大口病院事件を覚えていますか?大口病院事件は、「大口病院連続点滴中毒死事件」とも呼ばれる事件で、戦後最悪の事件とも言われています。
大口病院事件の概要や経緯、犯人の久保木愛弓の動機や生い立ち、家族、経歴、逮捕前の様子、その後と現在などをまとめました。
この記事の目次
大口病院事件の概要
大口病院事件とは、神奈川県横浜市にある大口病院で2016年9月に発覚した連続殺人事件です。
大口病院事件の概要は以下の通りです。
事件の発覚:2016年9月
犠牲者:少なくとも4人以上
犯人:看護師の久保木愛弓
事件の詳細:看護師が少なくとも4人の患者の点滴にヂアミトール(消毒剤)を混入し中毒死させた
大口病院事件は戦後最悪の犠牲者数
出典:asahi.com
大口病院の犠牲者は40人超!?
大口病院事件は亡くなった患者さんの体内から消毒剤の成分であるヂアミトールが検出されたことから発覚しました。
さらに、同部屋で2日前に亡くなった患者さんからも同じようにヂアミトールが検出され、そのほか2人の亡くなった患者さんからもヂアミトールが検出されたことで、連続殺人事件であることがわかりました。
過去3ヶ月で48人の患者さんが亡くなっていることから、この連続殺人事件は犠牲者が40人以上いるのではないかと考えられています。
もし、犠牲者が本当に40人以上いるのであれば、日本の犯罪史上最悪の連続殺人事件となります。
大口病院事件は看護師の久保木愛弓が犯人だった!
大口病院事件の犯人は看護師だった・・・
大口病院事件は、事件発覚当初から内部犯行ではないかと言われていたため、容疑者は限られていました。そのため、すぐに逮捕されるのではないかと言われていましたが、捜査は難航しました。
2016年9月の事件発覚後、なかなか犯人は逮捕されず、このまま迷宮入りかと言われていましたが、2018年7月に2016年9月当時大口病院で勤務していた看護師の久保木愛弓が犯人として逮捕されています。
大口病院事件の発覚から犯人・久保木愛弓の逮捕までの経緯
「死亡する患者が増えていておかしい」という話は出ていた
出典:twitter.com
大口病院では過去3ヶ月で急激に死亡する患者が増えていた
大口病院事件は2016年9月に事件が発覚しますが、その3ヶ月くらい前から患者の死亡件数が急激に増加しています。
事件前の7~9月の82日間は死亡件数は48件に上ったのに対し、その前の70日間では死亡件数は0件でした。
いきなり死亡患者数が増えたので、病院職員内でも「おかしい」、「呪われているかも」のような話は出ていたということです。ただ、この時点では、まさか連続殺人が行われているなんて、誰も考えていなかったのです。
看護師のミスから事件が発覚
事件は看護師が点滴袋を落としたことから発覚!
