「売春島」とは現在の三重県・渡鹿野島のこと

かつて「売春島」と呼ばれたのは、三重県にある渡鹿野島（わたかのじま）です。

公然と売春が行われていた闇深い離島として、度々メディアに取り上げられてきました。

ノンフィクションライターの高木瑞穂さんの著書『売春島～最後の桃源郷 渡鹿野島ルポ』が9万部を超える売り上げを記録していることから見ても、世間からの注目は高いようです。

なお、作者の高木瑞穂さんは、2020年の文春オンラインに「公然と女性が街中で…三重に実在する“ヤバい島”」というタイトルの記事も寄稿しています。

住民からもタブー視されてきた、「売春島」こと渡鹿野島の詳細について、この後の章で詳しく紹介します。

売春島（三重県・渡鹿野島）の場所

かつて売春島と呼ばれた渡鹿野島は三重県伊勢市に位置し、周囲約7キロメートル、面積は0.7平方メートルと小さな島。人口は2020年時点において169人です。

伊勢市は2016年にG7伊勢志摩サミットが開催されたことで注目を集めましたが、渡鹿野島から伊勢神宮からは60分、志摩スペイン村から30分というアクセスの良さが特徴です。

渡鹿野島に行くためには近鉄名古屋特急の名古屋駅から鵜方駅で下車し、路線バス「野渡船場経由安乗（あのり）方面行き」に乗り換えて「渡鹿野渡船場」で降ります。

バス停の目の前が船場になっています。渡船に乗って約3分で渡鹿野島に到着します。

渡船は常に行き来していて、6:00～22:00まで乗船客が来たら船が動くようになっていますので、時刻表は設定されていません。

売春島（渡鹿野島）の歴史①　江戸時代は港として需要があった

かつて売春島と呼ばれたことで、アウトローで危険なイメージがある渡鹿野島の歴史を紐解いていきましょう。

江戸時代は港としての需要があった

渡鹿野島の歴史を遡ると、江戸時代に「風待ちの島」という愛称で呼ばれていたようです。

「的屋湾の真ん中に所在し、寺にある井戸から飲料に適した水が出ていた」という記録が残されています。

島付近の海は波が穏やかで、飲料や薪など船旅に必要な物を確保するために下田へ向かう船の船乗りが立ち寄っていました。

渡鹿野島の女性島民は、島に立ち寄る船員に声をかけて商品を売ったり、船員の着物を洗濯したりして生計を立てていたそうです。

周辺の天候が悪い場合は、渡鹿野島で何日も待つケースがあったようで、出航を待つ船員を楽しませるための芸者が現れ、そこから性風俗へと繋がっていったと言われています。

その後、島には水上遊女も集まって遊郭街として栄え、「女護ヶ島」の名前で呼ばれた時期もありました。

売春島（渡鹿野島）の歴史②　戦後は釣りを楽しめる観光地に

時は流れ、第二次世界大戦中には、三重県にあった予科練（軍の練習生）の駐屯地から500人もの隊員が渡鹿野島を訪れたという記録が残されています。

戦後、生き残った兵士達は「渡鹿野島での生活が忘れられない」と、旅行者として島を訪れるようになりました。

宿泊客の多くが釣りを楽しんだようで、海釣りのために船をチャーターすると1日の費用は約1万円だったそう。

今の金額に換算すると4万円になるため、当時の価値観で考えてもかなり高額だったことがわかります。

渡鹿野島で生まれ育ち、現在区長を務める茶呑潤造さんは、幼少期に、観光客の男性らが酔っぱらって野球拳をする様子が日常的な風景だったことをインタビューで明かしています。

