人身売買の問題とは?被害者と現状・日本での事件や実態・政府の対策も総まとめ

人身売買は世界規模で行われ対策や被害者保護が叫ばれていますが、実は日本でも横行しているのが現状です。

 

今回は世界の一般的な人身売買の被害者と現状、原因や背景、日本の人身売買の現状や特殊性、日本政府の対策をまとめました。

 

人身売買とは

 

出典:https://twitter.com/

 

 

人身売買とは、女性や子供など弱い立場にある人を、“搾取する目的”で、暴力や脅迫、誘拐、拉致などの強制的、詐欺行為によって人を獲得し、労働を強いたり、奴隷化することを言います。

 

人身売買の目的としては、性的搾取と強制労働がほとんどですが、その他にも、偽装・強制結婚やポルノ制作、臓器売買といった目的による人身売買も報告されています。

 

 

 

人身売買の被害者と現状

 

人身売買は秘密裡に行われる犯罪であるという性質上、正確な被害者数を把握することは難しいと言わざるを得ません。

 

ただ、弱い立場にある女性や子供、戦争・紛争による迫害の影響を受けている人々が特に、人身売買の被害に遭いやすいとされています。

 

 

出典:https://www.wisebk.com/

 

しかし、それも人身売買が行われている国の法律や情勢によって、被害者となりやすい人の傾向は刻々と変遷していると言っても過言ではありません。

 

そこで、ユニセフが現在公表している“人身売買の被害者”に関する最近のデータを紹介しておきましょう。

 

・2012年から2014年の間に、世界106カ国で6万3,251人の人身売買被害者が確認された。

 

・人身売買の被害者の多くは、女性(成人女性および女の子)であり、2014年に世界85カ国確認された1万7,752人の被害者のうち、およそ71%を女性が占めていた。UNODCが2003年に人身売買のデータ収集を開始して以来、主な被害者は女性だという傾向は変わっていない(被害者の中で女性の占める割合は、2004年は84%、2014年は71%)

 

・男性(成人男性および男の子)の割合も、近年増加している。2012年から2014年の間に確認された人身売買被害者のうち、5人に1人は男性

 

・2012年から2014年の間に確認された人身売買の被害者の中で、子どもが占める割合は25~30%

 

・戦争・紛争や迫害から逃げてきた人々は、特に、人身売買の被害に遭いやすい。例えば、シリアで紛争が開始されて以来、人身売買の被害に遭うシリア人が急増したというケースが報告されている

 

・紛争は、人身売買が蔓延しやすい状況をつくる。特に、武装グループは支配地域内で、何千人もの子どもたちを子ども兵士として徴用している

 

・サハラ以南アフリカと中央アフリカ、カリブ海地域では、人身売買の主な被害者は子どもたち。これには、地理的要因、社会経済的要因、法律・制度の相違、各国の制度的枠組みと優先事項などといった、いくつかの要因がある。

 

・後発発展途上国では、確認された人身売買被害者の大多数を占めるのは子どもたち。各国の発展状況と、人身売買被害者の子どもたちの年齢とに、何らかの関連性があるように思われる

  国連薬物犯罪事務所(UNODC)-Global Report on Trafficking in Persons 2016 http://www.unodc.org/

 

 

出典:https://jp.depositphotos.com/

 

 

 

人身売買を引き起こす問題と原因や背景とは

 

次に、人身売買が引き起こされる主な原因と、その社会的な背景について整理してみましょう。

 

 

人身売買の原因① 貧困につけ込むブローカー

 

今も昔も、人身売買が起きる最大の原因は「貧困」だと言われています。

 

最近では日本でも“貧困家庭”の問題が度々取り上げられているようですが、世界で問題になっている貧困と、日本のそれとは全く次元が異なると言って良いでしょう。

 

例えば、アフリカや東南アジア諸国など、主な収入を農業に依存しているような地域では、ここ数年の地球温暖化による異常気象の影響をもろに受けています。

 

大雨が続けば水害に、逆に日照りが続けば干ばつの被害に遭い、収入はたちまち激減し、日常生活を維持することすら難しくなってしまうんですよね。

 

 

出典:https://twitter.com/

 

