2007年に起きた「香川・坂出3人殺人事件」は、父親が犯人扱いされた冤罪被害も話題です。
今回は香川・坂出3人殺人事件の経緯や真犯人など詳細、画伯と揶揄され犯人扱いされた父親の冤罪被害、その後や現在をまとめました。
この記事の目次
香川・坂出3人殺害事件の詳細 【事件前日~犯人逮捕まで】
「香川・坂出3人殺害事件」は2007年11月16日に、香川県坂出市で発生した殺人事件です。
まずは、事件の詳細な経緯を説明して行きたいと思います。
被害者は祖母と幼児姉妹
「香川・坂出3人殺害事件」の被害者は、香川県坂出市に住む無職、山下清さん(当時43歳)の2人の娘、長女の山下茜ちゃん(当時5歳)と次女の山下彩菜ちゃん(当時3歳)。
そして、向かいの家に住む姉妹の祖母・三浦啓子さん(当時58歳)の3人でした。
被害姉妹は祖母の家に泊まりに行っていた
被害者の幼児姉妹2人は、事件前日の11月15日の午後6時頃から、自宅向かいにある祖母・三浦啓子さんの家に泊まりに行っていました。
姉妹の母親の山下佐智子さんは、午後7時頃に三浦啓子さんに「(姉妹の)好きなテレビ番組を見せてあげてね」と電話で伝えています。
その後、午後10時頃に山下佐知子さんは「もう寝るからね」と再び三浦啓子さんに電話をかけています。この時、電話口からは姉妹の声が聞こえていたそうです。
午後11時頃、父親の山下清さんは祖母宅寝室の明かりが消えている事を確認。
さらに、翌16日の午前2時にトイレに起床した際に、2階の窓から、三浦啓子さん宅の玄関前に三浦啓子さんの自転車が停められている事を確認しています。
翌日早朝に近隣住人からの証言が多数
16日の午前4時頃、近隣の住人が「4時から起きていたが、物音などは聞いていない」と証言しています。
別の近隣住人が午前4時〜5時頃に玄関前を通りかかった際には、「(三浦さんの)自転車が無かった」との証言も出ています。
さらに、近隣住人の1人が、午前5時過ぎに車のエンジン音を聞いていました。
午前6時頃に新聞を配達していた新聞配達員は、「玄関前に白いセダンっぽい車が停車していた」「これまでの新聞配達時には見た事が無い車だった」といった証言をしています。
別の近所の女性は、早朝頃に「はよせんか」という男性の声を聞いたと証言しました。
さらに午前7時半頃には、父親の山下清さんが三浦啓子さん宅の玄関が開閉する音を聞き、家の外に出てみたが玄関前から自転車が無くなっていたと証言しています。
午前7時半頃に母親の山下佐知子さんが祖母に2回電話を掛けていますが、2回とも留守番電話サービスに繋がったそうです。
祖母と姉妹は血痕を残して行方不明に
母親の山下佐知子さんは、午前7時50分頃に三浦啓子さん宅を訪れますが、普段は必ず施錠されているはずの玄関の鍵が開いており、家の中に祖母も姉妹もいない事に気がつきます。
鍵は、室内に残されたままだったそうです。
さらに、寝室には3人のものと思われる血痕が残されており、怪我でもしているのかと驚いた山下佐知子さんは、近所の複数の病院に電話を掛けています。
父親の山下清さんによれば、血痕は寝室の他にも玄関や浴室にも残されており、寝室のカーペットは切り取られ、血が畳の下にまで染み込んでいたそうです。
この事実から、犯人は犯行後に三浦さん宅内で証拠を隠滅しようとしていた可能性が疑われました。
山下清さんはすぐに近所を探しに出かけ、祖母宅から南側の土手で三浦啓子さんの自転車のワイヤー錠が捨てられていたのを発見しています。
この土手道を三浦啓子さんは普段使っていない事から、山下清さんは不審に感じたようです。
午前9時頃に、姉妹の両親は坂出警察署で3人の行方不明届を提出しています。
警察が捜査を開始
11月17日の午後4時頃、自宅から無くなっていた三浦啓子さんの携帯電話の電波が受信されますが、電話を掛けても繋がらず、留守番電話サービスに接続される状態でした。
午後7時になると、三浦啓子さんの携帯電波は途絶え、電源が切れている状態が確認されています。
11月18日、香川県警は捜査本部を設置して本格的な捜査を開始しています。
11月19日には、DNA鑑定によって寝室に残されていた血痕は3人のものである事が判明しました。
犯人逮捕
香川県警による捜査により、11月27日に犯人が逮捕されます。
死体遺棄容疑で逮捕されたのは三浦啓子さんの妹の夫(三浦啓子さんの義弟)である川崎政則でした。
この犯人については、次の見出しで詳しく紹介します。
3人の遺体発見
逮捕された川崎政則は取り調べを受け、11月27日中には3人を殺害した事を認め、犯行動機や遺体の遺棄場所などを供述しています。
28日、3人の遺体が坂出港近くの資材置き場に埋められた状態で発見されました。また、その近くからは切り取られた寝室のカーペットも発見されています。
司法解剖の結果、3人はいずれも失血死していた事なども判明しています。
香川・坂出3人殺害事件の犯人とは 【被害者との関係〜動機】
「香川・坂出3人殺害事件」の犯人として逮捕されたのは、姉妹の大叔父、祖母の義弟にあたる川崎政則(当時61歳)でした。
犯行の動機は?
