境界性パーソナリティ障害は「ボーダーライン」と呼ばれることもある精神障害の1つです。「見捨てられたくない!」という強い思いがある根底にあるとされていて、対人関係がうまくいかなくなることも多いです。
境界性パーソナリティ障害の特徴や境界性パーソナリティ障害の芸能人・有名人、境界性パーソナリティ障害になる原因をまとめました。
境界性パーソナリティ障害とは
境界性パーソナリティ障害とは、強い自己否定感が根底にあり「自分は生きる価値がない」と思ってしまう状態です。気分の波が激しくて、感情が不安定であり、良い・悪いなどを両極端に判定したり、強いイライラ感が抑えきれなくなったりすることが特徴です。
若い女性に多く、患者の男女比は1:3となっていて、人口の約2%は境界性パーソナリティ障害と言われています。つまり、50人に1人は境界性パーソナリティ障害であり、珍しい病気ではないということです。
境界性という言葉は、「神経症」と「統合失調症」という2つの病気の境界のような症状を示すことを表しています。また、パーソナリティ障害は人格障害という意味ですね。
つまり、境界性パーソナリティ障害は「神経症と統合失調症の2つの境界にある人格障害」ということになります。
境界性パーソナリティ障害の12の特徴
境界性パーソナリティ障害の特徴を見ていきましょう。境界性パーソナリティ障害とは、次のような症状が出てきます。
1.見捨てられたくないという不安
境界性パーソナリティ障害は、とにかく「見捨てられたくない!」という不安を持っています。この「見捨てられたくない」という不安が境界性パーソナリティ障害の根底にあるものと言って良いでしょう。
人に見捨てられないためには、なりふり構わず行動することもあります。
2.かまってちゃん気質
境界性パーソナリティ障害の特徴の2つ目は、かまってちゃん気質が強いことです。見捨てられたくない、かまってほしいと思っていて、そのためにはどんなことでも行動するので、境界性パーソナリティ障害は、究極のかまってちゃんタイプと言えるかもしれません。
3.対人関係がめまぐるしく変わる
境界性パーソナリティ障害の人は、対人関係がめまぐるしく変わります。安定した対人関係を築くことができません。
境界性パーソナリティ障害の人は、見捨てられたくないために、相手に依存していきます。その過程の中で、その人を勝手に理想化していくのです。でも、何かの拍子に「あれ?思っていたのとは全然違うじゃん!」と失望し、勝手に理想化した相手の評価を下げます。
「この人がいないとダメ!この人は最高!」と思っていたのに、突然「ダメじゃん、この人!」と思ってしまうというわけですね。
これを繰り返すので、対人関係はどんどん変わっていき、長年ずっと変わらない人間関係を築いていくことができないのです。
4.気分や感情が安定しない
境界性パーソナリティ障害の特徴、4つ目は気分や感情が安定しないことです。境界性パーソナリティ障害の人は感情のふり幅が大きく、気分が安定しないため、周囲の人がついていくことができないことも少なくありません。
うつ病や双極性障害(躁うつ病)を併発していることも少なくありません。
5.感情のブレーキが利かない
境界性パーソナリティ障害の5つ目の特徴は、感情のブレーキが利かないことです。境界性パーソナリティ障害の人は、ちょっとしたことで突然怒り出したり、泣き出したり、かんしゃくを起こすことがあります。
周囲の人から見ると、「え?そんなことで!?」と思うような些細なことで、境界性パーソナリティ障害の人は思いっきり傷ついているということもあります。
6.周囲の人間関係をこじらせる
周囲の人間関係をわざと拗らせることも、境界性パーソナリティ障害の特徴です。自分を見てほしい、自分に注目させたい、自分の近くにいてほしいという思いから、わざと周囲の人間関係を壊すような言動をしてしまうことがあります。自分に同情を向けようとしているんですね。
7.自傷行為など自殺するふりを繰り返す
境界性パーソナリティ障害の特徴、7つ目は自傷行為など自殺するふりを繰り返すことです。境界性パーソナリティ障害の人は、なんとか自分に注目を集めよう、見捨てられないようにしたいという思いから、「私、自殺するから!」と宣言して自殺するふりをしたり、リストカットをしたりします。
