2003年8月28日に起きたピザ配達人爆死事件では、犯人と爆死したブライアン・ウェルズの関係や真犯人の動機が話題です。
今回は事件の経緯など詳細、遺体の様子、アンビリバボーや映画化など現在までの影響を紹介します。
この記事の目次
- ピザ配達人爆死事件とは
- ピザ配達人爆死事件の被害者ブライアン・ウェルズについて
- ピザ配達人爆死事件の詳細① ブライアン・ウェルズが犯人に拘束される
- ピザ配達人爆死事件の詳細② ブライアン・ウェルズが銀行強盗を決行
- ピザ配達人爆死事件の詳細③ ブライアン・ウェルズが爆死する
- ピザ配達人爆死事件の被害者ブライアン・ウェルズの遺体の状態
- ピザ配達人爆死事件の犯人は愉快犯だった可能性が強まる
- ピザ配達人爆死事件の犯人が逮捕された経緯
- ピザ配達人爆死事件の真相① 犯人と被害者ブライアンは共犯だった?
- ピザ配達人爆死事件の真相② 犯人マージョリーの動機とは?
- ピザ配達人爆死事件の真相③ 真犯人はウィリアム・ロス・スタイン?
- ピザ配達人爆死事件の犯人のその後
- ピザ配達人爆死事件の現在:アンビリーバボーや映画化で話題に
- まとめ
ピザ配達人爆死事件とは
2003年8月28日、アメリカ合衆国ペンシルベニア州のエリーで、ピザ配達員ブライアン・ウェルズが時限爆弾付きの首輪を付けられ、銀行強盗を強要された後、爆死する事件が起きました。
ブライアン・ウェルズは銀行強盗をした直後に警察に囲まれ、身柄を拘束されています。
そして「ピザを配達しにいったら時限爆弾を無理やり巻きつけられ、銀行強盗を強要された。俺には時限爆弾がついている!爆弾を解除する鍵を取ってきてくれ!嘘じゃない!」と叫びます。
そのため、警察は爆弾処理班を呼ぶと、距離を置き見守りました。その間、たまたま居合わせたテレビクルーが撮影を始めていました。
しばらくすると、ブライアンの首輪が警報音を発し始め、爆弾処理班が到着する前に爆発してしまいました。ブライアンは頭部と胸部に致命傷を負い、絶命しています。
ピザ配達人爆死事件の被害者ブライアン・ウェルズについて
この「ピザ配達人爆死事件」の被害者は、ピザ配達員だったブライアン・ウェルズです。
ブライアンは、ペンシルバニア州エリーにある「ママ・ミーアズ・ピッツェリア(Mama Mia’s Pizzeria)」というお店で、10年以上ピザ配達人として働いていました。
ピザ配達人爆死事件の詳細① ブライアン・ウェルズが犯人に拘束される
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2003年8月28日の午後、「ママ・ミーアズ・ピッツェリア」から数マイル離れた「8631ピーチ・ストリート」という住所から、ピザ2枚を配達する注文が入ります。
この住所が指す場所には、未舗装の道路の突き当たりにWSEE-TVというテレビ塔が立っていました。
注文のピザを持ってきたブライアンがテレビ塔を訪ねると、ケネス・バーンズという男が束ねる集団に銃を突きつけられて、3人の黒人男性からに時限爆弾付きの首輪を装着されました。
そして、銀行強盗をするための9ページに及ぶ手書きの指示書が渡され、さらに仕込み杖のショットガンを渡されました。
ピザ配達人爆死事件の詳細② ブライアン・ウェルズが銀行強盗を決行
ブライアン・ウェルズに渡された指示書には、時限爆弾の完全解除を含む起爆を遅らせるためのいくつかの鍵を入手するための課題が、それぞれ時間制限付きで列挙されていました。
また、その指示書にはブライアンは常に監視されているという注意書きがされており、万が一、警察に通報しようものならその時点で爆破すると警告されていました。
そして最後には、「考える前に行動しろ、さもなければ死ぬぞ(”ACT NOW, THINK LATER OR YOU WILL DIE!”)」と書かれていたといいます。
ブライアンは指示書に書かれてある通り、午後2時30分ごろに静かに銀行に入店すると、指示書に添付されていた25万ドルを要求するメモを窓口の係員に渡しました。