こうして、観光で賑わいを見せ始めた頃、いち早く渡鹿野島に目を付けたのが出稼ぎ売春婦だった女性で、スナックを装った置屋を開店しました。

この元売春婦の女性が、島の外からレベルの高い女性を雇うなど売春ビジネスに力を入れ始めると、次々に同業者が島に集まるようになったのです。

売春島（渡鹿野島）の歴史③　全盛期は1970年代～1990年頃

渡鹿野島の全盛期は、1970年代後半からバブルが弾ける前の1990年頃と言われています。

その中でも、特に栄えていたのが1981年頃あたりで、島民の人口は200人程度でしたが、裏カジノ、ヌードスタジオ、置屋などのアウトローな施設が賑わっていました。

この頃、既に売春が非合法ということもあり、売春斡旋所は客に「自由恋愛を装って女性と宿泊するように」と推奨していたそうです。

コンパニオンを装った風俗嬢が宴会を盛り上げ、道を歩くと人混みのあまり、すれ違った人と肩がぶつかることが日常茶飯事になるくらい、島外から売春目的の観光客が押し寄せていました。

これでは渡鹿野島が「売春島」と呼ばれてしまうのも無理はありません。到底家族で遊びに行くような場所ではなかったのです。

潜入捜査員を送りこんだはずが…

渡鹿野島が公然と売春を行っていることに対し、三重県としても対策を取ってきました。

まずは実態を暴くべく、渡鹿野島に刑事を潜入させていますが、こともあろうに刑事は現地の風俗嬢と関係を持ってしまいます。まさにミイラ取りがミイラになるとはこのことですよね。

風俗嬢との関係が発覚した刑事は、懲戒免職処分となりました。

この元刑事は、関係を持った風俗嬢を内縁の妻にして、渡鹿野島でスナックを開店。さらには、売春斡旋業にも手を染めるなど、かなりの荒稼ぎをしたそうです。

1997年10月、元刑事は警察のガサ入れを受け、未成年の女性を売春婦として雇った罪で逮捕されています。

売春島（渡鹿野島）の歴史④　人身売買までもが横行する危険な島に

風俗産業が全盛期だった昭和から平成にかけての時代の渡鹿野島は、売春だけではなく人身売買が横行する危険な島だったことが判明しています。

人身売買ブローカーが暗躍

2020年の文春オンラインでは、渡鹿野島の売春に関わった元人身ブローカーで元暴力団員X氏のインタビューが掲載され、話題になりました。

2年間にわたり、渡鹿野島へ女性を送り続けて1億円の稼ぎを得たんだとか。

X氏によると渡鹿野島に女性を送るようになったのは、広域暴力団組織配下のA組から「女性を紹介して欲しい」と頼まれたことがきっかけでした。

X氏は街で女性をナンパし、なびいてきた女性と懇意になった後で「俺のために島に行ってくれ」と頼みこんだといいます。

了承してくれた女性を立て続けに3人、渡鹿野島に送り込むことに成功。この時点で、紹介料1人当たり200万円が置屋から支払われるシステムだったそうです。

さらに、送り込んだ女性達から毎月数万円が振り込まれていたそうで、紹介料と定期収入でX氏は不労所得状態に。X氏は当時を振り返って「ウハウハだったよね」といいます。

これに味をしめたX氏は、合計30人の女性を売春婦として送り込みました。

売春島（三重県・渡鹿野島）の売春婦の生活①　非人道的な扱いを受けていた

人身売買ブローカーから紹介され、渡鹿野島に渡った売春婦たち。経済的にも労働環境的にも、かなり厳しい生活を余儀なくされました。

置屋が売春婦に対して非人道的な扱いをしていた実態についても、X氏の証言を紹介します。

賃金が厳しい

様々な事情を抱えて売春婦として渡鹿野島で働く女性の生活は、かなり厳しいものでした。

まず金銭的な問題が挙げられます。島に入る際に置屋からブローカーに支払われる紹介料200万円は、売春婦の女性には1円も入ることはありません。

それどころか、200万円の借金を背負った状態でスタートし、月に1割程度の利息がつきます。

さらに、女性が客を取り、1日5万円稼いだとしても、半分の2万5千円が置屋に入り、さらに生活費と契約時の200万円の借金返済分を差し引くと、手元には5千円程しか残りません。