ただ、「自殺するふり」ではなく、本当に自殺してしまうケースも少なくなく、アメリカの調査によると、境界性パーソナリティ障害の人の9~10%は自殺してしまうとのことです。
8.問題行動を起こす
境界性パーソナリティ障害の特徴、8つ目は問題行動を起こすことです。喧嘩や暴力沙汰をよく起こしたり、違法薬物を使用したり、万引きしたりなどですね。
境界性パーソナリティ障害の人は、上記のような問題行動・犯罪行為を起こすことがあるんです。
9.自分を大切にしない行為をする
境界性パーソナリティ障害の人は、自分を大切にしない行為を行います。
・アルコールの乱用
・過食や自己嘔吐
・ギャンブルや買い物での異常なまでの浪費
このような日常生活を破滅させるような行為を境界性パーソナリティ障害の人は行うのです。
10.幸せを感じにくい
境界性パーソナリティ障害の人は、幸せを感じにくいことも特徴です。空虚感を常に持っていて、空しい・寂しいという気持ちがあります。
また、抑うつ症状が出ることも多いので、幸せを感じにくいのです。
11.強いストレスがかかると一時的に記憶がなくなる
境界性パーソナリティ障害の特徴、11個目はストレスがかかると、一時的に記憶がなくなることです。ストレスがかかると、その防衛機能として、解離症状が現れます。そのため、その時に記憶が飛んでしまうのです。
12.人と関わろうとしないこともある
境界性パーソナリティ障害の人は人に依存して、見捨てられないようにすることが多いです。でも、対人関係を築くことに恐怖を持ち、対人関係を築くことを回避して、人と関わろうとしないこともあります。
境界性パーソナリティ障害の芸能人・有名人13名
境界性パーソナリティ障害を持つ芸能人・有名人をご紹介します。ただ、ここで御紹介する人は、きちんとした診断がついていたわけではなく、「多分そうだろう」と推測の人も含まれています。
1.太宰治さん
出典:e-aidem.com
太宰治
生年月日:1909年6月19日
出身:青森県五所川原市
活動:作家
「人間失格」や「走れ!メロス」などの作品で知られる太宰治さんは、境界性パーソナリティ障害だったと言われています。何度も自殺未遂を繰り返したり、パビナール中毒にもなっています。
女性関係がもつれてしまい、最終的には入水自殺をしたことも、境界性パーソナリティ障害だったためかもしれません。
2.種田山頭火さん
出典:asahi.com
種田山頭火
生年月日:1882年10月3日
出身:山口県防府市
活動:俳人
自由律俳句の種田山頭火さんも、境界性パーソナリティ障害と言われています。アルコール依存症になり、自殺未遂のようなことをしていて、酒癖が非常に悪かったと言われています。
彼の場合は、11歳の時に母親が投身自殺をし、父親は飲んだくれでネグレクト状態、弟も自殺をしたということが、境界性パーソナリティ障害になった原因なのかもしれません。
3.尾崎豊さん
出典:fnn.jp
尾崎豊
生年月日:1965年11月29日
出身:東京都世田谷区
身長:178cm
所属:アイソトープ
血液型:B型
活動:シンガーソングライター
カリスマ的な人気を誇っていた尾崎豊さんは、空虚感・虚無感を抱えていて、一時的に音楽活動を休止したことがあります。また、自殺未遂をしたり、覚せい剤中毒になっていたことを考えると、境界性パーソナリティ障害だったのではないかと言われています。
4.ヘルマン・ヘッセさん
出典:twitter.com
ヘルマン・ヘッセ
生年月日:1877年7月2日
出身:ドイツ
活動:作家
「車輪の下」などで知られるノーベル賞作家のヘルマン・ヘッセさんは、境界性パーソナリティ障害だったとされています。子どもの頃からかんしゃく持ちで、さらに14歳の時に精神病院で入院治療を受け、何度も自殺未遂を起こしています。
5.ダイアナ妃
出典:esquire.com
ダイアナ妃
生年月日:1961年7月1日
出身:イギリス
活動:元イギリス皇太子妃
元イギリス皇太子妃のダイアナさんは、自傷行為を繰り返したり、過食嘔吐をしていたことがわかっていますので、境界性パーソナリティ障害だったのではないかと言われています。慢性的なうつ状態でしたが、晩年は慈善事業に生きがいを見出していたようです。
6.マリリン・モンローさん
マリリン・モンロー
生年月日:1926年6月1日
