2016年に起こった軽井沢バス事故のことを覚えていますか?犠牲者を多く出した深刻なバス事故でした。
軽井沢バス事故の概要と犠牲者、原因、生存者のその後、現在の状況などをまとめました。事故を風化させないためにも、軽井沢バス事故についてもう一度、確認しておきましょう。
この記事の目次
軽井沢バス事故とは
軽井沢バス事故の概要
軽井沢バス事故とは、2016年1月15日の深夜1時55分頃、長野県北佐久郡軽井沢町の国道18号臼井バイパス入山峠付近で起こったバスの交通事故です。
この事故では乗員・乗客41名(運転手2名+乗客39名)のうち15名(運転手2名を含む)が死亡し、26名の生存者も負傷しました。15名死亡、26名負傷というのは、かなり深刻なバス事故であることがわかります。
スキーツアー途中で起こった事故
軽井沢バス事故はスキーツアーの途中で起こった事故です。キースツアーというツアー会社のスキー客(フジメイトトラベルの客2名も参加)が「イーエスピー」というバス会社が運航するバスに乗り、2014日の夜遅くに東京の原宿を出発し、長野県斑尾高原のスキー場に向かっていました。
その途中の国道18号碓氷バイパスの緩やかな下り坂を走行中に起こりました。
2.そのはずみで対向車線にはみ出す
3.対向車線のガードレールにぶつかる
4.ガードレールが衝撃に耐えられず破壊
5.道路右側の3m下に転落
これが事故の流れです。
この軽井沢バス事故は事故直前は時速96kmも出ていたことがわかっています。でも、この軽井沢バス事故はただのスピードの出し過ぎによるものではなく、色々な原因が積み重なって起こった大事故なんです。
軽井沢バス事故の6つの原因
死者15名、負傷者26名という深刻な事故であった軽井沢バス事故ですが、このバス事故は単純な事故ではありません。
様々な原因があり、それが積み重なって起こってしまった事故なんです。軽井沢バス事故の現認にはどんなものがあったのかを見ていきましょう。
原因:1.運転手の運転ミス
軽井沢バス事故の原因の1つ目は、運転手の運転ミスです。
軽井沢バス事故は碓氷バイパスの入山峠付近の山道を走っている時に起こりました。
出典:sankei.com
写真を見るだけで、蛇行していて細い道であることがわかります。
この事故はまずは左側のガードレールにぶつかり、そこから対向車線にはみ出して、右側のガードレールにぶつかる。そこからガードレールを越えて、3m下の崖下に転落したという事故です。
そのため、運転手の運転ミスによる事故だったのではないか?と言われています。運転手からはアルコールは検出されなかったものの、居眠り運転をしていたのではないか?もしくは、何らかの病気で意識消失したことによる運転ミスで、この事故が起こったのではないかと推測されています。
事業用自動車事故調査委員会は運転手による運転ミスが原因と結論付けています。
原因:2.運転手の経験不足
軽井沢バス事故の原因の2つ目は、運転手の経験不足です。事故当時運転していたのは、土屋広運転手でした。
この運転手は2010年からバスの運転手として働き、2015年末に事故を起こしたバス会社の「イーエスピー」に入社しています。
そのため、ベテランというわけではありませんが、バスの運転手としては5年以上のキャリアを持っています。ただ、この運転手は大型バスの運転については経験が浅く、技量不足だったとされています。
前のバス会社では小型バスで近距離を中心に運転していたとのことです。しかも、イーエスピー入社時には、「大型バスには乗れない。運転したことがない」と伝えていたということです。
出典:twitter.com
それでも、イーエスピーは大型バス、特にスキー場へのバスの運転を頼みたいということで、研修を2回行った状態で、大型バスの運転の業務に就きました。事故を起こした時は研修後4回目の乗車だったとのことです。
通常は、「路線バスの乗務員研修は経験者でも最低3ヶ月を要する」とされていますので、大型バス未経験の運転手が入社後1ヶ月で、しかも研修はたった2回で、深夜バスを運転するというのは、前代未聞と言って良いでしょう。
このように大型バスの運転の経験不足・技量不足があったために、軽井沢バス事故が起こった一因ではないかとも言われています。
原因:3.運転経路の変更
軽井沢バス事故の原因の3つ目は、運転経路の変更です。
元々計画されていたバスの行程は、松井田妙義ICから上信越自動車道に乗って、佐久ICで一般道に出るというものでした。
でも、実際に運転していたと思われるルートは上信越自動車道ではなく一般道でした。本来なら、事故を起こした碓氷バイパスは走行する予定ではなかったということです。
道路運送法では、運転手が通行止めや急病人が発生したとしても会社に報告せずに勝手にルートを変更してはいけない。必ず、会社に報告しなければいけないと義務付けているんです。
イーエスピーによると、このルート変更の報告はなく、運転手の自主判断によるものだったとのことです。
出典:asahi.com
ただ、イーエスピーの高橋美作社長は「経費削減のために下を走れということはないが、目的地に早く着きすぎないよう一般道を使うことはある」と話しています。
出典:jiji.com
もしかしたら、経費削減のために、高速道路ではなく一般道を走行するように会社が指示したのかもしれませんね。
原因:4.バスの車体欠陥?