しかも、その5千円すら色々と適当な理由を付けて様々なものが差し引かれ、売春婦の手元には1000円くらいしか渡らないようになっていました。

そして、脱走を防ぐために、置屋の責任者が「一旦ママが預かって、明日渡すわね」と給与を翌日払いにしていたと言われています。

もちろん体を売って労働する女性としては納得がいきません。そういった不満は、X氏が電話で女性に甘い言葉を囁いて、繋ぎとめていたのだといいます。

一方で、置屋の経営者は借金200万円を盾に脅し、飴と鞭を使い分けることで、女性が働かざるを得ない状況に追い込んでいたそうです。

売春島（三重県・渡鹿野島）の売春婦の生活②　街ぐるみで監視していた？

出典：https://pixabay.com/

あまりにも過酷な状況で働かされる売春婦たちには、次第に脅しも甘い言葉も通用しなくなっていったそうです。

脱走を防ぐために、置屋では二重三重に予防線を張り巡らせていたようです。また、本島へと渡る船の船頭、タクシーの運転手、島民も皆グルという噂もあったんだとか。

これについてX氏は「さすがに嘘」と否定したものの、客と売春婦が協力して島から逃げださないよう、客の顔写真を撮影して渡し船の船頭に渡し、監視を依頼していたことを認めています。

その他にも様々な対策をしていたようで、以下のように語っています。

それにサービス時に女に持たせるポーチの中には、コンドームなどの他に置屋のライターが必ず入っている。

そのライターが実は探知機で、部屋に入った時間と出た時間が分かる仕組みになっているの。今はそんな厳しくないけど、当時の監視体制は相当に厳しかったみたいだね

 