人身売買で収入を得ているブローカー達は、こうした貧困に苦しむ人々をターゲットにし、「都会に行けば良い仕事が沢山あるよ」などと言葉巧みに騙します。

 

そして、貧困に苦しむ家族を少しでも楽にしてあげたい…そんな純粋な想いにつけ込むのです。

 

まず、貧困であることが、人身売買を生み出し続けている最大の要因になっていると言えるでしょう。

 

 

人身売買の原因② 低教育が貧困に直結

 

貧しい家庭に生まれ、満足な教育を受けさせてもらえずに、小さな頃から安い賃金で働いている人が家庭を持ったとしましょう。

 

子供が生まれた時、多くの場合はその子供に、自分と同じように小さな頃から働くことを強いることが考えられます。それはもう当たり前のように…。

 

 

出典:https://www.huffingtonpost.jp/

 

そして、その子供も父親と同じように満足な教育を受けていないばかりに、生涯安い賃金に苦しみ続けなければなりません。

 

このように貧困が低教育に繋がり、その低教育が再び貧困に繋がるという「貧困スパイラル」が世界的な問題になっています。

 

この「貧困スパイラル」を断ち切るためには、教育が不可欠です。

 

ただ、目に見える結果、つまり収入に結びつくまでに相当な時間を要することから、ついつい教育は後回しにされがちなんですよね。

 

 

人身売買の原因③ 多額の利益を生むビジネスの存在

 

人身売買は手軽に多額の利益を生むビジネスとして、手を染める組織が後を絶ちません。

 

人身売買のビジネス展開の代表例として、主に次のようなものが挙げられます。

 

・性的搾取

・臓器売買

・強制結婚

 

出典:https://www.madameriri.com/

 

「性的搾取」は、具体的には売春やポルノ制作など、女性を性的産業に供給することで、多額の利益を得ることができます。

 

また、インターネットが普及した現在では、全世界に対してポルノコンテンツを販売することが可能です。

 

自分が人身売買の商品になっていることに気付かないまま、ポルノ制作組織に売られ、ポルノコンテンツを作るための道具として使われている女性も少なくないと言います。

 

 

出典:http://black.ap.teacup.com/

 

「臓器売買」は、表の世界ではお金では決して買えない臓器を、人身売買により調達するビジネスモデルです。

 

それが必要な人には、いくらお金を積んでも必要なものですから、多額の金額が動くビジネスとして、多くの闇組織が暗躍していると言われています。

 

 

出典:http://vietnamkekon.jugem.jp/

 

「強制結婚」は、特に中国などで見られるビジネスです。

 

主に結婚相手が見つからない農村部の青年のために、中国周辺国から女性を斡旋し、良い働き口があるなどと女性を騙して農村部の男性と強制結婚させるというものです。

 

 

出典:https://twitter.com/

 

最近では、日本でも貧困家庭の問題がクローズアップされていますが、それでもまだまだ世界的に見れば、その生活水準や教育水準は高いレベルをキープしていると言えます。

 

まして“臓器売買”なんて話まで出てくると、やはり人身売買は日本とは関係のない、どこか遠い国で起こっている話のように感じますが…実はそう安心してばかりはいられないようなんです。

 

 

出典:https://www.gozoe.jp/

 

 

人身売買は日本でも行われている事件

 

最近は物騒な事件も少なくないものの、それでも日本は治安が良く、安全な国というイメージが強いのですが、そんな現在の日本でも、人身売買が行われているという事実をご存知ですか?

 

実は、日本でも毎年のように人身売買で検挙される犯人が出ており、少なからず被害者も出ているのです。

 

まずは、ここ数年の検挙状況を確認してみましょう。

 

 

出典:https://www.npa.go.jp/

警察庁「平成30年における人身売買事犯の検挙状況等について」

 

ここ数年の被害者数と検挙件数・検挙人数を、見やすい棒グラフにしたものがこちら。

 

 

出典:https://www.npa.go.jp/

 

もちろんこのグラフは、あくまで警察が認知した数値であることに注意が必要です。

 

犯罪の性質上、正確な被害者数を把握することは非常に困難であると言わざるをえません。

 

現在では、法律などが強化されたことにより、罰則の対象となった人身売買ですが、性的搾取など依然として悪質な需要があるため、完全に撲滅することは難しいと言われています。