川崎政則が義理の姉にあたる三浦啓子さんを殺害した動機は、金銭トラブルだったようです。
三浦啓子さんは当時借金の返済に追われており、妹(三浦政則の妻で事件前に死亡)からも金を借りていたそうです。
川崎政則は三浦啓子さんから借金が返済されない事や、生前に妻(三浦啓子さんの妹)が三浦啓子さんのために消費者金融から金を借りて返済に追われていた事に恨みを抱いていたそう。
さらには、三浦啓子さんが自分の財産を横取りしようとしていると妄想をし、殺害に至ったとされます。
さらに、幼い姉妹までも殺害した事については「事件が発覚するのを恐れて殺害した」事を供述しています。
香川・坂出3人殺害事件での冤罪被害とは 【「画伯」と揶揄され犯人扱いされた父親】
この「香川・坂出3人殺害事件」では、犯行の残虐性以外にも、ある事が問題になっています。
それは、被害姉妹の父親である山下清さんが、事件発生当初、犯人ではないかと疑われ、深刻な冤罪被害を受けているのです。
ニュース番組・ワイドショーなどで犯人扱い
出典:https://www.news-postseven.com
「香川・坂出3人殺害事件」は発生当時、連日ニュース番組やワイドショーをにぎわせました。
山下清さんはテレビ局の取材を積極的に受けていましたが、そのワイルドな風貌や、若干粗暴な印象を受ける口調などから「この父親が犯人なのではないか?」と疑う空気が生まれます。
一部のテレビ番組はこの世間の空気に乗っかり、あたかも山下清さんが犯人のような報道を行なっています。
中でも、当時の朝の人気情報番組だった「みのもんたの朝ズバッ!」では司会のみのもんたさんが山下清さんを疑うような発言を繰り返し、真犯人逮捕後に批判される事態になっています。
みのは昨年11月、香川県坂出市の幼い姉妹と祖母の殺人事件をめぐり、姉妹の父山下清さん(43)の行動を疑問視。山下さんが、警察に通報するまで1時間経過したことに「普通ならすぐ電話しないかね」、「不思議だね」などと発言していた。
この批判を受け、後にみのもんたさんは山下清さんに直接会い、謝罪しています。
事件の初公判に向け、番組スタッフが今月11日、都内で山下さんを取材した際、みのが「傷つけて申し訳なかった」と申し出て、山下さんと会ったという。
ネットでは「画伯」と揶揄し犯人と決めつけ
出典:http://matome.change-the-future.com
また、インターネット上でも山下清さんを犯人と決めつけるかのような書き込みが多数行われていました。
特に、匿名掲示板2ch(現在の5ch)では、山下清さんの見た目のワイルドさや、荒々しい語り口だけを根拠として犯人と決めつける書き込みが目立ちました。
名前が天才画家・山下清さんと同姓同名である事などから、「画伯」などと揶揄。
「もう犯人は画伯で決まり」「犯人は画伯で決まりなのになんで逮捕しないの?」「画伯のあの粗暴な性格ならばやりかねない」など、誹謗中傷としか言いようのない書き込みが溢れました。
タレント・星野奈津子は父親を犯人と決めつけ炎上
さらに、タレントの星野奈津子さんは、自身の公式ブログに「あれは絶対に父親の仕業だよ」「実は犯人でしたって捕まるのが見たい!」などと投稿し、真犯人発覚後に大炎上しています。
これを受け、星野奈津子さんは1年間の芸能界停止処分となりますが、この騒動をきっかけにして芸能界から姿を消し、2019年11月現在まで復帰していません。
香川・坂出3人殺害事件のその後〜現在① 真犯人は死刑執行
出典:https://www.dailymotion.com
続いては、「香川・坂出3人殺人事件」のその後から現在までについても見ていきましょう。
香川・坂出3人殺害事件の裁判
「香川・坂出3人殺害事件」の裁判では主に、犯人・川崎政則の犯行時における責任能力が争われました。
