2011年8月に東海テレビのローカル番組で起きた前代未聞の胸糞放送事故「セシウムさん事件」が話題のようです。
「セシウムさん事件」が起きた東海テレビや、事件の犯人となったテロップ制作者のその後と現在についてまとめました。
この記事の目次
「セシウムさん事件」は不謹慎極まりない胸糞放送事故
胸糞放送事故「セシウムさん事件」とは…
2011年8月4日、東海テレビのローカル番組「ぴーかんテレビ」の放送中に、不謹慎極まりないテロップが表示されるという、約9年が経過した現在も前代未聞の“胸糞放送事故”として語り継がれている事件です。
それは、放送当日の午前11時頃、「ぴーかんテレビ」内の「しあわせ通販」コーナーで、秋田県産稲庭うどんのテレビショッピング放送中に起こりました。
稲庭うどんの美味しさをアピールするテレビショッピングの音声はそのままに、突如として画面にコーナーとは無関係な次のテロップが映し出されたのです。
出典:https://www.youtube.com/
「夏休みプレゼント主義る祭り」とのタイトルが打たれたテロップは、岩手県産ひとめぼれ10kgの当選者を伝えるもののようですが、そこに書かれた当選者は次の3名だったのです。
・怪しいお米 セシウムさん
・怪しいお米 セシウムさん
・汚染されたお米 セシウムさん
本来、「怪しいお米」や「汚染されたお米」の部分には当選者の住所(市町村名)が表示され、「セシウムさん」の部分には当選者の氏名が表示されるはずのテロップなのですが…
明らかにこのテロップに表示された内容は、およそ5ヶ月前となる2011年3月の福島第一原子力発電所事故をネタにして作られたものだったんですよね。
しかも、このテロップは放送事故によくある一瞬だけ映り込んだ…という感じのものなどではなく、稲庭うどんの通販音声をバックに、実に23秒間に渡って表示されるという前代未聞の放送事故だったのです。
この異様な事態を受けて、「ぴーかんテレビ」のMCを務めていた福島智之アナは、「しあわせ通販」のコーナー終了直後に神妙な面持ちで画面に立ち…
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たった今、幸せ通販の映像の中で違う映像が出てしまいました。
考えられないような不謹慎な内容でした。
本当にすみませんでした。
「考えられないような不謹慎な内容でした。」の一文に、事の重大性が伝わってきますね。
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そして、番組の最後にも重ねてお詫びする2人のMC
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が、しかし。時すでに遅し…
東海テレビはその後、リハーサル用のダミーのテロップが操作ミスで放送されてしまった…と事故の経緯を説明するとともに、東海テレビの公式サイト上では、トップページを謝罪文に差し替え、それは2011年9月末まで掲載されました。
もちろん、東海テレビは事故の翌日から「ぴーかんテレビ」の放送を休止する決定を下すのですが、この前代未聞の放送事故に真っ先に反応したのは、当時の岩手県知事・達増拓也氏でした。
と言うのも、テロップに表示されたプレゼントが岩手県産のお米だったからです。そして、当時の岩手県と言えば、約5ヶ月前に発生した未曾有の大災害、東日本大震災による津波被害からの復興に総力を挙げて取り組んでいた最中の事件だったのです。
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達増拓也岩手県知事は、「本県を誹謗中傷したもの」と激怒し、東海テレビ宛てに抗議文を送りつけるとともに、直近の定例記者会見で、今回の「セシウムさん事件」について次のように語っています。
「人の心の闇の奥深さを見せつけられた感がある。当事者には猛省を促したい」と批判。関東大震災を例に「大震災や非常事態発生時にはとんでもないデマが飛び交う」と指摘したうえで、「マスメディアはデマを沈静化し、(誤った情報による国民の混乱を)防ぐ使命があるはずだ」
引用:セシウムさん騒動 – Wikipedia https://ja.wikipedia.org/
達増知事は「本当に岩手の米は不安なのかという問い合わせも来ています。風評被害を抑えることが使命のマスメディアが、被害を拡散させている。被害に苦しむ人たちに償い、被害が生じないよう務めを果たして頂きたい」と応じた。
引用:東海テレビ社長が岩手県知事に謝罪 http://www.asahi.com/
「セシウムさん事件」のその後の処分と番組打ち切り
もちろん激怒したのは岩手県知事だけではありませんでした。
東海テレビには事件発生2日後となる8月6日夜までの間に、実に1万件を超える苦情の電話やメールが殺到したのです。
さらに農林中央金庫、ミキハウス、フジパンなどがCM提供を取りやめるなど、スポンサーが次々と降板していく事態に発展しました。
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事故直後には、「ぴーかんテレビ」の放送休止こそ決定したものの、番組の継続については公式に発表されていませんでした。
しかし、同番組のスポンサーが続々と降板していき、最終的には1社も残らなかったばかりか、同局の他番組にまでスポンサー降板が相次いだことから、8月11日には遂に番組の打ち切りが発表されることに…。
さらに、東海テレビ社長の役員報酬を3ヶ月間50%カット、関係役員と社員ら計8人の減給や降格処分も併せて発表されるに至りました。
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「セシウムさん事件」の犯人であるテロップ制作者が検証番組で語った動機とは?