引用：“ヤバい島”の実態を元ヤクザが赤裸々証言 – 文春オンライン https://bunshun.jp/

探知機を仕込むとは、相当手が込んだ監視をしていたことになりますね。

売春島（三重県・渡鹿野島）の売春婦の生活③　チーママに監視させる

置屋が効率よく女性を監視するために、借金を返し終えた従順な女性をチーママというポジションに据えて、中間管理職のようなことをさせていました。

チーママになると、稼いだ分が自身の稼ぎになり、島の出入りも自由です。また、客を取るだけではなく、借金を返し終えていない女性達のサポートを行います。

例えば、不満が爆発しそうな女性がいれば、チーママが監視役として一緒に船に乗り、本島まで出かけて買い物に付き合ってあげて憂さ晴らしをさせるようにしていたようです。

そして「いずれチーママになれば、自分も同じように自由を満喫できる」と希望を抱かせ、売春婦の脱走を防ぐ、という抑止効果がありました。

売春島（三重県・渡鹿野島）から逃げた女性の末路①　脱出に失敗した場合

置屋の厳重な監視体制の中でも、島から脱走を試みる女性は後を絶ちませんでした。

しかし脱走の成功率は低かったようで、女性達は捕まってしまった後、酷い仕打ちを受けていたことが明らかになっています。

逃げたら水シャワー

X氏によると、売り飛ばした21歳の女性が海に飛び込み、泳いで本島に渡ろうとしたことがあったそうです。

その女性は深夜2時頃、男性客がシャワーを使っている間に隙を見てアパートを逃げ出しました。

すぐに客から連絡が入り、置屋の関係者が島中を捜査にあたったところ、既に島にはいないことに気が付き、対岸側で待ち構えて女性が泳ぎ切ったところで捕まえたそうです。

連れ戻された女性は、アパートの部屋のガスが止められ、温水が使えない罰を受けました。

この「水シャワー」の罰には、これから脱走を試みようとする売春婦たちへの警告の意味もありました。

チーママが目を光らせ、不穏な動きをする女性に対して置屋のママが水シャワーを命じます。これは「脱走をしようとしていることはバレてますよ」という意味を持っています。

島に長くいる女性は、水シャワーがどんなメッセージなのかを知っているので、大抵はこれで大人しくなっていたそうです。

売春島（三重県・渡鹿野島）から逃げた女性の末路②　泳いで逃げ切った猛者も

出典：https://pixabay.com/

2020年10月に公開された高木瑞穂さんのルポには、「売春島から泳いで逃げた少女」というタイトルの記事が公開されています。

2000年2月に、島から泳いで脱出に成功した当時17歳だったメグミさんにインタビューしたテレビ関係者の話がもとになっていました。

家庭環境が複雑だったメグミさんは、中学生の頃からヤンキーだったそうです。

そして17歳の時、信じていた男性がお金と引き換えにメグミさんを売り飛ばしたことで、渡鹿野島で来る日も来る日も客を取る生活を送るようになりました。

追い詰められたメグミさんは脱出を決行し、着の身着のままで旅館を抜け出します。

客引きの男性と道で会っても平然とした態度ですれ違い、前もって調査しておいた、ひとけの無い場所を目指し、決死の覚悟で海に飛び込んだのです。

ただ、昔から親との関係に悩んできたメグミさんは、渡鹿野島の旅館の女将のことを実母のように慕っていたそう。

島に来て1ヶ月が過ぎたころ、メグミさんは18歳の誕生日を迎え、置屋の女将はショートケーキとプレゼントを用意し、お祝いしてくれたんだとか。

家族から誕生日を祝ってもらった経験がなかったので、感激してしまったメグミさん。

その優しさを忘れられず、「またあの海を渡ってしまうかもしれない」と島に対して懐かしい気持ちもある様子が書かれていました。

小さな島で身を寄せ合って生きていたための連帯感か、それとも弱みに付け込まれていたのかは分かりませんが、女性達の寂しい気持ちを埋めてくれる部分はあったようですね。

売買島（三重県・渡鹿野島）の性産業が衰退した理由①　外国人労働者の流入

1980年代後半に入ったあたりから、渡鹿野島の風俗環境に変化が起こり始めました。

一軒の置屋がフィリピン人、タイ人など単価の低い金額で働いてくれる女性を雇い始めたことをきっかけに、それに倣う置屋が増えていき、外国人の売春婦が激増。

外国人女性には、自宅兼客を取る場所として6畳一間の粗末な部屋が与えられ、宿泊する前提の23時～7時までのロングタイムは4万円、ショートは1万円というかなり安い値段設定でした。

外国人の女性が安い金額で働くようになると、徐々に日本人女性の売春婦の比率が減っていくだけではなく、価格破壊が進んだようです。

売買島（三重県・渡鹿野島）の性産業が衰退した理由②　取り締まりが厳しくなった

日本では1956年に売春防止法が制定されていますが、渡鹿野島には警察署がないからか、規則を守る動きはなく、堂々と売春が行われていたそうです。

しかし、本土から警察による内偵や取締りが年々厳しくなっていきました。

三重県警が何度もやってきて取締りを行った結果、音を上げた置屋やスナックを装った売春宿が島から撤退。

働く人が消えるだけではなく、売春目当ての観光客の数も右肩下がりになるなど、1990年頃から少しずつ風俗産業は下降に向います。

かつての渡鹿野は、真っすぐ道を歩くことができないほど人でごったがえしていましたが、昼間でもひとけのない閑散とした島に激変したといいます。

また、島民も減少していきます。小さな島なのでもともと人口は多くはありませんでしたが、風俗産業を嫌い、若い世代を中心に島を出ていってしまったそうです。

売春島（三重県・渡鹿野島）のイメージ転換プロジェクトとは

風俗産業が右肩下がりになった後、渡鹿野島のイメージをクリーンな観光地に変えようと、行政や島民、島外の大学生など多くの人々が関わっています。

闇深いイメージを払拭するために、日々プロジェクトに取り組む人々の活動を見ていきましょう。

行政と学生のタッグ

性産業で観光客を呼んでいた渡鹿野島ですが、島民はこういった負のイメージが定着してしまうことを良くは思っていなかったようです。

島の未来を考え、島民の声に行政が応える形で、売春ビジネス排除と健全化に向けたイメージ戦略プロジェクトが始動。

2003年にスペイン風の人口海水浴場「わたかのパールビーチ」の設置、2004年には「渡鹿野島開発総合センター」が設置されました。

2013年には、三重県の南部地域活性化局が地域活性化の一環として四日市の大学生約20人程を渡鹿野島に派遣しています。

学生達は、週に3日～4日間島にやってきて散策したうえで、どのようにすればクリーンな観光地のイメージが根付くかを議論しました。

そして「上から見たらハート型だから、名前をハートアイランドにしたらどうでしょう」、「FacebookなどSNSでの発信を行った方が良い」など、若者ならではの意見が次々にあがります。