 

 

出典:https://atrandom.xyz/

 

さらに、人身売買のターゲットとなっているのは、今や「若い女性や子供」だけではないようなんですよね。

 

最近では、海外出身の日本滞在者がターゲットになりやすい傾向にあるようで、日本の若者が見向きもしないような仕事に、安い賃金で長時間の重労働を課すケースが増えているようです。

 

また、臓器売買を目的として、男女関係なく人身売買のターゲットにされることもあるのだとか…。

 

今や人身売買は、女性や子供だけでなく、誰にでもリスクがあることを理解することが大切です。

 

 

日本における人身売買の現状と目的

 

日本における人身売買の目的は、売春や風俗への斡旋やアダルト動画の出演など、主に“性的搾取”がほとんどのようで、これが日本の人身売買の特徴となっているようです。

 

 

出典:https://traveltheproblem.com/

 

人身売買により売られた女性は、違法風俗店で働かされたり、接待と称した性的交渉やアダルト動画への出演などを強要されることから、当然に性病や感染症のリスクが高くなります。

 

また、そのような被害者には、劣悪な生活環境しか用意されないことも多く、適切な治療を受けさせてもらえず、時には食事すら満足に与えられず栄養失調に陥ることも少なくないのだとか。

 

現在、児童に対する取り締まりが非常に厳しくなり、小学生などの小さな子供は人身売買の対象になりにくいものの、代わりに中学生から高校生世代が狙われるケースが増えているようです。

 

 

 

日本における人身売買対策とは

 

もちろん日本においても、人身売買対策の法律が定められており、現在では人身売買に関わった人、つまり売る側・買う側の両方に厳しい罰則が科されています

 

 

出典:https://sustainablejapan.jp/

 

 

日本の人身売買対策① 人身売買罪

 

人身売買の手口は多岐に渡るので、刑法226条の2により、人身売買を行った時点で取り締まりの対象となります。

 

第226条の2

 

1.人を買い受けた者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

2.未成年者を買い受けた者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

3.営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

4.人を売り渡した者も、前項と同様とする。

5.所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、2年以上の有期懲役に処する。

 

引用:刑法第226条の2 – Wikibooks https://ja.wikibooks.org/

 

この刑法226条の2により、人身を買い受けた側、売り渡した側のどちらにも厳格な懲役刑が科されているわけです。

 

 

出典:http://www.gender.go.jp/

 

 

日本の人身売買対策② 人身取引対策行動計画

 

日本はこれまで、主に性的搾取を目的とした人身売買の大きな受け入れ国だったと言われています。

 

それにもかかわらず、日本政府が積極的な対策を行っておらず、このことに対して国内外からの批判の声が少なくありませんでした。

 

そんな中、日本政府が発表したのが「人身取引対策行動計画」でした。

 

 

出典:https://sustainablejapan.jp/

 

この「人身取引対策行動計画」の策定趣旨は次の通りです。

 

行動計画では、人身取引被害者を保護の対象として明確に位置づけ、被害者が心身共に過酷な状況に置かれていたことを十分配慮し、被害者の状況に応じ、きめ細かな対応を行うとともに、加害者(ブローカー、雇用主等)の処罰に関しては、事案の重大性を十分に踏まえた刑罰法令等の整備を図るとともに、取締りを一層強化することとした。

 

また、我が国に人身取引の存在を許容する要因となり得ていた諸制度にも踏み込み、人身取引の防止を図ることとした。

 

引用:人身取引対策行動計画 https://www.cas.go.jp/

 

日本政府の並々ならぬ決意を感じる文章ではありますが、国際社会に示すためだけに美辞麗句を並べても意味がありません。果たしてどこまで実効性があるのでしょうか。

 

今後の動向に注目していく必要があるようですね。

 

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

 

世界の一般的な人身売買の被害者と現状、人身売買の原因や背景を確認するとともに、現在の日本で行われてる人身売買の現状と、日本における特殊性、日本政府の対策をまとめてみました。

 

 

出典:https://twitter.com/

 

人身売買は、重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速かつ、的確な対応が求められています。

 

それは人身売買が、その被害者に対して、深刻な精神的・肉体的苦痛をもたらすだけでなく、そのダメージを回復することは非常に困難だからです。

 

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