多発性硬化症という難病を知っているでしょうか?多発性硬化症は、近年、日本で患者数が増加してきている病気なんです。
今回は多発性硬化症の基礎知識と多発性硬化症の芸能人・有名人、症状や原因、寿命などをまとめました。
多発性硬化症とは
多発性硬化症(multiple sclerosis=MS)は、脳や脊髄、視神経のあちらこちらに病巣ができて、全身に様々な症状が現れる病気のことです。
多発性硬化症は、簡単に言うと、神経を覆うカバーが破壊されることで、神経に異常が生じて、情報がスムーズに伝わらなくなる病気です。
神経のカバー(ミエリン)が破壊されて神経がむき出し(脱髄)になることで、脳から体への指令・情報が伝わりにくくなります。それで、全身にいろいろな症状が出てくるんですね。
この病気の特徴は、寛解と再発を繰り返すことです。症状が良くなったと思ったら、また症状が重くなり、また良くなる。ということを繰り返します。
この多発性硬化症は、特定疾患に指定されている難病で、10万人に8~9人の割合で発症し、日本には現在12,000人の患者さんがいるとされています。
男性よりも女性に多く、さらに20~30代に発症することが多い病気です。
多発性硬化症の芸能人・有名人:日本人3人
多発性硬化症の芸能人・有名人をご紹介していきます。多発性硬化症は珍しい病気であり、症例数も決して多いわけではありませんので、多発性硬化症になり、それを公表している芸能人・有名人は少ないです。
1.林家こん平さん
林家こん平
生年月日:1943年3月12日
出身:新潟県長岡市
所属:落語協会
血液型:A型
活動:落語家
笑点でおなじみだった林家こん平さんは、2004年に多発性硬化症と診断されています。
2004年春ごろから、目がかすんだり、声が出にくいなどの症状がありました。そして、2004年8月には笑点の収録時に、意識が薄れ、ろれつが回らない状態に!なんとか収録を終えて、救急搬送されましたが、病名はわかりませんでした。
そして、転院した東京女子医大でようやく多発性硬化症であることがわかったんです。多発性硬化症のほとんどが50代までに発症しますが、こん平さんは60代での発症だったために、診断が遅れたそうです。
診断された後は入院してリハビリを続けますが、入院中は窓から飛び降りようと自殺未遂をしていたことがわかっています。
その後は、多発性硬化症の治療を続けながら、糖尿病や小脳梗塞などの病気と闘っています。
2.伊藤智也さん
伊藤智也
生年月日:1963年8月16日
出身:三重県鈴鹿市
所属:ASSA-TC
活動:車椅子陸上アスリート
車椅子ランナーの伊藤智也さんも、多発性硬化症を患っています。伊藤さんは1998年に多発性硬化症を発症し、この時点で自力歩行が困難となり、車いす生活が始まります。入院中に車椅子を注文したのですが、この時に間違って、一般の車椅子ではなく、競技用の車いすを注文してしまいます。
この間違いをきっかけに、車いすの陸上競技を始めることになりました。北京のパラリンオリンピックでは金メダル2個、ロンドンパラリンピックでは銀メダル1個を獲得しています。
ここ数年は多発性硬化症の症状が落ち着いているため、57歳で迎える2020年の東京パラリンピックでは、金メダルを狙っているそうです。伊藤さんの活躍が多発性硬化症の人に勇気を与えることは間違いありませんね。
3.大橋 ノア 愛喜恵(大橋グレース)さん
大橋 ノア 愛喜恵(大橋グレース)
生年月日:1988年
出身:福島県
活動:アメリカ留学中
NHKのEテレ「バリバラ」に出演している大橋グレースさん(改名してノアさん)は、多発性硬化症を患っています。
高校卒業後、お母様の母国であるアメリカの大学に進学して、柔道に打ち込み、北京オリンピックの柔道代表内定を勝ち取ります。しかし、オリンピックに向けて練習している時、右目が見えなくなり、左手の力が入らなくなりました。
日本に帰国して精密検査を受けたところ、多発性硬化症であると診断されます。その後は、Eテレのバリバラに出演したり、トランスジェンダーであることを告白したりしながら生活されています。
現在は多発性硬化症の症状が進行しているようで、視力を失い、さらに腕から下が動かなくなってしまったため、人工呼吸器を装着し、胃ろうをの処置を受け、24時間介護の状態となっています。
多発性硬化症の芸能人・有名人:外国人3人
多発性硬化症の芸能人・有名人、次は外国人で多発性硬化症を発症されている人をご紹介していきます。
1.ジャック・オズボーンさん
出典:mtvjapan.com
ジャック・オズボーン
生年月日:1985年11月8日
出身:イギリス
身長:177cm
活動:メディアパーソナリティー
世界的なミュージシャンであるオジー・オズボーンの三男のジャック・オズボーンさんは、2012年に多発性硬化症であることを告白しています。娘さんが誕生してからたった2週間後に、多発性硬化症という診断を受けたそうです。