そのメモには、協力しない者と銀行から逃げずに出て行かなかった者を仕込み杖のショットガンで脅すように書かれていたため、ブライアンはその通りに行動しています。
メモには「15分で爆弾が爆発するようにセットしているため、それまでに25万ドルを受け取らないといけない」と書かれていました。
ですが、わずか15分で全ての金庫にアクセスして25万ドルもの大金を集めるのは不可能でした。
そのため、窓口の係員は8,702ドルの入った袋をブライアンに渡し、それを受け取ったブライアンは銀行を後にしています。
ピザ配達人爆死事件の詳細③ ブライアン・ウェルズが爆死する
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銀行に乗り付けてあった自分の車であるジオ・メトロのところに到着したブライアン・ウェルズでしたが、警察がすぐに駆けつけてきたため、ブライアンは逮捕されています。
ブライアンは手錠をかけられて駐車場の地面に座らされた際、これまでの経緯を説明しました。
自分はピザ配達人としてピザを送り届けた先で、面識のない3人の黒人に首に時限爆弾を仕掛けられ、銀行強盗をすることを強要された、と語った時はとても焦った様子だったそうです。
そして「この首輪には時限爆弾がついている。『銀行に行って強盗をしてこい。その金を持って帰って来たら爆弾を解除してやる』と言われたんだ。俺は被害者なんだ」と訴えます。
さらに「この爆弾にはトリップコードが仕掛けられていて、誤って処理すると爆発する、と言われている」と叫びました。
警察はブライアンを信じ、周辺から一般人を避難させると、逮捕から約10分後の午後3時04分に爆弾処理班を手配し、到着するまで様子をうかがうことにします。
なお、たまたま現場にいたテレビクルーが撮影を始めたため、爆弾処理班が到着するまでの間、リアルタイムでニュースが放送されました。
しかし、ブライアンの祈りも虚しく、爆弾処理班が到着する3分前の午後3時18分、ブライアンの時限爆弾はタイムオーバーとなって爆発してしまいました。
ブライアン・ウェルズは胸部と頭部に致命傷を負い、数分後に死亡しています。
ピザ配達人爆死事件の被害者ブライアン・ウェルズの遺体の状態
現場でブライアン・ウェルズが爆死した様子を見ていた一般人の証言では、爆弾が爆発すると同時にブライアンの頭部と胸部が砕け、そのまま倒れこんだということでした。
ブライアンが渡された指示書には、指定されているルート上にある鍵を見つけて使えば起爆を遅らせることができ、完全解除するまでに十分な時間を稼げるという内容でした。
しかし、その後の警察の検証で指示書のルートを精査したところ、ブライアンがどれだけ急いでも制限時間内に爆弾を解除できる可能性はゼロだったことが判明しています。
なお、ブライアンの遺体は爆弾の取り外しのために頭部を切断されました。
ピザ配達人爆死事件の犯人は愉快犯だった可能性が強まる
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このショッキングな事件が起きた後、本当に黒幕はいたのか、ブライアンの自作自演ではないのか、なぜゲームのような形で時限爆弾の首輪をはめられたのか、などが話題になりました。
ブライアンの死の間際の証言によれば、首輪が爆発するまでの猶予は「50分」。
こんな短時間で、銀行に出向いて強盗を行い、さらに爆弾を解除するいくつもの鍵を探す時間があるはずがないことは、誰もが感じていました。
であれば、犯人らは初めから銀行強盗はおまけであり、この事件をショーとして楽しんでいたのかという見方が強まりました。
これを裏付けるかのように、当時ブライアンが着ていたTシャツには、犯人らが書いたと思われる「GUESS」という文字が見えます。
この文字は、アパレルブランドの「GUESS」ではなく、「推測する」という意味を持ちます。
つまり、犯人から警察や世間に対しての挑戦状とも取れるものでした。
この事件は不明な点が多かったことから迷宮入りかと思われましたが、それから約1か月後の2003年9月20日、事件は突然急展開を見せるのです。
