博多駅前陥没事故を覚えていますか?あの時の事故現場の様子は写真を見ると、何が起こったのかわからないほどすごかったですよね。「何が起こったのかわからない」というのは、それだけすさまじい大事故だったということです。
博多駅前陥没事故の場所や写真、原因、その後の復旧の様子と現在についてまとめました。博多駅前陥没事故は大変な事故でしたが、日本の技術のすばらしさを再確認できる事故でもあったんです。
博多駅前陥没事故とは
博多駅前陥没事故とは、2016年11月8日に福岡市博多区の博多駅すぐ近くで起こった道路陥没事故です。
出典:asahi.com
事故の概要をまとめました。
場所:博多駅博多口から約200mの大通り
事案:道路が陥没
死傷者:なし
博多駅の博多口から西にまっすぐ伸びる「はかた駅前通り」は片側2車線の大きな道路で、メインロードの1とも言える道路です。
その「はかた駅前通り」にある「博多駅前2丁目」の交差点のすぐ近くで、道路がボコッと陥没してしまったんです。博多駅博多口からは約200mしか離れていない繁華街でした。
※大崩落は1:04~
博多駅前陥没事故の被害
博多駅前陥没事故は、写真を見てわかるように道路が丸々ボッコリと陥没しています。これだけ陥没しているので、市民のライフラインに多大な影響が出ています。
・約800戸が停電
・停電により周辺のお店が営業停止
このような被害が出ました。
この被害を見て、「死傷者はなし?」と思いますよね。そうなんです。博多駅前陥没事故での死傷者はゼロだったんです。
博多駅前陥没事故の死傷者はゼロ!
博多駅前陥没事故は、片側2車線の大きな道路が丸々陥没するという大事故でした。
ただ、不幸中の幸いと言えることは、死傷者がいなかったことです。
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九州最大の都市であり、九州のターミナル駅である博多駅のすぐ近くの大通りがこれだけ陥没すれば、死傷者が多数出てもおかしくはありません。でも、死傷者はゼロだったんです。
これは不幸中の幸いであり、ラッキーなことですよね。なぜ、死傷者がゼロだったのか?それは迅速な対応があったからです。
この陥没事故は突然一気にドーン!と陥没したわけではありません。この陥没の兆候にいち早く気づいたのは、地下でトンネルの延長工事をしていた作業員の方でした。
作業員が午前4時25分ごろに「肌落ち」という地盤が崩落する兆候に気づきます。そして、その約25分後の午前4時50分に工事中のトンネル内で異常出水が確認され、作業員は迅速に退避します。そして、警察に通報。
通報を受けた警察は、地上を全面封鎖します。そして、その後に道路が陥没したというわけです。ここまでの流れを時系列でまとめました。
午前4時50分 異常出水があり地下の作業員が全員退避。同時に警察に通報
午前5時10分 警察による道路の全面封鎖が完了
午前5時15分 道路に亀裂が生じる
午前5時20分 道路北側に大きな穴が開く
午前5時30分 道路南側に大きな穴が開く
午前7時20分 穴が徐々に広がり縦横約30m、深さ約15mの巨大な穴となる
これを見ると、この博多駅前陥没事故で死傷者が出なかったのは次の4つのポイントがあったからであることがわかります。
2.早い段階で全員退避という判断ができた
3.警察の道路封鎖が的確・迅速だった
4.午前5時前後と人通り・車の通行が少ない時間だった
作業員が退避して通報、さらに道路封鎖までが20分しかかかっていないというのは驚異的なスピードだと思います。退避してから通報するのにも3~4分はかかるでしょうし、通報を受けても「道路全面封鎖」という判断を下すのは大変なことです。
さらに、そこに警察官が駆け付けて、しっかりとその場にいた人を残っている人がいないかを確認しながら、全員退避させる。
これを20分で確実に行った作業員と福岡県警・警察官の方たちは本当にすごいの一言です。
博多駅前陥没事故の場所と写真
博多駅前陥没事故の場所は、博多駅のすぐ目の前です。Google Mapで、事故現場の場所を確認してみましょう。
赤丸の部分が事故現場の場所です。そして、この地図の右にある大きなものが博多駅です。これを見るとわかると思いますが、駅から事故現場までは1本道であり、本当に駅のすぐそばで起こったことがわかります。博多駅博多口から約200mしか離れていないんですから。
この博多駅前陥没事故の場所の写真を見てみましょう。どれだけすごい事故だったのかがわかると思います。
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この写真を見ると、とんでもなく大きな穴が開いていて、これでよく死傷者がゼロだったなという感想しかありませんね。
この博多駅前陥没事故では、「世界一入店が難しいセブンイレブン」が話題になりました。
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確かに、これは入店もできないし、お店を出ることもできないセブンイレブンです。事故復旧後は、ちょっとした観光名所にもなりました。
「落ちないセブンイレブン」として、ここでキットカットを買うのが受験生の願掛けにもなっていましたね。
ちなみに、ニュースでこのセブンイレブンの状態を見た人は、「お客さんや店員さんは閉じ込められているの?」という疑問を持った人も多かったです。
博多駅前の陥没でこのセブイレの中におる人出られるん?