この大口病院事件は看護師が点滴袋を落としたことから発覚します。ヂアミトール入りの点滴袋を急変対応をしていた看護師が落としてしまいます。その時に、異常なほどに点滴内の液体が泡立ったことで、「この点滴、おかしくない?」とその看護師が気づいたんです。
この大口病院は療養型病院で、高齢で寝たきりの患者さんばかりが入院しています。そのため、突然患者さんが亡くなっても、「高齢だし、老衰だったのかも」のように思って、そこまで不思議に思うことはありませんでした。
もちろん、死亡後に解剖が行われることもありません。まさか、点滴内にヂアミトールが混入しているとは思いませんから。だから、それまでは事件が発覚しなかったんです。
点滴内の液体が急激に泡立ったことから、事件が発覚し、警察に通報されました。
調べてみたら連続殺人の可能性が・・・
院長は最初は連続殺人に否定的でした
点滴内にヂアミトールという消毒剤が混入していることが発覚し、その2日前に亡くなった患者さんを調べてみたら、やはり同じく体内からヂアミトールが混入されていた。ということで、連続殺人の可能性が出てきました。
しかも、ナースステーションにある未使用の点滴袋を確認したところ、約50個中10個の点滴袋でゴム栓部分に封をする保護フィルムに細い針で刺した穴が開いていたとのことです。
このことと過去3ヶ月で患者さんの死亡が相次いでいることから、「これは連続殺人の可能性が高い」として捜査が開始されました。
捜査は難航を極める
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院内での犯行だが犯人がわからない
点滴にヂアミトールが注射器を使って混入されていたということから、
・ナースステーションに出入りして点滴を扱っていても不審ではない
この条件に当てはまる人物が犯人とされました。つまり、病院職員の犯行ではないかと最初から言われていました。
そのため、容疑者はある程度絞られていたものの、決定的な証拠が出ることはなく、捜査は難航し、なかなか逮捕には至りませんでした。
犯人の久保木愛弓のユニフォームからヂアミトールが検出され逮捕
出典:endia.net
2018年7月にようやく犯人逮捕
捜査が難航し、大口病院事件はこのまま迷宮入りかと思われていましたが、2018年7月に犯人の久保木愛弓が逮捕されました。
逮捕の決め手は、犯行に使われたヂアミトールでした。犯人の看護師ユニフォームのポケットから、ヂアミトールが検出されたのです。ほかの看護師からはヂアミトールが検出されることはなく、犯人のユニフォームからのみ検出されたとのことです。
そのほかにも、次のような事実が逮捕につながりました。
・被害者の病室に1人で入っていくのを同僚が目撃していて、その約5分後にその被害者の急変し死亡していた
このような状況証拠を重ねて、事件発覚から約2年後にようやく逮捕にこぎつけたんです。
大口病院事件の犯人・久保木愛弓の犯行動機
大口病院事件は少なくとも4人、最大で48人の連続殺人事件です。警察の捜査を難航させたのは、「動機が全く見えてこない」ということも理由の1つでした。患者さんをそんなに殺害する理由がなかったんです。
でも、犯人の久保木愛弓は連続殺人を犯しました。その動機は何だったのでしょうか。
ミスを責められるのが怖かった?
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犯人は以前に自分の落ち度を指摘されたことがあった
犯人の動機の1つと考えられているのは、「患者の死を自分のせいだと思われたくなかった」というものです。
以前に、犯人の久保木愛弓は同僚から「患者さんが死んだのはあなたに落ち度があったから」と言われたことがあったそうです。
それから、二度とそのようなことを言われたくないと思い、自分の勤務時間以外の時に患者が死ぬように、点滴にヂアミトールを混入したというものです。
院内のいじめのストレスから?
院内では看護師同士の人間関係が悪かったとの証言あり
大口病院では、看護師の人間関係が非常に悪く、壮絶ないじめがあったと言われています。これはあくまでも推測の域を出ませんが、犯人の久保木愛弓は院内でいじめを受けていて、そのストレスや怒りを患者さんに向けて、それで殺してしまったのではないかという説もあります。
いじめを受け、そのやり場のない怒りやストレスを、自分よりも立場の弱い患者さんに向けていたということですね。
サイコパスの可能性もあり
患者さんの死を家族に説明したくなかった?
