大塚勝久は大塚家具の創業者

株式会社大塚家具は、東京に本社を置く家具販売業。ブランドネームとして掲げられているIDC大塚家具のロゴや看板を、街中で見かけたことがあるのではないでしょうか。

大塚家具は創業当時から高級志向への強いこだわりがあり、他の家具販売企業と比較すると値段が高く設定されています。

ここでは、そんな大塚家具の創業者である大塚勝久さんのプロフィールや、過去の経歴を見てみましょう。

大塚勝久のプロフィール

大塚勝久さんの父親は、埼玉県春日部市で工房を構える桐たんす職人でした。大塚勝久さんは幼少期から、父親の仕事を手伝いながら育ちました。

そして中学校の頃までに、仕入、販売、資金調達、税理業務など一通りの業務を全て学びました。

父親の職人技に触れ、手作りの高級感あるたんすを見て育ったことは、大塚家具を創業するに当たり、ブランドコンセプトに影響を与えたようです。

会員制の家具屋を立ち上げて成功　

成長した大塚勝久さんは、父親が作った工房に桐たんすを専門に扱う「大塚家具センター」を立ち上げます。これが大塚家具の前身となりました。

ここからは、大塚家具として成功を収めるまでの経緯を振り返ってみましょう。

1969年に父親の工房から独立した大塚勝久さんが、「大塚家具センター」を起業したのは25歳の頃。会員制の家具屋という新しい業態でのスタートでした。

当時の大塚勝久さんは、大塚家具センターの業態について「International Design Center」と称したことから、後に商標登録された「IDC」に繋がったそう。

大塚家具と聞くと、個人の顧客が対象というイメージがありますが、ホテルや医療施設など法人の内装のトータルコーディネイトも請け負っています。

1978年に東京で第1号店を開店すると、次々に店舗を拡大して名古屋、大阪、福岡、仙台といった大都市に拠点を増やしていきました。

ビジネススタイルとしては、広告費を惜しまず、店の従業員は来店した顧客に1人が担当として付き、店内の案内をするという独特の接客方法を構築。

当時の日本において、家具は結婚など人生の転機の大きな買い物という考え方が主流でした。

そのため、大塚家具の1対1の接客スタイルは、プロに相談に乗って貰える安心感があり、評判を呼びました。

大塚勝久が結婚した嫁とは

ここからは、大塚勝久さんの家族について紹介します。家族は、嫁の千代子さんと5人の子供という構成です。

嫁の千代子さんは、社長夫人という肩書だけでなく、大塚家具の監査役を務めた経歴を持っています。

嫁はビジネスとしてのサポートもしていた

嫁の大塚千代子さんは、あまり詳しいプロフィール情報はありません。

分かっている情報は、埼玉県出身で、埼玉県立春日部女子高等学校を卒業していること、大塚勝久さんの従妹の子供にあたる血縁者という点です。

家業の手伝いに来ていたようで、もしかしたら幼い頃からずっと親交があったのかもしれません。

結婚した年は不明ですが、2015年3月12日号の週刊新潮のインタビューで「結婚して間もなくの頃に起業している」と語っていることから、1969年か、その前年あたりだと思われます。

そんな千代子さんは、妻や母親としての顔だけではなく、大塚家具の取締役やグループ会社「ききょう企画」の監査役を務めていました。その後、2014年1月で退任しています。

大塚勝久の子供は5人

長男・長女以外は情報が少ない

ここからは、大塚千代子さんとの間に誕生した5人の子供について紹介します。

過去の経歴が判明しているのは、長男の大塚勝之さんと、長女の大塚久美子さんです。

次男の大塚雅之さんは、2015年に大塚家具の取締役に就任したことが分かっていますが、2020年現在、役員リストに名前が無いため、退社したか役員以外の職に就いているようです。