— ヒサオチャン (@xxW85Wxx) November 7, 2016
他に出入口あるならええけど pic.twitter.com/PKAYRlaq7K
確かに、セブンイレブンの店内にいた人がどうなっているのか気になるところですが、道路封鎖前に警察が全員退避させているはずです。さすがに、道路封鎖するにもかかわらず、そのお店の中の人を残したままにするということはありませんから。
博多駅前陥没事故の原因
博多駅前陥没事故の原因は、事故から約半年後の2017年3月にまとめられた事故調査委員会の見解によると、次の2つが挙げられています。
・地盤のもろさ
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博多駅前は地盤が弱い箇所でした。今回、事故現場の写真を見るとわかりますが、水が陥没場所にあふれ出ていますよね。これは地表から2メートル下に地下水があったからなのだそうです。
地上から2mしたには地下水が流れているというのは、やはり地盤が弱いですよね。実際に、約2年前の2014年10月27日に、この博多駅前陥没事故からたった350mしか離れていない所で、同じような陥没事故が起こっていたんです。
また、トンネルを支える鋼管を事故の直前に切断していたということも原因の1つとされています。
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工事の邪魔になるから鋼管を切断したとのことですが、地質調査に誤りがあり、切断しても大丈夫という見解が間違っていて、切断したことで、補強が不十分になり、陥没事故が起こってしまったというわけですね。
博多駅前陥没事故のその後
博多駅前陥没事故のその後はどうなっているのかを見ていきましょう。深刻な事故でしたが、その後の復旧は目を見張るものがありました。
博多駅前陥没事故はたった1週間で復旧完了
博多駅前陥没事故は縦30m×横30m×深さ15mという大きな穴が開いた陥没事故となりました。事故現場の様子を見ると、復旧にはかなりの時間がかかると思う人が続出しましたが、復旧までにはなんとたった1週間しかかかりませんでした。
大規模な陥没事故が起きたJR博多駅付近の道路が復旧工事を終え、1週間ぶりに5車線全てが開通しました(写真下)。同上は9日の様子です。(塩) https://t.co/UPNDOyPViu pic.twitter.com/VVMyhnvuHZ
— 日経 写真映像部 (@nikkeiphoto) November 15, 2016
たった1週間で、画像左の状態が右の画像のように綺麗になるんです。
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2016年11月8日の5時30分ごろに陥没が起こり始めましたが、それから1時間後の6時30分には福岡市交通局を中心とする事故対策本部が設置されました。そして、各種ライフラインの管轄事業者との連携を開始して、復旧作業に当たっています。
そして、福岡市長は、次のようにFacebookで発信しました。
今後、まずはライフラインの復旧に全力を尽くすため、今回の施工業者だけでなく、あらゆる関係業界に協力を要請してオール福岡で、出来ることは何でもして一刻も早い普及を行うように指示しています。
この博多駅前陥没事故の復旧作業を進めるにあたって、ライフラインの復旧が最優先でしたが、周囲のビルが倒壊するなどの二次災害の恐れがあり、穴に溜まった水を下手に抜くことができないため、「流動化処理土」によって穴をふさぐことが選択されました。
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このように「オール福岡」で24時間昼夜問わずに復旧作業を続けた結果、1週間で復旧完了となりました。
11月9日午前9時過ぎ 約800戸の停電が完全に復旧
11月13日 ライフラインが復旧
11月15日 復旧工事完了
博多駅前陥没事故では市長の情報発信が高く評価される
この博多駅前陥没事故では、福岡市長である高島宗一郎氏の情報発信が高く評価されました。
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事故直後の11月8日午前8時49分には、自身のFacebookから公式に情報発信を続けました。また、特設ホームページ等も開設し、市民が情報共有できるように努めました
事実のみを隠すことなく、さらに専門的な工事のことも、工事業者からヒアリングし、それをわかりやすくタイムリーに発信したということで、市民は安心感を覚え、各方面から高い評価を受けています。
博多駅前陥没事故では海外メディアもこのスピードを賞賛
博多駅前陥没事故は深刻な事故でしたが、迅速な対応で幸運にも死傷者はゼロ。さらに、復旧までにはたった1週間しかかかりませんでした。このスピード感は、海外メディアにも賞賛されています。
・「レバノンでは数年かかる」
・「モントリオールでは5年以上かかる」
海外の人はこのようなことを感じることが多いようで、この博多駅前陥没事故は改めて日本の技術の高さ・勤勉さなどを世界に見せつける形になりました。
日本人の私たちから見ても、1週間での復旧というのは「すごすぎぃ!」と思いますので、海外から見ると、さらに驚きが大きいのだと思います。
博多駅前陥没事故の現在
博多駅前陥没事故の現在はどうなっているのかを見ていきましょう。
博多駅前陥没事故はたった1週間で復旧作業が完了しました。でも、全部が復旧して元通りというわけではありませんでした。あの復旧作業は「ライフラインを復旧させて、車が取れるようにする」というだけのものです。
地下にはまだ水が溜まっていたので、復旧作業後は溜まっていた水を地下から抜く作業が進められ、それが終わったのが2019年4月のこと。
そこから土砂の撤去を進め、土砂の撤去が終わったのが2019年7月末。
そして、事故前から行われていた地下鉄のトンネルの再掘削が進められて、2019年11月上旬に無事工事は終わりました。
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延伸工事中の地下鉄の天神南-博多間は予定よりも2年遅れて2022年度(令和4年)に開業予定となっています。
まとめ
博多駅前陥没事故の場所や写真、原因、その後と現在の様子をまとめましたが、いかがでしたか?
博多駅前陥没事故は恐ろしい事故でしたが、死傷者がいないのが不幸中の幸いでしたよね。そして、日本の技術力、日本の技術者・工事関係者の「本気」のすばらしさを世界に示す結果となりました。
この博多駅前陥没事故からは学ぶべきことがたくさんありますので、この事故を忘れることなく、活かしていきたいですね。