年々その数を増やしている限界集落ですが、限界集落だからこそ起きた怖い殺人事件もあります。
今回は限界集落の定義、数や将来的に危険な場所、そして“平成の八つ墓村”とも呼ばれる限界集落で起こった怖い殺人事件をまとめました。
この記事の目次
限界集落の定義とは
「限界集落」とは、過疎化などにより人口の50%以上が65歳以上の高齢者になり、冠婚葬祭などを含む社会的共同生活や集落の維持が困難になりつつある集落を指します。
共同体として存続するための“限界”という意味で、「限界集落」と表現されています。
もちろん、日本の人口が年々増加していた昭和中期までの時代でも、山奥であるために交通が不便だとか、豪雪などの厳しい自然環境を理由にして、住民が離村した廃村は各地にありました。
しかし、少子化と都市部への人口集中が顕著になった昭和後期から平成にかけては、交通が整備され災害対策が十分な場合でも、限界集落や予備軍地域が年々増えている状況にあるようです。
出典:https://tochi-hack.com/
また、一口に「限界集落」と言っても、実は限界集落にはいくつかの段階が存在します。簡単に整理してみると…
・「準限界集落」:55歳以上の割合が50%を超えている集落
・「限界集落」:65歳以上の割合が50%を超えている集落
・「危険的集落」:65歳以上の割合が70%を超えている集落
さらに特に定義はないものの、集落が5軒以下になった限界集落を「超限界集落」、集落が残り1軒となり集落としての機能を完全に消失した段階を「廃村集落」と呼びます。
そして、完全に住んでいる人がいなくなり、人口が“0”となった集落を、文字通り「消滅集落」と呼ぶようです。
限界集落の数と多い場所とは
現在、国土交通省と総務省が、過疎地域の実態を把握する目的で、おおむね5年ごとに調査を行い、限界集落の集計を行っています。
出典:https://www.pinterest.jp/
直近の調査は、2016年に行われたようで、その結果は2010年~2015年の間に、実に190集落が消滅し、限界集落の数は…「 14,375 集落 」に及ぶことが判明したのです。
ちなみに、その5年前である2011年に行われた調査では、「 10,092 集落 」だったことから、この5年間で約4,000を超える集落が限界集落になった計算になりますね。
さらにこの数は、全国の市町村全体の約22%に当たる数字で、今後さらに増える見込みなのだとか…。
出典:https://silver.ap.teacup.com/
限界集落の場所をマップ化!2040年の日本の限界集落(推定)に恐怖
次に紹介するのは、日本全国に点在する限界集落とその予備軍をマップ化した画像です。以下のマップでは、限界集落を濃い赤、限界集落の予備群を薄い赤で表示されています。
ざっと見渡したところ、2015年時点の日本では、特に四国にや紀伊半島の内陸部に限界集落が少し目立つ程度だと言えます。
気になる地域を拡大すると…
が、しかし!2040年の日本に推定される限界集落は次の通り!
2015年時点ではほとんど見られなかった北海道や東北地方に、限界集落が一気に増えていることが分かりますね。
さらに、2015年時点で既に過疎化が進んでいた四国や中国、九州地方は、2040年には次のような危機的な状況になると推測されています。
この画像はかなり衝撃的ではないでしょうか。
いざ過疎化が進んでしまってからだと再生することはなかなかに難しいので、こんな事態に陥らないように、今のうちに手を打っておく必要があると思うのですが…。
出典:https://co-trip.jp/
限界集落で起き怖い殺人事件「山口連続殺人放火事件」 【平成の八つ墓村】
そんな限界集落の1つである、山口県周南市金峰の集落において、2013年7月21日に連続殺
人・放火事件が発生しているんですよね。
限界集落に住む、事件当時63歳だった保見光成が、自宅周辺に暮らす高齢者5人を次々と撲殺し、被害者宅に放火するという非常に残忍な事件なのですが、限界集落特有の問題が浮き彫りになった事件でもあると言われています。
出典:https://www.suruga-ya.jp/
そこで今回、“平成の八つ墓村”とも呼ばれた、限界集落で起こった怖い殺人事件である「山口連続殺人放火事件」についてまとめてみました。
限界集落で起きた怖い殺人事件「山口連続殺人放火事件」① 概要
山口県周南市金峰の限界集落で相次いで発生した2件の火災
「山口連続殺人放火事件」は、2013年7月21日21時頃、限界集落の1つである山口県周南市金峰の集落の住民から同市消防本部に入った「近所の家が燃えている」との通報から始まります。
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しかも、その火事は約50メートル離れた2軒の民家で相次いで発生したものだったのです。
