伊藤素子は、銀行のオンラインシステムを悪用した日本初の横領事件“三和銀行オンライン詐欺事件”を起こした人物です。
今回は詐欺事件の概要や伊藤素子のプロフィール、逮捕や裁判の判決などその後、伊藤素子の今現在を紹介します。
この記事の目次
伊藤素子が起こした“三和銀行オンライン詐欺事件”の概要
銀行のオンラインシステムを悪用した日本初の横領事件を起こした伊藤素子
1967年に地元の商業高校を卒業し、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)茨木支店に入行して以来、丸13年に渡ってまじめに勤めてきた妙齢の女性行員・伊藤素子さん。
「急に歯が痛くなったので歯医者へ行かせてください」
そんな伊藤素子さんが、こう上司に早退を願い出たのは、1981年3月25日の午前10時30分頃のことでした。
出典:https://middle-edge.jp/
この日は、ただでさえ決算整理手続に忙しい上、給与振込日が重なるという、銀行にとってはまさに1年で最も忙しい1日であり、おのずと出入金のチェックが甘くなる日でもありました。
そんな最忙期の隙を突くように、伊藤素子さんはこの日、始業とほぼ同時に常日頃操作しているコンピュータ端末から、オンラインで合計1億8,000万円もの架空入金を行っていたのです。
あらかじめ同行の大阪2支店、東京2支店の計4支店に開いておいた架空口座が振込先でした。
早退の許可を得た伊藤素子さんはすぐさま大阪の2支店に向かい、架空入金した金の一部を引き出すと、大阪の伊丹空港から飛行機で東京へ向かい、東京の2支店からも金を引き出しました。
出典:https://time-az.com/
こうして伊藤素子さんは、銀行のオンラインシステムを悪用して、たった数時間のうちに現金5,000万円と8,000万円相当の小切手を搾取することに成功しました。
伊藤素子が“三和銀行オンライン詐欺事件”を起こした理由
オンライン端末による架空入金の手続きはもちろん、三和銀行4支店での架空口座の開設、そして現金や小切手の引きだしに至るまで、伊藤素子さんが全て1人で行っています。
ですが、実はこれは伊藤素子さんと愛人関係にあった南敏之の次のような言葉を信じた上での犯行だったのです。
「茨木支店で入金の打ち込みをしてすぐ金を引き出し、その足で出国すればいい。二人でフィリピンのマニラに逃げて一緒に暮らそうや」
出典:https://bibi-star.jp/
その後まもなく都内で南敏之と落ち合った伊藤素子さんは、不正送金により搾取した1億3,000万円相当の全額を彼に引き渡しました。
そして、「1ヶ月後に必ずマニラへ行く」という南敏之の約束を信じ、伊藤素子さんは逃亡資金として渡された500万円と、引き出し損ねた預金通帳1冊の握りしめ、そのまま羽田空港へ。
そこから台北、香港経由でフィリピンの首都マニラへ逃亡しました。
伊藤素子のプロフィールや経歴・南敏之との関係
伊藤素子のプロフィール
プロフィール
・名前: 伊藤 素子(いとう もとこ)
・生年月日: 1948年11月18日
・家族構成: 両親、兄1人、姉3人
・犯行時:
年齢: 32歳
職業: 銀行員(1967年 – )
勤務先: 三和銀行茨木支店
・犯行日時: 1981年3月25日
・身柄拘束: 1981年9月8日
・逮捕: 1981年9月10日
・判決: 懲役2年6月
伊藤素子の経歴
スラリとした長身で、ハッキリした目鼻立ちの伊藤素子さんは、地元の商業高校を卒業後、事件の舞台となった三和銀行茨木支店で預金係として働き始めました。
そんな伊藤素子さんには、色々な縁談が舞い込んだのですが、かなりのメンクイだった彼女は、縁談話に乗ることはありませんでした。
出典:https://twitter.com/
ただ、彼女が縁談話に乗らなかったのにはもう1つのワケがあったのです。
それは、伊藤素子さんが20歳の時に銀行に出入りする関係会社のイケメン社員と関係を持っていたからです。ただ、その相手には妻子がいたんですよね。つまり不倫関係にあったわけです。
