テレビのニュースを見ていると、「横領で逮捕されました」というニュースを見かけることがありますよね。「横領」の意味をあなたは正しく理解していますか?
横領の定義や意味、横領罪の種類、逮捕された時の罰則や時効、証拠、横領の事例・事件などをまとめました。
横領の定義・意味
横領とは、自分の手元になるけれど、自分のものではなく他人のものを不法に横取りしてしまうことを意味します。
他人または公共の物を不法に自分の物とすること
横領とは他人のものを自分のものにしてしまうという意味になります。
横領と窃盗の違い
横領の意味は、「他人のものを自分のものにしてしまう」という意味になります。でも、その意味だと、窃盗と似ていますよね。窃盗はほかの人のものを盗むという意味になりますから。
ただ、横領と窃盗は違います。「自分のものではないものを自分のものにしてしまう」ということは同じですが、違う点があるのです。
・窃盗=他人の管理下にある他人のものを自分のものにしてしまう
横領の定義
横領の定義は、「自分の手元にある他人のもの(公共・会社のもの)を自分のものにしてしまうこと」と言えます。
会社のお金を管理している経理・総務の社員が、会社のお金を横領すれば、「業務上横領」になります。
「管理してはいるものの、自分のものではない」ということは、たくさんありますよね。それをネコババしてしまう。コッソリ自分のものにしてしまうことが横領の定義となります。
横領罪の種類
横領は犯罪です。これは刑法の252条~255条でしっかりと規定されています。横領罪にも種類がありますので、横領罪について見ていきましょう。
単純横領罪
横領罪の1つ目は、単純横領罪です。単純横領罪はただ単に他人のものを自分のものにしてしまうことですね。刑法では「自己の占有する他人の物を横領した」と定義づけられています。
業務上横領
業務上横領が横領罪の2つ目の種類です。
業務上横領は「業務上自己の占有する他人の物を横領した」という罪です。これは「仕事をする上で、その業務として会社のものを管理し手元に置いていたものを自分のものにしてしまう」という意味ですね。
業務上横領は個人のものを横領するのではなく、会社のものを横領することになりますので、横領額が億単位になることもあります。ニュースでもよく「業務上横領」は耳にしますね。
遺失物横領
遺失物横領が横領罪の3つ目です。遺失物横領とは、落とし物や他人がなくしたもの、漂流物などをきちんと届けることなく、黙って自分のものにしてしまうことを言います。
落し物は落とした時点で誰が占有しているわけでもありません。でも所有権は落とし主にあります。それを警察に届けずに、自分のものにしてしまうと、遺失物横領になるのです。
横領で逮捕された時の罰則
横領をすると、「横領罪」で逮捕されます。横領罪はどのくらいの罪になるのか、その罰則を見ていきます。
横領罪の種類 | 刑罰 |
単純横領罪 | 5年以下の懲役 |
業務上横領 | 10年以下の懲役 |
遺失物横領 | 1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料 |
横領罪の中では、業務上横領が最も重い刑罰になるということですね。
横領罪の時効
横領罪にも時効はあります。時効はその刑罰の重さで年数が変わってきますので、単純横領罪・業務上横領罪・遺失物横領罪ではそれぞれ時効が変わってきます。
横領罪の種類 | 時効 |
単純横領罪 | 5年 |
業務上横領 | 7年 |
遺失物横領 | 3年 |
これは刑事事件としての時効になります。民事上の時効は異なります。
民事上の時効は20年になります。民事での損害訴訟を起こす場合では、その横領が起こってから20年以内に訴訟を起こす必要があります。また、もしその横領を知っていた場合、「知ってから」3年以内に民事訴訟を起こさないと時効になるので、注意が必要です。
横領の証拠は難しい
横領罪で逮捕するためには、「横領した」という証拠が必要になります。ただ、この横領の証拠を集めるのは非常に難しいんです。
なぜなら、横領する気があったかどうかを証明するのは難しいからです。横領の定義を思い出してみてください。横領は「自分が管理している他人のものを自分のものにしてしまう」ということでしたよね。
つまり、横領は「他人のものだけど、自分が管理している・自分の手元にあるもの」を奪うことですから、そもそも奪うものは自分の手元にあるんです。
それを「ただ単に管理していただけ」なのか、それとも「奪おうとしていた」のかを証明するのはなかなか難しいんです。
例えば、友達の漫画を借りていたけれど、いつまでも返さなかった。この場合、本当に「返そうと思っていたけれど、うっかりしていた。まだ読んでいなかった」という理由で返さなかったのか、「そのまま借りパクしようとしていた」という理由で返さなかったのかはわかりませんよね。