区長を務める茶呑さんは、さっそくガラケーをやめてスマホを購入し、Facebookを開始。

また、公式ホームページを開設して、動画や写真を投稿するようになりました。

こうした努力が実を結び、2015年から渡鹿野島では「ハートウォークラリー」という自然を満喫するイベントが開催されています。

元教師が島おこし協力隊員に

島おこし協力隊員として新たに就任したのが、大阪府出身の峠広之さんです。

地元の小学校で教員をしていたのですが、コロナ禍になり授業外の仕事が増加して、持病の潰瘍性大腸炎が悪化してしまい、退職することに。

その後、仕事探しがなかなか上手くいかなかった時に見つけたのが、島おこしの協力隊員の募集でした。

かねてより、田舎暮らしに興味を持っていた峠さんはすぐに応募。面接のために渡鹿野島に渡ると生憎の悪天候で帰りの電車が止まる可能性が出てきました。

そわそわしていると、副区長から「ウチに泊まったら良いよ」と優しくしてくれたんだとか。

本格的に島に引っ越した時も周囲が暖かく迎えてくれたこともあり、峠さんは売春島の噂についてもネガティブな印象はなく、むしろポジティブに感じたそうです。

売春島（三重県・渡鹿野島）を訪れた芸能人①　アレン

ネットを検索してみても、渡鹿野島出身の芸能人は見当たりませんでした。

しかし、芸能人の中には渡鹿野島に興味を持ち、訪れた人がいることが判明しています。

1人目は、アレンさんです。

日本一の整形男子・アレン

アレンさんは、これまでに総額1億1500万円以上かけて整形した経歴を持つ人物で、「日本一の整形男子」と呼ばれています。

そんなアレンさんが渡鹿野島を訪れたのは2014年のこと。島の歴史を知り、以前から興味を持っていたそうです。

実際に島を訪れたところ、誰も外を歩いておらず、かつて売春で栄えたとは思えないほど寂れていた、と感想を述べています。

アレンさんの公式ブログに詳細な旅行記がアップされているので、興味のある方は読んでみてくださいね。

売春島（三重県・渡鹿野島）を訪れた芸能人②　元タカラジェンヌ・彩羽真矢

渡鹿野島を訪れた芸能人2人目は、かつて宝塚歌劇団に所属していた彩羽真矢さん。現在は女優、タレント、YouTuberとして活動しています。

そんな彩羽真矢さんは、2010年12月、プライベートで伊勢志摩観光に赴き、足を伸ばして渡鹿野島に宿泊したようです。

彩羽真矢さんのブログには、旅館でエステを予約してアーユルヴェーダを受けたこと、夕飯には伊勢海老と松坂牛を堪能したことが書かれています。

特に島の歴史については触れられていないため、純粋に観光旅行として訪れたようですね。

売春島（三重県・渡鹿野島）の現在①　修学旅行生が訪れる

クリーンな観光地に生まれ変わるために、様々な挑戦を続けてきた渡鹿野島。

ここからは、現在の様子について紹介します。2021年には、島で初の修学旅行生を受け入れました。

初の修学旅行生は大阪の高校

2021年10月、渡鹿野島初の修学旅行生となったのは大阪府立長吉高校の2年生、120人の生徒です。

生徒達が乗った渡舟が渡鹿野島に到着すると、桟橋で待ち受けた住民は「歴史が変わる日」と感無量の様子だったといいます。また、志摩市PRキャラの「しまこさん」も出迎えたようです。

