ウェルテル効果とは

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ウェルテル効果とは、自殺者が出た時のマスコミの報道によって、自殺者が増加するという現象を指すものです。

「この人が自殺しました」とマスコミが報道することで、その報道に影響を受けて、自殺する人が増えるというわけですね。

このウェルテル効果は、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」から来ています。ゲーテの「若きウェルテルの悩み」では、主人公のウェルテルは最終的に自殺してしまいます。この「若きウェルテルの悩み」を読んだ読者の中には、ウェルテルの自殺に影響されて、自殺した人が増えたと言われています。

だから、誰かの自殺に影響されて自殺者が増えたという現象を「ウェルテル効果」と呼ぶのです。

ウェルテル効果は自殺の方法を真似する

ウェルテル効果は、ただ単に誰かの自殺に影響されて、自殺してしまうということだけではありません。影響を受けた自殺の方法を模倣するという特徴があります。

例えば、ある芸能人が首つり自殺をしたら、同じようなシチュエーションで首つり自殺をする。ある芸能人が川に投身自殺をしたら、同じ川で投身自殺をする。

ウェルテル効果と後追い自殺はちょっと違う

ウェルテル効果は、後追い自殺のように言われることがありますが、ちょっと違います。後追い自殺とは、その人が死んだことにショックを受けて、その人がいない世界は意味がないとして、自分も自殺をするということですよね

でも、ウェルテル効果は別に「その人がいない世界は意味がない」と思っていなくても、自殺という事実の影響を受けて、自殺をすることです。自殺の影響を受けた人に対して、特別な思いを持っていなくても、自殺をすることがある。それが、ウェルテル効果になります。

ウェルテル効果はなぜ起こる？心理は？

ウェルテル効果はなぜ起こるのでしょうか？普通に考えると、自分と関係ない人が自殺したからと言って、自分も自殺するとは思えないです。でも、確かにウェルテル効果はあり、誰かが自殺したことに影響を受けて、自殺をする人はいます。

では、ウェルテル効果はなぜ起こるのか？ウェルテル効果で自殺する人の心理などを考えていきましょう。

マスコミがセンセーショナルに報じる

ウェルテル効果が起こるのか？それは、マスコミの報道が大きな要因を占めています。芸能人や有名人の自殺を大きく報道しますよね。確かに、芸能人や有名人の自殺は大きなニュースです。

でも、あまりにも過剰な報道が目に付くことがありますよね。自殺した人の自宅前まで行って、家族にインタビューし、自殺の原因について根掘り葉掘り調べ、憶測で自殺の原因を報道する。

しかも、芸能人・有名人の自殺ニュースは繰り返し、長期間報道されることが多いです。

マスコミが芸能人・有名人の自殺をセンセーショナルに過剰に報道するため、視聴者はその芸能人・有名人の自殺ニュースを目にする機会が自然と多くなり、脳裏に、そして深層心理に自殺ということが刷り込まれていくのです。

好きな芸能人が死んでショック

ウェルテル効果が起こる心理は、芸能人や有名人が自殺してショックだということもあります。好きな芸能人や有名人が突然自殺するとショックですよね。ずっと応援していた「推し芸能人」が突然この世を去ってしまう。

特に、本気でその芸能人を応援していて、その芸能人を推すことが生きがいだったという場合、その芸能人が自殺をしてしまうと、「自分の生きがいが失われた。生きがいがなくなってしまった」ということになります。

突然、生きがいが自分の意に反する形で失われてしまったら、誰だって「もう生きていても意味がないかも」と思ってしまいますよね。

元々持っていた自殺願望が大きくなる

過剰なまでの芸能人・有名人の自殺報道が行われ、さらに芸能人・有名人の自殺にショックを受けた場合、その人が元々持っていた自殺願望が一気に膨れ上がります。

芸能人・有名人の自殺とマスコミによる過剰な自殺報道によって、心の奥底に潜んでいた自殺願望が、むくむくと大きくなってくることがあります。

もともと、心のどこかで「生きていても仕方ない」、「消えてしまいたいな」と思ったことがある人は少なくないと思います。生きること・死ぬことを考えたことがない人はいないはずですから。

でも、自殺願望がある人全員が自殺するわけではありませんよね。みんな自殺願望を持っていても、それを表に出すことなく、毎日を生きています。仕事や勉強、家事・育児に追われながら、自殺願望を心の奥底に隠して生きているんです。

