福山市を発端に日本全国で起きた「パラコート連続毒殺事件」ですが、人気ドラマ「テセウスの船」に似ていると再注目されています。
今回は事件の経緯と女子高生など被害者、犯人、模倣や自作自演などその後の事件をまとめました。
この記事の目次
「パラコート連続毒殺事件」とは
「パラコート連続毒殺事件」とは、1985年4月30日から11月17日にかけて日本全国の自動販売機で発生した、無差別毒殺事件です。
その犯行手口は、劇薬である農薬のパラコートをジュースに混入させ、自動販売機の商品受け取り口に入れておくという単純なものでした。
しかし、取り忘れだと勘違いしてそのジュースを飲んでしまった被害者が、相次いで亡くなりました。
この事件発生以前である1977年には、「青酸コーラ無差別殺人事件」という類似の事件が発生していました。
1977年当時のジュースは瓶入りで、異物の混入が容易であったことから、この事件後の対策として現在も使用されている開封時に封印のリングがちぎれるという構造が採用されています。
しかし、「パラコート連続毒殺事件」当時はまだ一般的にこの構造が浸透しておらず、開封と未開封を区別する感覚が身についていませんでした。
また、事件が起きた地域の大部分が、大都市圏から離れた地方だったことも事件を拡大させたきっかけとなったようです。
ちなみにこの農薬のパラコートは除草剤の一つで、当時は24%の濃度の液剤が販売されており、18歳以上であれば印鑑のみで農協で買うことができました。
「パラコート連続毒殺事件」の被害者や手口など詳細 【福山市を発端に女子高生など12名が死亡】
「パラコート連続毒殺事件」の被害者は、全12件中12名死亡という最悪の結果になりました。
パラコートを混入させるのに利用されたジュースの内訳は、オロナミンC6件、コカ・コーラ2件、リアルゴールド2件、不明2件です。
この中で1件だけがパラコートではなく、同じ除草剤であるジクワットでした。
ほとんどのケースが自動販売機の商品取り出し口に入れられていましたが、中には自動販売機の上や下に置かれるというケースもありました。
では、ここからは「パラコート連続毒殺事件」の一連の事件について紹介していきます。
1985年4月30日 広島県福山市の自販機
最初の被害者となったのは、広島県福山市の45歳のトラック運転手でした。
1985年4月30日、自動販売機の上に置かれていたパラコート入りのオロナミンCを飲んでしまい、激しい嘔吐を繰り返した後、5月2日に死亡しました。
同年9月11日 大阪府泉佐野市の自販機
1985年9月11日、大阪府泉佐野市の52歳の男性が、釣りから帰る途中にオロナミンCを購入しました。
商品取り出し口に2本オロナミンCが入っていたことから、そのまま2本とも持ち帰っています。
そして男性は自宅で、パラコート入りのオロナミンCを飲んでしまい、9月14日に死亡しました。
同年9月12日 三重県松阪市の自販機
1985年9月12日、三重県松阪市の22歳の大学生が自宅近くの自動販売機で、リアルゴールドを購入しましたが、商品取り出し口に2本入っていたことから持ち帰っています。
男性は自宅でジクワット入りのリアルゴールドを飲んでしまい、9月14日に死亡しました。
同年9月19日 福井県今立郡今立町(現:越前市)の自販機
1985年9月19日、福井県今立郡今立町(現:越前市)の30歳の男性が、自動販売機の下に置いてあったパラコート入りのコカコーラを飲んでしまいます。
男性は体調を崩して病院に駆け込みましたが、3日後の9月22日に死亡しました。
同年9月20日 宮崎県都城市の自販機
1985年9月20日、宮崎県都城市の45歳の男性が、自動販売機でリアルゴールドを購入したところ、商品取り出し口に同商品が2本入っていたことから持ち帰っています。
自宅でパラコートの入ったリアルゴールドを飲んでしまった後、体調不良を訴えていましたが、容態が急激に悪化し、9月22日に亡くなりました。
同年9月23日 大阪府羽曳野市の自販機
1985年9月23日、大阪府羽曳野市の50歳の男性が自動販売機でジュースを買おうとしたところ、すでに取り出し口にオロナミンCが2本入っていたため持ち帰りました。
9月25日午前中に自宅でパラコート入りのオロナミンCを飲んでしまい、翌日に容態が急変して10月7日に死亡しました。
同年10月5日 埼玉県鴻巣市の自販機
1985年10月5日、埼玉県鴻巣市の44歳の男性が、自動販売機でジュースを買おうとしたところ、すでに商品取り出し口にオロナミンCが2本入っていた為持ち帰りました。
翌日にパラコート入りのオロナミンCを飲んでしまった男性は、10月21日に死亡しました。
同年10月15日 奈良県橿原市の自販機
1985年10月15日、奈良県橿原市の69歳の男性が、自動販売機でジュースを買おうとしたところ、すでに商品取り出し口にドリンク(商品名不明)が入っていたため、持ち帰りました。