なお、渡鹿野島は2021年10月～12月の3か月間で、大阪や三重県などの小中学校と高校、合計10校から予約が入っていることも公表しています。

高校側も修学旅行先に難儀していた

大阪府立長吉高校はどうして、修学旅行先に渡鹿野島を選んだのでしょうか。

コロナ禍に入った2020年は修学旅行を中止しましたが、2021年は実施を決定。

しかし、不測の事態が起きた時のことを考え、保護者が車で迎えに行ける距離にすることにします。

ただ、近場の修学旅行の定番エリアは混雑が想定されたため、検討の結果、伊勢神宮とアクセスが良く、修学旅行の誘致に熱心だった渡鹿野島に白羽の矢を立てたのです。

かつて「売春島」と呼ばれていた歴史を上本校長は知っていたものの、生徒を宿泊させることに異論はなかったそう。

実際に修学旅行を終えた後、上本校長は「生徒たちは地元のおもてなしの気持ちを本当に感じていた。宿泊先に選んで成功だった」と満足気にコメントしていました。

売春島（三重県・渡鹿野島）の現在②　恋愛成就の島になっていた

学生からのアイディアで、「ハートアイランド」の愛称で島おこし施策を継続してきた渡鹿野島ですが、その努力は実を結び始めています。

旅館が売り出したハート型絵馬

渡鹿野島の島おこしをしているのは、行政だけではありません。

旅館「福寿壮」はハート型の絵馬を売り出しています。

絵馬を購入した人は、旅館の施設内にある祠に絵馬を奉納し、すぐ傍に湧き出している源泉を三々九度に見立てて、愛を誓い合うというセレモニーができるのです。

なお、絵馬は最終的に伊勢神宮に奉納されるそうなので安心ですね。

女性やカップルから人気を得て、今では絵馬付きの宿泊プランも売り出されています。

売春島（三重県・渡鹿野島）の現在③　2021年に「恋人の聖地」に認定

2021年になると、渡鹿野島は「オノコロハートアイランド ～日本最古の恋人島・わたかのじま～」として恋人の聖地に認定されています。

その後、ビーチにはモニュメントが作られて、2022年11月にモニュメントの除幕式が開かれました。

3つのハートを組み合わせたデザインは島民のアイデアであることが公表されています。

売春島（三重県・渡鹿野島）の現在④　ジャニーズも島おこしに参戦

島おこしはジャニーズ事務所の「NEWS」も参戦し、ファンから聖地として親しまれています。

2020年1月に放送された「NEWSな2人SP」内の企画として始まったものですが、現地に赴いて真剣に島を歩き回り、魅力を引き出すためにアイデアを出し合う様子が放映されました。