犯人の久保木愛弓はサイコパスなのではないかとも言われています。久保木愛弓が自供した動機は、「自分の勤務時に患者に死なれると、家族への説明が面倒だった」というものです。
自分の勤務中に担当の患者さんが死ぬと、その時の経緯を患者さんのご家族に看護師として説明しなければいけないので、それが面倒くさい。
だから、自分の勤務時間外に患者が死ぬように点滴にヂアミトールを入れたというわけです。
これが本当の動機だとしたら、犯人の久保木愛弓はサイコパスと言われても仕方がないというか、納得してしまいますよね。
大口病院事件の犯人・久保木愛弓の生い立ちや家族と経歴など
大口病院事件の犯人である久保木愛弓とはどんな人物なのかを紐解くためにも、家族や生い立ち、経歴などをできる限り調べてみました。
4人の家族構成
4人家族の長女
久保木愛弓は4人家族で弟がいるとの情報です。茨城県水戸市で小学校までを過ごし、そこから横浜に引っ越してきたとの情報です。
特に、家族仲・家族関係に問題があったという情報はありません。ごく普通の家庭で育ったとみて良いと思います。
生い立ちでは大人しくて存在感がない印象
大人しくて目立たない少女だった
先ほど説明したように、久保木愛弓は小学生までを水戸市内で過ごし、中学になると神奈川県横浜市内に引っ越してきます。
小学生時代に住んでいたアパートの管理人は、「近所の子供たちが遊んでいるのを一歩引いて見ているような子だった」と証言しています。
同級生は「とにかく大人しくて、人と話しているのを見たことがない」と証言していますので、目立たないし、あまり積極的に人と交流するタイプではなかったと思われます。
久保木愛弓は福祉教育などに力を入秦野曽屋高校に進学しています。高校の同級生は「授業中に発言は絶対にしない。文化祭など学校行事の話し合いでも、皆の意見に従うだけのタイプだった」と証言しています。
看護師としての経歴では仕事はできる変わり者
出典:nobury.com
大口病院には2015年に中途採用で入職
久保木愛弓は高校卒業後に看護学校に入学し、看護師の道に進みます。新卒で大口病院に入職したわけではなく、事件の1年前の2015年に転職してきました。
看護師としての評価は「仕事はできる」というものでした。看護師としての経歴は10年近くなるはずですので、仕事に関してはそこそこできたようです。
ただ、人格に関する評価は「潔癖症の変わり者」。他人の飲み物を勝手に飲んだり、人が触ったボールペンを触れなかったりと、変わった一面を見せていたとのことです。
大口病院事件の犯人・久保木愛弓の逮捕前の様子
大口病院事件の犯人である久保木愛弓の逮捕前の様子を見ていきましょう。
大人しい30代の女性
逮捕前は大人しいごく普通の30代の女性
逮捕当時、久保木愛弓は31歳でした。マスコミの前で証言することもあったようですが、その時の印象は大人しい普通の30代の女性であり、40人以上も殺すよう変わった面、特異な面は見せていなかったとのことです。
職場でも特に親しくしている人はおらず、大人しく目立たないタイプでした。ただ、突然患者にキレて、患者に暴言を吐くようなことはあったようです。
犯行を否認する手紙を書く
出典:sankei.com
逮捕前はマスコミのインタビューに応じていた
事件発覚から逮捕までは2年近くありましたが、その期間、久保木愛弓はマスコミの取材を受けたことが何度もありました。
また、自らの犯行を否認するような「何故、こんなひどいことをしたのか、自分の家族が同じことをされたらどう思うのか。絶対許せません」という内容の手紙をテレビ局宛てに直筆で送ったこともありました。
本当は犯人なのに、「絶対に許せません」という手紙を送るなんて、こういうエピソードを見ても、サイコパスだとしか思えなくなってきますね。
任意の聴取で自白をして逮捕へ
出典:sankei.com
6月29日にビジネスホテルで任意の聴取
大口病院事件は事件発覚から逮捕まで2年近くかかっています。これは、状況証拠はあったものの、完全な物的証拠はなかったためです。
そこで、警察は久保木愛弓を任意で取り調べて、自供を引き出すことにします。2016年6月29日に神奈川県警は久保木愛弓を任意で横浜市内のビジネスホテルに呼んで、そこで取り調べを行いました。
その結果、自供を引き出すことに成功し、逮捕することができました。
大口病院は変な病院だったことも事件に関係?