毎日に忙殺され、自殺願望を持っていたことを忘れてしまった人もいるでしょう。

そんな中で、芸能人・有名人の自殺報道を見ると、忘れていた自殺願望が大きくなり、後追い自殺のように自殺してしまうのです。

ウェルテル効果と言われる日本の事例3選【新小岩駅・華厳の滝・三原山】

ウェルテル効果と言われている事例を3つご紹介していきます。

1．新小岩駅での自殺

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ウェルテル効果の1つ目の事例は、新小岩駅での自殺です。新小岩駅では、ホームから線路に飛びこむ飛びこみ自殺が相次ぎました。

2011年に新小岩駅で飛びこみ自殺が起こり、大きく報道されることになりました。そして、それから新小岩駅で同じように飛びこみ自殺をする人が一気に増加しました。そして、それも報道されることになったのです。

これは、ウェルテル効果によるものと言われています。

現在、新小岩駅は飛びこみ自殺防止のホームドアが設置されていますので、自殺者は減少しています。

2．華厳の滝への飛び降り自殺

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明治時代の1903年に、現在の東大に当たる一高生の藤村操が日光の華厳の滝で「巌頭之感」という遺書を残して、投身自殺をしました。

この華厳の滝での投身自殺は大きく報じられ、この自殺の後には同じように華厳の滝で投身自殺をしようとする人が相次ぎました。ほとんどは警察に身柄を保護されて自殺未遂で終わっていますが、藤村操の自殺から4年間で185人が華厳の滝で自殺しようとしています。

3．三原山への投身自殺

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昭和時代の1933年には、伊豆大島の三原山で女子高生が火口に投身自殺をしたということがありました。このセンセーショナルな自殺も、大きく報道されて、ウェルテル効果を生み出したのです。

この自殺の後の1年間で、三原山の火口で投身自殺をした人は129人もいました。

この129人の多くは、最初に自殺した女子高生とは無関係の人たちばかりだったはずです。でも、ウェルテル効果によって、同じような方法での自殺を選んだということになります。

芸能人のウェルテル効果：①　岡田有希子さん

芸能人でウェルテル効果のきっかけになった人物と言えば、アイドルの岡田有希子さんを思い浮べる人は多いと思います。

「ポスト松田聖子」として期待されていた岡田有希子さんは、19歳の若さで飛び降り自殺をしました。

報道では岡田有希子さんの遺体をそのまま報道するなど、センセーショナルに報道されました。

そして、岡田有希子さんの自殺後には、約30人の若者がと同じように飛び降り自殺をしたことがわかり、このウェルテル効果による若者の自殺の増加は「ゆっこ・シンドローム」と呼ばれるようになりました。

芸能人のウェルテル効果：②　hideさん　

X JAPANのギタリストであるhideさんは、1998年5月2日に急死しています。自宅のドアノブにタオルで首を吊った状態で発見されていて、自殺か事故死かは明らかにはなっていません。

しかし、熱狂的なファンをはじめとした若者の自殺が相次ぎました。このことを受けて、X JAPANのメンバーであるYOSHIKIさんは「自殺を思い留まるように」というコメントを出しています。

hideさんの場合は、ウェルテル効果の自殺もありましたが、後追い自殺の要素の方が強かったかもしれません。

芸能人のウェルテル効果：③　太宰治さん

「走れメロス」や「斜陽」などの作品で知られる太宰治さんは、1948年に玉川上水で入水自殺をしています。

この太宰治の玉川上水での自殺は、愛人と一緒の自殺（愛人による無理心中）ですが、この太宰治の自殺の後は、ウェルテル効果によって、玉川上水での入水自殺をする人が増加しました。

芸能人のウェルテル効果：④　上原美優さん

グラビアアイドルやタレントとして活躍していた上原美優さんは、2011年5月12日に自宅でドアにベルトやスカーフで首を吊って自殺をしています。

この上原美優さんの自殺後、若い女性の自殺者が急増しました。それまでは1日当たり平均82人の自殺者でしたが、上原美優さんの自殺後1週間は平均124人となっています。約1.5倍の増加です。

この増加はウェルテル効果によるものと言われています。

上原美優さんは人気タレントでしたが、特別に女性からの支持が高いというわけではありませんでした。それなのに、上原美優さんの自殺で20代～30代の女性の自殺が増えました。

これは後追い自殺ではなく、ウェルテル効果による自殺の増加であると言えるでしょう。上原さんは、「お母さんが死んで辛い。このままのスタイルで仕事して先行きどうなるか」という遺書を残していたそうです。