ピザ配達人爆死事件の犯人が逮捕された経緯
2003年9月20日、テレビ塔の近くに住んでいたウィリアム・ロス・スタインという男から警察に通報が入りました。
その内容は、ジェームズ・ローデンという男性の死体が、自宅のガレージにある冷蔵庫に隠されているというものでした。
ウィリアムは通報後、身柄を警察の保護下に置かれました。
そしてその後の事情聴取によると、ウィリアムは1960年代後半から1970年代初めにかけて、マージョリー・ディール=アームストロングという女性と交際していました。
そのマージョリーはジェームズと金銭トラブルになった際、マージョリーがジェームズを射殺したため、死体の隠蔽や清掃作業を手伝ったかわりに2000ドルをもらったことを明かしました。
ウィリアムが警察に通報した理由は、マージョリーがとても扇動的で冷酷な恐ろしい存在のため、自分の身の危険を感じたからとのことでした。
ちなみに、ウィリアムは警察に通報した後、自分はピザ配達人爆死事件には関与していないことを主張する遺書を書いていましたが、実際には自殺を実行しませんでした。
マージョリー・ディール=アームストロングが逮捕される
ウィリアムの通報を受けた警察は、通報翌日に当時58歳だったマージョリーを逮捕します。
マージョリーは長年、双極性障害や強迫性ホーディングなどの精神障害を抱えており、以前から夫や交際相手など複数の男性が不審死を遂げていたことから警察からマークされていました。
1984年に交際相手の男性を殺害した容疑で逮捕されたものの、正当防衛が認められてマージョリーは無罪放免となっていました。
また、ウィリアムも過去に殺人事件に関与した前科がありました。1977年、友人が恋敵を殺害する際、拳銃を提供しており、その拳銃を破壊して証拠隠滅をしたことがわかっています。
ただしこの事件は、マージョリーが関わった事件について証言をすることと引き換えに、訴追免除されています。
マージョリー・ディール=アームストロングに懲役刑
2005年1月、マージョリーはローデンを殺害した事件において、精神疾患はあったものの有罪が認められ、7~20年の懲役刑が宣告されました。
7年後の2012年に開かれた裁判では、マージョリーがローデンを射殺した動機は、ブライアンに銀行強盗をさせる計画をローデンが密告するのを防ぐためだったことが明らかになりました。
ピザ配達人爆死事件の真相① 犯人と被害者ブライアンは共犯だった?
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2005年4月、マージョリーがブライアンの事件について深く関与していると州警察がFBIに告げ、FBIの捜査官がマージョリーと面会します。
マージョリーは、当時収監されていた重大犯罪人用の刑務所から軽犯罪者用の刑務所に移送してもらうことを条件に、事件について全てを話すと持ちかけました。
そして、ブライアンの時限爆弾付きの首輪に使うキッチンタイマーは自分が提供したと認めました。
ただ、事件の首謀者はウィリアムであり、ブライアンも計画に積極的に関わっていたと主張しました。
FBIが作成した供述書によれば、事件の約1か月前に、ブライアンが強盗計画についてマージョリーらと話し合いをしていたことがわかっています。
ピザ配達人爆死事件の真相② 犯人マージョリーの動機とは?
マージョリーの友人に、2005年当時麻薬関連の罪で刑務所に収監されていた元テレビ修理業者のケネス・バーンズという男がいました。
ケネス・バーンズは、 ブライアンの爆死事件について自分が知っていることを義理の兄弟に話したところ、警察に通報されて再逮捕されています。
再逮捕された際、バーンズは自分が知っていることを全て話すことを条件に減刑する司法取り引きを持ちかけました。
バーンズの証言によれば、マージョリーは自分が相続する予定だった財産を父親が浪費していたため、父親の殺害を殺し屋への依頼するための金欲しさに銀行強盗を計画したと述べました。
ピザ配達人爆死事件の真相③ 真犯人はウィリアム・ロス・スタイン?