さらに同年8月30日には、「検証 ぴーかんテレビ不適切放送 ~なぜ私たちは間違いを犯したのか~」と名付けられた、東海テレビによる自己批判検証番組が放送されました。
出典:https://gigazine.net/
この番組の中では、問題の不適切テロップを作成したとされる50代の下請け会社社員が登場し、テロップ作成の動機などについて語っているのですが、声には加工は施されていなかったものの、次の画像のように顔や氏名などが明らかにされることはありませんでした。
出典:https://gigazine.net/
「セシウムさん事件」の犯人とタイムキーパーの女性との食い違う証言
「セシウムさん事件」の犯人であるテロップ作成者は、番組の女性若手タイムキーパーが最初に問題のテロップを見た時、「いやな文章だわ」のようなことは言われたものの、「すぐに直して下さい」などと言われた記憶はないと証言しています。
出典:https://gigazine.net/
一方、当のタイムキーパーの女性社員は、テロップを確認した際に「やめてください、不謹慎です」というようなことを言った覚えがあると主張。
しかし、その際、50代のテロップ作成者からは「ハイハイハイハイ、あとでやっておきますよ」「わかってますよ」的なニュアンスの対応を受けたと証言しているんですよね。
出典:https://gigazine.net/
どちらが嘘をついているのか?もしくは双方に認識のズレがあったのかは不明ですが、まさに絵に描いたような「言った、言わない」の水掛け論に終始したわけです。
「セシウムさん事件」の犯人が動機について語る
続いて、「なぜ不謹慎極まりない言葉でテロップを作ったのか?」との質問に対して、テロップ作成者は、その時にはそのテロップがオンエアされるとは全く思っていなかったと前置きした上で、次のように動機を語っています。
本当に思いつきでちょっとしたふざけ
まあ思いついたことをぽんぽんと文章に入れてしまっただけ。
さらに、会社への恨みや報復などの意味合いなど毛頭なく、あくまで単なる思いつきで頭に浮かんだフレーズを入れただけであるという点を終始強調していました。
最終的に、この検証番組「検証 ぴーかんテレビ不適切放送 ~なぜ私たちは間違いを犯したのか~」では、「① 不適切テロップが作成されてしまった理由」と「② 不適切テロップが23秒間も放送されてしまった理由」について、次のように結論づけました。
① コミュニケーション不足と当事者意識の欠如
② 油断、緊張感のなさ、危機管理の甘さ
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「セシウムさん事件」の犯人であるテロップ制作者は懲戒解雇されていた
検証委員会からの詰問に対して、しどろもどろになりながら「まさか放送されるとは思っていなかった…」などの返答に終始した50代男性社員。
出典:https://gigazine.net/
「セシウムさん事件」の犯人である不適切テロップ制作者は、外部のテロップ制作会社に身を置いていたものの、なんと東海テレビで30年近くもこの仕事をしてきた人物だと言うから驚きです。
東海テレビによると、この男性社員は東海テレビの子会社である東海テレビプロダクションの社員ではなく、その会社の下請けをしていた別会社の社員だったそうなのですが…
ちなみに、この男性は2011年8月28日付けで所属会社を懲戒解雇されています。
出典:https://gigazine.net/
また、この検証番組にはこの男性と前述したタイムキーパーの女性社員以外にも、多くの人物が登場していましたが、結局のところ、テロップ作成者の男性以外の処分については言及されなかったようです。
「セシウムさん事件」のその後と現在について
その後、正しい当選者のキャプチャー画像が話題に
実は、「セシウムさん事件」が起こった「ぴーかんテレビ」の放送の最後に、岩手県産ひとめぼれ10kgの正しい当選者3名が発表されたのですが、事件後にその際のものとされるキャプチャー画像が出回り、話題になっているんですよね。
その画像がこちら。
出典:https://twitter.com/
なんとナナメ読みすると、「セシウム」の文字が隠されていることが判明し、「この期に及んでまだやるか!」「ってことは、そもそもプレゼント懸賞自体が架空だったってこと?」などと、ちょっとしたお祭り騒ぎに発展したのですが…