懸命の消化活動の甲斐なく、2軒とも全焼し、2軒の民家の焼け跡から、それぞれの住人だった山本ミヤ子さんと、貞森誠さん・妻喜代子さん夫妻の合計3人の遺体が発見されることに…。
さらに近隣住居から2人の遺体が発見される
周南警察署が放火の可能性もあるとし、周辺を捜査したところ、翌7月22日の正午頃、全焼した2軒の民家とは別の2軒で、それぞれ河村聡子さんと石村文人さんの遺体が発見されたのです。
しかも、5人の遺体が発見された計4軒の民家は、河川を挟んで半径約300メートル以内の狭い範囲にありました。
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さらに、5人の遺体には、いずれも頭部を複数回、鈍器で殴られたような外傷があり、検死の結果、頭蓋骨骨折や脳挫傷によりほぼ即死状態だったことが判明します。
警察は連続殺人放火事件と断定し、直ちに周南警察署内に捜査本部が設置されました。
警察が被害者の隣家に住む住人を容疑者とした理由は“貼り紙”だった
「山口連続殺人放火事件」で殺害された5人のうちの1人、山本ミヤ子さん宅の隣家に、白い紙に毛筆のようなもので書かれた川柳を記した貼り紙がありました。
「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」
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また、この家に住む住民は、同じ限界集落で暮らす周辺住民と以前からトラブルを抱えていたとの情報が相次いだのです。
そこで警察は、7月22日午後、殺人、及び放火の疑いでこの家を家宅捜索するとともに、姿を消した当時63歳の住民・保見光成容疑者を重要参考人として行方を捜索しました。
その後、400人体制で付近一帯を捜索したところ、7月25日に付近の山中で、保見光成容疑者のものと思われる携帯電話や衣類などが見つかり、翌26日は170人体制で山狩りが行われました。
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事件発生から6日目に容疑者・保見光成が逮捕される
そして、事件発生から6日目の7月26日午前9時頃、保見光成容疑者が付近の山道に下着姿・裸足で座っているところを捜索中の捜査員が発見することになります。
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山口県周南市金峰の連続殺人放火事件で、周南署捜査本部は26日、殺人と非現住建造物等放火の疑いで保見光成容疑者(63)を逮捕した。保見容疑者は事件後に行方が分からなくなり、捜査本部が同日午前、現場近くの山中で発見し周南署に任意同行、事件への関与について取り調べていた。容疑を認めているという。事件発生から6日目。
引用:63歳の男を殺人容疑などで逮捕 山口連続放火殺人 https://www.nikkei.com/
捜査関係者によると、確保された当時の保見光成は、「死のうと思ったが、死にきれなかった…」と語っていたそうです。
被疑者・保見光成は警察での取り調べでは5人の殺害を認めていた
取り調べが行われていた当初、被疑者・保見光成は5人の殺害を素直に認めていたといいます。
そのため、警察は逮捕した翌日である7月27日には、保見光成の身柄を山口地方検察庁(山口地検)へ送検しています。
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山口地検は、2013年9月17日から約3か月間に渡って保見光成の刑事責任能力の有無を調べるための精神鑑定を実施。
そして、2013年12月27日、被疑者・保見光成を被害者5人への殺人罪、及び建物2件への非現住建造物等放火罪で山口地方裁判所へ起訴しました。
裁判では一転して無罪を主張し始めた保見光成
2015年6月25日、山口地方裁判所で「山口連続殺人放火事件」の裁判員裁判の初公判が開かれました。
なんと、被告人・保見光成は、捜査段階からの供述を一転!「被害者の頭は殴っておらず、家に火もつけていない」と、殺人・放火の起訴内容を否認して無罪を主張し始めたのです。
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保見光成の精神鑑定を起こった医師の証言
2015年7月7日に開かれた、「山口連続殺人放火事件」の第8回公判で、被告人・保見光成の精神鑑定を担当した医師2人の証人尋問が行われました。
まずは、起訴前に精神鑑定した医師は次のように証言しています。
「被告人Hに被害妄想はあったが妄想性障害までは認められない」
一方、起訴後の再鑑定で、保見光成を「妄想性障害」と診断した医師は、次のように証言しています。
「被告人Hは妄想性障害の影響により『地域住民からの挑発・噂があった』と勝手に思い込み、被害感情を募らせて報復のために事件を起こした」
限界集落で起きた怖い殺人事件「山口連続殺人放火事件」② 限界集落住民間の対立やトラブル?