一般的に、業務上横領の証拠集めは、次のようなもので行われます。
・会社用のスマホ
・会社の預貯金の流れ
・金庫内の現金、帳簿類、伝票類、契約書、領収証など
もし、これらを調べて、次のような証拠が集まると、業務上横領が行われたとみなされることになります。
・パソコンやスマホのデータ改ざんがあった
・会社の損害額と同じくらいの額の現金が自宅に隠されていた
このような明らかな証拠があれば良いのですが、なかなか業務上横領を立件できるほどの証拠が揃わないことも珍しくありません。
横領の9つの事例・事件
横領の事例や事件を見ていきましょう。ここでは巨額の業務上横領の事例・事件をご紹介していきます。
横領の事例①:青森県住宅供給公社巨額横領事件
出典:twitter.com
青森県住宅供給公社巨額横領事件
横領額:14億5900万円
概要:チリ人妻に貢ぐために14億5900万円を横領
横領の事例の1つ目は、青森県住宅供給公社巨額横領事件です。青森県住宅供給公社の経理担当の男性が、1993年2月から2001年までにチリ人女性に貢ぐために14億5900万円もの巨額のお金を横領していました。
横領の回数は合計186回、金額は14億5900万円。男性は飲食店でチリ人女性のアニータさんと知り合い、横領をしたお金を貢いでいきます。そして、1997年にアニータさんと男性は結婚。その後、横領額は一気に増え、アニータさんに11億円ものお金が流れたとされています。
その横領して貢がれた11億円はチリでのレストラン開業資金や、プール付き豪邸の建設資金に消えたとされています。
男性は懲役14年の実刑判決が下り、民事裁判では横領したお金を全部返金する判決となっています。
現在は男性は満期出所しています。しかし、青森県には今のところ1円も返済していないとのことです。しかも、出所後は公益社団法人「日本駆け込み寺」でアルバイトをしていましたが、2019年3月8日以降、行方をくらまして、しかも金庫内の7万円が消え、使途不明金14万円もあるとのことです。
出所後もまた金銭トラブルを起こしているそうです。
この事例の一番モヤっとするところは、チリ人妻のアニータさんに返済義務がないところですよね。
横領の事例②:滋賀銀行9億円横領事件
滋賀銀行9億円横領事件
横領額:9億円
概要:滋賀銀行の女性が9億円を横領して貢いでいた
1973年に滋賀銀行行員の奥村彰子が業務上横領の疑いで逮捕されました。横領は逮捕されるまでの6年間で1300回、合計9億円にも及んでいたことが判明します。
犯人の奥村彰子は逮捕当時42歳。それまでは真面目な銀行員でした。35歳の頃、付き合っていた彼氏と喧嘩をして、泣きながらタクシーに乗ります。この時のタクシー運転手が、当時25歳の山県元治でした。
泣いている女性を気にかけた山県元治は30分ほどドライブをします。この時は連絡先を交換することなく別れるのですが、その約1年後、また偶然にこの2人は出会い、付き合うようになります。
そこから、奥村彰子は山県元治にお金を貢ぐようになりました。少しずつ銀行のお金を横領し、最終的にその金額は8億9400万円にもなったんです。
逮捕後は奥村彰子は懲役8年、山県元治には懲役10年の実刑判決が下っています。
この事件の悲しいところは、奥村彰子が銀行のお金を横領して山県元治に貢いでいる間に、山県元治はほかの女性と結婚していたことです。
彼氏のためにせっせと横領をしていたら、その彼氏はほかの人と結婚していて、そのことを知らずに横領し続けて、貢ぎ続けたというのは悲しすぎますよね。
横領の事例③:北越トレイディング25億円横領事件
北越トレイディング25億円横領事件
横領額:約24億7600万円
概要:総務部長が会社の金を横領していた
有名製紙会社「北越紀州製紙」の子会社である「北越トレイディング」に出向した羽染政次さんは、15年間で約24億7600万円ものお金を横領し使い込んでいた罪で、2016年に逮捕されています。
北越紀州製紙で長年経理をやっていた羽染政次は、出向先では総務部長となります。本社からk会社にやってきた経理のプロには誰も口を出せない状況だったようです。
もともとギャンブル好きだった羽染政次は、借金が膨らんでいきます。そこで会社の金に手を付けて横領するようになっていったのです。
横領していた時はかなりの豪遊をしていたようで、専属タクシーを使ったり、愛人を何人も囲いマンションを買い与えたりしていたようです。
横領の事例④:マクドナルド7億円横領事件
出典:ameblo.jp
マクドナルド7億円横領事件
横領額:7億円
概要:FXに使うために会社のお金を横領
2019年10月にマクドナルド社員の西町崇が7億円の業務上横領をした容疑で逮捕されました。
この西町崇はマクドナルドの中で財務税務IR部統括マネージャーという地位にいて、会社の預金口座を管理する仕事をしていたとのことです。そのため、小切手を振り出して、銀行で換金して横領をしていました。