大口病院は、とても特殊で変な病院と評判でした。このことも事件が起こったことに関係しているのかもしれません。
大口病院はとんでもないいじめが横行していたのです。看護師同士の人間関係が最悪で、患者さんのケアがおろそかになっていたり、患者さんを大声で怒鳴りつけるようなこともありました。
さらには、次のようなことが起こっていたんです。
・白衣が切り裂かれた
・カルテがなくなった
・ペットボトル飲料に漂白剤が入れられ、それを飲んだ看護師の唇がただれた
そして、そのことを横浜市に通報した人物もいます。その人は、Twitterで詳細をツイートしていました。
住所:神奈川県横浜市神奈川区大口通130にある
— FUSHICHOU (@ngu19690604) August 12, 2016
大口病院、4階病棟にて漂白剤らしき物が混入される事件発生、看護師スタッフが漂白剤らしき物を混入された飲み物を飲んで唇がただれなどの被害を受けました。
なお、同病院、同病棟では今年、看護師スタッフのエプロン切り裂き事件、カルテ紛失事件が発生しております
— FUSHICHOU (@ngu19690604) August 12, 2016
。
私は今回、報道されている。
— FUSHICHOU (@ngu19690604) September 23, 2016
大口病院の事件は私は予測していました。
だから横浜市健康福祉局医療安全課に以前ツイートした内容を通報していました。だからこそ今回の事件が起きてしまった時は切ないの一言です。
このような環境だったからといって、久保木愛弓の犯行が許されるというわけでは決してありませんが、このような劣悪な環境が犯行のきっかけを作ったり、背中を押してしまったということはあるかもしれません。
大口病院事件の犯人・久保木愛弓のその後と現在【2021年11月に無期懲役判決】
殺人として認められたのは3人のみ
出典:twitter.com
20人以上殺したという自供をしているにも関わらず・・・
任意の事情聴取に対して、犯人の久保木愛弓は20人以上殺したと自供しています。でも、実際に殺人として起訴されたのは3人の被害者に対してのみでした。
それ以外のほとんどの患者さんの死に対しては、証拠が何もなく、死因が不明だからです。火葬されてしまったご遺体からは、ヂアミトールを検出することはできないので、いくら自供があっても、罪に問うことはできないのです。
また、ヂアミトールが検出された4人目の被害者は「別の患者を殺害しようと消毒液を混ぜた点滴が、この被害者に投与された可能性がある」として不起訴処分となっています。
ただ、精神鑑定の結果、責任能力はあるとのことですので、今後は裁判が行われ、罪が確定するものと思われます。
大口病院は改名している
横浜はじめ病院に改名
大口病院は現在、横浜はじめ病院という名前に改名しています。やはり「大口病院」という名前だと、患者さんも来ないし、看護師や医師も確保できないからでしょう。
2017年12月に改名し診療を続けていましたが、2019年8月1日より外来・入院のどちらも一時休診としています。つまり、病院自体が運営されておらず、閉院状態になっているということです。
2021年11月に無期懲役判決
久保木愛弓には2021年11月に無期懲役判決が下されています。
横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、入院患者3人の点滴に消毒液を混入し中毒死させたとして、殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の裁判員裁判の判決公判が9日、横浜地裁で開かれ、家令和典裁判長は久保木被告の完全責任能力を認めた上で、無期懲役(求刑死刑)を言い渡した。
公判では、久保木被告が起訴内容を全面的に認め、犯行時の刑事責任能力の程度が最大の争点となった。検察側は「完全責任能力があった」として死刑を求刑、弁護側は「心神耗弱状態にあった」として無期懲役が相当と主張していた。
まとめ
大口病院事件の概要や経緯、犯人の久保木愛弓の動機や家族・生い立ち・経歴、その後と現在についてまとめました。
大口病院事件は犯人の看護師の異常さが際立つと共に、大口病院自体の異常さにも注目が集まった事件です。48人を殺した可能性があるにも関わらず、起訴できたのは3人の殺人罪だけです。2021年11月に無期懲役判決が下されました。
今後の裁判の行方が気になるところですが、最高裁まで争う可能性があることを考えると、裁判が終わるのはまだ当分先のことになるかもしれません。