軽井沢バス事故の原因、4つ目はバスの車体欠陥です。この映像を見ると、バスはブレーキやそのほかの部分がが壊れていたのではないかと推測できます。
入山峠のカメラではバスは安全運転をしていて、正常に走行しているのがわかります。でも、軽井沢橋での映像ではバスは蛇行し、スピードがかなり出ていて、でもブレーキランプはずっと点灯しているので、ブレーキを踏んでいるのがわかります。
つまり、入山峠から軽井沢橋の間で何かしらの車両トラブルが起こり、スピード制御ができなくなった。ブレーキを踏んでいることから、運転手はその状態の車両を必死に制御しようとしていたのではないか?と推測できますよね。
ちなみに、2015年3月にメーカによる点検で、車体の床下および車輪支持部品の腐食が進み、使用が危険との報告が上げられたものの、修理されず車両が転売され運行されていたということがわかっています。
つまり、危険と判定されたバスが修理されずに、そのまま運行していたということです。
出典:mainichi.jp
バスは大破していましたし、事故後の調査でも、バスに明らかな欠陥があったという証拠は見つかっていないようですが、この映像を見ると、ブレーキが効かない状態だったことは推測できますよね。
原因:5.ブラック企業体質
この軽井沢バス事故が起こってから、イーエスピーがブラックな企業であることが浮き彫りになりました。
2.入社以来、運転手は1度も健康診断を受けていなかった
3.65歳という高齢の運転手に深夜乗務をさせていた
4.大型バスの経験がないのに研修2回で乗務スタート
5.会社側が運転手に対して作成する「運行指示書」にルートの記載がなかった
6.ルートの変更を伝えないことは過去にもあった
出典:iza.ne.jp
出典:sankei.com
このイーエスピーは2016年1月13日、つまり事故の2か前に健康管理を怠るなどの法令違反があったために、保有しているバス1台を20日間の運行停止にする行政処分を受けています。
その2日後の事故。イーエスピーはブラック体質の企業だったというほかありません。きちんとした法令順守・コンプライアンスが高い企業だったら、この事故は起こらなかった可能性は高いです。
また、ツアー企画会社の「キースツアー」もブラック会社でした。このスキーツアーは格安ツアーでした。しかも、キースツアーは国が定める基準(約27万円)を下回る金額(約19万円)でバス会社のイーエスピーに受注していたんです。
バス業界は競争が激しいので、安い金額で仕事を受けざるを得ないという背景があったようです。でも、あまりに安い金額で仕事を受けると、それだけバス会社の利益は減りますので、社員の健康管理は杜撰になりますし、バス車両の整備も適当になります。
少しでも利益を上げようとして、高速道路に乗るはずだったところを一般道で行こうとすることがあるかもしれません。
つまり、バス会社のイーエスピーも、ツアー会社のキースツアーも、どちらもブラック企業であり、運転手も劣悪な環境で働かなくてはいけなかったということです。
原因:6.シートベルトの非着用
軽井沢バス事故の原因の6つ目は、シートベルトの非着用です。乗客全員が死亡、もしくは負傷していますが、ほとんどの乗客がシートベルトはしていなかったとされています。
当時の法令では高速バスでのシートベルト着用は義務化されていますが、一般道では義務化されていませんでした。そして、深夜1時で乗客はみんな寝ていてくつろいでいる。
そのため、シートベルトをしていない人が多く、横転した時に体が投げ出されて、頭蓋内損傷や頸椎骨折などの致命傷を負った可能性が高いんです。
軽井沢バス事故の犠牲者15名
軽井沢バス事故は、乗客13名と乗員(運転手)2名が死亡しています。軽井沢バス事故の犠牲者の乗客は全員が現役の大学生でした。
出典:ameblo.jp
・早稲田大学:3名
・東京農工大学:2名
・首都大学東京:1名
・東海大学:1名
・東京外国語大学1名
・広島国際大学:1名
法政大学の学生は10人乗っていましたが、10人全員が尾木ママこと尾木直樹氏のゼミの教え子であったことがわかっています。
軽井沢バス事故の犠牲者の小室結さんとは?
軽井沢バス事故の犠牲者の1人である小室結さんが、ニュースでは特に大きく取り上げられました。なぜ、15人の犠牲者の中で小室結さんが特に大きく取り上げられたのか、メディアの注目を集めたのか?を見ていきましょう。
出典:ameblo.jp
小室結さんは早稲田大学国際教養学部の4年生で、ゼミの仲間とスキーツアーに出発して、この事故の犠牲になりました。
小室結さんは、タレントや女優と言っても違和感がないくらいに美人ですよね。でも、小室結さんが注目を集めるのは、美人だからというだけではありません。
・香港や台湾で幼少期を過ごした帰国子女
・オックスフォード大学へ留学経験あり
・英語と中国語はペラペラ
・中高一貫校でチア部のリーダー
・実家は渋谷区の豪邸
・Facebookの友達は900人!