廃材を材料にした大きなイルミネーション、貝殻を使って海をイメージしたウエルカムボード、プロモーションビデオなど様々な仕掛けが完成。

ネットで検索すると、渡鹿野島で旅行を楽しんでいる様子をブログにアップしているNEWSファンがたくさんヒットします。

ブログ記事によると、NEWSのメンバーが実際にレストランで座った席や、食べたメニューを事前に予約することができるようです。

また、レストランの店員さんや旅館の仲居さんから、撮影時の様子を教えてもらうなど、コミュニケーションを楽しんだことも記されていました。

売春島（三重県・渡鹿野島）の現在⑤　風俗関係の廃墟は残されたまま…

渡鹿野島を訪れる観光客が増えてきたことは良いことですが、実は課題も残っています。

かつて風俗店として利用されていた置屋や旅館が廃業しても、建物は壊されることなくそのまま残り、今では廃墟が目立つようになりました。

区長を務める茶呑さんは「建物の買い手が付かないので仕方のないことです。でも、このままではいけない」と、負の遺産になり続けている廃墟問題に悩んでいるようです。

実際に、渡鹿野島を訪れた観光客も「廃墟が多い」という感想を投稿しています。

ただし、一方で「廃墟マニアには堪らない場所」とポジティブに捉えている声も寄せられています。

売春島（三重県・渡鹿野島）の現在⑥　今も危険？都市伝説や噂

クリーンなイメージ化が進む渡鹿野島ですが、今も「危険な島だ」という噂や都市伝説も存在しています。

ネットで調べたところ「島民や警察官によって、観光客は皆監視されていて勝手に写真や動画を撮影することは禁じられている」と、まことしやかに囁かれているんです。

万が一撮影しているのを見られてしまうと、スマホごと取り上げられてしまうのだとか。

渡鹿野島は、かつて暴力団が裏で関わる売春や人身売買が横行していたことから、アウトローな土地であったことは間違いありません。

今は普通の観光地になっているはずなので、危険という噂はデマと考えて良いでしょう。

ただし、渡鹿野島が関係しているのでは？と言われる失踪事件も発生しているのも事実です。次の章で詳しく見ていきます。

売春島（三重県・渡鹿野島）が危険な証拠？伊勢市女性記者行方不明事件とは？

1998年に、渡鹿野島に関連するとされる失踪事件が起きていたことをご存知でしょうか。新聞やニュースでは「伊勢市女性記者行方不明事件」と報じられました。

事件の概要、姿を消した女性記者のプロフィールと経歴、今も分かっていない謎について紹介します。

記者・辻出紀子さんが行方不明に

忽然と姿を消した記者は、伊勢文化舎の辻出紀子さんです。生年月日は1974年11月3日で、当時の年齢は24歳でした。

三重県津市で高校卒業までの期間を過ごし、立命館大学の法学部に進学。

学生時代より東南アジアで起きている難民問題、性虐待の被害者となった女性を取材し、ジャーナリスト活動を行っていたそうです。

真面目な人柄で記者として責任感が強く、1997年4月に伊勢文化舎に入社すると、毎日深夜まで仕事をしていたという記録が残されています。

事件概要

事件が起きたのは1998年11月24日深夜でした。23時頃、伊勢文化舎の社長が辻出紀子さんに「早く帰宅するように」と促しています。

その後、辻井紀子さんは伊勢文化舎を出たのを最後に、忽然と姿を消してしまったのです。

実家住まいの辻出紀子さんですが、毎日帰宅が遅いことに慣れていた家族は「いつものことだろう」と考えていました。

しかし、朝になっても辻出紀子さんは帰宅しませんでした。さらに、お昼を過ぎても出社しないことを心配した同僚が携帯電話に電話を入れますが、留守番電話に繋がるだけ。

そこで家族が警察に捜査願を届けたところ、三重県警は当初、事件性がなく家出ではないかと判断。

しかし、辻出紀子さんと最後に通話していた男性の存在が浮上したことで、本格的に捜査がスタートします。

電話の男性と何があった？

県警が辻出紀子さんの携帯電話を調べたところ、事件当日に何回も辻出紀子さんに電話をかけていた男性がいたことが明らかになりました。

この男性は任意の取り調べを受け、伊勢志摩のイベントで案内役を務めたことで特集記事を担当していた辻出紀子さんと顔見知りになったと供述しています。

そして、辻出紀子さんと意気投合し、数回の食事をして、電話による通話も何回かしたことも認めました。

事件当日の23時過ぎには、男性と辻出紀子さんは仕事の打ち合わせで伊勢文化舎の近くにある駐車場で会っていたといいます。

しかし、最後まで辻出紀子さんを拉致したり殺害したりといった犯罪に繋がるような自白を取ることができないまま、任意の取り調べは終了したそうです。

その後、男性は別件で逮捕

最後に辻出紀子さんと出会っていた男性は、その後別件で逮捕されています。

辻出紀子さん失踪事件の1年前に、都内で風俗嬢を監禁した容疑が関係者の証言から挙がってきたのです。

県警としては、別件で逮捕して辻出紀子さん失踪事件の証言を取る目論見だったと見られています。