その後、実際に「ぴーかんテレビ」で放送された正しい当選者発表のキャプチャー画像が発見され、どうやら出回った画像はよく出来たコラ画像であることが判明することに。
「ぴーかんテレビ」で放送された正しい当選者発表
コラ画像は1行目の「キリュウ」を「セリュウ」に、3行目の「アンドウイツコ」を「アンドウムツコ」に書き替えたようです。
「いつか問題になると思っていた…」テレビ業界のモラルの低さを指摘する声も
ただ、テレビ関係者の中には「いつか問題になると思っていた」という声が、実際に「セシウムさん事件」を起こした東海テレビのみならず、民放各局の制作スタッフからも上がっていたようです。
出典:https://blog.goo.ne.jp/
とある在京キー局の関係者は次のように証言しています。
「ダミーのテロップはどこでも制作していますが、画面に映ることはない前提なのでふざけた内容で作ることが多い。先日、ウチの局でも菅直人首相の出すコメントを前もってテロップにしたとき、セリフの欄に”日本は韓国にあげます。まずは孫社長に”なんて書いたものがありました。もし間違って放送されていたら、少なくともソフトバンクはCM撤退したでしょう」
引用:「セシウムさん」はまだ甘い? テレビ局で横行する「悪質ダミーテロップ遊び」の現実 https://www.excite.co.jp/
また、ある別の局のディレクターは、「セシウムさん事件」の背景について、次のような指摘をしています。
「テロップを作るスタッフが毎日同じ作業の繰り返しで退屈している。ダミーテロップにジョークを書いて周囲の笑いをとるうちに、調子に乗ってしまう」
「正直、テレビのスタッフというのは下請けや関連業者など人の出入りが多く、局内で財布が盗まれただの便所の落書きがひどいだのと民度が低いところがある」
引用:「セシウムさん」はまだ甘い? テレビ局で横行する「悪質ダミーテロップ遊び」の現実 https://www.excite.co.jp/
テレビ界のモラルの低さは異常との声も…。今回の騒動が続いているうちは、ダミーテロップに悪質な言葉を並べるスタッフもいないでしょうが、いずれはまた元の悪ふざけが横行する雰囲気に戻るに違いない…なんて危惧する声もちらほら。
と、思ったら…やっぱり第2の「セシウムさん事件」がフジテレビで発生した模様です。
「あんなアホいない」の間違いテロップの件で思い出したから「セシウムさん事件」を軽く振り返ったら、奇しくも2011年8月4日の出来事だったとは。同じ日に事故を起こすフジテレビ。 pic.twitter.com/Isa6CVPAUE
— シビ (@shibiren) August 4, 2019
これは事前に用意するものだし、明らかに故意
— スッポン🐢 (@suppon2525) August 4, 2019
誤表記などではなく、セシウムさん事件と同じ構図
もちろんオンエアに使うつもりはなく、チェックミスがあったのは確かだが、変換ミスなどでは決してありえない
オンエア前に「あんなアホいない」と悪意をもって打ち込んだ人間が確実に存在する pic.twitter.com/CboEIWNawo
まとめ
いかがでしたでしょうか。
2011年8月に東海テレビのローカル番組で起きた、前代未聞の放送事故「セシウムさん事件」について、犯人となったテロップ制作者や東海テレビのその後と現在についてまとめてみました。
出典:https://blog.goo.ne.jp/
「セシウムさん事件」の犯人は、ただ頭に浮かんだことをそのまま文字にしただけで、表に出すつもりがないフリップだったから…と、終始主張していましたが、問題の本質はそこじゃないように感じたのは私だけでしょうか。
50歳にもなって「怪しいお米 セシウムさん」なんて言葉が頭に浮かんでくる人間もどうかと思いますが、そんな不謹慎極まりない言葉を悪ふざけでテロップに書くってことは、それを見てニンマリしていた人も、局内にいたってことに他なりません。
そして、そんな民度の低い者たちが制作に携わった番組が、各家庭のテレビから日々垂れ流されているという現実を考えると、「あの業界は民度が低いからナー」なんて言葉では片付けて良いのやら…。