両親の介護のために限界集落に帰郷した保見光成
もともと同集落出身だった保見光成は、中学卒業後に上京し、土木業に従事していました。
そして、神奈川県川崎市で左官職人として暮らしていた頃、「自分の生まれたところで死にたい」と思うようになったと言います。
1994年、44歳の時に帰郷した保見光成は、以降は実家で両親の介護に当たっていました。また、左官の技術を生かして自宅を建築し、近隣の家の修繕などもしていたようです。
しかし、保見光成本人の難しい性格も災いして、両親と死別した後は、地域住民とのトラブルが相次ぐようになったと言います。
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限界集落の住民の中に溶け込めず村八分状態だった保見光成
もともとは保見光成が地域の「村おこし」を提案したのに対して、地域住民がそれに反対したことが、軋轢を深めるきっかけになったようです。
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それ以降、保見光成は回覧板を受け取らず、自治会活動にもほとんど参加しなくなり、農薬散布や草刈り作業でのトラブル、さらには飼い犬をめぐるトラブルなどを起こしていたと言います。
そして2011年1月頃には、保見光成は「集落の中で孤立している」「近所の人に悪口を言われて困っている」などと、最寄りの警察署に相談していたこともあったことが分かっています。
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山口県出身で作家の城繁幸も「濃密な人間関係の中にいやでも引きずり出されたものと思われる。ひょっとすると、そういう関係で何らかのトラブルがあったのかもしれない」「無縁社会のリスクが孤独死だとすれば、“有縁社会”のリスクは、こうした人間関係のトラブルと言える」と語っている
引用:山口連続殺人放火事件 – Wikipedia https://ja.wikipedia.org/
限界集落で起きた怖い殺人事件「山口連続殺人放火事件」③ 犯人・保見光成の死刑が確定
2019年7月11日、山口県周南市の限界集落で住民5人を殺害したとして、殺人と非現住建造物等放火の罪で1、2審で死刑判決を受けていた保見光成被告への上告審判決公判が開かれました。
山口厚裁判長は、「5名の生命が奪われた結果は重大」として、被告の上告を棄却し、保見光成被告の死刑が確定しました。
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判決理由は次の通りです。
「犯行動機の形成過程には妄想が影響しているものの、保見被告は自らの価値観などに基づいて犯行に及ぶことを選択して実行した」と指摘。「妄想が犯行に及ぼした影響は大きなものではない」と判断した。
引用:山口5人殺害、被告の死刑確定へ 最高裁 – 産経ニュース https://www.sankei.com/
裁判では、保見光成の地域住民とのトラブルは、あくまで保見光成の妄想に過ぎなかったと判断されたようです。
動機については、「村八分にされていたことに対する積りに積もった恨みが爆発したのでは?」と、保見光成に同情する声も少なくないようですが、もはや真相は藪の中って感じですね。
出典:https://girlschannel.net/
山口の保見容疑者、やったことは許されないけど、いわは「村八分」だったんだろうな。これも、日本のイジメ体質だよね。
— 今後、日本を担わないつもりが気が変わった男 (@oyaji1957) 2013年7月26日
集落の人が「手を叩いてよろこびたい。」と言うのをおめでとう!と言う気持ちになれないよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
少子化と都市部への人口集中により、年々その数を増やしている限界集落。しかし、その増加傾向は、実は我々の想像を遙かに越えていると言わざるを得ません。
今回、そんな限界集落の定義と危険な場所、そして“平成の八つ墓村”とも呼ばれている、限界集落で起こったある怖い殺人事件についてまとめてみました。
今回紹介した「山口連続殺人放火事件」は、限界集落における閉鎖的な村社会の恐ろしさを浮き彫りにした事件と言えそうですね。