし、2012年にもやもや病を発症しシーズン終了後に引退されています。

もやもや病を発症すると、激しい運動は脳虚血や脳出血を誘発する可能性があるため避ける必要があるので引退されたようですね。

4．キアラ・セトルさん

アメリカの女優・歌手で、主にミュージカル界で活躍しているキアラ・セトルさんは、大ヒット映画の「グレイテスト・ショーマン」のレティ役を演じたことで有名ですよね。この映画の主題歌はゴールデングローブ賞を受賞し、さらにアカデミー賞にもノミネートされました。

しかし、アカデミー賞授賞式の1週間前だった2018年4月、キアラ・セトルさんはもやもや病が原因の脳梗塞を予防するために手術を受けることになりました。

一時的に手足が麻痺するなどの一過性脳虚血発作の症状が出た彼女は、病院で精密検査を受けた結果、もやもや病であることが分かったためです。手術は10時間にも及びましたが、無事に終了し、現在も無理のない範囲で芸能活動を続けています。

5．TOKiMONSTAさん

韓国系アメリカ人の世界最先端の女流ビートメイカーであるTOKiMONSTA（トキモンスタ）さんは、2015年にもやもや病を発症し、音楽活動を中断させています。

脳血管障害のために、言葉を理解できない、手足が麻痺しているなど言語能力・運動能力が低下しましたが、2回も脳の手術を受け、さらにその後は専門的なリハビリを受けた結果、2017年10月にはサードアルバムを発表しています。

もやもや病の症状

もやもや病は内頸動脈が閉塞・狭窄することで、細くてもろい異常血管が発達する病気です。そのため、次のような症状が起こります。

脳虚血・脳梗塞

異常血管は細くてもろいため、ちょっとしたことですぐに収縮し、血流が遮断され、脳へ血液が行き届かないことがあります。そうすると、次のような一過性脳虚血発作と言われる症状が一時的に起こります。

これらの症状は、一般的に数十分から数時間で回復することも多いですが、さらに続くと、脳梗塞を起こしてしまいます。小児の場合は、熱いものを冷ますために「フーフー」と吹いたり、リコーダーを吹いたりするだけで、血管が収縮して、一過性脳虚血発作を起こすことがあります。

脳出血

もやもや病でできた異常血管は細くてもろいです。つまり、普通の正常な血管と比べて、すぐに破れてしまうことが多いんです。血管が破れたら、脳出血になりますよね。

脳出血を起こすと、脳細胞が死滅し、脳浮腫が起こり、命を落とす危険があります。もやもや病による死亡は、脳出血によるものが多いんです。

しかも、もやもや病の場合、細くてもろい血管がたくさんありますから、脳出血は1度だけではなく、再出血を起こすことが少なくありません。1年間に7％、10年間で50％という高い確率で、脳出血を起こすのです。

頭痛やけいれん

もやもや病の症状には、頭痛やけいれんもあります。拍動性の頭痛をを感じ、仕事や学校に行けないほどの頭痛を感じることも少なくありません、ただ、もやもや病の場合、その頭痛がずっと続くのではなく、次の朝には頭痛が軽減されていることが多いです。

また、細い異常血管が発達することで、けいれんを起こすこともあります。けいれんを起こして、病院を受診し、精密検査を受けた結果、もやもや病であることがわかることもあります。

もやもや病の原因

もやもや病の原因は、まだきちんと解明されていません。ただ、特定の遺伝子が関係していることが研究の結果、わかってきています。

その遺伝子とは、『RNF213』という遺伝子です。この遺伝子は23対46本あるうちの17番目の染色体に含まれる遺伝子で、もやもや病の患者さんはこの『RNF213』に変異があることが多いことがわかったんです。

ただ、この『RNF213』遺伝子に変異があると、必ずもやもや病になるというわけではありません。日本人のうち70人に1人は『RNF213』遺伝子に変異がありますから。

だから、『RNF213』遺伝子はもやもや病の原因と関係はある遺伝子ですが、もやもや病の原因に直結する遺伝子というわけではないのです。

遺伝子がもやもや病の原因と関係あるので、もやもや病は遺伝とも関係しています。もやもや病の患者の親、兄弟姉妹など血縁関係者の中に、もやもや病の患者がいる可能性が10～12％あるというデータがあります。

まとめ

もやもや病の基礎知識ともやもや病の芸能人・有名人、もやもや病の症状や原因などをまとめましたが、いかがでしたか？もやもや病は名前だけ聞くと、あまり深刻さは感じないのですが、実はとても怖い病気なんです。もし、あなたの家族の中にもやもや病の患者がいたら、家族全員で検査を受けておいた方が良いと思います。