ここからは、事件の真犯人についてみていきましょう。
マージョリーの弁護士が目を付けたのは、最初に警察に通報してきた当時60歳だったウィリアム・ロス・スタインでした。
このウィリアムは電気配線工でしたが、近所では「発明おじさん」として有名で、ちょっとしたマッドサイエンティストとして知られていました。
ブライアンが銀行強盗を行う際に持たされていた仕込み杖型のショットガンもウィリアムが作ったものであり、 首輪型の時限爆弾もウィリアムなら容易に作れただろうと言われています。
また、マージョリーがローデンの死体を隠蔽していた大型冷蔵庫もウィリアムが作っていました。
また、被害者だと思われたブライアンは、自ら実行犯役として首輪付きの爆弾を付けることに同意していたようですが、本物の爆弾とは知らされていなかった可能性が高いと言われています。
つまり、フェイクと見せかけて知人に本物の爆弾を仕込んだウィリアムは、本物のマッドサイエンティストであり、銀行強盗などはどうでも良く、ゲームを楽しんでいただけでした。
そして前述の通り、マージョリーが逮捕されるきっかけとなった、ローデンの死体遺棄の密告をしたのもウィリアムで、マージョリーが逮捕されることも計画のうちだったのかもしれません。
ピザ配達人爆死事件の犯人のその後
ウィリアム・ロス・ステインは死して完全犯罪となった
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ピザ配達人爆死事件の真の首謀者とも言えるウィリアムですが、マージョリーが逮捕された翌年に死亡しています。
ウィリアムが亡くなったことから、ピザ配達人爆死事件に関与したという明確な証言が本人からは永久に得られないままになってしまいました。
ただ、ウィリアムには前科があった上に、過去に幼女暴行を働いていた男を匿って、その男に食事を与えるなどの面倒を見ては街に放って罪を重ねさせていたようです。
ウィリアムは当初、マージョリーに殺されるのを恐れて通報したと証言したものの、自分がこれまで多くの事件の犯人たちを操っていた首謀者であることを隠すためだと言われています。
その後の裁判では、マージョリーは一連の事件はウィリアムに指示されていたと主張しました。
犯人・マージョリー・ディール=アームストロングの判決内容
2010年11月1日、マージョリーは武装銀行強盗及びその共謀、そしてブライアンを殺害した時限爆弾装置を使用したことによる罪で有罪判決を受けました。
2011年2月28日には、マージョリーに終身刑が宣告され、2005年に宣告された懲役刑が終了するのと同時に、終身刑に移行しています。
その後、マージョリーは2017年4月4日、乳がんにより68歳で獄死しました。
なお、ケネス・バーンズについては2008年9月3日に銀行強盗の共謀と幇助、教唆による有罪が認められ、同年12月3日に45年の懲役刑が宣告されています。
ピザ配達人爆死事件の現在:アンビリーバボーや映画化で話題に
ピザ配達人爆死事件は、2006年4月27日にテレビ番組「奇跡体験アンビリーバボー」で特集が放送され、話題になりました。
また、ピザ配達人爆死事件を基に製作されたネットフリックス(Netflix)映画も芸能界で大人気となっていたようです。
アンビリバボーで事件は取り上げてたけど、ここまで闇の深い事件だったとは。後味の悪さもすごい。
— 原英彰 (@harahide622) June 3, 2018
Netflixで「邪悪な天才: ピザ配達人爆死事件の真相」を観よう https://t.co/CV8S9JYioG pic.twitter.com/2yzfs9TIkd
芸能界で「ピザ配達人爆死事件」のNetflix映画が大人気
2018年11月29日、ネットフリックスで配信中のドキュメンタリー映画「邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相」が、芸能界を中心に話題となっていました。
この映画はドキュメンタリー作品で、とてもクオリティが高かったことから千原ジュニアさんが自身のトーク番組「にけつッ!!」で取り上げたことで、芸能界で火がついたようです。
「第1話でピザ配達人が爆殺されるという衝撃的な幕開けから始まる本作ですが、奇跡的にTVクルーがこの瞬間をリアルタイムで撮影していたため、爆殺シーンが一瞬だけ写りこむんです。放送コードが日々厳しくなっている地上波では、まずお目にかかれないこのシーンだけでも、見る価値があります。また、本作は実在する怪事件『ピザ配達人爆殺事件』の真相を究明していく構成になっていますが、当時の捜査官や関係者、囚人仲間など、すべて顔出しで取材に答えています。正義のためなら顔出しも厭わないのはアメリカ人らしいですが、仮に日本でこれを撮影するとしたら、登場人物にはすべてモザイクを強いられるでしょうね」
この頃の芸能界では、「ピザ見た?」が挨拶代わりになっていたとも言われています。
とてもアメリカらしいサイコパスによる狂気的な事件でしたが、 犯人らによる自作自演の末に全員が何も得ることがなく不幸で終わったのは象徴的でしょう。
まとめ
2003年8月28日、アメリカ合衆国ペンシルベニア州のエリーにて起きた「ピザ配達人爆死事件」について詳しくまとめてきました。
爆死したブライアンは、長年ピザ配達人として鬱屈した人生を送っていたことから、銀行強盗で得たお金の一部をもらえると言われて実行犯を買って出たのかもしれません。
フェイクの首輪だと思ってはめた直後、本物の時限爆弾だと知らされた時は戦慄したはずです。
ですから、銀行強盗での逮捕後、焦っていた様子は決して演技ではなかったのでしょう。
この事件では何の罪もない被害者はいなかったとはいえ、何とも言えない、後味の悪い事件であることは確かです。