帰宅後にパラコート入りのドリンクを飲んでしまい、11月13日に死亡しました。
同年10月21日 宮城県
1985年10月21日、宮城県の55歳の男性が上記までと同様、パラコート入りの飲料を飲んだことが理由で死亡しました。
ただし、詳細は不明です。
同年10月28日 大阪府河内長野市の自販機
1985年10月28日、大阪府河内長野市の50歳の男性が、商品取り出し口に入っていたパラコート入りのオロナミンCを見つけて飲んだところ、死亡しています。
詳細は不明です。
同年11月7日 埼玉県浦和市(現:さいたま市)の自販機
1985年11月7日、埼玉県浦和市(現:さいたま市)の42歳の男性が、自動販売機でオロナミンCを購入したところ、商品取り出し口に2本入っていたため持ち帰りました。
帰宅後にパラコート入りのオロナミンCを飲んでしまい、11月16日に死亡しました。
同年11月17日 埼玉県児玉郡の自販機 女子高生
1985年11月17日、埼玉県児玉郡の17歳の女子高生が、自動販売機でドリンク(商品名不明)を購入したところ、商品取り出し口にすでにコーラが入っていたため持ち帰りました。
自宅でパラコート入りのコカコーラを飲んでしまった女子高生は、1週間後に死亡しています。
なお、この女子高生が購入した自動販売機には、事件についての注意書きがされていたことがわかっています。
また、ここまでの一連の事件ではほとんどのケースで、オロナミンCが使用されていたことから、大塚製薬は蓋の構造をねじ回し方式からプルトップ方式に変更していました。
1985年7月11日 京都府福知山市 自殺の可能性もある被害者
1985年4月30日、京都府福知山市の48歳の男性が、パラコート入りのドリンク(商品名不明)を飲み、死亡する事件がありました。
ただし、この事件に関しては自殺の可能性もあるようです。
「パラコート連続毒殺事件」の犯人とは
「パラコート連続毒殺事件」は、当時監視カメラがなかったことも影響して、犯人の逮捕には至っておらず、迷宮入りとなっています。
そして、それを良いことに模倣犯が発生したり、自作自演事件が発生したことでも問題になりました。
「パラコート連続毒殺事件」の模倣犯が続出している…
ここからは、「パラコート連続毒殺事件」の後に起きた、模倣犯と思われる事件について見ていきましょう。
1985年9月17日 港区
東京都港区の画廊に勤めていた34歳の女性が、同社の経営者と支店長に対して青酸化合物の入りのコーヒーを飲ませて殺害しようとしました。
幸い事件は未遂で終わりましたが、この女性は会社のお金を使い込んでおり、発覚恐れて殺害を企てました。
同年9月25日 世田谷区上北沢
東京都世田谷区上北沢の自動販売機で、ドリンク(商品名不明)を購入して飲んだ大学生が、変な味がすると訴えて警察に駆け込みました。
警察が調べたところ、ドリンクには石灰硫黄合剤が混入されていたことがわかりました。
幸い大学生の命には別状はなかったものの、犯人は不明のままとなっています。
同年9月27日 北区
東京都北区の自動販売機で購入したドリンク(商品名不明)を飲んだところ、変な味がすると言って44歳の女性が警察に駆け込みました。
大学生の時と同様、ドリンクには石灰硫黄合剤が混入されていました。
この女性も命に別条はありませんでしたが、やはり犯人は逮捕されていません。
「パラコート連続毒殺事件」を真似た自作自演事件も発生
1985年9月27日 東大阪市
東大阪市の中学生が、自動販売機でドリンク(商品名不明)を購入して飲んだところ、変な味がすると訴えて警察に駆け込みました。
その後、この中学生は入院しましたが、実は中学生自らドリンクに殺虫剤を混入させて飲んだことが判明しました。
その動機は、世間を騒がせている「パラコート連続毒殺事件」の被害者を装って入院すれば、同級生が見舞いに来てくれると思ったからでした。
同年9月30日 福井県
福井県の22歳の男性が、自動販売機でドリンク(商品名不明)を購入したところ、変な味がすると訴えて警察に駆け込みました。
しかしその後の取り調べで、男性が自ら殺虫剤を混入していた自作自演だとわかり、逮捕されています。
同年12月11日 群馬県沼田市
群馬県沼田市の中学生が、自動販売機でドリンク(商品名不明)を購入し飲んだところ、パラコートが混入していたため、倒れています。
その後の調べで、中学生は自殺するために自らパラコートをドリンクに混入させていたことがわかりました。
同年12月31日 場所の詳細不明
事件発生場所の詳細は不明ですが、23歳の男性が飲食店の飲み物にパラコートを混入させました。
男性が警察に逮捕された後、取り調べで明らかになった動機は、強い恨みからその飲食店を経営する会社を倒産させたかったからというものでした。
「パラコート連続毒殺事件」の前に起きていた「青酸コーラ無差別殺人事件」とは?