それでも相手の「必ず離婚するから待ってくれ」という言葉を信じ、伊藤素子さんは2度の中絶まで経験していたと言います。
こうして、不倫と割り切って始めた交際でしたが、ズルズルと不倫関係が続き、それは12年にも及んだと言います。
そんな伊藤素子さんの前に現れたのが、南敏之という背が高く、ハンサムで、実業家という顔を持つ羽振りの良い男だったのです。
伊藤素子さんはどんどん南敏之にのめり込んでいきました。しかし、南敏之が羽振りが良かったのは最初の頃だけで、そのうち伊藤素子さんに金の無心をするようになっていきました。
出典:https://gentosha-go.com/
5万、10万、30万…と南敏之にせがまれるまま、それまで真面目にコツコツ貯めていた貯金を切り崩していった伊藤素子さん。
「もうこれ以上は無理」というところまできた伊藤素子さんに対して、南敏之は次のように持ちかけました。
「お前、銀行から金もちだせんやろか。銀行に勤めとるんやから、ええ知恵あるやろ」
伊藤素子の“三和銀行オンライン詐欺事件”のその後と今現在
「1ヶ月後に必ずマニラへ行く」
そんな南敏之の言葉を信じて、伊藤素子さんは潜伏先のフィリピン・マニラで、ひたすら南敏之を待ち続けました。
出典:https://4travel.jp/
しかし、約束の1ヶ月が過ぎても南敏之はマニラに来ることはありませんでした。
それもそのはず、実は南敏之はその頃、伊藤素子さんから受け取った大金で、日本で家族と豪遊していたと言います。
そして、事件発生から約5ヶ月が過ぎた1981年9月5日、三和銀行茨城支店で起きた巨額横領の事実が新聞各社で報道されたことで、この事件がようやく明るみになりました。
すぐに伊藤素子さんは国際指名手配され、それから3日後の9月8日には、マニラ入国管理局に身柄を拘束され、日本へ送還される機内で逮捕されました。
また、日本国内にいた南敏之も9月8日に大阪府警に逮捕されています。
出典:https://aucfree.com/
1982年7月27日、大阪地方裁判所は伊藤素子さんに懲役2年6ヶ月、首謀者である南敏之には、懲役5年の実刑判決が言い渡しました。
両者ともに控訴しなかったことから、そのまま刑が確定し服役に入りました。
伊藤素子の「好きな人のためにやりました」が流行語になる
伊藤素子さんは、マニラで拘束中にマスコミのインタビューに応じており、その際に発した次の言葉が当時の流行語にもなりました。
「好きな人のためにやりました」
出典:https://aucfree.com/
ただでさえ、この“三和銀行オンライン詐欺事件”は、若くて美人な女性による犯行という点で、世間から大きな注目を浴びていました。
その上、そんな伊藤素子さんの健気な言葉が報じられるや、彼女に同情を寄せる声が後を絶たず、なんと服役中は刑務所にファンレターが殺到したと言います。
伊藤素子はその後、事件を承知する一般男性と結婚した
そんな伊藤素子さんは、模範囚だったため、2年後の1984年8月に仮釈放されると、1990年には、この事件のことを承知している一般男性と結婚もしています。
出典:https://entertainment-bridge.com/
後に、この事件をモデルにした小説や映画、テレビドラマなどが多数登場しました。
また、この事件をきっかけに、類似のコンピュータ犯罪が急増したため、1987年の法改正により電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が新設されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
伊藤素子さんが起こした、銀行のオンラインシステムを悪用した日本初の横領事件である“三和銀行オンライン詐欺事件”の概要と、事件のその後や伊藤素子さんの今現在をまとめました。
現在は、伊藤素子さんがどこでどんな生活を送っているのかわかっていないようです。
きっと日本のどこかで、彼女のことをよく理解してくれる男性と静かな生活を送っていることでしょう。
[…] 伊藤素子の今現在!三和銀行オンライン詐欺事件の概要や首謀者・判決などその後も総まとめ […]