次女の大塚舞子さんは、大塚家具の資産を管理する会社「ききょう企画」の取締役社長を務めています。

三女の佐野智子さんは結婚して苗字が変わっています。現時点では、大塚家具の経営には携わっていないようです。

大塚勝久の息子・大塚勝之（長男）の経歴

長男の大塚勝之さんは、名古屋芸術大学を卒業後に大塚家具に入社。支店の店長などのキャリアを経て、取締役に就任しました。

大学では彫刻を専攻していた芸術肌で、実務においても店舗を作る際にはその感性がかなり貢献したことが知られています。

後継者候補だった時代もあった

かなりおっとりした性格の長男・勝之さんは、若い頃から「姉の方が経営能力が高い」と、自身の経営者としての素質に対して思うところがあったそう。

長男なので、大塚勝久さんの後継者として見られていた時期もあったのですが、結局跡継ぎに名乗りを上げたのは長女の久美子さんでした。

2008年に大塚勝之さんは大塚家具を退社していますが、3年後の2011年に大塚勝之さんによって呼び戻されました。

後ほど紹介しますが、大塚家具のお家騒動勃発時は、父親の大塚勝久さん側に付いています。

大塚勝久の娘・大塚久美子（長女）の経歴

長女の大塚久美子さんは、2009年に大塚勝久さんからバトンを受取る形で社長に就任。

その後、父親とお家騒動を繰り広げて世間の注目を浴びましたよね。

大塚勝久さんの長女として誕生後、親の苦労を目の当たりにしてきた大塚久美子さんの生い立ちや経歴を見てみましょう。

幼い頃は倉庫の一角に住んでいた

第一子として誕生した大塚久美子さんは、幼少期まだ父親が独立したばかりの頃のことを良く覚えているそうです。

大塚家具の前身である「大塚家具センター」の倉庫の一画を居住スペースとして、暮らしてきました。

事業を経営していると家族で事業を経営しているため、夏休みや冬休みになっても遠出をする機会が少なかったことが寂しいと感じていたようです。

成長した大塚久美子さんは一橋大学の経済学部に進みました。

大学卒業後、大塚家具に入社することは一切選択肢に入れず、金融一本に絞った就職活動をしたようです。

そして、当時の富士銀行（現在はみずほファイナンシャルグループ）に総合職として入社し、融資業務や、広報業務などを担当しました。

銀行勤務を経て大塚家具へ

1994年に大塚家具に入社し、2年後には取締役に就任。2004年に大塚家具を退職し、自身でコンサルティング会社を起業した大塚久美子さん。

会社に戻るつもりは無かったようですが、父親から社長就任要請を受けて2009年に大塚家具に戻り、新社長に就任しています。

当時は親子関係も良好だったようですが、2014年に社長解任劇が起きるなどいつしか2人の仲は悪化の一途をたどり、社債返還を求めた訴訟へと繋がる壮大な親子喧嘩が勃発しました。

2人の対立については、この後の章で紹介します。

大塚勝久と娘のお家騒動の経緯①　大塚久美子の社長就任でブランドの方針が転換

長女の大塚久美子さんが、大塚勝久さんからの依頼で社長のバトンを引き継いだのは2009年のことでした。

その後の2014年に社長解任劇が起きたのですが、実は社長就任時の2009年から、少しずつ2人の間に対立が起こっていたそうです。

ここからは、すっかり家族抗争のイメージが強くなってしまった大塚家具の親子の経営権争奪戦を紹介します。

販売戦略でお互いに譲れなかった

大塚勝久さんが2009年に社長を退いた理由は、競合の「IKEA」や「ニトリ」などのお手頃なブランドが急成長したことで、市場に変化が起こっていたためでした。

当時の大塚家具は赤字に転落しており、大塚勝久さんは引責辞任、娘の大塚久美子さんが指名されました。ちなみに、大塚勝久さんは会長へと肩書が変わっています。

新社長になった久美子さんは、これまでの専門知識の高い店舗スタッフが顧客とともに店内を回るという高級戦略から、幅広い顧客をターゲットにする方針を打ち出しました。

店舗に置く商品も親しみが湧くようなラインアップを意識して、少し時間ができたから覗いてみる、というシチュエーションを想定したそうです。

他社に無い強みをあえて打ち消すことになると懸念を感じた大塚勝久さんは久美子さんの方針転換に反対。お互いに歩み寄ることができずに、次第に溝ができてしまったようです。

そして、2014年7月に行われた取締役会で大塚久美子さんは社長を解任され、大塚勝久さんが社長として復権しました。

大塚勝久と娘のお家騒動の経緯②　大塚久美子に解任返しされる

息子の久美子さんを解任し、「社長に返り咲いた大塚勝久さんでしたが、半年後、再度大塚勝久さんが社長の座を降りる「解任返し」が大きな話題を呼びました。

大塚勝久は会社を去った

実は大塚久美子さんは、社長解任後の肩書は取締役へ降格したものの、密かに投資家や取締役陣を味方に付ける動きをしていました。

そして2015年1月の取締役会で、大塚勝久さんは社長を解任され、半年前に退任した大塚久美子さんが新たに社長に就任したのです。

この解任劇は父親と娘の争いだけでなく、大塚勝久さんに付いた長男の大塚勝之さん、次男と次女、三女は大塚久美子さんの味方になるなど、家族が真っ二つに分かれて争うことに。

翌月の2015年3月の取締役会において、大塚勝久さんは、大塚久美子さんを退任させて自身が社長復帰する案を提出したものの否決され、会社の経営から身をひくことになりました。

大塚勝久は訴訟では勝っている

こうして、5人の子供を巻き込んだ解任合戦は一段落したかに見えました。

しかし、2016年4月に大塚勝久さんは、大塚一族の資産を管理する会社「ききょう企画」に対して、15億円の社債返還を求める訴訟を起こしています。

これは、大塚勝久さんが持ち株の株式130万株を譲渡した代わりに、ききょう企画側で15億円の社債を発行。しかし、社債を償還する期限になっても返済されず、訴訟に発展しました。