しかし、男性はこの一件については最後まで黙秘を貫き、辛うじて得られた供述は「辻出紀子さんの件は、無罪になれば全てを話します」という言葉のみ。

また、別件逮捕の裁判では、被害者の女性から暴行と強姦を受けたという証言が出たものの、明確な証拠がなく無罪の判決が下りています。

この男性は釈放後も、辻出紀子さんのことは何も語っていません。

見つかった車に関する謎とは？

辻出紀子さんの車は、伊勢市内の駐車場で発見されているのですが、腑に落ちない点が指摘されています。

車は、駐車場に引かれた線から大きくはみ出して駐車されていました。

家族によると、辻出紀子さんは几帳面な性格で、このような雑な停め方は考えられないとのこと。

また、車のシートがかなり後ろに下げられていて、辻出紀子さんは非喫煙者なのに車内にはタバコの吸い殻が残されていました。

辻出紀子さんの両親は、「何者かが娘の車を運転していた可能性がある」と週刊誌の取材に応じています。

実家にかかってきた謎の電話

事件が発覚した3日後、辻出紀子さんの実家に不審な電話がかかってきました。

クロネコヤマトの宅急便の配達員を名乗ったうえで、辻出紀子さんの妹宛の荷物を預かっているので住所を教えて欲しいという内容だったそうです。

電話に出た母親はおかしいと思い、電話をかけてきた人物に連絡先を尋ねたところ、相手は「山口」と名乗り、電話番号を明かしました。

その情報をもとにヤマト運輸に問い合わせますが、該当の人物はいないことが判明。電話番号もデタラメでした。

しかし、この電話番号の下4桁は、辻出紀子さんと最後に会っていた男性の電話番号と合致していたといいます。

山口を名乗る人物が適当に番号を伝えた際、偶然一致した可能性ももちろんゼロではありませんが、出まかせで言った番号4桁がピッタリ合う確率はかなり低いのではないでしょうか。

売春島（三重県・渡鹿野島）と伊勢市女性記者行方不明事件の関連など真相

今もなお、辻出紀子さんの行方は分かっていません。ネットでは、事件の真相について諸説囁かれています。

渡鹿野島で消された説

辻出紀子さんは学生時代に、東南アジアで行われている不法な売春の実態について調査していました。

また、勤務先である伊勢文化舎は、渡鹿野島から約10km地点に所在していることから、行こうと思えばすぐに取材に行くことができます。

辻出紀子さんは偶然、渡鹿野島で行われている売春に関する危険な情報を入手したことで、何者かに消されたのでは？という噂がまことしやかに囁かれています。

この件について母親は「面白おかしく騒ぎ立てられているだけだと思っています。紀子からその話を聞いたことはありません」と、渡鹿野島での取材については否定しています。

そして生前、辻出紀子さんと交際していた大手新聞社に勤務する男性も、『週刊女性』の取材を受け、渡鹿野島の取材について「デマです」と否定しました。

交際していた男性は、辻出紀子さんがジャーナリストとして渡鹿野島に興味を持っていたことは事実だと認めましたが、その闇を暴こうといった話を聞いたことはなかったそうです。

証言のとおりであれば、失踪事件と渡鹿野島は関係がなかったということになりますね。

北朝鮮による拉致説

もう1つの真相として噂されているのが、北朝鮮による拉致です。

2008年9月8日の産経新聞で、北朝鮮に詳しい中朝関係者から政府関係者に向けて「辻出紀子さんという方が北朝鮮にいるのではないか」との情報が寄せられたと報じられました。

政府関係者は、これまで先方に「辻出のつの字も出したことがないのに、なぜかフルネームで伝えてきた」という点について疑問を抱いたようです。

さらに、2014年に週刊誌『FRIDAY』が、警視庁が持っている、北朝鮮に拉致された可能性のある人物リストに辻出紀子さんの名前が入っていると報じました。

誰よりも家族が解決を願っている

辻出紀子さんの失踪事件では、2019年までに捜査員3万人以上が投入されました。また両親も、情報提供料300万円を設定し、毎年11月24日にビラ配りを継続しています。

それでも有力な手掛かりはいまだに見つからず、警察に依頼して重機を使って怪しい場所を掘り起こしたこともありました。

また、テレビ番組の企画で、アメリカ在住の霊能者に霊視を依頼しましたが、事件の進展に繋がるような手掛かりは見つからず、両親の焦りが伝わって来るようです。

辻出紀子さんが無事発見されることを願わずにはいられませんね。

まとめ

売春島と呼ばれていた三重県伊勢市の離島である渡鹿野島について、場所や歴史、全盛期から廃墟が目立つ現在の様子、島を訪れた芸能人、関連性を疑われる事件とその後をまとめました。

ネットでは今なお危険なのでは？との噂もありますが、現在はクリーンなイメージが定着し、修学旅行生を受け入れたり、NEWSのファンが訪れたり、恋愛成就の島としても知られています。

まだまだ課題もあるようですが、日々観光地として新しい取り組みを続ける渡鹿野島。興味がわいた方はぜひ旅行してみてはいかがでしょうか。