この時に、片目の失明や両足のしびれ、排泄の問題などの症状が出ていたようです。2013年の時点では、片足が少しひりひりするような症状や疲れやすいなど以外は、重篤な症状は出ていないと述べています。
2.セルマ・ブレアさん
出典:elle.com
セルマ・ブレア
生年月日:1972年6月23日
出身:アメリカ
活動:女優
アメリカの女優であるセルマ・ブレアさんは、自身のInstagramで多発性硬化症と診断されたことを告白しています。
2018年8月に多発性硬化症という診断を受けたそうですが、彼女曰く、多発性硬化症の症状には15年以上前から悩まされていたとのこと。Instagramでは次のように述べています。
「この治療不能な難病を少なくとも15年前から抱えていたと思う。いまそのことを知れただけでもほっとしている。こうしてみんなと共有できることも」。
しかし、2019年7月の時点では、体調が少しずつ悪化してきていて、乗馬することが難しくなっているようです。
「見た感じが病人になってきたけど、もう一度この馬の背中に乗りたい。ニブル、少ししか時間がなかったから乗ることはできなかったけど、近くまで来てくれたわね」
引用:テレビ界の有名人セルマ・ブレアは、多発性硬化症の闘病で「見た目が病人」になっていると明かす (2019年7月25日) – エキサイトニュース
多発性硬化症は再発と寛解を繰り返す病気ですから、症状が治まるのを祈るのみですね。
3.ロニー・レインさん
ロニー・レイン
生年月日:1946年4月1日
没年月日:1997年6月4日
出身:イギリスのロンドン
活動:ミュージシャン
世界的なベーシストであるロニー・レインさんは、多発性硬化症と診断されました。1977年に発表した「ラフミックス」というアルバムのレコーディング直後に多発性硬化症と診断されています。
なんと、ロニー・レインさんのお母様の多発性硬化症だったとのことです。その後、少しずつ多発性硬化症は進行し、1992年に行われたライブが最後のライブとなりました。そのと、多発性硬化症から来る肺炎で1997年に亡くなっています。
多発性硬化症の症状
多発性硬化症は全身に様々な症状が出て、しかもその症状は寛解と再発を繰り返すことが特徴です。また、再発した時は前回と同じ症状が出るとは限らず、再発するたびに違う症状が出ることもあります。
感覚の障害
・痛みの感覚が鈍くなる(過敏になる)
・温度の感覚が鈍くなる(過敏になる)
・手足や顔にしびれが出る
・手足や顔がひりひりしたり痛みが出る
運動や歩行の障害
・歩くときにふらつく
・手足に運動麻痺がおこる
・体の片側が動きにくくなる
・手足が強直する(有痛性強直性けいれん)
眼・視力の障害
・視力が低下する
・視界にもやがかかったようになって見えにくい
・ものが二重に見える
・眼の奥が痛い
・視野が一部欠けてしまう
排泄や性機能の障害
・頻尿になる
・尿が出にくい
・残尿感がある
・トイレまで間に合わない
・便秘になる
・勃起不全になる
精神的な症状
・物忘れが激しくなる
・理解力が低下する
・集中力が低下する
・鬱っぽくなる
・気分が高揚する
その他の全身的な症状
・ろれつが回らなくなる
・レルミッテ徴候:頭を前に曲げると痛みが生じ、背中から足に向け下降する
・疲れやすくなる
・体温が上がると症状が重くなる
多発性硬化症の原因
多発性硬化症の原因はまだよくわかっていませんが、自己免疫の異常が原因ではないかと考えられています。
免疫機能の1つであるリンパ球が、自分の神経を攻撃してしまうんです。リンパ球は、通常は外部からの異物(ウイルスや細菌など)を攻撃して排除しますが、自己免疫機能に異常が生じると、自分の神経を攻撃して、神経のカバー(ミエリン)を破壊してしまうというわけです。
ただ、なぜリンパ球が自分の神経を攻撃してしまうのか?なぜ自己免疫に異常が生じるのか?その原因はまだ分かっていないんです。
多発性硬化症の寿命
多発硬化症を発症した人の寿命は、一般人と同じか10年短い程度とされています。つまり、多発性硬化症は死に直結する病気ではないということになります。
ただ、適切な治療を受けないと、緩やかに進行していき、寝たきりになったり、脳が萎縮してしまい、日常生活を営むのが不可能な状態になってしまいます。また、適切な治療を受けることで、寿命を延ばすことも可能ですので、早めに医療機関を受診して、適切な治療を受けるようにしてください。
まとめ
多発性硬化症の芸能人や有名人、症状や原因、寿命などをまとめましたが、いかがでしたか?
多発性硬化症はまだ完治させる治療法は見つかっていませんが、再発を防止したり、進行を防ぐ治療法はありますので、多発性硬化症と診断されたら、きちんと適切な治療を受けるようにしてください。