大塚久美子さんは訴訟についてインタビューを受けると、「（父に）訴訟まで起こされるとは思ってもいなかった」と、ショックを隠し切れない様子でした。

当初、裁判は長引くと見られていましたが、半年後には「ききょう企画」が15億円を支払うように命じられ、訴訟は幕を降ろしています。

大塚勝久が立ち上げた新会社とは

退任の応酬で大塚家具から去った大塚勝久さんでしたが、長男や嫁、元大塚家具の社員と共に新会社「匠大塚」を立ち上げました。

匠大塚の経営者になった

大塚家具から去った大塚勝久さんは、オフィスも名刺も無い中で、長男の大塚勝之さんが新会社「匠大塚」の設立に力を貸してくれたそう。

匠大塚は、嫁の大塚千代子さんと折半で資本金3千万円を捻出し、インテリアをトータルプロデュースをする会社として、新たな一歩を踏み出したのです。

大塚勝久の資産は？自宅は豪邸？

ここからは、一時代を築いた大塚勝久さんの資産や自宅など、プライベートな部分について見てみましょう。

自宅は渋谷区松濤

大塚勝久さんの自宅は東京都渋谷区にあります。渋谷駅から10分程歩いた閑静な住宅街である「松濤」という地域に大塚勝久さんは住んでいます。

日本版ビバリーヒルズとも呼ばれる松濤には、森進一さんや扇千景さんなどの著名人も住んでいます。

この中でもひと際目立つ和風の豪邸こそが大塚勝久さんの自宅です。ぐるりと塀で囲まれて、かなりの面積です。

総資産額は非公開

年収や総資産額については残念ながら非公開です。

ただし、大塚家具で経営に関わっていた頃の役員報酬額は、2億1千万円であることが分かっています。

年収が億を超えているので、その資産額は推して知るべしと言ったところでしょうか。

大塚勝久の現在①　娘とはいまだに和解ならず

現在の大塚勝久さんの様子を見てみましょう。

変わらず「匠大塚」の経営者として辣腕を振るっています。

起業当初は、内装のプロデュース業を手掛けていたものの、現在は家具小売り業をメインに切り替えており、大塚家具とはライバル関係を保っています。

娘から名誉会長職への打診を受けていた

お家騒動以来、娘の大塚久美子さんとは連絡も取っていなかった大塚勝久さん。

しかし、大塚久美子さんが頭を下げる形で大塚勝久さんと久しぶりの再会を果たしたことがニュースに取り上げられました。

大塚家具の業績不振は現在も続いており、2016年以降は4年連続で赤字と厳しい状況です。

そんな中、大塚久美子さんは4年ぶりに父親の大塚勝久さんの元を訪れて、「新規に設立した家具団体の名誉会長に就任してもらいたい」と要請しています。

しかし、大塚勝久さんは「創業時から懇意にしてくれているメーカーの気持ちを大事にしたいから」という理由により要請を断ったことを発表しました。

まだまだ和解は先のようです。

大塚勝久の現在②　大塚家具は他人の手に渡っている

大塚勝久さんが若い頃に創業した大塚家具の現在の様子を見てみましょう。

大塚家具は2019年10月、ヤマダHD傘下に入りました。

2020年10月28日に飛び込んできたこのニュースは、大塚久美子さんが2020年12月1日付けで社長を辞任するというものでした。

ついに大塚家具は、創業者大塚勝久さんの一族が経営するという形から外れて、他人の手に渡ることになったのです。

大塚勝久は遺憾の意をコメント

ヤマダHDから資本を受け、業績回復を目標とした戦略を立てた大塚家具は、大塚久美子さんが社長を辞任し、ヤマダHD社長の三嶋恒夫さんが後続の社長として就任します。

辞任の理由については、2021年度に黒字化の筋道が見えてきたことで、過去の業績不振の責任を取ると、大塚久美子さんによる申し出があったことを発表しました。

2020年7月には、取締役会のメンバーをこれまで大塚家具出身者が大半を占めていた構成から、半数がヤマダHD出身の取締役へと入替が断行されていました。

ヤマダHD出身の幹部からは、大塚久美子さんに対して「社長としての求心力がない」と評価されていたそうです。

一部報道によると、辞任のニュースを聞いた大塚勝久さんは「残念だ。言葉にできない」と大きなショックを受けていると語ったそうです。

まとめ

大塚勝久さんは、若い頃から桐たんす職人の父親の仕事を手伝いながら仕事を覚えて、25歳で独立、「大塚家具センター」という大塚家具の前身となる会社を起業しました。

高級家具を多く取り扱い、手厚い高級感あふれる接客や戦略で業績を伸ばしてきました。

2009年に娘の大塚久美子さんに社長の座を譲るも、その後に娘と経営方針で対立し、「お家騒動」と呼ばれる社長解任合戦が巻き起こりました。

結局、大塚勝久さんは娘から追い出される形で大塚家具から去り、新会社「匠大塚」を立ち上げています。

大塚勝久さんは2020年現在も「匠大塚」の取締役を務めていますが、娘とは和解がなされていません。

それでも大塚久美子さんの大塚家具社長辞任のニュースが流れると、「残念だ」とショックを受けていることが報道されています。

大塚家具とライバル関係にある「匠大塚」ですが、やはり親として創業者として複雑な気持ちがあるのでしょう。

今後、大塚勝久さんがどのようにして「匠大塚」を伸ばしていくのでしょうか。動向にますます注目が集まっています。