2019ね年1月から9月にかけて50回ほど横領をし、その金額は7億円にも及びます。
その7億円ものお金はFXに使ったとのこと。西町崇はマクドナルドに入社する前は三井物産に務めていましたが、この時もFXをやっていて、多額の借金を作り退社しています。
それでもFXはやめられなかったようで、会社のお金を横領してしまったようですね。三井物産に入社できるほどのエリート社員が会社のお金を横領するなんて、西町崇の罪は重いですが、それと同じくらいFXは怖いですよね。
横領の事例⑤:プレサンスコーポレーション横領事件
出典:ameblo.jp
プレサンスコーポレーション横領事件
横領額:約21億円
概要:高校の土地取引の手付金を横領
プレサンスコーポレーションの横領事件は、学校法人明浄学院が高校の土地の売買で手付金として支払われた21億円が、回りまわって21億円を支出したプレサンスコーポレーションの社長のもとに送金されたという事件です。
出典:mainichi.jp
この横領事件はあまりにも入り組んでいますし、この21億円という巨額の横領のため、かなり計画的に行われていると思われます。この横領事件でプレサンスコーポレーションの社長は逮捕され、社長を辞任しています。
横領の事例⑥:JDI幹部横領自殺事件
出典:sankei.com
JDI幹部横領自殺事件
横領額:約5億7800万円
概要:JDIの経理部門幹部が会社のお金を横領
JDI(ジャパンディスプレイ)の経理部門の幹部が約5億7800万円ものお金を着服したとして、2018年12月に懲戒解雇され、2019年8月に刑事告訴されています。
この経理部門の幹部は2014年から2018年にかけての約4年間に、架空の会社に業務委託費の名目でお金を振り込んだり、収入印紙を換金する手口で会社のお金を換金して横領していました。
この幹部は自分が会社のお金を横領したことは認めていますが、さらに経営陣の指示で「過年度決算で不適切な会計処理を行っていた」と主張しています。
このJDIは経営が悪化し、国の支援を累計4000億円以上も受けていて、経営再建中なんです。その中で、このような業務上横領だけでナック、粉飾決算の疑いがあったというのは大問題ですよね。
横領をした経理部門の元幹部は2019年11月に自殺をして亡くなっています。なんとも後味が悪く、本当に自殺だったのか?口封じのための他殺ではないのかとも言われている事件です。
横領の事例⑦:岡山弁護士巨額横領事件
出典:jlfmt.com
岡山弁護士巨額横領事件
横領額:約9億円
概要:弁護士が賠償金などを横領
岡山の弁護士が交通事故・医療過誤・遺産相続等の民事訴訟に伴う賠償金などを22件・合計9億円も横領していたことがわかり、2012年に逮捕され懲役14年の実刑判決が下っています。
この横領事件は損害賠償請求事件を不適切に処理し、示談書には実際の和解金よりも少ない額を記載して、その差額を着服していたようです。
横領の事例⑧:三和銀行オンライン詐欺事件
三和銀行オンライン詐欺事件
横領額:1億8000万円
概要:三和銀行の行員がオンラインシステムを不正に操作して横領
1981年に三和銀行の女性行員がオンラインシステムを不正に操作して、架空の銀行口座4つに合計1億8000万円を入金しました。これはすべて既婚者の恋人のためでした。
不正送金をした後、行員の女性は恋人に会って1億3000万円を渡し、残りの引き出せなかった通帳1冊と500万円を持ってフィリピンに逃亡します。この後、本当なら恋人もすぐいフィリピンに来るはずでしたが、来ませんでした。横領させたお金で家族と日本で豪遊していたんです。
その後、国際手配された女性はフィリピンから日本に送還されるときに、「好きな人のためにやりました」とマスコミの取材に答えています。
横領の事例⑨:足利銀行詐欺横領事件
足利銀行詐欺横領事件
横領額:約2億1000万円
概要:足利銀行栃木支店で2億1000万円を横領
足利銀行詐欺横領事件は1975年に足利銀行栃木支店で架空の預金証書を使って2億1000万円も横領していたという事件です。
この横領の事例は23歳の若い女性行員が行っていたことで話題になりました。この女性は彼氏のために2億円以上ものお金を横領していたんです。
しかも、彼氏だと思っていた男性は実は既婚者で、しかも「国際秘密警察員」という肩書を名乗り、「組織から抜け出すためには、そして君と結婚するためには金が要る」と嘘をついて、横領させていたそうです。
女性が横領する時には、好きな男性のためというケースが多いですね。
まとめ
横領の意味や定義、逮捕された時の刑罰や時効、証拠、横領の事例・事件をまとめましたが、いかがでしたか?
横領は犯罪です。たとえ、自分が管理を任されていたとしても、犯罪であることは間違いありません。だから、横領をするのは絶対にやめましょう!