出身:アメリカのロサンゼルス
身長:166cm
活動:女優
マリリン・モンローさんはお母様が精神病で入退院を繰り返したため、孤児として育てられていました。そのことから境界性パーソナリティ障害となったと考えられてます。
睡眠薬を大量に服用したり、アルコール依存症になり、さらに7回にも及ぶ自殺未遂の後に亡くなっています。
7.ウィノナ・ライダーさん
出典:ciatr.jp
ウィノナ・ライダー
生年月日:1971年10月29日
出身:アメリカ
身長:161cm
活動:女優
女優のウィノナ・ライダーさんは、境界性パーソナリティ障害であることを公表しています。主演・制作総指揮をした映画「17歳のカルテ」で、境界性パーソナリティ障害の主人公スザンナ役を演じましたが、自分にもそのような傾向があると語っていて、その症状で入院したこともあるそうです。
8.マーシャ・リネハンさん
マーシャ・リネハン
生年月日:1843年5月5日
出身:アメリカ
活動:心理学者
心理学者のマーシャ・リネハンさんは、弁証法的行動療法と呼ばれる境界性パーソナリティ障害のための認知行動商法を開発した人物ですが、自分自身が境界性パーソナリティ障害だったそうです。幼少期から自傷行為を繰り返していましたが、当時は統合失調症と診断されていました。
9.シルヴィア・プラスさん
シルヴィア・プラス
生年月日:1932年10月27日
出身:アメリカ
活動:詩人、小説家
アメリカの詩人で小説家のシルヴィア・プラスさんは、幼少期から詩の創作活動を始めますが、精神的に不安定で何度も自殺未遂を試みています。最終的にはガス自殺を図りましたが、彼女はガスオーブンの中に頭を突っ込んで亡くなっていたそうです。
10.リンジー・ローハンさん
出典:elle.com
リンジー・ローハン
生年月日:1986年7月2日
出身:アメリカのニューヨーク
身長:165cm
活動:歌手
アメリカの女優のリンジー・ローハンさんは、トラブルメーカーとして知られています。様々な人とトラブルを起こし、さらにアルコール依存症になり、コカインにも手を出しています。そして、自動車事故を起こすなどのエピソードから、彼女は境界性パーソナリティ障害ではないかと言われています。
11.エリク・エリクソンさん
出典:naritas.jp
エリク・エリクソン
生年月日:1902年6月15日
出身:ドイツ
活動:精神分析家
精神分析家であるエリク・エリクソンさんは「アイデンティティ」の概念を提唱した人物です。青年期のアイデンティティを語っている時に、「その頃の自分は境界性人格障害の状態にあった」と話していました。
12.ドウグ・フェラーリさん
出典:youtube.com
ドウグ・フェラーリ
生年月日:1956年12月25日
出身:アメリカ
活動:コメディアン
アメリカのコメディアンであるドウグ・フェラーリさんは、境界性パーソナリティ障害と不安障害と診断されたことがあります。
この境界性パーソナリティ障害があるために、ホームレスになったり、結婚生活を継続させるのが難しくなったそうです。また、境界性パーソナリティ障害の人のためのウェブサイトを運営しています。
13.ジェームス・ディーンさん
ジェームズ・ディーン
生年月日:1931年2月8日
出身:アメリカ
身長:170cm
活動:俳優
アメリカの俳優、ジェームス・ディーンさんは母親を早くに亡くし、父親からは捨てられたと同様の少年時代を送ります。そのためか、気分のむらが非常に激しく、さらに車の暴走などのスリルを楽しむような境界性パーソナリティ障害になったとされています。
境界性パーソナリティ障害の原因
境界性パーソナリティ障害の原因は1つだけというわけではなく、いくつかの原因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
・その人の性格・性質
・不安定な親との関係
・その他人間関係のトラブル
まとめ
境界性パーソナリティ障害の特徴や芸能人・有名人、境界性パーソナリティ障害の原因などをまとまとめましたが、いかがでしたか?
境界性パーソナリティ障害は親からの愛情不足で発症しやすく、見捨てられたくないという思いが根底になる精神障害です。治療のためには、専門的な医療機関を受診する必要がありますので、早めに精神科や心療内科を受診するようにしましょう。