・三井不動産本社内定
・彼氏(バス事故で一緒に犠牲になった)もエリートで日本政策投資銀行内定
このように超ハイスペックな女性だったからです。超ハイスペックで、明るい未来が開けていることは間違いなかった女性が、軽井沢バス事故の犠牲になってしまったということで、マスコミの注目を集めたんです。
小室結さんの通夜・葬儀には1200人が参列したとのこと。
出典:asahi.com
21歳の若さで通夜・葬儀に1200人が参列するというのは、やはりかなりのセレブ一族出身で、ハイスペックな人だったことがわかります。
軽井沢バス事故の生存者たちはその後も苦しんでいる!
軽井沢バス事故は15人が死亡、26人が負傷しました。26人は「死ななくて良かった!」と素直に喜べない状態になっています。生存者たちはその後も苦しんでいるんです。
生存者たちはサバイバーズ・ギルトに苦しんでいます。サバイバーズ・ギルトとは、戦争や災害、事故、事件、虐待などで奇跡的に生き残った人たちが、「自分だけが生き残ってしまった・・・」という罪悪感を抱くことです。
出典:nstimes.com
出典:mainichi.jp
負傷した生存者の証言を見ても、かなりの衝撃で、深刻な事故だったことがわかります。
生き残ることができたとしても、事故の恐怖は忘れることができないと思います。特に、事故直前は、バスが時速100km近い速度で走行し、蛇行していたということですから、事故前から怖い思いをしていたことでしょう。
事故の生存者は、「事故のことに触れたくないし、誰にも会いたくない」と言っていたり、普通の会話をしている時に会話の途中ですぐ目を伏せたり、言葉が続かなかったりということがあったようです。
また、車に乗ることが怖くなり、新幹線に乗れるようになるまで退院したくないと言った生存者もいました。
軽井沢バス事故のその後と現在
軽井沢バス事故のその後はどうなっているのでしょう。また、事故に大きくかかわったバス運行会社のイーエスピーとキースツアーの現在はどうなっているのかを見ていきましょう。
運転手と社長らが書類送検
2017年6月27日に、運転手とバス運行会社のイーエスピー社長ら2名がこの軽井沢バス事故を起こしたとして書類送検されています。
出典:sankei.com
・社長ら2名=業務上過失致死傷(不慣れな運転手に運転をさせた)
この書類送検の内容を見ると、運転手に直接的な原因があり、イーエスピーに間接的な原因があるということになります。
また、この事故をきっかけにして、2016年3月から貸し切りバスにはドライブレコーダーを搭載することを義務化しています。
イーエスピーのその後と現在
バス運行会社のイーエスピーは、事故から2日後の2016年1月17日に大型バスを使う事業から撤退する方針を明らかにしています。
さらに、その2日後の1月19日には厚生労働省が一般貸切旅客自動車運送事業の許可の取消処分をしていますので、事実上この時点で、イーエスピーはバスの運行はできない状態になりました。
そして2018年7月20日には、労働基準法違反容疑でイーエスピーは書類送検されています。
犠牲者の遺族からは民事で損害賠償の裁判を起こされていて、2019年になってからこの判決が出ています。東京地裁は4月1日付で、イーエスピーが約1億3千万円を遺族に支払う和解判決を出しています。今後、さらに民事での判決は出てくるでしょう。
ちなみに、イーエスピーは倒産しているわけではありません。現在は警備会社として運営されています。元々、イーエスピーは警備会社でしたが、2014年からバス事業に参入していました。
このバス事業から撤退しただけで、警備会社としては経営を続けているということですね。
ツアー会社のキースツアーのその後と現在
出典:sankei.com
格安ツアーを企画し、バス会社のイーエスピーに国の基準を大きく下回る額で仕事を受注していたキースツアーのその後は、事故が起こった1月15日時点で、以降のツアーすべてを中止する旨を発表しています。
そして、事故から約2ヶ月後の2016年3月18日には東京都かっら旅行業登録の取り消し処分を受けて、すべての営業を終了させています。
出典:youtube.com
ただ、会社がなくなっているわけではなく、営業は行っていないものの、会社は存続しています。キースツアーのホームページには、次のような文言がありました。
今後、会社は存続させながら引き続き被害に遭われた方、ご遺族の方へは誠心誠意お詫びの気持ちの限りを尽くして対応していく決意でございます。
まとめ
軽井沢バス事故の概要や原因、犠牲者、生存者の苦しみ、その後と現在についてまとめましたが、いかがでしたか?
軽井沢バス事故は死者15名・負傷者26名という深刻な事故でした。これをきっかけとして、格安バスツアーが見直されることになりましたが、この事故から学ぶべきことはたくさんあるので、いつまでも忘れることなく、風化させずにいたいですね。