弁護側は、川崎政則の知的能力や精神能力が平均に比べて低い事を挙げ、犯行時の「心神耗弱」を主張、減刑を求めました。
これを受け、精神鑑定が実施されましたが、知的レベルが低い事は認められたものの、刑事責任能力については完全に認める鑑定結果が示されました。
この結果を受け、検察側は、幼い2人の命までをも奪った残虐性や犯行が計画的だった事などを指摘し、「死刑」を求刑しています。
弁護側はなおも、川崎政則の知的能力や精神能力の低さを理由に無期懲役が妥当との主張しますが、2009年3月16日、検察の求刑通り、「死刑」の判決が下されます。
弁護側は判決を不服として即日控訴しますが、高松高等裁判所は控訴を棄却。弁護側はこれも即日上告しますが、こちらも最高裁判所に棄却され、2012年7月12日に死刑が確定しています。
判決から2年後に死刑執行
死刑判決を受けた川崎政則は、死刑確定から約2年後の2014年6月26日に大阪拘置所で死刑に処されています。
法務省は26日、平成19年に香川県坂出市で起きた3人殺害事件の川崎政則死刑囚(68)=大阪拘置所の死刑を執行したと発表した。
引用:1人の死刑を執行 平成19年の香川3人殺害の川崎死刑囚-産経ニュース https://www.sankei.com
香川・坂出3人殺害事件のその後〜現在② 冤罪被害に遭った父親
出典:https://matome.naver.jp
幼い娘2人を失った上に、犯人と疑われて冤罪被害までも受けてしまった山下清さんは、2018年5月に週刊誌「女性セブン」の取材を受け、その心境を明かしています。
「違うと言っても、話したことがどんどん怪しいように受け取られ、家族全員が白い目で見られた。真犯人が出てきても、こちらの傷は一生消えない。実はあれ以来、テレビで事件報道は見ないようにしている」
引用:新潟女児殺害でもデマ発生、香川3人殺害で疑われた男性の胸中-NEWSポスト7 https://news.livedoor.com
山下清さんが、どれほどこの事件や冤罪騒動で傷つけらたのかを想像すると胸が痛みます。
香川・坂出3人殺害事件のその後〜現在③ 母親が書籍を発表
被害姉妹の母親・山下奈津子さんは、「新潮45eBooklet 手記編」として、事件についての書籍を出版しています。
サブタイトルは「パパは自殺寸前だった!」とつけられており、事件の真相の他、家族の苦悩についても詳細に語られています。
ワイドショーは当初から家族に疑惑の目を向け、被害者の父を半ば“犯人”扱いして追いかけ回した。「パパはその晩、本当に死のうと思ったらしい。三人の行方はわからず、安否も知れない。そんなときに犯人扱いされ、おまけに心ない人たちに弄ばれて、もう逃げ出したい気持ちだったといいます。みんなが寝た後に一人でどこかに行って死ぬつもりだったようです」——遺族が語った家族の辛苦と、犯人の本当の動機。
まとめ
出典:https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp
2007年11月に発生した「香川・坂出3人殺害事件」についてまとめてみました。
親族によって、祖母と2人の幼い姉妹の命が奪われた痛ましい事件で、当時は連日ニュース番組やワイドショーなどで報道されていました。
そんな中、被害姉妹の父親である山下清さんが、ネットや情報番組などで犯人に違いないと疑われ、深刻な冤罪被害を受けてしまいました。
唐突に2人の幼い娘の命を奪われただけでなく、自分がその犯人だと疑われる事が、どれほど辛く、また憤りを感じる事なのか想像も出来ません。
今後、こうした痛ましい事件が起こらない事はもちろん、同じような冤罪被害を起こさないためにも、この事実をしっかりと受け止めていきたいものです。