「パラコート連続毒殺事件」の前に起きていた「青酸コーラ無差別殺人事件」とは、1977年1月4日から2月半ばまでに東京と大阪で起きた無差別毒殺事件でした。
コカコーラにシアン化ナトリウム(青酸ソーダ)を混入させて、複数の会社員らが死亡したことから、「毒入りコーラ事件」とも呼ばれています。
この事件当時も監視カメラがなかったことから、いまだに犯人逮捕には至っておらず、1992年1月に時効が成立しました。
「パラコート連続毒殺事件」に似た事件が2019年にも発生
「パラコート連続毒殺事件」の模倣事件は現在もある
「パラコート連続毒殺事件」は1985年に起きた事件ですが、実はこの事件によく似た毒物混入事件は近年も発生しています。
2019年11月29日、横手市増田町の雑貨店前に設置されていたアルコール飲料用の自動販売機の商品取り出し口に、農薬の入った缶ビール1本が入っていたことを秋田県警が発表しました。
幸い被害者が出る前に警察が押収しましたが、自動販売機の商品取り出し口にすでに入っている商品など、不審物は絶対に口にしないようにと呼びかけています。
横手署によると、13日午後6時ごろ、横手市の30代男性が自販機で缶ビールを購入した際、自分が買った製品のほかに別銘柄の缶ビール1本(350ミリリットル)が取り出し口にあるのを見つけ、雑貨店の男性店主に届け出た。
店主が調べたところ、缶の底には直径1~2ミリほどの穴が開けられており、中身が漏れていた。穴には青い固まりが付着していた。ふたを開けて中身を注ぐと、通常のビールの色ではなく、青っぽい色だったという。店主は20日、近くの交番に空になった缶を届け出た。
1985年当時とは違い、現在はあらゆる場所に監視カメラが設置されているため、こうした不審物が自動販売機の商品取り出し口に入れられることは減っていると思われます。
しかし、決して油断せず、一見開封前に見えても自分が購入したものではない物には決して手を付けないことが大切でしょう。
「パラコート連続毒殺事件」からインスパイアしたドラマ「テセウスの船」が話題に
「パラコート連続毒殺事件」にインスパイアされたと思われるドラマが、2020年1月期日曜劇場「テセウスの船」だと言われています。
このドラマは、過去に起きたパラコートを使用した大量殺人事件を、竹内涼真さん演じる主人公が偶然事件前にタイムリープしたことをきっかけに、事件を未然に防ごうと奮闘する物語です。
「テセウスの船」は毎回高視聴率を記録するなど人気のドラマで、ネットでは犯人予想などが毎回盛り上がるなど評判になり、実際に起きた「パラコート連続毒殺事件」も再注目されました。
Amazon Prime VideoやParaviで現在も視聴が可能ですので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
「パラコート連続毒殺事件」についてのネットの反応まとめ
「パラコート連続毒殺事件」について、現在のネットの反応を見ていきましょう。
調べてみると、自動販売機の商品取り出し口にすでに入っていたジュースを飲む、という行為に違和感を感じる声も多かったようです。
19: 風吹けば名無し 2019/05/08(水) 16:40:42.77 ID:6XUHkkDNa
パラコート強いな
確殺じゃん
51: 風吹けば名無し 2019/05/08(水) 16:50:08.74 ID:H/4ubYbE0
>>40
未開封となっとるが当時はビンやからな
蓋を開けてまた綴じれば未開封を装える
25: 風吹けば名無し 2019/05/08(水) 16:41:31.61 ID:HuqSErE2a
取り出し口にあったら人によっては飲むかもしれんが
自販機の前とか上にあるやつ飲むか?
53: 風吹けば名無し 2019/05/08(水) 16:50:54.75 ID:IrqTKnPw0
>>31
これって逆に昔はそこら辺に落ちてる物は食っていい風潮やったんか?
56: 風吹けば名無し 2019/05/08(水) 16:52:08.47 ID:8n806xITa
>>53
昔の自販機は二個出てきたりした
しかし、人は無料(タダ)に非常に弱い面があるのは否定できません。
自動販売機の商品取り出し口に自分が好きなジュースが入っていたら、ラッキーだと思って飲んでしまう人も多いでしょう。
しかしその行為は大変危険であり、この「パラコート連続毒殺事件」はとても教訓になる事件です。
自分は絶対しないと心に決めるのはもちろん、子供など正しい判断ができない身内に忠告しておくことで、未然に悲しい事故を防ぐことにつながるはずです。
まとめ
パラコート入りのジュースにより12人の命が失われた「パラコート連続毒殺事件」について、詳しくまとめてきました。
この事件で亡くなった方々の多くは中年でしたが、もし子供の多い地域が狙われていたら、もっと被害は拡大していた可能性があります。
このような悪質な犯行は本当に許しがたいですが、一方で常日頃から危機管理の意識を怠らないことが大切だという教訓を投げかけてくれる面もあります。
現在は監視カメラが多いと高を括らず、また自動販売機だけが危ないという先入観を捨てて、無雑作に置かれている食料品を見つけたら、警察に届けましょう。