この「このままのスタイルで仕事して先行きどうなるか」という言葉が、毎日必死に仕事をしているけれど、いまいちむくわれなくて、この先不安でいっぱいだという20代～30代の女性に刺さったのかもしれませんね。

三浦春馬・竹内結子・芦名星はウェルテル効果を生み出すか？

2020年は芸能人の自殺が相次ぎました。これによって、ウェルテル効果はあるのかを考えて言いましょう。

三浦春馬さんの自殺

三浦春馬さんは、2020年7月18日に都内の自宅マンションで首つり自殺をしています。この時、三浦春馬さんは主演ドラマの撮影期間中で、年末のミュージカル出演なども決まっていたため、芸能界に大きな激震が走り、三浦春馬さんの自殺報道は過熱していきました。

芦名星さんの自殺

女優の芦名星さんは、2020年9月14日に自宅マンション内で死亡しているのが親族によって発見されました。死因や死亡の経緯などは明らかにされていませんが、芦名星さんは自殺したと考えられています。

芦名星さんも仕事はうまくいっていたと言われていて、10月からは相棒のseason19に出演する予定でした。

竹内結子さんの自殺

竹内結子さんは、2020年9月27日に自宅のクローゼットで首を吊って自殺しました。好感度が非常に高く、仕事もうまくいっていて、2019年には再婚して、2020年には第二子を出産していて、周囲から見ると、幸せの絶頂にいるように見えていました。

そんな中での突然の自殺であり、竹内結子さんの自殺は大きく報道されたのです。

三浦春馬さんの自殺がほかの芸能人に影響？

三浦春馬さんの自殺は、突然のことであり、非常に大きく扱われました。そして、三浦春馬さんの自殺後は、先ほど紹介した芦名星さんや竹内結子さんが自殺しています。また、俳優の藤木孝さんも、2020年9月20日に亡くなっていて、自殺と見られています。

約2ヶ月の間に4人の芸能人が自殺と思われる方法で亡くなっているのです。これはあまりにも多いですよね。

なぜ、こんなに芸能人の自殺が相次いでいるのか？これは、三浦春馬さんの自殺によって、ウェルテル効果が生まれてしまったのではないかと考えられています。

三浦春馬さんと芦名星さんは、ドラマの「ブラッディ・マンデイ」で共演しています。三浦春馬さんと竹内結子さんは、「コンフィデンスJP」の映画版で共演しています。

共演歴があり、親しかった人が突然自殺してしまったら、ウェルテル効果が増幅して、自殺のきっかけになることは十分に考えられます。

ただ、2020年は確かに芸能人の自殺は相次いでいるものの、ウェルテル効果によるものなのかどうかは明らかにはなっていません。

ウェルテル効果＋コロナで自殺者が急増する可能性大

何度も繰り返しますが、2020年は芸能人の自殺が相次いでいます。しかも、三浦春馬さん・芦名星さん・竹内結子さんと好感度が高く、実力もあり、長年第一線で活躍してきた人たちばかりです。

そのため、2020年の芸能人の自殺は、世間に対する影響は非常に大きく、ウェルテル効果は出ている可能性が非常に高いです。

しかも、皆さんご存知のように、2020年は新型コロナウイルスの影響で、外出を自粛しなければいけないこともあり、人に会うことができず、孤独を抱える人が多くなっています。さらに、人によっては仕事がなくなり、経済的に困窮していることもあるでしょう。

だから、2020年は芸能人の自殺によるウェルテル効果と新型コロナウイルスの影響で、自殺者は大幅に増加する可能性があります。

ウェルテル効果のまとめ

ウェルテル効果の基礎知識やなぜ起こるのかや心理、ウェルテル効果の事例、ウェルテル効果が起こった芸能人の自殺、2020年の三浦春馬さんや竹内結子さんなどの自殺はウェルテル効果があるのかなどをまとめました。

ウェルテル効果は確かにあるものです。他人の自殺が自分の自殺のきっかけになることもあるのです。ただ、ちょっとでいいですから、あなたの大切な人を思い出して下さい。残された人の気持ちを考えてください。そうすれば、自殺を踏みとどまるきっかけになるはずです。

そして、自殺したいことを隠さずに、誰かに話して下さい。相談して下さい。周りに相談できる人がいない時には、行政の相談窓口もありますよ。